ナタリー PowerPush - 松下唯

アニメオタク“ゆいみん”が明かす アニソン愛とカバーへのこだわり

カバーはなるべく真似にならないように気を付けた

──さて、ここからはアルバム「スクールガール・アンセム~学園アニソン集」について話を聞いていきたいと思います。この収録曲を見たとき、「あ、これは松下さんがガチで選んだな」というのがちゃんと伝わってきましたよ。

松下唯

本当にその通りなんです。候補を何十曲も出して、その中から「これは歌いたい!」っていう曲をベスト10くらいまで選んだんですけど、まさか全部カバーの許諾をもらえるとは思ってなくて。私もビックリしたけど、スタッフさんもすごくビックリしたみたいです(笑)。

──それは本当にその楽曲やアニメ作品が好きなのが伝わったんじゃないですかね。大人の事情が一切感じられませんし。

あはは(笑)。そうだとうれしいな。

──それこそアニメにハマる原点である「ふしぎ遊戯」や「カードキャプターさくら」の曲も入っていれば、最近のアニソンもあって、本当に幅広いセレクトですよね。しかもアルバム冒頭と最後がオリジナル曲でカバー曲を挟み込む構成ですが、全体を通して聴いたときにオリジナル、カバーという区別がほとんど感じられませんでした。

実は曲順についてはスタッフさんとけっこう相談させていただいたんですよ。

──それに「Baby Sweet Berry Love」や「太陽曰く燃えよカオス」みたいにクセの強い曲も多いし、聴く前はどうなるのかと思ってたんですが、曲によって歌い方や声色を変えるなどしつつもちゃんと「松下唯のアルバム」として成立していますね。

ありがとうございます! 「Baby Sweet Berry Love」はカラオケでずっと歌ってた曲なので、今回どう歌おうかなってかなり悩んで。カラオケだとオリジナルの真似をして歌うことが多いし、それが私の中で普通のことになってたので、レコーディングでも「唯ちゃんらしく歌って。真似っこにならないで」と言われてたんです。

──原曲での小倉唯さんの歌声や歌い方の印象が強いですもんね。

そうですね。しかも私は小倉唯さんの歌い方がとても好きなので、なるべく真似にならないように気を付けました。でも最初は自分が歌った「Baby Sweet Berry Love」を聴いたとき、若干違和感を覚えて。でも何度も聴くうちに「これはこれでいいのかな」とだんだん自分の中で馴染んできました。

オリジナルが好きだからこその違和感もあった

──特にアニメのキャラクターソングみたいに、声優さんの色やキャラクターの個性が強く出た曲を歌う場合は、そこに引っ張られてしまうことも多いんじゃないですか?

本当にその通りで。「(這いよれ!)ニャル子さん」の「太陽曰く燃えよカオス」なんてまさにそれでした。しかもあの曲、そもそも1人で歌う曲じゃないですしね(笑)。「太陽曰く燃えよカオス」は個性の強い曲だからこそ、体当たりで挑みました。原曲の真似になってしまってる部分もあるとは思うけど、楽しく歌ったほうがいいと思って、あえてそのままにしました。

──ほかにレコーディングで苦労した曲はありましたか?

松下唯

歌い慣れてる、慣れてないでけっこう差が出たかもしれませんね。そんな中でも「プラチナ」と「オレンジ」は何度も歌ってるけど、あの音数が少なくてフワッとした雰囲気をうまく表現するのがすごく難しくて。坂本真綾さん(「プラチナ」の原曲歌唱)は本当にきれいな歌声だから、自分が歌ったときに「あっ、こうじゃない!」って感じる部分もありましたし、思ったようにいかなくてレコーディングで何度も録り直したりもしました。「オレンジ」も最後の「好きだよ」のところが満足いかなくて何度も録り直して。初めて聴いた人には伝わらないかもしれないけど、オリジナルを何度も聴き込んできたからこそのこだわりがあって、そこは妥協したくなかったんです。

──歌い手としてだけでなく、ファン目線としてのこだわりもある?

ありますね。オリジナルが好きだからこそ、さっきの「Baby Sweet Berry Love」じゃないけど、自分が歌った「プラチナ」や「オレンジ」に違和感もあったし。実はアルバムの予約イベントの会場でこのアルバムがずっと流れてるんですけど、聴いてくれたファンの方から「まさかこういうふうに『プラチナ』をカバーするとは思わなかった。変化球だね。でも、ゆいみんのバージョンもすごくいいよ」と言ってもらえて、初めて「あっ、これでよかったんだ!」と思えたんです。どの曲も大好きだからこそ、自分が歌わせていただくことでどんなふうに聴こえるんだろう、どう評価されるんだろうとすごく不安だったから、ちょっとだけホッとしました。

──特にアニソンの場合、その原曲を好きな人からの評価だけじゃなくて、アニメ自体が好きな人からの評価もあるでしょうし。普通のカバーとはまた違った感じなんでしょうね。

そうですね。中にはアレンジが変わってる曲もあるので、そこでの好き嫌いも当然あると思います。でもそこは「松下唯なりのカバー」ということで楽しんでいただけたらうれしいです。

ニューアルバム「スクールガール・アンセム~学園アニソン集」 / 2013年10月9日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
初回限定盤A [CD+DVD] / 3500円 / TKCA-73997
初回限定盤B [CD+DVD] / 3500円 / TKCA-73998
通常盤 [CD] / 3000円 / TKCA-73999
CD収録曲
  1. SCHOOL WARS
  2. JOINT(「灼眼のシャナII」前期エンディングテーマ)
  3. ハッピー☆マテリアル(「魔法先生ネギま!」オープニングテーマ)
  4. Baby Sweet Berry Love(「変態王子と笑わない猫。」エンディングテーマ)
  5. プラチナ(「カードキャプターさくら」オープニングテーマ)
  6. ときめきの導火線(「ふしぎ遊戯」エンディングテーマ)
  7. ピアニィ・ピンク(「CLAMP学園探偵団」オープニングテーマ)
  8. 太陽曰く燃えよカオス(「這いよれ! ニャル子さん」オープニングテーマ)
  9. オレンジ(「とらドラ!」エンディングテーマ)
  10. 夢のマニュアル(「家庭教師ヒットマンREBORN!」エンディングテーマ)
  11. Shooting Star
<初回限定盤A>
  1. zero
<初回限定盤B>
  1. dear
<通常盤>
  1. とぅるまは
初回限定盤A DVD収録内容
  1. SCHOOL WARS(MUSIC VIDEO)
  2. MUSIC VIDEO撮影オフショットムービー
初回限定盤B DVD収録内容
  1. Shooting Star(MUSIC VIDEO)
  2. 「スクールガール・アンセム~学園アニソン集」ジャケット撮影オフショットムービー
松下唯(まつしたゆい)

松下唯

1988年7月25日生まれ、福岡県出身の女性シンガー。2008年7月に名古屋のアイドルグループのオーディションに合格し、芸能活動を開始する。順調に活動を続けていたが、2010年2月に両足首の病気である「離脱性骨軟骨炎(距骨)」により、手術やリハビリの ために1年近い活動休止期間に突入した。2011年1月からは徐々に活動を再開させるも、同年9月末をもってグループを卒業。その後東京や名古屋を拠点に、ライブ活動やFMラジオでのパーソナリティ担当など地道な活動を続けていく。そして2013年5月、徳間ジャパンコミュニケーションズからシングル「Shooting Star」でソロデビュー。同年10月にはアニソンカバーを中心とした1stアルバム「スクールガール・アンセム~学園アニソン集」をリリースした。