ナタリー PowerPush - LOCAL SOUND STYLE
メロコア/エモからさらなる進化 新曲はすべてを詰め込んだ8分の大作
2004年に結成された青森出身のLOCAL SOUND STYLE。エモーショナルな中にも透明感をたたえポップに疾走するサウンドで、ライブバンドとしても力をつけてきた彼らが、ニューシングル「the symphony」をリリースした。持ち前のポップなメロディはそのままに、交響楽のようなダイナミックなアレンジが印象的なこの曲は、バンドを音楽的に一歩前進させただけでなく、8分を超えるこの大作を完成させたことで彼らを精神的にも強くさせたはずだ。
「the symphony」は、もともとは聴き手が価格を設定するというスタイルで今年8月より配信されていた楽曲。そのやり方の真意も含めて、荒関将寛(Vo,G)にじっくりと話を訊いた。
取材・文/遠藤妙子
東京での活動が地元シーンの刺激になるんじゃないか
──青森出身なんですよね。
弘前です。城と桜とリンゴしかないとこですよ(笑)。でも桜が綺麗で。
──今作の収録曲「When The Cherry Flowers Bloom In The Town」には、桜がモチーフとして登場しますね。
ええ。今回初めてそういう曲を作ろうかなと思って。
──この曲では故郷のことや故郷から離れる気持ちを歌ってますが、それは振り返られる心境になったということですか?
うちのバンドはみんな地元が大好きで、こっち(東京)で活動してるのも、地元シーンの刺激になるんじゃないかって気持ちもあってやってるんです。「青森のバンドが全国規模でやってるぞ」って口では常々言ってるんですけど、曲で表現してもいいんじゃないかって思って。歌詞には自分が上京したときの気持ちを書いてるんですけど、地方出身者ってだいたいこういう気持ちなんじゃないかな。ハッキリとした夢があって上京する人もいるけど、逆に夢がないがために上京する人もいるし。「何かあるんじゃないかな」って漠然と考えている人も多いと思うんですよ。
──すべての人がしっかり夢を持ってるわけじゃないですし。
そうですよね。実は俺も上京したときは「東京に行ったらなんかあるかも」ってぐらいで。自分の状況をちょっと変えてみたくて出てきたって人は、多いと思うんですよね。でも、何かをやっていったら夢が見つかるかもしれないし、かと言って見つからなくてもダメってことでもないし。
──見つからなくて故郷へ帰ろうと思ってもいいわけで。
その人が決めたことであれば、いいと思います。この曲には自分の気持ちを書いたけど、同じようにいろんな思いを抱えた地方出身者なら共感してもらえると思うんですよ。
世の中に何かを伝えられる音楽を作っていきたい
──ちなみに、ほかのメンバーもバンドをやるために上京したわけではないんですか?
ええ。もちろんバンドはやるつもりでしたが、上京したタイミングはバラバラで。東京でたまたま再会して、仲も良かったし「バンドやろう」って話になったんです。どんなバンドをやろうってことも決めなかったけど、お互い好きな音楽も知ってたし、暗黙の了解みたいなものはあったんですよ。
──じゃあ、2007年に発表した1stアルバム「Doing It For The Kids」はどういう気持ちで作ったものですか?
とにかくがむしゃらでしたね。
──勢いがある作品だったけど、がむしゃらってことはある意味、意識が自分たちに向かってたというか。
そうです。聴き手よりも、まずは「対自分たち」でしたね。
──それが昨年発売の2ndアルバム「HOPE」では、ポップになって開かれた感じに変わりました。
2ndはリスナーと向き合った作品です。この頃から音楽性だけじゃなくてライブも変わったと思います。ただ、1stから2ndまでの間が2年半もあるんで、急にじゃなく徐々に変わっていったんですけど。
──その変化には、何かきっかけはあったんですか?
俺らは友達関係から始まったバンドで、良い面もあるんですけど、友達という枠からどうしても逃れられなくて。結成してから3年間のすべてを1stにぶつけたんですけど、それを作り終えて「俺らはどんなことがやりたいんだ?」って初めて意志確認のために話し合いをしたんです。そうしたら、メンバー全員がLOCAL SOUND STYLEというバンドが好きで、LOCAL SOUND STYLEとして世の中に何かを伝えられる音楽を作っていきたいって結論に達して。この話し合いがあったから、2ndはもちろん、今があるんだと思うし、やっと本当にバンドになれた気がします。
「持ってる引き出しを全部開ければいいじゃん」
──ポップになったことで、ファンから賛否両論があったのでは?
ありましたね。「ポップになったね」って意見はもちろん、「売れ線だね」とか。良い意味で言ってくれてた人もいますが、悪い意味もあったと思います。
──そういう意見も平気でした?
ええ、全然。だってそういう作品を作りたかったんですから。
──気持ちもタフになったんですね。
タフになったというか、楽になったんですよ。むしろ1stの頃のほうが無理をしてたのかもしれない。昔から俺らの武器はメロディだと思ってたんですけど、メロディをより活かすアレンジにすればいいのに、1stアルバムの頃は「これをやったらダサいだろ」とか「この引き出し開けたらダメでしょ」とかカッコつけてたんです。
──ポップであることに照れがあったんですか?
そうなんです。むしろ1stの頃のほうが背伸びしてましたね。でも、2ndの頃にはそういうのが全部なくなって、「持ってる引き出しを全部開ければいいじゃん。引き出しなんてこれからどんどん増やしていけばいいじゃん」って。だから、2ndのほうがやりたいことを素直に出せてる。
──じゃあ2ndアルバム発売後のツアーでは、相当手応えがあったんじゃ?
すごくあったし、バンド側の意識が変わったらお客さんの反応も変わってきて。俺らとお客さん、みんなでライブを作ってる感じになっていきましたね。
CD収録曲
- The Symphony
- Get Up Kids!
- When The Cherry Flowers Bloom In The Town
DVD収録内容
- ■THIS IS YOUR SYMPHONY tour final live at SHIBUYA QUATTRO
- Starting Over / Don't Look Back On Winding Roads / Life Goes On / A Brand New Way / She / Beyond The Hope / The Last Time To Recall The Past / Get Out / Carry On
- ■VIDEO CLIP
- The Symphony / Starting Over / Carry On
- ■Behind The Scene 2006-2010
LOCAL SOUND STYLE(ろーかるさうんどすたいる)
青森県弘前市出身の荒関将寛(Vo,G)、後藤裕亮(G)、黒瀧孝之(B)、齋藤康輔(Dr)が東京で再会を果たし、2004年に結成。2005年8月に初のEP「LOCAL SOUND STYLE」をリリースすると同時に、自主企画イベントを開催。以降もコンスタントにイベントを開催するなどキャリアを重ねながら、2007年にエド・ローズをプロデューサーに迎えた1stアルバム「Doing It For The Kids」を発表。2009年にはセルフプロデュースによる2ndアルバム「HOPE」をリリースし、好評を博した。1990年代のジャパニーズパンクやエモ、海外のギターロックバンドから影響を受けた疾走感あふれる楽曲の数々で人気上昇中。2010年末の「COUNTDOWN JAPAN 10/11」出演以降は、新作の制作に入る。