MA55IVE THE RAMPAGEインタビュー|5人のクリエイティビティが詰まった2ndアルバム

MA55IVE THE RAMPAGEが2ndアルバム「EMPIRE CODE」をリリースした。本作はAK-69がプロデュースした表題曲に加え、L(LIKIYA)と実兄・ELLY(三代目 J SOUL BROTHERS)がコラボした「NASTY」をはじめとする、メンバーそれぞれをフィーチャーした楽曲、Chaki Zuluがm-flo loves Crystal Kay「REEEWIND!」をサンプリングした「REEEMINDER! feat. Crystal Kay」など、メンバーのクリエイティビティが爆発した作品に仕上がっている。音楽ナタリーでは各楽曲に込められたこだわりを深掘り。全国9都市10公演行われる全国ツアー「MA55IVE THE RAMPAGE 2nd LIVE TOUR 2025 "M5V" ~EMPIRE CODE~」に向けた展望も語ってもらった。

取材・文 / 宮崎敬太撮影 / 曽我美芽

「MA55IVE UNION」とは?

──まず皆さんが展開されている「MA55IVE UNION」とはどのようなプロジェクトなのか、教えていただけますか?

YAMASHO(山本彰吾) 「MA55IVE UNION」は「MA55IVE THE RAMPAGEの国を築き上げるための最初の合言葉」みたいなイメージのプロジェクトです。僕らは昨年、Chaki ZuluさんやDJ DARUMAさんをプロデューサーに迎えて「M5V」というアルバムを制作しました。これを単発で終わらせてしまうのはもったいないと感じて、もっとたくさんの方からアイデアをいただき、いろんなアプローチを試していったら、自分たちだけのスタイルを作れるんじゃないかと思ったんです。そういったコンセプトのもと、今年の1月から冠番組「MA55IVE BASE」で、AK-69さんやCrystal Kayさんとセッションやトークをさせていただいて、今回のアルバムにつながっていきました。

L(LIKIYA) AK-69さんには楽曲だけではなく、アルバム名までしっかりとプロデュースしていただけてうれしかったですね。

L

L

──楽曲「EMPIRE CODE」でAKさんからどのようなディレクションがあったんですか?

YAMASHO レコーデイングが別々だったから、みんながどういうふうにレコーディングしたのかお互い詳しくは知らないんですよ。実際どうだった?

浦川翔平 いやー、僕は苦戦しましたね。AKさんは(トラックのビートに対して)ちょっとレイドバックした乗せ方でラップをするんですが、僕はこれまでオンビート(ぴったりのタイミング)で乗せるラップしかやってこなかったので、しっかりディレクションしていただきました。

神谷健太 僕はけっこうすんなり録れたと思います。AKさん節が詰まっている歌詞には、僕らからは出てこない言葉がいっぱいあって、新鮮さを感じながらも曲に集中してレコーディングできました。あとAKさんは歌にもすごくこだわりを持っている方だから、語尾の歌い方とか「言葉の中に小さい“つ”を入れる」とか、そういうディレクションをしていただいて、すごく勉強になりました。

浦川 僕、最初はAKさんがどんな方なのかわからなくて、かなり真面目な感じで取り組んでいたんです。でも終わったあとにメンバーと「真面目にやってた」と話したら「いつもそんな感じじゃないじゃん」とツッコんでくれて、次のタイミングからは自分からふざけたりして、打ち解けることができました。僕が構えすぎていたなと。すごく気さくな方でした。

鈴木昂秀 みんなAKさんをリスペクトしているから、最初は緊張してたよね。でも実際に一緒に制作すると、より人間性の部分が見えてきて、「めっちゃいい人だ!」と思う瞬間がたくさんありました。すごく優しいお父さんというか……。

L うんうん。僕は楽曲ごとにニュアンスを変えていきたいタイプなので、AKさんに寄せつつも、自分らしさも出せたのがすごくよかったと思っています。

YAMASHO 僕はテンポの速いラップが得意なので、AKさんの歌うラップのスタイルにうまくハマったと思います。すごく楽しくレコーディングできました。

鈴木 あと、この曲はガヤの入れ方も工夫しましたね。僕ら自身でもたくさん話し合ったし、AKさんからもアドバイスをいただいて、それぞれのキャラクターが垣間見えるガヤが各所に散らばっています。

