ナタリー PowerPush - LOCAL SOUND STYLE
メロコア/エモからさらなる進化 新曲はすべてを詰め込んだ8分の大作
俺らが持ってるものを最大限に出そう
──今回のシングルの表題曲「the symphony」は8分を越える壮大な曲で。2ndアルバムの延長線上でもなく、作風がまたガラリと変わりましたね。
延長線上だけじゃ意味がないし、新しい俺らを前に持ってくるべきだと思って。俺らの武器はメロディで、それを速い曲からミディアムな曲まで幅を持ってやってるつもりなんですけど、2ndで出し切った感があったんです。で、次はどうするかって考えたときに、バンドとして音楽的に成長したいと思って。今までの焼き増しではなく、かといって今までやってきたことから方向性がズレることもなく。だったら俺らが持ってるものを最大限に出そう、つまり速いものもミディアムなものも1曲の中に詰め込んでみようと。長い曲がやりたいっていうのもあったんですよ。俺らはメロコアやエモと呼ばれてますけど、それだけを聴いてきたわけじゃないし、自分たちが持ってる武器の中で工夫や実験をすれば新しいことがやれるんだってことを見せたかったんです。
──自分たちで自分たちの枠を作ってしまったらつまらないですしね。
たぶんリスナーは俺らのことを、ポップで歌えて、ライブも盛り上がるバンドって思ったかもしれないけど、それで終わらせたくなかった。俺らにしかできないような、音楽的に意味のあるものを作りたかったんです。
──メロディは耳に残るし、ドラマチックだけど変な複雑さは感じないアレンジですよね。
逆の言い方をすれば、壮大な曲を作ってもキャッチーな部分は出てくるし。それが俺らだったりするんですよ。
4人だけで演奏することより4人が何を大切にしてるかが大事
──曲作りはどんな感じでしたか?
大変でした。「なんでわざわざこんな大変なことをやるんだ?」って(笑)。まず長い曲にしたいってことで浮かんだのがQUEENで、イントロはちょっとそれっぽくしました。軸になるメロディはわりとすぐに浮かんで、そこに肉付けしていって。構成も決まってたんですけど、着地点がずっと見えなかった。レコーディングが終わって、結局ミックスの段階まで決まらなくて、ミックスしたものを聴いてやっと着地点にたどり着いたんです。
──交響楽的なイメージがありますが、サンプリングだったり4人のメンバー以外の音も入ってますよね。
4人のメンバーの音があった上で、4人+αならば4人以外の音が入っててもいいと思ってます。
──何が一番大切かってことですね。
そう。俺らにとって4人だけで演奏するってことより、4人が何を大切にしてるかってことのほうが大事で。それはやっぱり曲なんですね。曲を良くすることに4人が向かっていれば、4人以外の音が入っていてもブレることはないと思うんです。
──じゃあ制作してるときはライブで演奏することは考えずに?
考えてなかったですね。でも、すでにライブでやってるんですよ。イベントで演奏するときはショートバージョンにしてるんですけど、この前のワンマンではフルスケールでやったし。しかもそのライブでは俺らの持ち曲全部の曲を演奏して、32曲中のラストに「the symphony」をやったんですよ。
──うわぁ、大変そうだ(笑)。
大変ですよ! この曲のために余力を残すのも嫌だし、でもこの曲が最後っていうのはもっと大変で(笑)。だけど、最後にこの曲を演奏したことでライブが引き締まったし、俺らも達成感を得ることができてすごく良かったですよ。
インディーズで活動してる俺らがやることに意味がある
──「the symphony」は、もともとはライブ会場CDと配信で発売した曲ですよね。配信では、ユーザーが自由に価格を設定できるという興味深いものでしたが、どうしてこういう方法を取ったんですか?
