LiSAインタビュー|「NieR:Automata」がつないだ秋田ひろむ(amazarashi)との初コラボ、今年のテーマは「発明をしよう」 (2/2)

今年は「発明をしよう」がテーマ

──シングルには「MAKE A MiRACLE」「洗脳」という2つのカップリング曲が収められます。「MAKE A MiRACLE」はLiSAさんのライブでもおなじみのPABLO(Pay money To my Pain)さんとのタッグで、こちらはLiSAさんの得意中の得意技、という感じですね。「ボートレース2024 TVCMタイアップソング」に採用されています。

はい(笑)。これはPABLOさんとライブでやったら盛り上がりそうだなという感じで作った楽曲で。それを関係者の方に気に入っていただき、正式に形にしてみました。

──なるほど。ボートレースの疾走感にぴったりだなと思うと同時に、好きな曲を好きなように作ったような印象があったので(笑)、納得しました。

作りたくて作ったものを気に入ってもらえた、という感じですね。

──楽曲のテイストからMVの質感まで、そこはかとなくhideさんを彷彿とさせる……。

そうですね(笑)。hideさんが活躍されていた頃、私はまだ小学生で、いとこのお兄ちゃんが大好きだったんです。

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──90'sテイストの映像もさることながら、あの頃のhideさんにあった痛快さが表現されているというか。

今年は「発明をしよう」をテーマにしているんです。それは「新しいものを作っていく」ことではあるんだけど、好きなものを持ったうえでやりたいなと。PABLOさんとはよく「この時代のこんな音楽が好きで、こういうところに心を動かされた」という話をよくするんです。そんな話をする中で、私が好きなパンクロックは、もちろん魂の叫びだったり、強いメッセージが込められていたりするものもたくさんあるんですけど、「あなたのことがめっちゃ好き」くらいの爽快感というか(笑)、音と画だけで心が動くような感覚が、私が子供の頃に好きだったロックにはあったよなあって。そういう音楽が作りたい、というところから始めたのが「MAKE A MiRACLE」です。

──そのあたりの「あの頃好きだったもの」の話をするとき、そのイメージはPABLOさんと一致していますか?

完全に同じかと言うと、それはちょっと違うかもしれない。世代の違う先輩だし、PABLOさん自身が時代を作ってきた人でもあるから。PABLOさん自身が見てきたリアルな視線と、その頃学生でPABLOさんたちを見て「すごい、カッコいい!」と興奮していた私とでは(笑)、きっと少しずつ違う。でも「これの何が素晴らしいのか」という答え合わせの部分では一致していることが多いと思います。

無骨なパンクロッカー、キタニタツヤ

──もう1つのカップリング曲「洗脳」も今までのLiSAさんのレパートリーにはなかったタイプの楽曲ですね。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTばりにつんのめった、荒削りなガレージロックで。

あはははは。

──作詞作曲はキタニタツヤさんですが、キタニさんとはどういう間柄なんですか?

この曲を作ってもらった段階ではまだキタニさんとは面識がなかったんです。単純に私が彼の音楽を聴いて素晴らしいなと思っていただけで、そんなに若い人だとも知らず(笑)。「DEMAGOG」(2020年8月に発売されたキタニの3rdアルバム)を聴いたとき、きっと無骨なロックやパンクが好きなんだろうなと感じて。それまでキタニさんにそういう印象はなかったんですよ。私のデビュー曲「oath sign」(2011年11月発売)を書いてくれた渡辺翔さんとやっているsajou no hana(キタニ、渡辺、ボーカリストsanaによるバンド。現在はsanaのソロプロジェクトとして活動中)のイメージがあったから、尖った印象はあまりなくて。でも「DEMAGOG」を聴いたときにその印象が大きく変わって、一緒に曲を作ったら面白いことになるのではなかろうかと。それでご相談しました。

──それも「発明をしよう」の一環で?

はい。最近の出会いの中で言うと、キタニさんと「ハルシネイト」(2024年5月発売のシングル「Shouted Serenade」収録曲)を書いてくださったツミキさんは、まさに「一緒に発明をしてほしい」と思ったクリエイターさんです。新しいLiSAを作ってくれるのではなかろうかと思った方々。

──向こうはびっくりしたんじゃないですかね。急にLiSAさんに声をかけられて。

どうなんでしょう。実は「青のすみか」(テレビアニメ「呪術廻戦」第2期「懐玉・玉折」オープニングテーマ。2023年7月に発売され、「第65回輝く!日本レコード大賞」特別賞を受賞したほか、キタニはこの楽曲で「第74回NHK紅白歌合戦」への出場も果たした)の前にオファーをしていたので。

──「【推しの子】」第2期のオープニング主題歌で中島健人さんとタッグを組んだり(参照:「【推しの子】」第2期OP主題歌、歌っているのは中島健人とキタニタツヤだった)、今や引く手数多の存在ですからね。

そうですよね。根っこはシンガーだしパンクロッカーだと思うんですけど、なんでもできるプロデューサーなんだなとも思いました。

LiSA
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「私、まだ心動くんだ」のうれしさとワクワク

──10周年を経過して、そこから今年13周年を迎えるまでの道のりは、新しい出会いと刺激を求めていろんなところに出向き、それがうまく功を奏しているという印象です。

みんなと楽しく音楽ライフを過ごすためにやっている感じです。私自身が楽しむために、いろんな人に出会いに行って、新しいものを作る。やっぱり10周年というのが大きな区切りで、あのときに新しいスタートを切った感覚があるんです。「歌い続けていくぞ」「楽しいことを探し続けていくぞ」というモードになっているから、今までの自分の焼き増しを続けてもしょうがない。進化していくために、いろんな人との化学変化を楽しみたいと思えるようになりました。それまではLiSAというものを守るために、作り上げるために“やらないこと”をたくさん決めておく必要があった。

──新しい出会いに向かっていくうえでの揺るがない基盤が10年分積み上げられた、という自信を持って行動できている?

