シェリル・ノーム&ランカ・リー、「マクロスF」歌姫たちの奇跡の軌跡 (2/2)

May'nと中島愛、それぞれの「マクロスF」楽曲への思い入れ

──ベストアルバム「マクロスF オールタイムベストアルバム『娘々グレイテスト☆ヒッツ!』」は3枚組のCDのそれぞれに、シェリルとランカ各々の楽曲と、2人のデュエット曲が計44曲収録されています。選曲や曲順に関して、お二人はどのように感じましたか?

May'n ベストアルバムなので「射手座☆午後九時Don't be late」や「ダイアモンド クレバス」「ノーザンクロス」が入っているのはもちろん、「リーベ~幻の光」や「永遠」のようにアニメでは使われていない楽曲もまとめていただけたことがすごくうれしいです。もしかしたらこのベスト盤で初めて「マクロスF」の曲を聴いてくれる方も多いかもしれないですし、最近は「テレビアニメの放送当時は小学生でした」と言っていただくことも多い中で、こうして改めて楽曲を届けられることがありがたいです。

中島 ランカ個人の楽曲も「星間飛行」をはじめ網羅されていますし、私としては「マクロスF」関連で最初にレコーディングした「愛・おぼえていますか」も収録されているのがうれしいです。「私の彼はパイロット」もそうですが、初代「マクロス」の歌姫であるリン・ミンメイ役の飯島真理さんの楽曲のカバーは、ランカの始まりとしてすごく大事なことなので。楽曲の並び的にも「ホシキラ」「愛・おぼえていますか」で締めるのが熱いなと思いました。

左からMay'n、中島愛。

左からMay'n、中島愛。

──どの楽曲も大切だと思いますが、今のタイミングで思い入れの深い楽曲を教えてください。

May'n 「リーベ~幻の光」は劇中で描かれているわけではないのですが、私がシェリルの今まで描かれたことのない心情、泣いているような歌詞ではないけど実は心の中で泣き叫んでいるような、心を爆発させたがっているシェリルの歌を歌ってみたい、というお話しをして生まれた楽曲で。シェリルと長く付き合ってきたからこそたどり着けた楽曲なので、個人的にもすごくお気に入りです。

──なるほど。

May'n それとやっぱり代表曲の「ダイアモンド クレバス」は、一生歌い続けていきたい大切な楽曲ですね。海外でみんなが日本語で大合唱してくれる景色を初めて見せてくれたのもこの楽曲ですし、私が10周年のタイミングで喉の調子が悪かったとき、「射手座☆午後九時Don't be late」や「ノーザンクロス」は歌えていたのですが、「ダイアモンド クレバス」だけはどうしてもうまく歌えなくなってしまって。歌い出しのミックスボイスがだんだんイチかバチかみたいなマインドになってきたので、これはダメだと思って喉の手術をする決心をしたんです。なので「ダイアモンド クレバス」を歌えなくなったときが私のキャリアが終わるときだと思って、今でもずっと練習し続けていますし、ライブのリハーサルでも一度も削ったことはない。「今日も私は『ダイアモンド クレバス』を歌えている」と思ってステージに上がる、私の人生にとっても大事な曲です。

May'n

May'n

中島 私も2曲挙げたいんですけど、まず1曲は「アイモ」。私は自分の歌声にある暗い雰囲気や雑味が子供の頃からコンプレックスだったのですが、「アイモ」はそれを肯定してくれた楽曲という印象があって。レコーディングでもあまり深く考えずにポロッと歌ったものが採用されて、出来上がりとしてはちょっと暗いかなと思ったのですが、菅野さんに「その声がすごくいい」と言ってもらえたのがすごくうれしかった。それまではキラキラ明るいアイドルっぽい歌唱に憧れていて、それがなかなかできずに悩んでいたんですけど、自分の声を受け入れてもらえたことと、その歌をアカペラで残せたことは私にとって大きな財産になっています。

──もう1曲は?

