ベスト盤のような1stアルバム
──「Re:Habilis」は、現時点におけるMade in Me.の集大成と呼ぶべき作品だと思います。皆さんの手応えはどうですか?
U sucg :): エグいアルバムになりましたね。これまで僕らはずっとシングルとして曲を単発で出してきたんですけど、アルバムならばもっと好きなことがやれると思っていて。最初はミニアルバムを作る予定だったんですが、思いのほかたくさん曲ができちゃって、10曲入りのフルアルバムになっちゃった。1曲1曲、作り方が全然違うから「こんなやり方があるんだ!」という驚きがあって、勉強になりました(笑)。
じゅんちゃい 潔いコメントだな(笑)。
彦 アルバムのために作った新曲は「残夏ファイヤー」だけなので、1stアルバムなんですけどバンドにとってもベストアルバム的な感覚がありますね。じゅんちゃいが曲順を組んだんですけど、そのおかげでさらにすごいアルバムになった。
じゅんちゃい 週1でスタジオに入って、1曲ずつ作ってたんですけど、コドモメンタルの社長に「遅いよ」って言われて(笑)。あれ、けっこうハイペースなつもりだったんだけど……って。
DAIKI 「遅い」と言われて火が点いた感覚はありました(笑)。バンドで10曲作るのって相当時間と手間がかかるんですが、「このあり得ないスケジュールでやり遂げてやる」という妙な使命感もあって。遠征帰りのメンバーに「悪いんだけど、あと2曲弾いて」とお願いして、すぐミックスしたり。
──「バンドのメンバーにエンジニアがいる」という特徴が功を奏したというか。アルバムの音像もすごく個性的だし、専門職のエンジニアではこういうサウンドにならないと思います。
じゅんちゃい そうだと思います。僕はエンジニアの人とケンカばっかりしてきたので(笑)。作曲のことをちゃんとわかってくれるミックスエンジニアはすごくありがたいです。
彦 専門職のエンジニアの方も素晴らしいんですけど、じゅんちゃいが言う通り、DAIKIにはめちゃくちゃ助けられてます。
──ゆかりさんはどうでしょう? 今回のアルバムは、ゆかりさんがボーカリストとしての存在感を示した作品だとも思いますが。
ゆかり ありがとうございます。リード曲の「東京回廊」でもメインで歌わせてもらって。
彦 「東京回廊」は最初自分が歌おうと思ってた曲なんですよ。もともとこの曲は2020年のオリンピックをイメージして作っていた曲で、拝金主義とか、資本主義みたいなものに対する思いとか、今の東京の空の狭さ、道行く人が何を考えているかわからない感じとか、そういう憂いを絡めたかった。そう考えたとき、女性の声が中心にあったほうがいいなと。サビでいきなりディストーションギターがなくなるアレンジも好きですね。EDMのドロップみたいな感じというか。
じゅんちゃい あのアレンジもスタジオで決めたんだよね。
──意外性に富んだアレンジや構成の曲が多いですよね。
U sucg :): 僕が驚いたのは「残夏ファイヤー」のアレンジ。曲の最初と最後で全然違う曲のように響く曲なので。
じゅんちゃい 「残夏ファイヤー」はデモの段階からヤバい曲だったんだよね。彦が「いい曲かどうかわからないから、判断してほしい」っていきなりデモを送ってきて、聴いた瞬間に「ヤバい曲だ!」と思って。語彙力がなくなる曲ですね(笑)。
彦 夏を詰め込んだ曲にしたいと思ってたんだよね。前にも夏の曲を書いたことがあるんだけど、社長に「季節感がある曲より、いつでも聴ける曲を作って」と言われて。でも、僕は夏生まれで、夏が大好きだし、やっぱりやりたい!と。だいぶ変わった構成なんですけど、じゅんちゃいなら理解してくれるかなって。
──なるほど。DAIKIさんの思い入れのある曲は?
DAIKI 再録の曲なんですけど、「KARA乾風KAZE」ですね。以前のリリースでは自分の力が足りなくて、思ったような感じで録れなくて。今回のレコーディングで自分のドラムを含めて、やっといい形になったので感慨深いです。
彦 楽曲が体にインストールされた感じがあるよね。
DAIKI うん。自分自身の思い出も回収できたというか。いろんな世界にワープできる感覚もあるし、楽しんでもらえたらうれしいですね。
ゆかり 1曲目の「20th Century Boyz」も好きですね。バンドの先輩にも「あの曲、続きはないの?」って言われて。
──インタールード的な短い曲ですからね。この曲はどうして“20th Century”‘なんですか?
彦 僕が勝手に思っているだけなんですけど、なんとなく自分は“平成を背負ってる”という感覚があるんですよね。「令和、飛ばしすぎてるよね」と思うし、ノスタルジックに「平成、よかったよね。忘れてない?」と言いたい気持ちもあって。T.Rexの「20th Century Boy」や浦沢直樹さんの「20世紀少年」も好きな作品だし。
──確かにこのアルバムには、20世紀や平成の音楽がしっかり反映されているし、ポップミュージックの歴史がつながっている感覚があると思います。
彦 そう言ってもらえるとすごくうれしいですね。
フジロックとMステと人類の救済
──最後にバンドとしての将来的なビジョンを教えてもらえますか?
彦 さっきもその話をしてたんですけど、「FUJI ROCK FESTIVAL」に出たいと言っていたメンバーが2人いました。
U sucg :): 「Mステ」にも出たいです。
じゅんちゃい 「フジロック」と「Mステ」をどっちもって、なかなかだよ(笑)。以前、「出れんの?サマソニ」のオーディションに参加したとき、審査員の方に「最終的にどうなりたい?」と質問されたんですよ。彦が真顔で「人類の救済ですね」と答えたら、審査員が無言でうなずいて(笑)。
彦 だって、最終的には人類の救済でしょ?
DAIKI 面白い(笑)。今回もそれにしよう。
プロフィール
Made in Me.(メイドインミー)
2015年に結成。2017年5が圧に1stシングル「johari」をリリースし、2018年11月に初のワンマンライブを開催した。2020年2月に兼ねてから音源の制作に携わっていたDAIKI(Dr)が加入し、現在の5人体制となる。2021年6月にコドモメンタルINC.への所属を発表した。同年9月には東京・下北沢の6会場を舞台にしたサーキットイベント「Re:Habilis FESTIVAL」を主催。また11月には1stアルバム「Re:Habilis」をリリースした。