MUCC「愛の唄」インタビュー|“BACK TO 90's”な新曲で3度目のメジャーデビュー (2/2)

不良のお兄ちゃんが聴いてそうな曲=「Violet」

──カップリング曲の「Violet」はミヤさん作詞で、曲はYUKKEさんとミヤさんの共作です。

YUKKE これまで90'sを意識して作曲したことはあまりなかったんですけど、いざやってみると「自分はあの年代の音楽に影響を受けているんだ」と改めて感じて。なので「Violet」もそれほど迷わずに作れましたね。当時のザ・ヴィジュアル系みたいな曲も面白そうだなと思ったんですけど、今のMUCCでやるんだったらというイメージで作り始めました。10代の頃って、友達の家に行くと誰かがCDを持ってきて、それをみんなで聴いたりしてたんですよ。そのときに耳にしたサウンド、友達の部屋の空気や匂い、話してたことなんかも頭に浮かんできて。そういう意味でもいろいろとイメージしやすかったですね。「Violet」のデモをメンバーに聴かせたときも、ミヤが「兄ちゃんの部屋から聴こえてきそうな曲だな」と言ってて。確かにちょっと不良っぽいお兄ちゃんが聴いてそうな曲だなって思いました(笑)。

──「不良のお兄ちゃんが聴いてそうな曲」って、いいですね。そういう音楽、90年代は確かにあった気がします。

YUKKE ワルそうな仲間と集まって、ギター弾いてたりね(笑)。メンバーとは同じ時代を過ごしてきているので、そのあたりのイメージの共有も早かったですね。

ミヤ でも「Violet」のデモを聴いたとき、俺は90年代というより80年代だなと思ったんですよ。だから時代が違うじゃねえかってなりましたけど(笑)。「愛の唄」が高校の時期だとしたら、「Violet」は小学校の高学年とか中学時代に聴いていた感じ。で、さっきYUKKEが言ってたように「兄貴の部屋から聴こえてくる曲」とか「友達の部屋でかかってた」というイメージが湧いてきたので、ちょっとアレンジを加えつつ歌詞を書かせてもらいました。

ミヤ(G)

ミヤ(G)

──「29時のアスファルト」「背中に GIVENCHYの影残して」など、歌詞だけを読むと80年代のシティポップ的な雰囲気もあるような……。

ミヤ まさにそういう感じです。80年代の終わり頃、俺は10歳くらいだったので、その時代の音楽にちょっとかすってるんですよ。当時の空気もなんとなく覚えてるけど、そこを掘り起こして音楽で表現したことはなくて。その時期にしかない独特の雰囲気がある。例えば「隣の部屋から音楽が聴こえてくる」ということは今ではほぼないと。そもそもステレオで音楽を聴くという文化がなくなってるから。

──それぞれのイヤフォンで聴いてるから、人が聴いている音楽が耳に入るということがないと。

ミヤ 文化とかエンタメをインプットする環境が変わってますからね。ただ、今は90年代の音楽がリバイバルしていたり、その時代を舞台にしたマンガが流行っていて。また新しいものとして感じられる時期になってきているのかなと。

逹瑯 「Violet」も振り切ってますよね。カップリング曲ということもあって、すごく遊んでるなと思います。80年代をドンズバで通ってるわけではないので、匂いや雰囲気でしかないんですけど、サウンド的なところではBOØWYなのかCOMPLEXなのか、あの頃の布袋(寅泰)さんがギターを弾いているイメージ。これまでそういう部分を押し出すこともなかったので、すごく面白いなと。ライブでどんな感じになるんだろう?と思いながら制作していました。

──ミヤさんは布袋さんのギタースタイルを意識していたんですか?

ミヤ すごく意識しました。フレーズもそうだし、ギターや機材も当時の布袋さんと同じものを使っているんです。90年代あたりの機材って、今はほとんどの人が使ってないんですよ。80年代までさかのぼるとビンテージとして扱われるけど、90年代はアナログとデジタルの変換時期だから斬新な音が作れるんですよね。10数年前は単に「よくない音」とされていましたけど。いびつな機材も多いし、ファミコンとかスーファミもそうですけど、限られた容量の中でどうにかして斬新な世界観を作ろうとしていたというか。そういう人間のパワーはすごいなと思うし、当時の音を今の機材に取り込むことでさらに新しい表現ができるので面白いです。

一番は「面白いことをやりたい」

──シングル「愛の唄」のリリース後は全国ツアーが開催されます。キズ、NoGoD、甘い暴力、vistlip、CHAQLA.、MAMA.、JILUKA、ΛrlequiΩ、色々な十字架、DEZERTと下の世代のヴィジュアル系バンドがサポートバンドとして参加しますが、MUCCにとってこのツアーの意義は?