中島 「ホシキラ」です。この楽曲は「劇場版マクロスF~サヨナラノツバサ~」のエンディングテーマなのですが、レコーディングでは物語の結末やどこで使われるかを知らされない状態で歌ったんです。そうしたら菅野さんから「『何度でもまた会おうね』という歌詞なんだから前向きな曲だし、結婚式で流せるくらいポジティブな歌として作ったのに、どうしてそんなに悲しそうに歌うの?」と言われて。私は「また会おうね」ということは一度別れがあるということだから、悲しいものとして捉えたんですよね。それをお伝えしたら「じゃあそのままでいいよ」とおっしゃっていただいて。ハッピーにも捉えられる歌ということに私はびっくりしたんですけど、その後、ライブの大事な場面で歌う機会が何度もあって、泣きながら歌ったこともあれば、すごくハッピーに歌えたこともあるので、その時々で捉え方が変わるいろんな面を持った曲だと思います。

May'n 私も今その話を聞いて、意外とハッピーな曲でもあることに気付いた。でも、そのバランスが劇場版の内容にも合っているよね。

中島 そうなの。私は知らなかったんだけど。その意味では私の捉え方も間違いではなかったのかなと思うと、不思議なレコーディングだったなあっていう記憶がある。

中島愛

中島愛

シェリルとランカが楽曲をチェンジ!「デカルチャー歌合戦」こだわり強い選曲理由とは?

──さらに今回は限定盤特典のドラマ&カバーソングCD「デカルチャー歌合戦」にて、シェリルとランカがお互いの楽曲を歌った新規レコーディング音源も収録されています。歌う楽曲は自分たちで選んだそうですね。

May'n 私が歌った「恋はドッグファイト」と「Songbird」、それと「放課後オーバーフロウ」の3曲はカラオケでもよく歌うほど好きな曲なんです。ただ「放課後オーバーフロウ」は特にシェリルとして軽々しくカバーすることはできないと思っていて。以前に一度だけ、京都で行われた「マクロス」のイベント(2024年1月14日開催の「マクロスFとΔ合わせ 京都南座歌舞伎ノ宴 ~ミニライブ&歌舞伎コラボトーク~」)で「放課後オーバーフロウ」を歌ったことがあるのですが、それはスケジュールの都合で参加できなかった愛ちゃんの代わりにランカの世界観をみんなに感じてもらいたくて、May'nとして歌ったんです。なので今回は「放課後オーバーフロウ」は外しましたし、今後、私が表立って歌うことはないと思います。

中島 私は特に「恋はドッグファイト」のシェリルさんの歌い方が最高だと思った。ランカとは全然違うんだよね。

左からMay'n、中島愛。

左からMay'n、中島愛。

May'n あの曲はオケにいろんな音が入っているけど、愛ちゃんはすごくまっすぐに歌っているのがすごいと思う。これは「Songbird」でも感じたことですけど、シェリルだとこの歌詞をまっすぐには歌えないんですよ。1つの言葉に対して「実はこう思っているのでは?」みたいな感情を3、4個くらい込めて歌ってしまうのが、シェリルでありMay'nなのかなということを、今回のカバーで再確認させられました。「Songbird」もシェリルが歌う意味を見つけられたらと思って、シェリル自身に向けても歌っているようなアプローチで歌いました。

中島 私はシェリルさんの楽曲だと「妖精」がテレビシリーズの放送当時から変わらず推し曲なんですけど、これはシェリルとMay'nちゃんにしか歌えない曲なので、私はカラオケでも歌ったことはないし、家で趣味として練習しているだけです(笑)。それともう1曲、今回カバーした「pink monsoon」も昔から大好きなんですよね。安室(奈美恵)ちゃんに憧れた世代でもあるので、ああいうカッコいいディーヴァ的なスタイルが好きというのもあるし、Dメロの「一人でいたほうがいいと 私に気づかせたなら 許さない」という歌詞がまさにシェリルだと思うし、ちょっと菅野さんっぽいなとも思うんですよね。きっとシェリルは1人でも超エンジョイできるタイプだけど、1人ではいたくない。だから私を1人にしないで、と素直に言えるかわいらしさが最高です。

