音楽ナタリー Power Push - LILI LIMIT

フロントマンが語る“練習曲”ができるまで

映画鑑賞とギャラリー巡り

──LILI LIMITっていうバンド名は語呂で決めたそうですね。

LILI LIMIT

はい。僕「リリイ・シュシュのすべて」っていう映画がすごく好きなんですけど。なぜかはわからないんですけど、その中の「リリ」っていう響きに引っかかって、自分の子供の名前に付けたいくらい気に入ったんですよ。それでずっと次のバンド名は「リリ」を絶対使いたいって思ってて。最初は外国人の名前にしたかったんですよ。「スティーブン・リリ」とか。でも書いてみたらしっくりこなくて。そこから「リリ」につながる言葉を考えていて、「LILI……LI」って書いてみたら意外といいなって思ってそれに続く単語を探した感じです。

──今、映画の話が出ましたが、牧野さんの作る曲からは映画や小説などの要素を感じました。

そうですね。僕は映画鑑賞とかギャラリー巡りとかが好きで。

──映画はどういうものを観るんですか?

最近だとジャック・タチの「プレイタイム」(1967年公開のフランス映画)っていう映画を観ました。あまりセリフはないんですけど、空間の使い方がすごくて、ハッとさせられるような場面が多いんですよ。ストーリーはあるんですけど、それもどうでもよくなるくらい、2時間くらい空間の使い方だけに集中して観れる。初めての感覚でしたね。

──他に好きな作品はありますか?

岩井俊二さんの作品が好きです。先ほど挙げた「リリイ・シュシュのすべて」もですし「花とアリス」はすごく好きです。まあ、蒼井優さんが好きなんですけど(笑)。でも物語も好きです。最近もまた観て。観るたびに感じ方が違うんで、すごく面白いなと思います。

──ギャラリー巡りはどういうきっかけで?

丸谷誠治(Dr)

最初は嫌々だったんです。兄がギャラリー好きで、現代美術を趣味でずっと研究してるんですよ。僕は兄と一緒にジャケット制作とかしてるんですけど、僕に知識がなくて困ることが多くて、そのとき兄に「お前はいろんな美術に触れたほうが作詞家としても力がつくからとりあえずいろんなギャラリーに行ってこい」って言われて行くようになりました。そしたらハマって。最近だったら写真家のトーマス・デマンドの展覧会に行きました。

──ギャラリー巡りを始めて何か変わりました?

変わりましたね。それまでは表面的なオシャレをしてたと思うんです。例えばInstagramとかでめっちゃフィルターをかけた写真を載せるけど、写真自体には特に意味がないみたいな。でもギャラリー巡りを始めて意味を考えるようになりました。人の写真を観ても、「この人はこういう意図があって、この写真を撮ったんだな」とかを考えるようになって。そこから急激にアイデアがすごく出るようになりました。歌詞も、曲も。最近は空間にハッとしたら、写真を撮って、その写真を観ながら曲を作ってます。

──写真を観ながら曲を?

はい。最近はずっとそうですね。「Etudes」のレコーディング中にも、夜の東京タワーを観て「キレイだな」って思って、次の日東京タワーの写真を観ながら曲を作りました。その写真に合うような曲を。その曲は「Etudes」には入ってないんですけどね。こういうのってカッコつけてる感じがして恥ずかしいんですけど……。

既発曲を大幅にアレンジ

──「Etudes」を聴かせてもらってまず驚いたのが「in your site」でした。この曲は既発曲ですが、デモCDの音源からずいぶん変わりましたよね。

変わりました。この曲はLILI LIMITが、結成して最初に作った曲で。それからメンバーが変わってアレンジを加えて……ってどんどん変化した曲なんです。デモCDには「LILI LIMX」っていう土器がリミックスしたバージョンがあるんですけど、原曲とそのリミックスの間くらいだったら、いいとこどりでより一層よくなるんじゃないかって話をして、今回この形になりました。

──全編英語歌詞だったのが、日本語詞になりました。

牧野純平(Vo)

とにかく昔の僕は本当にカッコ付けてたんですよ。正直すごく背伸びをして英語で書いてみたけど、実際日本語の方が僕の体には合ってて。日本語で作ったほうが面白かったんですよ。

──何が面白かったんですか?