自分たちの強みが出せるトラックを

──「Break It Out」ではタイのラッパー・SPRITEさんとコラボされています。

L THE RAMPAGEとしてはけっこう前からタイでライブをしているんですが、MA55IVEとしても海外にアプローチしたいとずっと思っていて。SPRITEくんは日本のアーティストの楽曲にも参加しているので、僕らも何か一緒にできないかなと思ってお声がけさせていただきました。今回のアルバムの中では一番ヒップホップ寄りのパンチのあるサウンドになったと思います。タイのヒップホップと言えばもう少し“悪い”感じが前面に出ると思うんですが、この曲ではLDHらしい雰囲気も取り入れてもらいました。

──なるほど。今回のアルバムでは、どのようにトラックを選んでいったんですか?

YAMASHO 曲によって違って、一緒に作っていく場合もあったり、自分で作ったりしたり。それぞれの得意なところを出せるように自分たちでディレクションしました。

YAMASHO

YAMASHO

──LDHの先輩・DOBERMAN INFINITYとコラボした「分かんだろ?」もめちゃくちゃカッコよかったです。

YAMASHO この曲は「MA55IVE BASE presents UNLIMITED 01」という僕らのイベントにDOBERMAN INFINITYさんに出演していただいたときに、メンバーのP-CHOさんに「一緒に曲作りませんか?」とお声がけしてできあがった曲です。トラックはNAOtheLAIZAさんに制作していただいて、自分がやりたいと思っていたことが実現した曲です。

──DOBERMAN INFINITYのメンバーの1人、SWAYさんとの「BEAT JUNKTION」はどういったきっかけで作られたんですか?

YAMASHO SWAYさんがMCを務めている「Tune」という音楽番組に僕と健太がゲスト出演させてもらったことがきっかけです。番組から派生した「X'SWAY Fes 2025」で「1曲やりましょう」とSWAYさんと盛り上がって、「完成したらMA55IVEのアルバムに入れてもいいですか?」みたいなやりとりがあり、今回収録されることになりました。

──先輩との関係性の濃さを感じるエピソードです。同じく事務所の先輩であるPKCZ®との「Changer」はメロディックなドラムンベースで、かなり今っぽい楽曲ですね。

鈴木 6月にPKCZ®プロデュースで(白濱)亜嵐さんが作曲した「Times」という楽曲をリリースしたんですけど、それとは別にもう1曲PKCZ®節の曲をやりたくて、「Changer」を作っていただきました。この曲のレコーディングは……かなり苦戦しましたね。自分の得意とするキーよりも高くて、何回も録り直しました。その結果、自分でも「ここまで出るんだ」ってところまで声が出せたんですよ。大変だったけど、学びのあった楽曲です。アルバムの中でも特に今っぽいと思うし、素敵な楽曲に仕上がりました。

SKRYUさんは普段もステージのままの人

──SKRYUさんが参加した「Universe」も「MA55IVE BASE」きっかけで生まれた曲ですか?

鈴木 そうです。YAMASHOさんがSKRYUさんと知り合いだった縁で番組に出演してくださって、「UNLIMITED 01」にも参加していただきました。イベントではSKRYUさんの「How Many Boogie」に僕が客演させてもらって、その流れから自然と「曲を作りましょう」という流れにはなったんですけど……なかなかスケジュールが噛み合わなくて、本当にできるのか心配だったんですが無事に完成しました。

──でも実現してなによりです!