May'n アルトくんにもときどきそんなことを言ってたもんね。

中島 そうそう。そういう「ユニバーサル・バニー」とかとは違う女の子らしいシェリルが私はめっちゃ好きです。で、今回私がカバーした「pink monsoon」「ギラギラサマー(^ω^)ノ」「天使になっちゃった」の3曲に関しては、ランカはシェリルのファンである、という根底にこだわって歌いました。これは私の想像なのですが、ランカは絶対にシェリルの細かい歌い回しやクセもコピーできるほど楽曲を聴き込んでいるはずなんですよ。なので、私が松田聖子さんの歌を歌うときに完全にコピーして歌いたくなるように、ランカもシェリルの歌を歌うときは絶対にそのままマネして披露したくなるはず(笑)。

中島愛

中島愛

May'n 私、今回の音源を聴いてそれをめっちゃ感じた! 「pink monsoon」はけっこう色気を感じる曲だけど、普段のランカならもっと無垢な感じで歌うのかなと思ったら、ちゃんと色気を意識した歌い回しになっていて。

中島 「pink monsoon」はシェリルのデビュー曲という設定なので、ランカは絶対に一番聴き込んでいるはず。だからR&Bっぽい曲調で自分の歌声には向いていないとしても、一生懸命練習してしまう。今回はそういう感じを狙って歌っていたから、May'nちゃんにも伝わっていてよかった!

──ちなみにシェリルはもう1曲、ランカが歌うCMソングをメドレー化した「CMランカ」を「CMシェリル」としてカバーしています。意外なセレクトですが、これもMay'nさんの選曲ですか?

May'n はい。私がやりたかったので(笑)。

中島 私、この曲を聴いていいなあと思った。だって「おいしいにゃん」のところを遠藤(綾 / シェリル・ノーム役の声優)さんが言ってるんだもん。私がやっても自分で歌って自分でセリフを言うだけだから、そういうスペシャルな感じにはならない(笑)。

May'n 2人でひとつ、みたいな感じだもんね。でも、それを言うと私は逆に愛ちゃんがうらやましいよ。ライブのMCでも私がしゃべると偽物になってしまう気がして、ほぼ愛ちゃんにお任せしていたので。

May'n

May'n

最強の「マクロスF」をライブでお届け「ギャラクシーライブ☆ファイナル」

──ライブと言えば、「マクロスF」の4年ぶりとなる単独ライブ「SANKYO presents マクロスF ギャラクシーライブ☆ファイナル 2025」が、7月26日、27日の2日間にわたってKアリーナ横浜で開催されます。前回の単独ライブ「マクロスF ギャラクシーライブ 2021[リベンジ]~まだまだふたりはこれから!私たちの歌を聴け!!~」は、お二人とも制作の段階からかなり深く関わっていたらしいですが、今回は?

May'n もちろん関わっていますし、打ち合わせも1年くらい前から参加しています。そもそも2019年の「SANKYO presents MACROSS CROSSOVER LIVE 2019 at 幕張メッセ」のときも打ち合わせに呼んでいただいて、ライブの構成やセットリストの意見を出し合って決めたんです。そのときは「マクロスF」としてステージに立つひさびさの機会だったので、大人に決められたものを見せるのではなく、絶対に私たちも話し合ったうえで、思いの強さがちゃんと伝わるものをみんなで作りたいと思って、私から提案させてもらいました。

中島 私は何か言われたら「そうなんですね、わかりました」と受け入れてしまう性格なので、そのときにMay'nちゃんがきっかけを作ってくれて本当によかったです。当時は2人で歌う機会もかなり限られていたので、何か特別なものを届けたかったし、私もいろんな意見を出すことができたので。

May'n 私はとにかく愛ちゃんと一緒に楽しいライブを作りたいと思ったんです。それがすごくしっくりきたみたいで、2021年のライブも一緒にすごく細かいところまで作らせてもらえたし、それが自信になって今は「うちら、めっちゃ最強じゃない?」っていう実感があって(笑)。なので今回も細かいところまでこだわって作り上げている最中です。