逹瑯 今は横のつながりも縦のつながりもどんどん薄くなってる気がするんですよ。ウチらが出てきた2000年代初頭に比べてもかなり薄くなってるので、またつないでいったほうがいいんじゃないかなと。最近は若くていいバンドが増えてきてる感じもありますからね。ただ、こちらが若いバンドをフックアップする意図はないし、MUCCとしてもこのツアーはメリットがあると思ってるんですよ。双方にメリットがあるんだったら、ヴィジュアル系シーン全体にとってもいいことだし、ほかのバンドも真似してくれたらいいなと。例えば今回のツアーに参加してくれたバンドが、1年後とか2年後とかに「自分たちのツアーに出てもらえませんか?」と言ってきたら、スケジュールが許す限り「全然やるよ」という感じなので。

──DEZERTもヴィジュアル系全体のことを意識した動きを見せてますよね。

逹瑯 まあ、そのあたりはあいつらにがんばってもらって(笑)。今回のツアーは「面白いことをやりたい」というのが一番強いかな。

YUKKE 最近の若手バンドを見ていて、すごく個性があるし、カッコいいバンドが多いと思うんですよね。ただ、対バンとなると同じようなメンツのイベントばかりになってしまう。昔は音楽雑誌のイベントがあったり、まったく違うジャンルのバンドから誘われたりすることもあったけど、最近はそういうことも少なくなっていて。だったら自分たちから若い世代のバンドに声をかけて、一緒にやればいいんじゃないかなと。対バンしたことがないバンドもけっこういるし、新しいお客さんにMUCCのライブを観てもらえるのも楽しみですね。

YUKKE(B)

YUKKE(B)

ミヤ 世代がひと回り、ふた回りくらい違うと、話していて「面白いな」と思うことがけっこうあって。ツアーに参加するバンドの中には面識がないバンドも多いので、これをきっかけに関わりができるのはいいなと思っています。さっき逹瑯が言ったように、昔は世代が違うバンドとの交流がかなりあったんですよ。そういう機会が減っているのはもったいない気がするし、いろんなジャンルを行き来しているMUCCだからこそ、こういうツアーが組めるのかなと。今回はヴィジュアル系に特化したツアーですけど。まあ、「やったことないことをやりたい」という思いが一番強いかな。

──3度目のメジャーデビュー、シングル「愛の唄」のリリース、ヴィジュアル系に特化したツアーと、MUCCの新たなアクションが続きますね。今後の動きはどうなりそうですか?

逹瑯 このインタビューが公開された数日後には、次の発表ができると思いますよ(笑)。あとはツアー後に制作をして……まあ、いろいろあると思うんで、待っててください。

ライブ情報

MUCC TOUR 2024「Love Together」

  • 2024年6月9日(日)東京都 Spotify O-EAST(※朱ゥノ吐+会員限定公演)
    <出演者>
    MUCC
  • 2024年6月10日(月)東京都 Spotify O-EAST
    <出演者>
    MUCC
  • 2024年6月15日(土)大阪府 GORILLA HALL OSAKA
    <出演者>
    MUCC / キズ
  • 2024年6月16日(日)大阪府 GORILLA HALL OSAKA
    <出演者>
    MUCC / NoGoD
  • 2024年6月22日(土)山形県 山形ミュージック昭和Session
    <出演者>
    MUCC / 甘い暴力
  • 2024年6月23日(日)宮城県 Rensa
    <出演者>
    MUCC / 甘い暴力
  • 2024年6月29日(土)愛知県 THE BOTTOM LINE
    <出演者>
    MUCC / vistlip
  • 2024年6月30日(日)愛知県 THE BOTTOM LINE
    <出演者>
    MUCC / vistlip
  • 2024年7月3日(水)東京都 WWW X
    <出演者>
    MUCC / CHAQLA.
  • 2024年7月6日(土)福岡県 BEAT STATION
    <出演者>
    MUCC / MAMA.
  • 2024年7月7日(日)福岡県 BEAT STATION
    <出演者>
    MUCC / MAMA.
  • 2024年7月11日(木)千葉県 KASHIWA PALOOZA
    <出演者>
    MUCC / JILUKA
  • 2024年7月20日(土)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
    <出演者>
    MUCC / ΛrlequiΩ
  • 2024年7月21日(日)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
    <出演者>
    MUCC / ΛrlequiΩ
  • 2024年7月26日(金)東京都 東京キネマ倶楽部
    <出演者>
    MUCC / 色々な十字架
  • 2024年7月27日(土)東京都 東京キネマ倶楽部
    <出演者>
    MUCC / 色々な十字架
  • 2024年8月3日(土)茨城県 VOICE
    <出演者>
    MUCC / DEZERT
  • 2024年8月4日(日)茨城県 VOICE
    <出演者>
    MUCC / DEZERT

プロフィール

MUCC(ムック)

1997年に茨城で結成された、逹瑯(Vo)、ミヤ(G)、YUKKE(B)からなるロックバンド。日本語にこだわった文学性の強い歌詞と、ヘヴィロックやラウドロックの影響をミックスさせた音楽性が国内外で評価されている。2002年にデンジャークルー・レコード内に自主レーベル・朱を設立。2003年にシングル「我、在ルベキ場所」でメジャーデビューし、2005年にはドイツで初の海外公演を行うなど活動の場を広げた。結成15周年を迎えた2012年には千葉・幕張メッセにてワンマンライブを開催。2019年2月には期間限定メンバーとして吉田トオルを迎えたアルバム「壊れたピアノとリビングデッド」を発表した。2021年10月をもってSATOち(Dr)が脱退し現体制に。2022年6月に現体制初のフルアルバム「新世界」を発表し、同年10月から過去のアルバムを中心とした再現ライブツアーシリーズ「Timeless」を開催。2023年12月に東京・東京国際フォーラム ホールAで結成25周年を締めくくるワンマンライブを行った。6月9日を「ムックの日」とし、毎年さまざまなイベントや企画を実施している。2024年6月にシングル「愛の唄」を徳間ジャパンコミュニケーションズからリリース。3度目のメジャーデビューを果たした。