ナタリー PowerPush - My Last Ballad
ピアノエモが切り開く新たな夜明け
「From Scratch」はMy Last Balladのテーマ曲
──今回のアルバム「Lights of Dawn」の1曲目「From Scratch」は英語詞の楽曲ですが、日本語の対訳を読んですごく意味深な歌詞だなと思いました。具体的な日付も出てくるこの曲には、どのような意味が込められているんですか?
Hirotaka この曲はどうしてもデビューアルバムの1曲目に入れたくて。今も存在してるんですけど、Kazushiが前のバンドがなくなったときから書き始めたブログがあって、最初の記事から読み返してみると前のバンド解散からMy Last Balladが結成されるまでのステップや、そのとき彼が感じていたことが記されているんです。「From Scratch」は「すべてゼロから。何もないところから」という意味なんですけど、ある決意から1つの目標に向かってくKazushiの姿をそのまま描いていて。歌詞に登場する日付なんですけど、そのブログの同じ日付の記事を読んでもらえば、より一層曲の世界を理解してもらえるかなと。
──この歌詞を読んだとき、Kazushiさんはどう思いましたか?
Kazushi この歌詞が上がってきたときは、本当に感情移入できる歌詞だと思いましたよ。
Hirotaka 泣いた?
Kazushi いやいや、それは心の中だけで。
一同 あはははは(笑)。
Kazushi なんで僕の気持ちをここまで汲み取ってくれてるの、そしてそれが歌になっているのって驚いて。大切なものを見つけた日、大切な人たちに出会えた日が曲に刻まれているから、本当に思い入れが強い1曲になりました。
Hirotaka いわばMy Last Balladのテーマ曲ですね。
──じゃあ、1stアルバムのオープニングに持ってくるしかない曲ですよね。
Hirotaka だから、どうしても1曲目に入れたかったんですよ。
Hirotakaが書く歌詞をいろんな人に読んでもらいたい
──「From Scratch」のイントロもそうですけど、My Last Balladは曲の至るところでピアノをフィーチャーしています。バンドの音楽性を「ピアノエモ」と表現していますが、このアイデアはどこから生まれたものなんですか?
Kazushi 実は僕たち、もともとはピアノが入らない、ギター3人編成だったんです。
──そうですよね。過去のPVを観ると、Kazushiさんもギターを弾いてますし。
Kazushi そうなんですよ。このアルバムを制作するに当たって、僕がピアノを弾くようになったんです。もちろんピアノが入るバンドサウンドからも強い影響を受けているし、今回の新しい曲に必要な要素だったから導入したわけですが、このアルバムを機に新しく生まれ変わったMy Last Balladを示したいという思いもあって。そのためにも、まずはイントロでピアノを聴かせてインパクトを与えたいと意識したところもあります。
──単なるエモーショナルなギターロックという枠にとどまらず、ピアノをフィーチャーしたスローバラードやアコースティック曲、ダンサブルな4つ打ちナンバー、日本のヒットチャート上位に入っていそうなJ-POPと呼んでも違和感がない楽曲も収録されています。ピアノエモとは言っているものの、ジャンルに縛られないポップな作品集になりましたね。
Kazushi そうですね。最初に言ったように、僕たちの肝はやっぱりポップさだと思っているので、メロディをじっくり聴かせるためにはどういうサウンドが必要なのかをみんなで考えて。僕自身はHirotakaが書く歌詞が本当に大好きで、いろんな人に読んでもらいたいという気持ちがあるんです。でも曲がよくなくちゃ歌詞なんて気にしませんよね。だから僕らはキャッチーなサウンドでみんなを惹き付けて、バンドが持つ世界観をもっと深くまで知ってもらうためにがんばってます。
Tetsuo(Dr) 実は「From Scratch」って、何回もアレンジを詰め直してるんですよ。最初はメンバーそれぞれがもっとこうしたい、ああしたいということがあったんですけど、最終的にはただ好き勝手に演奏するだけじゃなくてメロディを大切にしつつ、メンバー同士愛情を持って尊重しあおうと。その結果完成したのが、現在のアレンジなんですよ。
──ほかの楽器隊の皆さんはメロディを大切にしつつ演奏で自分の個性を出していく上で、何か注意した部分はありましたか?
Secky このキャッチーなメロディにHirotakaさんが書く歌詞が乗ってこそMy Last Balladだと思うので、僕はメロディを大切にしつつ直感でカッコいいと思う演奏をするだけで。
Kazushi 「From Scratch」なんて特にベースのフレーズが変わったもんね。最初はAメロ部分がけっこう激しかったんですけど、僕の中にはそういうイメージがなくて。何度か弾いてもらってるうちに、Seckyの個性が詰まったフレーズが出てきて「これだ!」と。それでやっとOKが出ましたから(笑)。
Secky はい……大変でした(笑)。
一同 あははは(笑)。
この曲たちがリスナーを照らす存在になってほしい
──最後にアルバムタイトルについて聞かせてください。「Lights of Dawn」ってすごく印象的な言葉ですね。
Hirotaka ありがとうございます。アルバムタイトルに「Dawn(夜明け)」という単語をどうしても入れたかったんです。「僕らの曲ってどれもキラキラした印象があるよね」という話をメンバー同士でしていたときに、光り輝くものから夜明けの太陽を思い浮かべて。どんなに暗くつらい日々を送っていても必ず夜明けは訪れるし、僕らの音楽が誰かにとっての“夜明け”みたいな存在になったらと思い「Lights of Dawn」というタイトルにしました。
──「Light」ではなく、複数形の「Lights」なんですね。
Hirotaka そうです。アルバムに9曲収録されているので。このアルバムに入っている曲たちが、リスナーを照らす存在になってほしいですね。
収録曲
- From Scratch
- Signals
- River
- Finger Flare
- What Lies Beneath
- Backwards
- Another and Only One
- Lights and Leaves
- In My Melody
My Last Ballad(まいらすとばらっど)
Kazushi(Vo, Piano)、Hirotaka Terakura(G)、NishiMac(G)、Secky(B)、Tetsuo(Dr)からなるロックバンド。2011年、Kazushiを中心に結成され、自主音源の制作やライブ活動を積極的に展開していく。2012年6月には「Beyond [The] Blue Tour 2012」サイドショーにサポートアクトとして出演し、MAYDAY PARADE、EVERY AVENUEといった海外勢と競演。同年10月に現編成が揃い、2013年2月に全国6カ所を回るライブツアーを敢行する。同年10月、初のアルバム「Lights of Dawn」をリリース。