寿美菜子|約3年半ぶりのアルバム、初の作詞で描いた6曲の世界

曲によって変化する、“自分の色“の濃淡

──曲によってまちまちだと思うんですが、作詞をするときにフィクションを書くのか、あるいはご自身の体験を反映させるのか、寿さんはどちら寄りですか?

両方ですかね。今回の6曲に関しては、まったくのフィクションはないかなと。「I wanted to do」にしても人から聞いた話を参考にしてはいますけど、それも自分のフィルターを通して言葉にしているので。強いて言うなら、曲によって自分の色の濃さが変わってきてるかなと思います。

──では寿さんの色が一番濃い曲、あるいは薄い曲は?

一番濃いのは、たぶんアルバムの最後の曲「Piece of emotion」ですね。逆に薄めに書いたのが「I wanted to do」か、4曲目の「LOVE JOY FUN」かな。

──なるほど。

もちろん自分で思ってもいないことは書かないんですけど、「I wanted to do」と「LOVE JOY FUN」は主人公の人物像が自分とは少し距離があると言うか。実は「LOVE JOY FUN」は最後に歌詞を書いた曲で、それまでの歌詞になかった要素、足りない要素を盛り込んでいく書き方をして。あと、私は曲のカラーをイメージしながら詞を書くんですよ。例えば「I wanted to do」ならかわいいピンクとか、「Sun Shower」ならキラキラした青とか。そういう見方をすると、全体的に暖色系が少ないかなと思ったんです。

──なるほど。僕は「LOVE JOY FUN」を聴いて、黄色をイメージしました。

寿美菜子

そう、まさに「『LOVE JOY FUN』は黄色だな」と思ったんです。黄色といっても山吹色みたいな鮮やかな黄色というよりは、もっとパステル調の、シャーベットみたいな淡い黄色なのかなって。

──「LOVE JOY FUN」は「LOVE」「JOY」「FUN」とポジティブな言葉を3つ並べているものの、主人公は100%ポジティブなわけではないですよね。

淡い黄色だから、曲の主人公もちょっと内向的というか「きらり光る場所」に「踏み込んでみていいのかな? 本当にいいのかな?」って戸惑いつつがんばって前に進もうとする女の子にしたいなと思ったんです。歌詞にもある通り、「LOVE JOY FUN」は「魔法の言葉」なんですよね。ただ、本来の私の性格的には「踏み込んでみていいのかな?」というよりは「寿、いっきまーす!」みたいな感じだから(笑)。

──ほかの曲、特に1曲目の「Ambitious map」などはそんな感じですよね(笑)。

そうそう。「Ambitious map」は、私が2017年に1人でロサンゼルスを旅行したときの体験がベースになっている曲なので、素の自分はこっちに近いんです。

寿美菜子の理想像は“歌って踊れる人”

──「LOVE JOY FUN」は寿さんのディスコグラフィの中では挑戦的な1曲ですよね。ここまでダンスミュージックに振り切った曲は初めてでは?

確かに。ダンスミュージックという意味では、13曲目の「Another Wonderland」(2015年4月発売の8thシングル「black hole」カップリング曲)もEDM的なんですけど、それを前面に出すような曲ではなかったので。

──ソロアーティストとしての寿さんのパブリックイメージって、ひと言で言うと“ロック”だと思うんです。でも今回のアルバムは、意識的に“ダンス”に寄せてきているのかなと。例えば3曲目「Bye Bye Blue」(2016年3月発売の10thシングル表題曲)から7曲目「Candy Color Pop」(2015年9月発売の9thシングル表題曲)まではダンスゾーンと言ってもいいくらいですし。

うんうん。アルバムの曲順は大まかに私が並べてからスタッフさんと話し合って微調整したんですけど、ロックからダンス、そしてまたロックへって、流れるように聞こえたらいいなと思って。

──おっしゃる通り、さわやかなロックチューンである2曲目の「ミリオンリトマス」(2016年12月発売の11thシングル表題曲)からロックとダンスの配合がちょうど半々くらいの3曲目「Bye Bye Blue」につなぎ、4曲目「LOVE JOY FUN」へという流れもスムーズですよね。さらに言えば、同じダンスチューンでも先述の「I wanted to do」のような黒っぽいフィーリングの曲もあって。

