「アイドリッシュセブン」特集|KENN(四葉環役)、阿部敦(逢坂壮五役)が語るMEZZO"のこれまでとこれから

逢坂壮五役 阿部敦インタビュー

安心して背中を預けることができるKENN

──今日着けていらっしゃる“5”のモチーフネックレス、壮五さんを連想させるデザインで素敵ですね。

朝から「アイナナ」の収録があって、せっかくなので着けていこうかなと(笑)。今日は1日「アイナナ」尽くしの日なんです。

──とてもお似合いです。ではそんな「アイナナ」に携わることになった経緯から聞かせてください。

アイドル作品の候補で名前が挙がっているとマネージャーから話をもらったのが始まりでしたね。アイドル役が自身初だったので、「僕がアイドル役なんて珍しいですねー(笑)」なんて笑いながら、どんな作品なんだろうと思っていました。当時はアイドルものというと恋愛を主軸にした作品が多いイメージだったのでそんな感じかなと思っていたのですが、いざ台本をもらったらけっこうヘビーな展開が多くて、「あれ? 思っていたものと違うな」と(笑)。個人的にはそういう重い話が好きなのですごく響きました。ただ、お客さん的にはどうなんだろうと気になりましたが、蓋を開けたらみんなめちゃくちゃハマってくれていて。

MEZZO"「雨」ジャケット

──「アイナナ」は重厚なストーリーが魅力のひとつですよね。ちなみに資料を手渡された当時はIDOLiSH7の中からMEZZO"が生まれるというのはご存知でしたか?

いえ、台本を読んで初めて知りました。当時はまさかアルバムを出すことになるとは思いませんでしたね。

──楽曲は別録りかと思いますが、「RTI」などの「アイナナ」のライブで実際にKENNさんと声を重ねてみていかがでしたか?

月並みな意見ですけど、KENNくんはめちゃくちゃ歌がうまいので、ライブでは安心して背中を預けることができました。ライブ前には2人で練習したり、ライブでの表現について話し合ったりしました。音源で自分の声が重なっているパートなんかは「ここは音程が高めだから俺がわーっと伸ばしている隙にKENNくんに次のフレーズを歌い始めてもらって、このフレーズから俺も入るね」みたいなことを。もちろんテクニカル面の問題があるのでスタッフさんの意見も聞きながらですけど、僕らに任せてもらえる部分は2人で考えました。考えることもやることもたくさんあって大変ではあったんですけど、文化祭の準備みたいな感じですごくわくわくしたし、楽しかったですね。

──お二人でのパフォーマンスということで関係性も大切になってくるのではと思いますが、KENNさんとは昔から交流があったのでしょうか?

ゲームなどの趣味が合うので、もともと仕事で会ったときに話すことが多かったんですけど、連絡を取り合って会うということはなくて。でも「アイナナ」を機に一緒にいる時間がかなり増えて、より仲よくなった感じはしますね。

──その仲のよさがライブのステージングにも現れている印象を受けました。

それはあると思いますね。あと「アイナナ」のキャストはみんなストイックなんですよ。

逢田梨香子に触発されてピアノを演奏

──作品への姿勢や温度感など、皆さんの足並みがそろっているとよりよいパフォーマンスにつながりそうですね。阿部さんは「RTI」のときに、「Sakura Message」(2017年7月リリースのIDOLiSH7のシングル表題曲)でピアノを演奏されていましたよね。これはどういう経緯で?

ひと言で言っちゃえば、ただの俺のノリです(笑)。事務所のサイトに載せるプロフィールの特技欄に、思い当たることがなかったから中学3年生くらいまでやっていたピアノと書いたんですよね。そうしたらファンの方たちから「弾かないんですか?」とお声をいただくことがたびたびあって、「機会があったらねー」なんて言っていたんです。そんなときに事務所の後輩の逢田梨香子さんの1stライブを観に行ったら、彼女がピアノを弾いていて。話を聞いたら、あの子はピアノを弾いたことがなかったけど一から練習して、横アリで見事に成功させたんです。「みんながんばってるんだな」と思っていたときに「RTI」の開催が決まって、やるなら今じゃないかと思っちゃったんです。

──逢田さんに触発された形だったんですね。

はい(笑)。恐る恐る提案してみたらあれよあれよという間に決まって。最初はなんとなくMEZZO"の曲かなと思っていたんですけど、スタッフさんからぜひ「Sakura Message」でというお話をいただきまして。この曲には脅しのような内容の暗号が仕込まれていて、ちょうどそれがファンの方に知れ渡ったタイミングだったので、少しネガティブな印象が付いてしまっていたんです。なので僕がピアノを弾くことによって、また違った印象をファンの方に与えられるのもいいことだなと思って弾かせていただきました。けっこう毎日練習していたのですが、当日はめっちゃ緊張しましたね。屋外でピアノ弾いたことがなかったうえに、そのときは湿気がすごくて鍵盤に指が引っかかりやすいという状況で。でも本番ではなんとか形になってよかったです。

