音楽ナタリー Power Push - MERRY

結成15年目でつかみにいく「Happy life」

MERRYが、1年9カ月ぶりとなるニューシングル「Happy life」を発表する。

マイナーコードをフィーチャーしたサウンドやシニカルな詞世界など “陰”のイメージが強い彼らが放つ今作の表題曲は、独自の幸福論を歌い上げたポジティブな1曲だ。またメンバーがコミカルな表情を浮かべるアーティスト写真は、鮮烈なインパクトを放っている。

パンクから歌謡曲までさまざまなジャンルを取り入れた音楽性や、型にはまらない活動ゆえに異端児と呼ばれてきたMERRY。今年10月に結成15年目を迎える彼らが、なぜ今「Happy life」を歌うのか。その理由をメンバー5人へのインタビューで探った。

取材・文 / 中野明子

対バンツアーで研ぎ澄まされていく

──今年の春から対バンツアー「Grateful Year 2015『NOnsenSe MARkeT』」を開催されていますが、感触はいかがですか?

ガラ(Vo)

ガラ(Vo) ゲストのジャンルも世代もバラバラで、面白いバンドばっかりなんで刺激を受けてますね。でも俺らも相手の雰囲気に飲み込まれることなく、MERRYとしてのライブを見せられてるかなと思います。これだけ本数をやってるとライブの内容も濃くなって、精度も上がってきますし、研ぎ澄まされている感じがしますね。

──対バン相手によって内容を変えているんですか?

ネロ(Dr) 基本はツアーのタイトル通り、最新アルバム「NOnsenSe MARkeT」の曲を中心にやってるんで、セットリストはあまり変えてないですけど、当然相手によってモードは変わりますね。ただどんな相手でも、お客さんを巻き込んでいけるようなライブができていると思います。

──2013年にも対バンツアー(「TOUR2013-2014『devour act 3』-CHAOS-」)をされていましたが、四星球、人間椅子、a flood of circleといったバンドが参加する今回は前回以上にバラエティに富んでますね。

ネロ ええ。でも、もともと縁があったり、歌詞のメッセージやスタンスが近いバンドばかりなんです。アンコールセッションで、ゲストバンドのボーカルに参加してもらってMERRYの曲を演奏してるんですけど、ガラ以外の人が歌っているのを見るのは刺激的ですね。自分たちの曲を客観的に見れる瞬間があるし。

──なるほど。そして、ケガで療養中だったテツさんもときどきツアーに参加されているんですよね。

テツ(B) ライブに復帰したのが今年1月の東京・渋谷公会堂公演だったんですけど、お客さんが喜んでくれて。俺のことを待っててくれてたことがうれしかったですね。でも今のMERRYは4人がちゃんと作ってくれてて、ライブ本編はそれで成立してる。自分が出ていくところはアンコールなどでのプラスαのところかなと思ってます。今の自分にとってはそれがすべてなんです。俺が出ていくことでバンドとして成立するんじゃなくて、4人で成立しているところに自分が乗っかってる。完全復活したい気持ちはありますけど、そこは焦らずに。メンバーもそう言ってくれてますし。

──その日を心待ちにしている方も多いと思います。今年に入ってからのMERRYは、テツさんのライブ復帰も含めてとても精力的で、バンド内の風通しもいい感じがするんですよね。

ガラ 活動スタイルは今までと変わらないんですよ。アルバム作って、ツアーをやってといった流れは。MERRYのライブをどうやったらいろんな人に観てもらえるかなって考えたり。それは昔と全然変わってない。ただテツさんがケガしてからは「今、やるべきことをやらなきゃ」っていう思いがより強くなりましたね。ライブでは単純に5人で作ってたことを、基本は4人でやらなきゃいけないんで、それぞれ思うことはあると思いますけど。

健一(G) 削ぎ落とされている状態というか。そういうのがライブや曲に出てる気がしますね。

アー写に込めた“カッコつけないMERRY”

──今回のシングルですが、音源より先に楽曲のタイトルとあわせてアーティスト写真が解禁されまして。ガラさんが笑顔だったり、皆さんのソロのアーティスト写真がコミカルだったりして、、これまでのMERRYにはなかったビジュアルでびっくりしました。

「Happy life」リリース発表時のアーティスト写真。

ガラ 今のMERRYだからできること、MERRYにしかできないことがやりたくて。もちろんこのアー写に関しては賛否両論があったんですけど、MERRYを知ってる人も、今まで知らなかった人も引っ掻き回せたかなって。自分たちにとっては、ちゃんと理由があるビジュアルなんですよ。「カッコつけないカッコよさ」みたいなのがテーマで。これまでのようなキメキメじゃない、自然なMERRYを出してみようってところから始まって。今回アー写を撮ったときも「Happy life」を歌いながら撮ってますし。

──「Happy life」という曲がきっかけで生まれたアー写ということですか?

