寿美菜子|“私の世界”守るための逃避行へ

寿美菜子が1月9日にニューシングル「save my world」をリリースした。

2018年1月に発表したアルバム「emotion」で初めて作詞に挑戦した寿は、このシングルでも表題曲「save my world」とカップリング曲「Take off with me」両方の作詞を担当。シングルを通して、とある1つのテーマを軸にした彼女の世界観が描かれている。音楽ナタリーでは2018年末に寿にインタビューを実施し、彼女が楽曲に込めた思いや制作の過程、自分自身と向き合い続けたという1年について話を聞いた。

取材・文 / 須藤輝 撮影 / 斎藤大嗣

ニューシングルのテーマは「逃避行」

──ちょうど1年前、3rdアルバム「emotion」リリース時のインタビューで「ダンス寄りの曲が増えてきましたね」というお話をしましたが(参照:寿美菜子「emotion」特集)、シングルでもダンスミュージックを打ち出してきましたね。

寿美菜子

今回のシングルは、5月5日開催のライブ「LAWSON presents 寿美菜子 One day show up #1」を見据えて作ったところもあるんです。「1日限りのライブだからこそできることってなんだろう?」と考えたとき、「emotion」のツアー(2018年5~6月にかけて行われた「LAWSON presents 寿美菜子 Zepp Live Tour 2018"emotion"」)ではダンサーさんとは一緒にパフォーマンスをしなかったので、今度はそれをフィーチャーしたいなって。そういう思いからライブのタイトルも決めたので、じゃあ新曲も、特に表題は踊るもよし、飛び跳ねるもよし、一緒に歌うもよしっていう曲にしようということで「save my world」になりました。

──これまでの寿さんのダンスナンバーは、例えば「Candy Color Pop」(2015年発売の9thシングル)のような、比較的ポップでかわいらしい曲が多かったように思います。対して今回の表題曲「save my world」はEDMマナーに則ったバキバキの曲になりましたね。

実はダンスのジャンルもけっこう悩んだんですよ。例えば2018年に「emotion」のライブに向けてロサンゼルスでダンスレッスンを受けていたときに、ジャズファンクの振り付けがすごく自分にフィットして。正直ジャズファンクっていうジャンル自体はよくわかっていないけど、そういう曲にも挑戦したくていろいろアイデアを出させてもらったんですね。でも結果として、意志の強さを示しつつ、伝えたいメッセージをちゃんと伝えられる曲という点において「save my world」が一番しっくりきたんです。

──その「伝えたいメッセージ」とは?

私の中では、このシングル1枚を通して「逃避行」がテーマになっているんです。自分としてはすっごいポジティブに「逃避行」っていう言葉を使ってるんですけど、このテーマを選んだ理由の1つはアルバム「emotion」を聴いてくださったファンの方からのお手紙なんです。要は「今まで寿さんの前向きな曲にたくさん励まされてきたけど、そうは言っても前向きになれないときもあるから「feel in my heart」(3rdアルバム「emotion」収録曲)のちょっとネガティブな歌詞に逆に救われました」ということを書いてくださって。

──「feel in my heart」は「落ち込んでるときに元気な曲を聴くのもいいけど、とことん落ちたくなるときもありますし」との思いから歌詞を書かれたとおっしゃっていましたね。

はい。だから今回も、背中を押されるだけだと逆につらいという人たちにとって励みになる曲を作れたらいいなと思ってテーマを「逃避行」に決めました。

これ、1サビで答え出ちゃってるじゃん

──その「feel in my heart」も含め、寿さんはアルバム「emotion」で新曲6曲の作詞を初めて手がけました。今回のシングルでも2曲ともご自身で歌詞を書いていますが、作詞に関してはもう味をしめた感じですか?

いやあ、難しかったです。というのも今回は、今言ったようにテーマありきで曲を選んだので。つまり「emotion」のときは楽曲ありきで、各楽曲からイメージしたものを言葉にする作業だったんですけど、今回は書きたいことが決まっていたので「じゃあそのゴールに向かうために、スタート地点をどこに設定すればいいんだろう?」というところでまず悩みました。テーマが「逃避行」だし自分の中で答えが見つかってるから、最初から「逃げる」とかそういうダイレクトなワードを使いそうになって「いかんいかん」みたいな(笑)。

寿美菜子

──なるほど。実際、「save my world」の歌詞ではあまり直接的なもの言いはしていないですよね。含みを持たせている分、聴き手としては想像も膨らみます。

ありがとうございます。私自身も作詞の“赤ペン先生”であるディレクターさんも、歌詞のテーマは決まっているにしても、いかにそれを違う言葉に言い換えるかが作詞の面白さだと思っているので、そこは注意しました。あと、歌詞の書き方としては、まず1コーラス分の歌詞を「この方向でどうでしょう?」って提出して、OKが出たら続きを書き進める流れだったので、OKをもらうために序盤に言いたいことをねじ込んじゃいがちで。

──はいはい。

そうすると赤ペン先生から「これ、1サビで答え出ちゃってるじゃん」とチェックが入り、でも同時に「このワードは面白いからあとに取っておこう」みたいなパターンもあって。例えばDメロの「少しだけど予感が聞こえる 加速していく高鳴る鼓動」の部分は実は1サビで言おうとしてたことなんですけど、希望を感じさせるフレーズだし後半に温存することにしたんです。そうやってあとに取っておくワードやフレーズが点になって、その点と点を線で結ぶように歌詞を組み立てていきました。

──1コーラス目で出してしまった答えから逆算するように。

そうそう。あと、歌詞を書きながら自分で歌ってみて「あ、これよくない?」って感じる瞬間も増えていって、どんどん楽しくなりましたね。

──「よくない?」というのは単純にいい言葉が思いついたという意味ですか? それとも声に出したときにうまいことメロディに乗ったとか、気持ちよく発声できるという意味ですか?

どちらかと言えば後者ですね。自分で歌いながら録音するんですけど、それを聴いたときに「こういうふうに聞こえるなら、きっとメッセージも届くだろう」っていう手応えがあって、なおかつ自分でも歌いやすかったとき。あ、でもワード自体に力がないとやっぱり届かないので、そう考えると全部がそろったときに「あ、よくない?」ってなるんだと思います。