ナタリー PowerPush ナタリー×WOWOW ミュージックスタイルJAPAN Cocco
ベスト盤ライブ東京公演 WOWOW連動インタビュー
「本物の音楽との出会い」をコンセプトに、毎月厳選したアーティストを紹介するWOWOWのライブプログラム「ミュージックスタイルJAPAN」。話題を集める本格音楽番組の第2回は、Coccoが10月にTOKYO DOME CITY HALLで行った「Cocco ザ・ベスト盤ライブ5本〆」ツアーの東京公演をオンエアする。放送予定日時は11月27日(日)23:15から。
これを受けて、ナタリーでは「ミュージックスタイルJAPAN」と完全連動の特集コンテンツを企画し、Coccoのインタビューを掲載する。なおWOWOWの番組オフィシャルページでは、インタビューの別バージョンが読めるので、そちらもあわせてチェックしてもらいたい。
取材・文 / 大山卓也 撮影 / 福岡諒祠
メインディッシュ三昧の濃いライブ
──まず今回のライブを終えた感想を教えてください。
濃いライブでした。コース料理じゃなくてメインディッシュ三昧みたいな(笑)。今回はベスト盤のツアーだったし、できる限りのおもてなしをしようと思ったんだけど、やってもやっても足りなくて。日々精進だなと思いました。
──バンドメンバーも実力派揃いで、演奏の素晴らしさも見どころですよね。
それはメンバーに言ったら喜びますね!
──ライブを通して、Coccoさんのメンバーへの信頼感が伝わってきました。
みんな仲がすごくいい。それにみんな自分は何を担当して何を開拓するかをわかって、みんなが持ち場を持ってくれているから。わかり合えている感じはありますね。
──今回のライブではCoccoさんがギターを弾く場面もありましたけど、いかがでしたか?
あれは、上から目線で言うとファンサービスっていうか……(笑)。ギターを弾くっていうのは自分で言いだしたんだけど。あの曲はファンの人にとってもすごく思い入れのある曲だから、Coccoがギターを弾けば大目に見てくれるかなって(笑)。
──弾いているときは楽しかったですか?
そんなわけない(笑)。手ぶらで歌うのが一番好きだから。楽器を持って歌うのは必要に迫られたときだけ。今回は調子に乗ってみました。
1曲ずつで「ありがとう」って言いたくて
──今回は「ザ・ベスト盤ライブ」と銘打っているだけあってセットリストもすごく濃厚で、ライブそのものがファンサービスのような印象を受けました。Coccoさんはどういう気持ちでライブに臨んだんですか?
15年目を無事に迎えられたのは、ファンの人やスタッフのみんながCoccoを支えてきてくれたから。そうやってCoccoをつないできてくれた人たちに対して、とにかく「ありがとう」っていうことをなんとか言いたいって思って。言っても言っても足らないんだけど。
──じゃあ感謝の気持ちを曲に込めて。
うん、1曲ずつで「ありがとう」って言いたくて。観てくれてる人たちは、Coccoが楽しく、Coccoの好きにやればいいって思っていてくれてるんだろうけど、でもそれ以上にこっちは「いやいや、しっかりやります!」っていう気持ちがすごく強かったから。緊張しながらやりました。
──セットリストはどういうふうに決めたんですか?
ベスト盤と同じように、シングルを順番に並べた流れのままで。並べ替えたり、あれもこれも入れてってやってると15時間くらいになっちゃうから(笑)。1回のライブでできる曲数は限られてるし、あんまり欲張らずに。コース料理だったら流れがあるけど、全部メインディッシュだからどう並べるも何もなくて、言い訳としては時系列しかないっていう。
もらった拍手も自分の持ち物じゃないんです
──当時の曲を歌いながら、その曲をリリースした頃のことを思い出したりもしましたか?
このベスト盤ライブをやる前の夏フェスのときは、その曲の思い出とか、あんなPVを撮ったなとか、そういうのすごく「おおー!」って思ってたんだけど、今回のライブはそんなの思い出してる余裕もなかった。余裕っていうか、自分が思い出してどうこうっていうところにはいなかった。とにかくちゃんとお客さんに返そうっていうだけで。
──無我夢中で過ぎていく感じなんですね。次の曲でこっちに行って、ここで水を飲もうとか、そういうことを考えたりはしないんでしょうか?
リハーサルのときはちゃんと、みんなでここでお水を飲もうとか考えるんだけど、本番になると「あ、忘れてた」みたいな(笑)。もう自分が自分じゃないみたいな感じになる。だから意志とはあんまり関係なくて、で、それを疑問にも思わない。不思議なことを不思議だなあって思ってるだけですね。
──ステージからの風景はどういうふうに見えてるんですか?
他人事。あはははは(笑)。
──お客さんの顔は見えます?
目が悪いから、多分みんなが期待してるほどは見えていないと思うんだけど。学校とかで例えば図画工作で一等賞取って表彰されますっていうときは、校長先生から賞状もらって、みんなのほうにクルって向いて「わー!」ってなったら、「この声援は俺のもの」って感じの手応えがあるけど、ライブのときってそういう感じじゃない。他人事っていうか天候の話みたいで、なんかありがたすぎてわからない。だから拍手をもらっても、その拍手もお客さんに返すものだし、自分の持ち物じゃないんです。
──そんなライブが今回WOWOWで放送されるわけですが、ズバリ見どころはどこでしょうか?
全部メインディッシュだから全部見どころ。
──あはは(笑)、確かにそうですね。
こんなふうに今日も撮影あるけど、撮られたいとか思わないし、恥ずかしいさ、なんか。だけどライブは、でーじ観てほしいわけ。だからそれを観てもらえるのはうれしいです。
収録曲
- カウントダウン
- 強く儚い者たち
- Raining
- 雲路の果て
- 樹海の糸
- ポロメリア
- 水鏡
- けもの道
- 星に願いを
- 羽根 ~lay down my arms~
- 風化風葬
- 焼け野が原
- Rainbow
- 音速パンチ
- 陽の照りながら雨の降る
- 甘い香り
- ジュゴンの見える丘
- 絹ずれ
- ニライカナイ
- 玻璃の花
- 花柄
- 群青の谷
Cocco(こっこ)
1977年沖縄生まれ。1997年3月にシングル「カウントダウン」でデビュー。翌1998年5月リリースの2ndアルバム「クムイウタ」がオリコンウィークリーチャート初登場1位を記録する。その後もヒット曲を多数リリースするが、2001年4月に突然の音楽活動中止を発表。その後も絵本の出版、「ゴミゼロ大作戦」の実施など音楽以外のフィールドで大きな話題を集める。くるり岸田繁らとともに結成したバンド「SINGER SONGER」での活動を経て、2006年より本格的に音楽活動を再開。エッセイや小説の執筆、映画出演などさまざまな分野でその才能を発揮する。2011年8月にはコンプリートアルバム「ザ・ベスト盤」、同年12月にはDVD「ザ・ベストクリップ集」をリリース。