鈴木 本当に。SKRYUさんはツアーが控えていて、かつアルバムも制作されていたので、ちょっと申し訳ない気持ちもあったんですけど、僕がどうしてもSKRYUさんとやらせていただきたかったので、わがままを聞いてもらって。忙しい中でも楽曲を完璧に仕上げてきてくださってもう感謝しかないです。

鈴木昂秀

鈴木昂秀

──一緒に制作した感想を教えてください。

鈴木 レコーディングが終わったあとに「飲みに行きませんか」と誘ったら快諾していただけて一緒に飲んだんです。そこでSKRYUさんって本当に最高な方だなと改めて思ったんですよね。もうステージに立っている、あのまんま。レコーディング中もずっと褒めてくださって……。

神谷 しかも、めっちゃ謙虚なんですよ。あまりに謙虚なので「なんでそんなに腰が低いんですか?」って質問したら「ステージで暴れるためだ」っておっしゃっていて。それを聞いて余計にSKRYUさんが好きになりました。

──この曲は鈴木さんがトラックを制作されています。音数が少ないのに、いろんなジャンルのいろんなサウンド感が混じっていてカッコよかったです。

鈴木 SKRYUさんは番組で僕が作った「ガーベラ」という曲が好きと言ってくれたので、今回も僕が作ったトラックを3曲送らせていただいたんです。その中から一番ほっこりとしているというか、ハッピー要素もありつつ、今っぽいこのトラックを選んでくださいました。ジャンルでいうと、ジャージー2ステップになります。こういうのをずっと作りたかったんですよね。一緒に制作している中で、これはSKRYUさんと僕が共演するのにぴったりな曲になったなあと感じられました。

生声のR&Bにこだわった「Feel the vibe」

──シンプルなトラックでボーカルがグイグイ引っ張っていく、May J.さんJAYEDさん参加の「Feel the vibe」も最高でした。

神谷 MA55IVEの曲ではオートチューンを使うことが多いんですが、この曲は普通のR&Bをやりたかったんです。May J.さんとJAYEDさんと僕の3人で集まって、歌詞もみんなで一緒に作ったんですけど、けっこう苦戦して、書き上がるまでにめちゃくちゃ時間がかかりました。サビの前半から考えたんですけど、みんな「私はちょっとパス」みたいな感じで(笑)。僕のパートは前半の入りあたりだったんですけどそこもなかなか苦戦しました。自信喪失からの立ち直りがあって、この曲を完成させることができてよかったです。

神谷健太

神谷健太

──自分でも気付かないうちにオートチューンの歌い方に慣れていた?

神谷 それはあるかも。普通のボーカルとオートチューンをかける用の声では、声の出し方が違うので、「Feel the vibe」を歌っていて、自分に変な癖がついていることに気付きました。そういう意味では、この曲でだいぶ成長できた気がします。うまいこと歌い分けられたら、もっと面白いこともできそうだし。

──トラックもカッコよかったです。

神谷 もともと知り合いだった、音楽プロデューサーの今井大介さんと一緒にスタジオに入って僕が持って行ったリファレンスを聴きながら作っていきました。

──今、個人的に男性R&Bがブームなので、次の「Time 2 Get Up」を含め後半の楽曲群はどれも気持ちよかったです。

浦川 「Time 2 Get Up」は平成っぽさを意識した1曲です。フィーチャリングのWISEさんが昔からお世話になっているAILIさんにプロデュースしていただきました。制作もAILIさんのご自宅でWISEさんと3人で進めていったんです。最初は平成のJ-POPを意識して作っていたんですけど、「なんか合わないなあ」と感じて、ネリーの「Ride Wit Me」とかあのへんのサウンド感を提案してみたら一気にしっくりきてどんどん制作が進みました。

浦川翔平

浦川翔平

──リリックは?

浦川 ちょっと時間がかかりそうだったので、僕もWISEさんも一旦持ち帰って、後日まとめあげました。

──哀愁感がありました。

浦川 夏という大きいテーマは最初からあって、当初は夏休みっぽい感じにしようと思っていたんです。SEに花火の音を入れたり、ハイウェイをドライブしている感じの音を入れたりして、現実から逃避するみたいな……。でもリリースが9月10日だったので、夏の終わりっぽい要素があってもいいかもと、ひぐらしの鳴き声とかも入れて全体的にチルな夏曲にできたと思っています。

──レコーディングはいかがでしたか?

浦川 僕はもともと高めのキーが得意なんですけど、WISEさんから「この曲は低い声の、アダルトで落ち着いた感じでやってみて」と提案していただいて、レコーディングはかなり苦戦しましたけど、できあがったものを聴いてみるとチャレンジしてよかったと思いました。