言い回しとか。あと日本語だったら内容も細かく言えるし、いろんな表現ができるんで。僕があんまり英語がわかんないっていうのもあります……。

──歌詞カードでは「他人嫉妬+愛自分」となっているところが、実際は英語で歌われているのも面白いです。

僕、滑舌が悪くて。「at good mountain」のサビも、聴いた人に「グッドマンデー」って言われたんですけど、そういう捉え方もあるんだなって思ったんですよね。だったら聴く歌詞と見る歌詞がちょっと違うほうが面白いかなと。

──今回日本語に変わったサビの歌詞がまた印象的です。

僕的解釈で愛とはなんなのかを書いたところですね。「in your site」っていうタイトルの本来の意味をみんなわかってないだろうなって思ってて。だったら今回わかりやすく言おうと思って日本語にしました。

──ということは、英語詞から日本語詞になっても歌ってる内容自体はあんまり変わってない?

はい、比喩は変わってますけど根本的なものは変わってないですね。

タイトルは見た目が重要

──2曲目の「h.e.w.」っていうタイトルはなんの略なんですか?

適当に付けただけで意味はないんです……。最近は「Happy end wedding」って言ってます。それにも特に意味はないんですけど(笑)。この曲は土器に投げるときに「タイトル付けて」って言われて適当に付けただけです。僕、タイトルは見た目が重要だと思ってて、文字組みで決めちゃうんですよ。意味は後付けでもなんとかなるかなって思って。

牧野純平(Vo)

──「Girls like Chagall」はシングル曲ですね。「アニュマニデイズ」という歌詞が印象的ですが、これはどういう意味なんでしょうか?

意味は言わないようにしています。というのは、僕が当初考えてた意味を超える解釈を、お客さんにされて。正直悔しかったんですよ。それ以来「アニュマニデイズ」の本当の意味は誰にも言わないようにしようって決めました。

──「h.e.w.」もそうですけど、聴いた人がそれぞれいろいろな解釈をするのも面白いですよね。最近はすごくわかりやすい曲が多いじゃないですか。ライブで聴き取れてすぐ一緒に歌えるみたいな。そんな中、LILI LIMITは歌詞を読ませて、さらに考えさせる。

それがいいとか悪いとかじゃなくて、1点を見せることは誰でもできるけど、なんか押しつけがましいじゃないですか。面白くないと思うし。だから僕はメンバーにもこういう意味っていうのは全然伝えない。それぞれちょっと考えてほしいし、各々思うことがあれば音にしてくれればいい。ほかの人にはあまり内容は言わないです。流行りとかは意識せずに、そういう個性を生かした音楽をやっていきたいですね。

──牧野さんの思うLILI LIMITの個性とは?

押しつけがましくないところ。ほんの少し背中を押せる曲だとか、ほんの少し日常が明るくなる曲であるとか、現実から抜け出したいなって思ってる人の力にちょっとなれる曲とかそういうふうに考えています。

ミニアルバム「Etudes」/ 2015年7月8日発売 / 1728円 / LASTRUM / LACD-0257
ミニアルバム「Etudes」
収録曲
  1. Open
  2. h.e.w.
  3. Girls like Chagall
  4. at good mountain
  5. Tokyo city club
  6. in your site
  7. zine line
LILI LIMIT presents Etudes release tour 2015
  • 2015年9月11日(金)愛知県 CLUB ROCK'N'ROLL
    <出演者>
    LILI LIMIT / MAGIC FEELING / Lucky Kilimanjaro / palitextdestroy
  • 2015年9月13日(日)大阪府 LIVE HOUSE Pangea
    <出演者>
    LILI LIMIT / asobius / and more
  • 2015年9月19日(土)東京都 WWW
    <出演者>
    LILI LIMIT / Suck a Stew Dry
  • 2015年9月26日(土)福岡県 Queblick
    <出演者>
    LILI LIMIT / QOOLAND / Suck a Stew Dry / about a ROOM
LILI LIMIT(リリリミット)
LILI LIMIT

2012年に山口県で結成されたバンド。メンバーチェンジを経て現在は牧野純平(Vo)、土器大洋(G)、黒瀬莉世(B)、志水美日(Key)、丸谷誠治(Dr)の5人で活動している。自主制作CD「A-E」「modular」が残響shopで販売され、全国にその名を広めた。2015年4月にタワーレコード限定シングル「Girls like Chagall / RIP」を発売。同年7月8日に1stミニアルバム「Etudes」をリリースする。