もともと私が「歌を歌いたい!」と思ったきっかけは、小学4年生のときにモーニング娘。さんに憧れたことなんです。小学校5年生のときは「BoAさんみたいになりたい!」と思って。だから私の理想像は“歌って踊れる人”なんですよね。それはスフィアで叶えてもらった部分もあるんですけど、自分の楽曲にも少しずつその要素を込められたらなと。もちろん“寿ロック”も大好きなので、それも大事にしつつ。

パリピみたいな曲も楽しんでもらえた

──ロックを軸に、表現の幅を拡張していくと。実際、寿さんは「Brand New World」や「echo hearts」(いずれも2012年9月発売の1stアルバム「My stride」収録曲)あたりからダンスロックないしシンセポップ的なアプローチを取られていました。

寿美菜子

私の大好きな宮野真守先輩がロックもダンスもバラードも自在に歌っていらっしゃって、ファンの方々もそれを楽しんでるんですよね。その宮野先輩に「どうやって自分の音楽を浸透させていったんですか?」と聞いたら、ただひと言「続けること」とおっしゃっていたんです。だからもしかすると今回のアルバムが“初めまして”の方には想定外の曲もあるかもしれないんですけど、私としてはファンの皆さまへの感謝の気持ちと、自分の意思をしっかり持ってこのアルバムをお届けしているので。「きっと、一度は聴いてくれるだろう」という信頼のもと……。

──いやいや、何回でも聴きますよ(笑)。

そういう信頼のもとでチャレンジできたところもあって(笑)。特に「LOVE JOY FUN」は、ライブを盛り上げる切札になってくれたらいいなと。実は「Another Wonderland」が、 2015年の「Tick Tick Tick」ツアーや「ミュージックレインフェスティバル2017」で意外と好評だったんです。「あのパリピみたいな曲すごい楽しかったです」という感想もいただいたりして(笑)。

──ははは(笑)。クラブミュージック寄りの楽曲でも手応えを得られたということですね。

「そういうのも皆さん楽しんでくれるのね! うれしー!」みたいな気持ちになって。たぶんそこで何かが弾けたのか、道が開けたのか……「Another Wonderland」が次のシングル「Candy Color Pop」につながっている部分もあるので、「LOVE JOY FUN」もその延長で聴いてもらえたらと思います。

寿美菜子「emotion」
2018年1月17日発売 / ミュージックレイン
寿美菜子「emotion」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
3600円 / SMCL-524~5

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寿美菜子「emotion」通常盤

通常盤 [CD]
3100円 / SMCL-526

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CD収録曲
  1. Ambitious map
  2. ミリオンリトマス
  3. Bye Bye Blue
  4. LOVE JOY FUN
  5. アンブレラ・アンブレラ
  6. I wanted to do
  7. Candy Color Pop
  8. Sun Shower
  9. black hole
  10. “YES”
  11. タイムカプセル
  12. feel in my heart
  13. Another Wonderland
  14. Piece of emotion
初回限定盤DVD収録内容
  • 「Ambitious map」 Music Video

ライブ情報

「LAWSON presents 寿美菜子 Zepp Live Tour 2018“emotion”」
  • 2018年5月13日(日)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
  • 2018年5月20日(日)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2018年5月26日(土)大阪府 Zepp Namba
  • 2018年6月3日(日)東京都 Zepp Tokyo
寿美菜子(コトブキミナコ)
寿美菜子
1991年9月17日、兵庫県生まれの声優 / アーティスト。2009年にテレビアニメ「けいおん!」で主要キャラクターの1人、琴吹紬を演じ注目を集め、2010年に同じミュージックレインに所属する豊崎愛生、高垣彩陽、戸松遥と共にユニット・スフィアを結成した。同年9月にシングル「Shiny+」でソロデビュー。2012年には1stアルバム「My stride」を携え、初のソロツアー「First Live Tour 2012 “Our stride”」を行った。その後もソロ、そしてスフィアとして幅広く音楽活動を行い、2018年1月に作詞に初挑戦した3thアルバム「emotion」をリリース。5月にライブハウスツアー「LAWSON presents 寿美菜子 Zepp Live Tour 2018“emotion”」をスタートさせる。