ガラ そうですね。

──従来のMERRYのイメージを覆すところがありますよね。

ガラ ええ。MERRYってある種のイメージにとらわれているところがあると思うんです。だから今回は「MERRYはこんな表情もあるんだよ」っていうのを伝えたくて。とにかくみんなに刺激を与えたいし、「MERRYなんなの?」って思わせたかったんですよね。結成してから14年が経って、いろいろやってひと回りして……また新しいMERRYが出せているのかなと。

結生(G) ライブではそれぞれいろんな表情や感情を出してるんで、自分たちとしてはそれをそのままアー写に落とし込んだ感じもあるんです。

──アー写のもとになったという健一さん作曲の「Happy life」ですが、最近のMERRYではちょっと珍しいメジャーコードの1曲ですね。マイナー調の楽曲のイメージが強かったのでアー写同様こちらも新鮮でした。この曲はどんな形で生まれたんでしょうか?

ネロ まずはメンバー全員でイントロを作って、イントロ大会をやったんですよ。勝ち残った3曲のワンコーラス分をそれぞれ作って、ガラの書いた歌詞をあてたんです。その結果、今のメロディが選ばれた。

健一(G)

健一 最終的に歌詞とメロディが合致したものを選んだ感じですね。まあ自分としてはメジャーコードの曲も作ってきたんで、世に出していないだけで決して新しいわけではないんです。

ネロ まあ「NOnsenSe MARkeT」にメジャーコードの曲がほとんどなかったのもあって、今のタイミングでメジャーコードの曲を出したくなったんですよね。

──たまに出てくるものだからこそインパクトがある気がします。レコーディングはどうでしたか?

ガラ 先にライブで披露してからレコーディングをしたんで、かなりスムーズにできましたね。ライブに来てくれている人たちと一緒に拳を上げて歌える曲をイメージしてたんですけど、実際にその景色を思い出しながらレコーディングできました。この曲をMERRYの新しいアンセムにしていきたいんですよ。みんなを巻き込んでいけるような1曲に。

ネロ そうだね。最近だと一番自然にレコーディングできたかもしれない。あまり凝らず、ストレートにライブでやってる感覚が出せた。「Happy life」に関してはシンプルイズベスト。湧き出てきたものをそのままパッケージしてます。

ニューシングル「Happy life」2015年8月5日発売 / FIREWALL DIV.
初回限定盤 [CD+DVD] 2500円 / SFCD-0156~7
通常盤 [CD]1300円 / SFCD-0158
CD収録曲
  1. Happy life
  2. 臆病者の眠り方
  3. 絶望 feat. 増子 直純(怒髪天)(※通常盤のみ収録)
初回限定盤DVD収録内容

<ライブ映像>

Grateful Year 2015「NOnsenSe MARkeT B1」
2015.2.27 下北沢CLUB Que
  1. NOnsenSe MARkeT
  2. 不均衡キネマ
  3. 暗闇にピンク
  4. Zombie Paradise ~地獄の舞踏曲~
  5. stupid×cupid
  6. sweet powder
  7. 千代田線デモクラシー
  8. 「東京」
  9. Carnival
  10. 群青

※メンバーによるオーディオコメンタリー付き

MERRY(メリー)

2001年にガラ(Vo)を中心に結成された5人組バンド。激しさと憂いを内包したサウンドや、ガラが墨汁や卵を吐くといった強烈なパフォーマンスで人気を獲得する。2003年には東京・日本青年館で初のホールライブを行い、清春のレーベル「FULLFACE RECORDS」から1stアルバム「現代ストイック」を発表する。2006年からはドイツやフランスをはじめとする海外でのライブやリリースなど、ワールドワイドな活動を行う。2010年にDIR EN GREYらが所属するFIREWALL DIV.に移籍し、作品のリリースやライブを重ねる。2013年2月よりガラの椎間板ヘルニア悪化に伴い一時活動休止するも8月より活動を再開させ、11月にシングル「ZERO -ゼロ-」を発表した。「ZERO -ゼロ-」発売と同時期にテツ(B)がライブ中に負傷し療養期間に入る一方で、バンドは活動を継続する。2014年12月に約3年5カ月ぶりとなるアルバム「NOnsenSe MARkeT」を、2015年8月にシングル「Happy life」をリリース。