そうですね。10年間「LiSAとはこうである」をやり続けてきたんですけど、今はもうちょっと、自分が楽しむために混ざり合ったり、変化をすることに意識が向いています。コロナ禍で鬱々としていたときは、やれることがなさすぎて「私にできることはもうない。音楽でできること、LiSAがやれることはやり切ってしまった」という、どこか閉じ込められたような感覚があって。でも今は、自分より若い世代のアーティストが活躍する様子を見たりしながら「私、まだ心動くんだ」といううれしさがあるんですね。「やられた!」と思う悔しい気持ちとか、「この人最高じゃない?」って子供の頃新しい音楽に出会ったのと同じようなワクワクする気持ち。それが大人になってもまだあるんだ、13年経ってもまだあるんだ!と感じられたことがうれしくて……今はめちゃめちゃ曲を作っているところです(笑)。

──つまり、まだ話せないかもしれない新たなプロジェクトをどんどん進めている?

はい(笑)。新しいクリエイターさんと出会って新しい刺激を求めていくことはもちろん、新しく自分を奮い立たせる挑戦の場がいろいろと用意されています。

──すでに発表されている予定としては、9月から年末にかけてのツアーが決定しています。いわゆるアルバムを携えてのツアーではありませんが、どんな内容になりそうですか?

4月の武道館が「LiVE is Smile Always~i SCREAM~」でアイスクリーム屋さん、今回のツアーは「LiSA LiVE is Smile Always~COCKTAiL PARTY~ [SWEET&SOUR]」ということでカクテル屋さん、というのがテーマなんですけど、カクテルのようにいろんな人との出会いを混ぜて作ってきた音楽を表現したい。私の音楽は1人で作ってきたわけじゃなく、ずっといろんな人の要素を混ぜ合わせて作ってきたものがたくさんあるんです。これからも発明をしていくためには混ぜていく必要があって、私は今そういうモードなので、そんなパーティです。

──それが「SWEET&SOUR」なんですね。

「SWEET」と「SOUR」、どちらも出しておきたくて(笑)。1日じゃ足りないので、全会場2日間でそれぞれ表現することにしました。

──ツアーの前にはフェスもありますし、年末までびっしり、ホントに詰め込みすぎの1年ですね。

なんか、うれしかったんでしょうね(笑)。ワクワクできることが。

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公演情報

ソニー銀行 presents LiSA LiVE is Smile Always~COCKTAiL PARTY~ [SWEET&SOUR]

  • 2024年9月14日(土)大阪府 大阪城ホール(※SWEET)
  • 2024年9月15日(日)大阪府 大阪城ホール(※SOUR)
  • 2024年9月21日(土)愛知県 ポートメッセなごや 第1展示館(※SWEET)
  • 2024年9月22日(日・祝)愛知県 ポートメッセなごや 第1展示館(※SOUR)
  • 2024年9月28日(土)神奈川県 横浜アリーナ(※SWEET)
  • 2024年9月29日(日)神奈川県 横浜アリーナ(※SOUR)
  • 2024年10月19日(土)北海道 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ(※SWEET)
  • 2024年10月20日(日)北海道 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ(※SOUR)
  • 2024年11月3日(日・祝)福岡県 マリンメッセ福岡 A館(※SWEET)
  • 2024年11月4日(月・振休)福岡県 マリンメッセ福岡 A館(※SOUR)
  • 2024年11月16日(土)宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ(※SWEET)
  • 2024年11月17日(日)宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ(※SOUR)
  • 2024年11月30日(土)東京都 国立代々木競技場第一体育館(※SWEET)
  • 2024年12月1日(日)東京都 国立代々木競技場第一体育館(※SOUR)
  • 2024年12月14日(土)福井県 サンドーム福井(※SWEET)
  • 2024年12月15日(日)福井県 サンドーム福井(※SOUR)

プロフィール

LiSA(リサ)

6月24日、岐阜県生まれのボーカリスト。2010年春、テレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンドGirls Dead Monsterの2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。2011年4月にLiSA名義のミニアルバム「Letters to U」でソロデビューを果たす。2014年1月に初の東京・日本武道館ワンマン「LiVE is Smile Always ~今日もいい日だっ~」を行い、翌2015年1月には日本武道館2DAYS「LiVE is Smile Always~PiNK&BLACK~」を成功させた。2019年4月にシングルとしてリリースしたテレビアニメ「鬼滅の刃」のオープニングテーマ「紅蓮華」が大ヒットを記録し、同年末には「NHK紅白歌合戦」に初出場。2020年には映画「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」の主題歌「炎(ほむら)」で「第62回日本レコード大賞」大賞を受賞した。デビュー13周年を迎えた2024年4月に東京・日本武道館で2DAYSワンマンライブ「LiVE is Smile Always~i SCREAM~」を開催。5月にテレビアニメ「魔法科高校の劣等生」第3シーズンのオープニング主題歌「Shouted Serenade」、8月にテレビアニメ「NieR:Automata Ver1.1a」第2クールのオープニングテーマ「ブラックボックス」をリリースした。9月から全国8都市を回るアリーナツアー「ソニー銀行 presents LiSA LiVE is Smile Always~COCKTAiL PARTY~ [SWEET&SOUR]」を行う。