──MEZZO"はピアノが印象的な楽曲が多いので、いつかMEZZO"の曲でも阿部さんのピアノを聴けるのを楽しみにしています。

バラードだと自分の難易度が上がる感じがするので怖いですけど、そういう機会がありましたらぜひという気持ちです(笑)。

1枚のアルバムとしての完成度が高い「Intermezzo」

──1stアルバムにはグループ名にちなんだ「Intermezzo」というタイトルが付けられていますね。

「Intermezzo」は“間奏曲”という意味があるので、聞いたときはなるほどなと思いました。“mezzo”という言葉が入っているのももちろん素敵ですけど、間奏曲という言葉が今のMEZZO"を表しているようでいいなと。個人的にこのアルバムのテーマは「MEZZO"のこれまでとこれから」だと思うのでぴったりだと思いました。「これから先、僕たちはもっともっと前に向かって進んでいきますよ」と思っている2人の途中経過というか、今振り返ってみたMEZZO"がこの1枚に詰まっているんですよね。MEZZO"は当初、切ない恋の曲を歌うグループとしてデビューしたと思うんですけど、「Intermezzo」にはそういう初期の恋の歌もあれば激しいサウンドの楽曲も収録されていて。バラエティに富んだ楽曲を楽しめるから、1枚のアルバムとしての完成度が高いと思います。だからこそこのアルバムを聴いていただけたら、これから先のMEZZO"の姿も見たくなるのではないかなと。

──おっしゃっていただいたようにMEZZO"の初期の曲は切ない恋をテーマにした歌詞で、透明感のある繊細なサウンドの楽曲というイメージがありました。一方ラウドロック調の「Forever Note」はMEZZO"にとって転機になったとも言える楽曲です。「Intermezzo」には収録されていませんが、作中で壮五さんが「Forever Note」の原曲として生み出した「Monologue Note」(2021年4月にリリースされた「アイドリッシュセブン」のコレクションアルバム「アイドリッシュセブン Collection Album vol.2」に収録)とでは歌い回しがだいぶ異なっていますよね。

そうですね。実は先にレコーディングしたのは「Forever Note」だったんです。MEZZO"の新境地だなと思いながら歌わせていただきました。2曲の一番の違いは、歌い出しだと思います。聴き比べると「Forever Note」の歌い出しはめっちゃ優しいんですよ。優しく歌ってほしいというディレクションを受けて、「どうして壮五くんは優しく歌うんだろう」と考えたときに、環くんと一緒に歌えることへの安心感や環くんといるときだからこそ滲み出る優しさが歌に出るんじゃないかなと思って。環くんに微笑みかけながら歌っているのをイメージして歌わせていただきました。後日の「Monologue Note」の収録のときにはスタッフさんに「これもうやっちゃっていいですよね?」と言って、僕が思うロックを叩きつけました(笑)。

MEZZO"「Forever Note」配信ジャケット

──作中では「Forever Note」が好きだというファンもいる一方で、曲調の違いから今までの曲のほうが好きだというファンもいるという賛否両論な描写がありました。阿部さんはこの曲のリリース当時、ファンの方の反応をチェックしていましたか?

するときはするんですけど、エゴサとかは普段そこまでしなくて。ただ「曲が出ますよー」と告知すると、みんながリプをくれるので、その人のプロフィールに飛ぶことはありますね。みんな考え方や感じ方は違うので、何かをやればいろいろな反応が返ってくるのは当然のことだと思っています。何を表現しても「ノー」と言う人は一定数いると思うけど、それを恐れて何もやらなかったり、万人受けを狙った表現しかできないのはよくない。尖るなら尖がりきるほうが素敵なものが生まれる。(八乙女)楽も言っていました。「100人に愛されるおまえじゃなくて、おまえに愛されるおまえになれ。そしたらいつか、1万人がおまえを愛するようになる。それが自分自身を、真面目に生きるってことだろ」って。これは本当に真理だと思うんですよ。

──今おっしゃっていただいたことを聞くと、作中で壮五さんが作曲に挑戦しようと決断したのは、阿部さんとしてもうれしい展開だったのでは?

