音楽ナタリー Power Push - 牧野由依

「So Happy!!」な10年と次に続く道

こだわりのピアノ連弾シーンと10年目の「アムリタ」

──そういえば牧野さんのライブ映像作品ってこれが初ですよね。コメンタリー音声も入っていますけど、ご自身でライブ映像を観て改めてどのような感想を持ちましたか?

正直なことを言うと……自分のライブだからどのぐらいの長さかわかっているわけですよね。これに対してコメンタリーを付けていくという絶望感が大きくて(笑)。

──これから2時間以上しゃべるのかっていう。

付けたら面白いって確かに言いましたよ自分で。でもこれ全部か……というのが正直な気持ちで(笑)。

──自分のライブを客観的に観るのはどんな気分ですか?

これまでもパフォーマンス向上のために資料用として撮影していたし、もっと言うと私は小さいときから「自分の演奏している姿を観なさい」と言われていたので、研究のために撮ってもらうことは子供の頃からしていたんです。だから「やだちょっと恥ずかしい」みたいなことは特にないですね。

──DVDではいろんな場面が楽しめますが、牧野さん自身がおすすめするポイントはどこですか?

DVD「Yui Makino 10th Anniversary Live~So Happy!!~」より、クラシックコーナーの連弾シーン。

やっぱり連弾ですかね。手元専用のカメラを用意してもらったのもあるけど、連弾ってあまり観る機会がないと思いますし、手元を観られるというのはそんなにないと思うので。鍵盤の映像をスクリーンに映す演出は前にもやったことがあったんですけど、そのときはレンガに投影したからあまりよく見えなかったんですよ。でも今回はなんとLEDのディスプレイを使って。DVDではもっとはっきりと観てもらえるので、ずっとこだわりを持ってやっていたことがいい形で作品にできたのはよかったです。あとはライブならではのアレンジの違いとか。

──ああ、そうですね。これまでライブがパッケージされることがなかったから、ライブアレンジを細部まで楽しめるのはファンにとってうれしいポイントかもしれません。

テンポ感が変わるだけでもずいぶん印象が違うと思うので。あと、やっぱり最後の「アムリタ」かなあ。

──10周年を締めくくる最後の1曲は、2005年8月にシングルリリースされたデビュー曲「アムリタ」でした。

10周年を意識したときから、絶対に10周年記念ライブの最後の曲は「アムリタ」にしようと決めてたんです。しかも弾き語りで歌いたいというイメージをずっと持っていて。いつもだったら全楽器で一緒に盛り上がって終わるんですけど、アウトロを2回にして余韻を長めに持たせたところで、最後はピアノだけにしてもらって「10年間の物語はこれでおしまい」という形にしたかったんです。

30歳、30曲

──DVD発売後、3月に開催される単独公演「Yui Makino 30 Selection」ではカバー曲のリクエストを行うという新しい試みがあるようですが。

そうなんですよ。ずっとやってみたいとは思ってたんですけど、ちょうどDVDが発売されるタイミングだし、1月に30歳になった記念も含めて3月ぐらいにライブをやりましょうという話が上がって。イベント性を持たせつつしっかりとした公演をやろうと考えたとき、ずっとアイデアとして温めていたカバーをここでやるのはどうかなと言ったらすんなり決まりました。ただ、そこからなんですけど……。まずタイトルを決めましょうということになって、30歳にちなんだ「30 Selection」というタイトルが浮かんだものの、その「30 Selection」をどう具体化するかと話し始めたあたりですごくドキドキしてたんですけど(笑)、事務所の方から「やっぱ30曲でしょ」って……。うわあ言っちゃった! やっぱりそうですよね!みたいな(笑)。

──まあそうなりますよね。

牧野由依

曲の長さのトータル30分とかそっちのほうに持っていこうかとも思ったんですけど(笑)。結局30曲やることになりましたね。テンポ感を大事にしたいのでメドレーを入れたりもしますけど、ほぼほぼ歌えるかなと。

──30曲歌うという大枠の中に、以前から考えていたカバー企画を加えて。

それをやるなら参加型というか、お客さんにも一緒にセットリストを作ってもらうのがいいかなと思ってリクエスト制にしました。自分がリクエストした曲が歌われるのかどうか、私がお客さんだったら聴きに行きたくなるだろうなと思うし、楽しんでもらえるんじゃないかなって。カラオケじゃなくもちろんバンドメンバーで演奏するので、アレンジも独自のものになると思います。

──「楽曲のジャンルは問いません」というリクエストで、どのあたりの曲に票が集まるんでしょうね。

おそらくですけど……プロデューサーさんつながりで、菅野よう子さんや矢野さんが手がけている曲とか。楽曲を提供してくださっている北川勝利(ROUND TABLE)さん、かの香織さん……。あとはやっぱりアニメつながりで、私が関わらせていただいたアニメのオープニングやエンディングで、私の曲じゃないもの。ほかには同じ事務所絡みとか、三重県つながりとか……。最終的な集計データがどうなるのか、それだけでも興味深いですね。

心から「ようこそ」と言えるように

──10周年を経ての30歳という節目のタイミングで、何か大きな目標はありますか?

