ミソッカスの歌詞ってNON STLYEの井上感があるねん

──ミソッカスは今年の秋、メジャーデビューというタイミングを迎えて。バンドにとっては大きな節目ですよね？

はるきち　そうっすね。ギリギリでメジャーデビューっていう感じですけど。

ヤマサキ　どうなん？ メジャー行ってから。

はるきち　その前はバンドの歯車があんまりうまく回ってなかったんだよね。まあ、そういうふうに見えてたと思うけど。

ヤマサキ　うん。はるきちもそういうこと言ってたし。

はるきち　でも、メジャーデビューが決まってからはうまい具合に回ってきた手応えがあって。今回もけっこういいアルバムができたと思ってるんだよね。

ヤマサキ　っていうかね、アルバムめっちゃよかった。

はるきち　あ、ホントに？

ヤマサキ　うん。カッコいいし、広い世代にウケそう。90年代のアニメソングのメロディというか、「幽☆遊☆白書」みたいなノリもあって、それもいいと思うし。ただ、ミソッカスの歌詞って気取ってるよな。NON STLYEの井上（裕介）感があるねん。

──どういうことですか？（笑）

ヤマサキ　歌詞の中に「僕」とか「君」が多いんすよ。「僕たち」とか「あの子」とか。

はるきち　言われてみたら多いかも（笑）。今回のアルバムもそうだけど、気取ってるのが逆にいいのかなって。「気取ってるけど、ツッコミどころもたくさんありますよ」という感じがいいと思ってるんですよね。え、それはセイヤ的にNGってこと？

ヤマサキ　いや、いいと思うよ。俺はそういう歌詞が書けないから。俺らは“気取りゼロ”スタイルというか、身に起こったことをそのまま書いてる日記みたいな歌詞なんですよ。ミソッカスとは世界観が違うし、自分で考えたストーリーを歌詞にできるのはやっぱりすごいなって。

はるきち　そうか。確かね、僕が好きなL'Arc-en-Cielのhydeさんが「歌詞はどれだけ抽象的に書くかが大事」みたいなことを言っていて……。

ヤマサキ　そっち系、好きなんやっけ？

はるきち　そうだよ！ 自分たちのことは“逆ヴィジュアル系”だと思ってるし。

ヤマサキ　あ、なるほど。だったら、たまには着物を着たら？ 今メジャーのバンドで、着物でライブやってるバンドっていないでしょ。

はるきち　和楽器バンドくらいかな。

ヤマサキ　和楽器バンドは（音楽的に）“和”やん。でも、君らは違うやん？ だから、あえて着物を着るのはいいと思うけどな。

はるきち　そうか……。

ヤマサキ　全員で着なくてもいいよ。ブルマン（藤井 / B, Cho）は細いスーツでスタイリッシュに決めて、はるきちだけ着物で。ほかのメンバーは……まあ、（戦隊モノ風のアーティスト写真を指差して）これでええよ（笑）。この写真もさあ、正直言って、無理させられてる感はない？

はるきち　いや、そんなことないよ！

ヤマサキ　ファンはどういう意見だった？ 「おー！」ってなった？ それとも「ミソッカス、どうした？」っていう感じ？

はるきち　「どうした？」もあった。でも、その中身はよくわかんない。

ヤマサキ　そこを深く調べんねん。（Twitterの）そいつのアイコンを押して、そのあと、なんて発言しているのか見ないと。エゴサの先を見ないとアカンよ。

はるきち　なるほど。でも、着物はまた着てもいいかなって思ってるけどね。ただ、あまり早く着ると「迷走してる」って言われるから。

ヤマサキ　迷走って言われるのはよくないよな。お客さんにしたら「あの人たちは私たちに何を見せたいんやろう？」みたいになるから。

はるきち　うん、それはあるな。

ヤマサキ　俺らはめっちゃ迷走してるやんか？ でも、毎日してるからええねん。毎ライブ迷走してて、スベる日もあれば、ウケる日もある。それをお客さんも楽しみにしてくれてるんやないかなって。「あいつらの迷走を観に行こう」みたいな。

セイヤの歌は完璧じゃないのにカッコいい絶妙なライン

──音作りの面でも、メジャーデビュー以降変化はありました？

はるきち　もっと攻めてやろうと思ってますね。「このくらいでええやろ」って無難にやるんじゃなくて、逆に「ギターもっとピロピロ弾きまくろうぜ」とか。

ヤマサキ　けっこうシンセが聞こえてくるよな。あとは歌のメロディがいい。

はるきち　うん、メロディはけっこう気にしたかな。あとは原点回帰じゃないけど、音のカラーとしては、初期のアルバムを意識してて。

ヤマサキ　そういう時期ってあるよな。俺らも今回のアルバムは「大事なお知らせ」（2012年発売の2ndフルアルバム）を意識して作ったから。

はるきち　「大事なお知らせ」って「サブカル女子」が入ってるアルバムだよね？ 俺、めっちゃ聴いた。

ヤマサキ　「大事なお知らせ」は多種多様な曲が入ってるアルバムなんだけど、今回もそうしたくて。

はるきち　あとね、「人生はまだまだ続く」の「春になっても」はビックリした。あの曲、めっちゃフツーに歌ってない？ 歌の感じがいつも違うというか、最初聴いたとき「歌ってるヤツ、誰や？」って（笑）。

ヤマサキ　そうそう。ボイトレ行くようになって、むっちゃ変わってん。

はるきち　え、ボイトレ行ってんの？

ヤマサキ　うん。「（声が）潰れることが前提」みたいなボーカルだったんだけど、それがつらくなってきて。ボーカルがのどを潰して活動できなくなるバンドを見たりすると「俺はバンドに迷惑かけたくない」って思うしな。ボイトレ行き始めて、潰れにくくなったよ。

はるきち　そうか。でもさ、セイヤの歌はヘタウマというか、完璧じゃないのにカッコいい絶妙なラインを突いてくるじゃん？ それは残してほしいなあ。めっちゃうまくなったらイヤだ（笑）。

ヤマサキ　大丈夫、ライブにはいつも通りの俺がいるから（笑）。音源は家とか車で聴くもんやし、街とかでも流れてほしいから、ちゃんと歌ったほうがいいかなって思ってるんだよね。「聴いてくれる人を増やしたい」っていうのがすごくあるから、僕ら。いつまでも内輪というか、現状で満足してたら、いつか頭打ちになるからな。今の同世代のバンド、下の世代のバンドもテレビに出てどんどん日本を巻き込もうとしてるし、それの流れに乗っていかなあかんなって。

はるきち　おー！ デカいな、スケールが。

ヤマサキ　戦っていかなヤバいで、ホンマ。