左からMay'n、中島愛。

左からMay'n、中島愛。

──現時点で話せることは少ないと思いますが、最後にライブに向けての意気込みをお聞かせいただけますでしょうか。

May'n 例えば過去のライブでも、きっと皆さんそれぞれの最高のライブというのがあって……それこそ最初のZepp Tokyo公演(2008年7月27日開催の「マクロスF超時空スーパーライブ デビュー! ランカ・リー with シェリル・ノーム」)や菅野さんと一緒にステージに立った日本武道館公演(2010年12月22日開催の「カンノヨーコ produce マクロスF 超時空スーパーライブ Merry Christmas without You」)に勝てるライブはないと思っている方も絶対にいると思うのですが、私たちは毎回「これが一番最高だよね!」と自分たちで思えるライブを作っています。2021年のリベンジライブも自信を持って最高のものをお届けできたし、愛ちゃんとの付き合いも17年以上になる中で、今はさらに力強く一緒に歩めているし、私たちがいいと思ったものはいいに決まってる(笑)。それに、17年前と比べて技術も進化して、ステージでできることも確実に増えているので、今までで一番「マクロスF」の世界観をお届けできるライブになると思います!

中島 私たちはキャスト / シンガーとして作品に関わっているだけでなく、単純に「マクロスF」という作品のファンなので、私たちなりの「マクロスF」の解釈や見せたいものが強くあるんですね。で、2人とも性格は正反対だけど、不思議とそこで意見が違えることはなくて、「マクロスF」に対しての愛情や解釈の仕方でぶつかり合ったことはないんです。そんな2人がタッグを組んで、私たちが思う最強の「マクロスF」をお届けするので、絶対に楽しんでもらえる自信があります。「2021年のライブで全部やり切ったじゃん」と思う方もいるかもですけど、もちろんそういう方にもいい意味で意表を突くことも用意していますし、「やっぱりこれだよね!」ということも用意しているので、楽しみにしていてください!

左からMay'n、中島愛。

左からMay'n、中島愛。

公演情報

SANKYO presents マクロスF ギャラクシーライブ☆ファイナル 2025

  • 2025年7月26日(土)神奈川県 Kアリーナ横浜
    OPEN 16:30 / START 18:00
  • 2025年7月27日(日)神奈川県 Kアリーナ横浜
    OPEN 18:30 / START 19:00

<出演者>
シェリル・ノーム starring May'n / ランカ・リー=中島 愛 / 西脇辰弥(Key / Band Master) / 佐野康夫(Dr) / BOH(B) / 外園一馬(G) / 門脇大輔(Violin)

プロフィール

May'n(メイン)

ポップスからロック、ダンスミュージック、R&Bと幅広く歌いこなす女性歌手。これまでアニメ、ドラマ、映画、ゲームの主題歌を担当し、数多くの作品がトップチャートにランクインしている。東京・日本武道館や神奈川・横浜アリーナで単独公演を開催したほか、海外でも積極的に活動しており、海外ツアーや世界16都市での単独公演を実施。さらに中国のSNS・Weibo発のアワード「WEIBO Account Festival in Japan」で日本人初の3年連続受賞を達成し、中国・深圳で開催されたアワード「ASIAN MUSIC FESTIVAL 2019」では日本人で唯一受賞を果たすなど、特に中華圏では絶大な人気を誇る。2003年にデビューののち、2008年元日にMay'nに改名。同年4月放送のテレビアニメ「マクロスF」劇中に登場する歌手シェリル・ノームの歌パートを担当し脚光を浴びた。

中島愛(ナカジマメグミ)

アニメ「マクロスF」のヒロインのランカ・リー役に抜擢され、2008年6月に「ランカ・リー=中島愛」名義によるシングル「星間飛行」で歌手デビュー。2009年1月に個人名義で初のシングル「天使になりたい」を発表した。2014年3月より音楽活動を休止していたが、2016年12月に活動再開し、2017年2月には復帰第1弾となるシングル「ワタシノセカイ」、10月には復帰第2弾シングル「サタデー・ナイト・クエスチョン」を発表した。2023年6月にデビュー15周年を迎え、7月にニューシングル「equal」を配信リリース。「天使になりたい」発売からちょうど16年目を迎えた2025年1月28日には、同曲を手がけた春行と重永亮介のタッグによる新曲「天使の憂鬱」をリリースした。