10周年のライブは自分にとってスペシャルな1日だったので、それを楽しむためにいろんなイメージをして、シュミレーションをして……と綿密な準備をしたんですけど、もっと自然な姿でステージに立てるようになりたいです。私はどうもよそ行き感があると思うんですね。おしゃれをして、お出かけをして、ステージに来ましたみたいな。先輩たちの中には、あたかもそこで生活しているんじゃないかというほどステージになじんでいる方もいて。もちろん、そこに行き着くためにはたくさんの経験を踏まなきゃいけないと思うんですけど、自然体でステージに立てたときに初めて心から「ようこそ」と言えると思うんですよね。

牧野由依

──なるほど。ではお仕事とは関係なく、個人の目標は?

車を買いたいです(笑)。実は最近、急に免許を取ろうと思い立って教習所に通い始めたんです。ただ、半年ぐらい前から通ってるんですけどいまだに第一段階で(笑)。第一段階から脱するためには、何か楽しい想像をしないと気持ちが上がらないので、先に車を買ったところを想像しています。いつになることやらですが(笑)。

──免許取得は大きい変化になりそうですね。行動範囲や生活スタイルなども変わってくるでしょうし。

おそらく。ただ、車にかかる諸々の維持費が……とか現実的なことが頭をよぎっちゃう(笑)。でも、車を乗り回せる女子になりたいんです。あとは「明日休みになったんだけど、ちょっと韓国行かない?」って友達を誘って旅行に行くような、そういうフットワークの軽い、コミュニケーション能力がちゃんとある人になりたいです(笑)。

ライブDVD「Yui Makino 10th Anniversary Live~So Happy!!~」
2016年2月17日発売 / [DVD2枚組] / 5500円 / IMPERIAL RECORDS / TEBI-55376
DISC 1 収録内容
Yui Makino 10th Anniversary Live~So Happy!!~
  1. 夏休みの宿題
  2. 88秒フライト
  3. もどかしい世界の上で
  4. 碧の香り
  5. 春待ち風
  6. たったひとつ
  7. ウンディーネ

<クラシック・コーナー>

  1. 剣の舞(バレエ「ガイーヌ」より)
  2. 序奏と獅子王の行進曲(「動物の謝肉祭」より)
  3. 水族館(「動物の謝肉祭」より)
  4. 化石(「動物の謝肉祭」より)
  5. 終曲(「動物の謝肉祭」より)
  1. きみの選ぶみち
  2. ワールドツアー
  3. 囁きは"Crescendo"
  4. お願いジュンブライト
  5. ふわふわ♪
  6. Cluster

<クラシック・コーナー>

  1. わたしのオモチャ箱(ストレートプレイ・ミュージカル「うたかふぇ」より)
  2. 星に願うなら
  3. 今日も1日大好きでした。
  4. オムナマグニ
  5. アムリタ

収録:2015年8月22日赤坂BLITZ

副音声には牧野由依自身によるオーディオコメンタリー収録

DISC 2 収録内容
メイキング・オブ・Live~So Happy!!~
  • リハーサル映像やステージ裏の貴重な映像を収録(約23分)
最新アルバム「タビノオト」 / 2015年10月7日発売 / IMPERIAL RECORDS
初回限定盤 [CD+DVD] / 3564円 / TECI-1466
通常盤 [CD] / 3024円 / TECI-1467
ライブ情報
Yui Makino 30 Selection
2016年3月27日(日)東京都 恵比寿ザ・ガーデンホール
OPEN 16:00 / START 17:00
料金:全席指定 6480円(ドリンク代別)
一般発売:2016年2月20日(土)
ライブDVD「Yui Makino 10th Anniversary Live~So Happy!!~」リリースイベント
2016年3月13日(日)大阪府 アニメイト大阪日本橋
2016年3月18日(金)東京都 アニメイト池袋本店
2016年3月20日(日)愛知県 第3太閤ビル
牧野由依(マキノユイ)
牧野由依

7歳で岩井俊二(映画監督)に才能を見出され、同監督の大ヒット作品「Love Letter」「リリイ・シュシュのすべて」「花とアリス」3作品に、8歳から17歳にかけてピアニストとして参加。2005年にシンガーデビューを果たし、同年には声優としての活動もスタートさせた。デビュー10周年を迎えた2005年8月にはアニバーサリーライブ「Yui Makino 10th Anniversary Live~So Happy!!~」を実施。同年10月には通算4枚目となるオリジナルアルバム「タビノオト」を発表した。2016年2月には10周年ライブの模様を収めたライブDVD「Yui Makino 10th Anniversary Live~So Happy!!~」をリリース。3月には東京・恵比寿ザ・ガーデンホールで単独公演「Yui Makino 30 Selection」を行う。