リスナーに「曲は買ってください」ってことを伝えたかったんです。CDが売れなくなって音楽業界がヤバいって状況があって、その理由のひとつが違法ダウンロードだと言われていて。今は多くの人がパソコンを使って、無料で、しかも違法な手段で音楽を手に入れることができる。でも、ダウンロードしてるほうには罪の意識はないと思うんです。しかも若い人はお金もそんなに持ってないですからね。そこに無料なものがあれば、そりゃタダのほうがいいし。気持ちはわかるんです、何より音楽を聴きたいからの行為だし。
──音楽が聴きやすい状況になって、おそらく音楽を聴く人は増えてますからね。
それはいいことだし、音楽は敷居が高いものじゃなくて誰でも楽しめるものだと思うんです。だけど、違法ダウンロードで手に入れられるほど安っぽいものでもない。それを伝えたかったんです。
──なんでも無料で手に入ったら、価値がわからなくなるし。
そうそう。それをね、インディーズで活動してる俺らがやることに意味があるような気がして。
どんなに安い金額でも曲は買ってほしい
──自由価格設定というのは、聴いた人が金額を設定できるってことですよね?
そうです。1円から設定できます。
──例えば、この曲にはいくらの価値があるか、そういうことを試したいって気持ちもありましたか?
そういう気持ちは全然なかったです。ただ、無料で曲を手に入れたいって人はお小遣いがなくてダウンロードしてる人もいるわけで、だったら1円でもいいんだよってことを伝えたかったんです。
──1円といえどもお金を払ったってことで、買った人の中に価値観が生まれますしね。
やっぱりどんなに安い金額でも曲は買ってほしいです。じゃないと、音楽自体が意味のないものになっちゃうし、その結果バンドの活動が思うようにできなくなったりするかもしれない。そうすると、音楽もバンドも夢がないものになってしまって、今後バンドをやろうなんて人も少なくなるかもしれないですよね。究極的なことになるけど、俺はみんなに音楽を好きになってもらいたいんです。これは、そのためのひとつのやり方で。俺らはHi-STANDARDなどから刺激を受けて、夢をもらってバンドを始めました。今度は俺らが俺らのやり方で、次に続く人たちのためにも発信していければいいなって。
──実際、この配信のやり方は成功したと思いますか?
まだわかりません。今すぐに成功だ、失敗だって結果が出るものでもないと思うので。今は状況も変化しているし、どういうやり方がいいかは常に考えながらやっていきたいんです。
──もちろん、CDよりも配信がいいってことではないですよね。
はい。俺個人はCDの方が好きですし、ジャケットも含めて作品だと思うし。本当はCDを買って聴いてほしいけど、そのための配信って要素もあるし。「the symphony」は今の俺らにとって最も大事な曲で、それを先に配信でリリースしたからにはCDという作品もさらにいいものにしていかなきゃならない。そう思ってます。
CD収録曲
- The Symphony
- Get Up Kids!
- When The Cherry Flowers Bloom In The Town
DVD収録内容
- ■THIS IS YOUR SYMPHONY tour final live at SHIBUYA QUATTRO
- Starting Over / Don't Look Back On Winding Roads / Life Goes On / A Brand New Way / She / Beyond The Hope / The Last Time To Recall The Past / Get Out / Carry On
- ■VIDEO CLIP
- The Symphony / Starting Over / Carry On
- ■Behind The Scene 2006-2010
LOCAL SOUND STYLE(ろーかるさうんどすたいる)
青森県弘前市出身の荒関将寛(Vo,G)、後藤裕亮(G)、黒瀧孝之(B)、齋藤康輔(Dr)が東京で再会を果たし、2004年に結成。2005年8月に初のEP「LOCAL SOUND STYLE」をリリースすると同時に、自主企画イベントを開催。以降もコンスタントにイベントを開催するなどキャリアを重ねながら、2007年にエド・ローズをプロデューサーに迎えた1stアルバム「Doing It For The Kids」を発表。2009年にはセルフプロデュースによる2ndアルバム「HOPE」をリリースし、好評を博した。1990年代のジャパニーズパンクやエモ、海外のギターロックバンドから影響を受けた疾走感あふれる楽曲の数々で人気上昇中。2010年末の「COUNTDOWN JAPAN 10/11」出演以降は、新作の制作に入る。