はい。本当に本当に壮五くんに拍手を送りたいです。よく決意したと。

MEZZO"の音楽性の幅が広がっている

──「Forever Note」に続いて、「カレイドスコープ」も激しいサウンドの楽曲だったので、これを経た新曲2曲はどういう曲調なんだろうと思っていたのですが、どちらもMEZZO"の真骨頂のような優しいサウンドの曲で。

そうですね。ただ、わりとテイストは違う2曲ですよね。

MEZZO"「カレイドスコープ」配信ジャケット

──明るい曲調の「未来絵」としっとりと大人な「Tears Over ~この星の君と~」と。

どちらもMEZZO"の曲として成立していて、改めてMEZZO"の音楽性の幅が広がっているなと思いました。「未来絵」はポップロック調の明るいサウンドに前向きな歌詞が乗せられていて、今のMEZZO"だから歌える曲だと思うんですよ。けっこうヘビーな過去を背負っている2人だから「見て見ないふりしてた 僕を迎えに 今Turning」という歌詞は昔だったらたぶん歌えなかっただろうなと。2人が歩み寄ってお互いのことを理解してお互いの傷を癒せるようになった今だからこそ、過去の自分を振り返ることができるんだと思います。

──「未来絵」のソロバージョンのレコーディングはいかがでしたか?

1曲まるまる歌うことによって感情の変化というか、「ここはもっと歌い上げたいな」とか「ここはもうちょっと抑えてやりたいな」というのが見えてくる部分がたくさんあったので楽しかったですね。

──続いて、さかいゆうさんが作曲とピアノ演奏を担当されている「Tears Over ~この星の君と~」を聴いた際の印象を聞かせてください。

僕は80年代後半から90年代くらいのシティポップが好きでよく聴くんですよ。「Plastic Love」(1984年にリリースされた竹内まりやの12枚目のシングル)とか。「Tears Over ~この星の君と~」にはこの時代のシティポップっぽさがあるなと感じました。これまでのMEZZO"の恋の曲は初々しさもありつつ、少し言い方が悪いですけど粘着質な一面が覗く歌詞が多かった気がしていて(笑)。「Tears Over ~この星の君と~」からも誰かを思う熱い気持ちは感じるんですけど、大人の距離感を保っているなと感じました。今すぐ君に会いに行く感じではなく少し離れたところから見守っている感じというか。「君と空を知る」という歌詞から近くにいないんだろうなと感じて、そういう距離はあるけど思いはひとつ、というような印象を受けたんですよね。

──新曲からもMEZZO"の成長が窺えますね。阿部さんが逢坂壮五役を務め始めてから約6年が経つわけですが、歌唱したりパフォーマンスをしたりするうえで意識に変化があったことや大切にしていることはありますか?

演じるうえでも思っていることなんですけど、そのキャラクターを形成する背骨が1本通っていれば何をやってもいいと思っているんですよ。壮五くんは御曹司で激辛好きでと設定モリモリな子ではありますけど、基本的には線の細い真面目な子という感じで。でも真面目に歌うだけじゃつまらないなと僕は思うんですよね。線の細い壮五くんなりにがなってみたらどうだろう? 怒ってみたらどうだろう?とか。このキャラクターはここからここまででしか表現しないと決めることはそのキャラクターを殺すことにつながってしまうんじゃないかなと考えています。背骨さえ忘れなければそのキャラクターとして成立すると思っているので、歌う際にもあえていろんな歌い方をさせていただいています。

──壮五さんの背骨を言語化するとしたらどういうものになりますか?

真面目で柔らかくてみんなのことを考えている。ひと言で表すのは難しいけどそういうところだと思います。そこにさえ戻ってくれば何をやっても成立するのかなと。

──阿部さんの中に逢坂壮五像がしっかりあるからこそ、壮五さんのさまざまな側面が見れるということですね。では作中のMEZZO"に関連する心に響いたシーンがあれば教えてください。

壮五くんがめちゃくちゃ緊張しながら環くんに「Monologue Note」のデモを聴かせて、環くんが曲を褒めていたシーンですね。そういうふうに手放しで言葉をくれる人が壮五くんの人生には必要だと思うんですよね。ごちゃごちゃ考えちゃうタイプなので、シンプルに結論だけをぽんって言ってくれる人が。それをできる環くんは壮五くんにとって大事な存在なんだなと改めて感じました。

MEZZO"「Intermezzo」初回限定盤Bジャケット

──最後に今後MEZZO"としてやりたいことや挑戦したいことがあれば聞かせてください。

次に目指すとしたらワンマンライブになるのかなと思いますけど、そうなったらそのときにしかできない表現がたくさんあると思うので、それを突き詰めていきたいですね。あとはもう1枚くらいアルバムが出たらいいなと思っています!

阿部敦(アベアツシ)
3月25日生まれ、栃木県出身。賢プロダクション所属。主な出演作に「とある魔術の禁書目録」シリーズ(上条当麻役)、「バクマン。」(真城最高役)、「だがしかし」(鹿田ココノツ役)、「アイドリッシュセブン」(逢坂壮五役)、「火ノ丸相撲」(潮火ノ丸役)など。