奇妙礼太郎×のん、映画「私にふさわしいホテル」主題歌インタビュー|2人が持つ“原動力”と“イノセンス” (2/2)

2人にとってのイノセント

──映画の中で、作家性を評価する言葉として「イノセント」がたびたび出てきます。お二人は表現者として「イノセント」を大事にされていますか?

のん 私は大事にしているほうだと思います。好きなものに対して、ほかのことを関与させずに、ただ“好き”を突き詰めるようにしているというか。大人になって、社会に飛び込んで、盛り立てられているうちに、「これを捨てればうまくできるんだろうな」「これを削っていけばいいんだ」みたいなことに気付いたときがあったんです。でも、それをしたら自分の才能も一緒になくなっていくと思って。なんというか、五感を封じられるような感じがする。削って無駄がないほうがいい場所もあるとは思うけど、演技って、五感とか皮膚感覚が弱まると魅力的ではなくなってしまうので。そうはなりたくないと思いながら、ここまでやってくることができました。

奇妙 いいなあ。カッコいい。僕は「いろんなものがあっていい」という世の中が好きで。 “譲れないもの”というのはみんなにあるのかなと思うんですけど、それを大事にすることがイノセントなのかもしれないですよね。

左から奇妙礼太郎、のん。

左から奇妙礼太郎、のん。

──これまでに、加代子のように「自分が絶対に叶えたいことのために無茶をした」という経験はありますか?

のん 若いとき、とあるオーディションに受かりたくて。高校生の役で制服を着ていかなきゃいけなかったんですけど、なんとか印象を残すために、付けていたリボンを投げ捨てて踏み付けたことがあります(笑)。結局落ちちゃったんですけど、あとから審査員をしていた方にご挨拶する機会があって「あのオーディションのことは覚えてます」と言ってもらいました。あれは私の中で「夢暴ダンス」的なエピソードです(笑)。

奇妙 しょうもない話なんですけど……小学2年生くらいのとき、ばあちゃんがハンバーガーをいっぱい買って帰ってきたことがあったんですよ。当時まだ食べたことなかったから、そのときにスイッチが入って、チーズバーガーを一気に4つ食べました。

のん あははは!(笑) 小学生のときですもんね? よくお腹に入りましたね。

奇妙 そうですね(笑)。

のん ……あ、私もあった!

奇妙 なんですか?

のん 私、白米が大好きなんですね。中学生のとき、すごくお腹が空いていて、朝に白米を6合食べてました。

奇妙 うわあ! すごっ!

のん 通ってた中学には運動部しかなくてソフトテニス部に入ったんですけど、部活が始まってからお腹が空いてしょうがなくて。自分で炊いて食べてました。

奇妙 6合はすごいなあ。エピソード負けしました(笑)。

──最後に、お互いに聞きたいことはありますか?

奇妙 僕はもう「ありがとうございます」しかないです。うれしいですね。

奇妙礼太郎

奇妙礼太郎

のん 私は聞きたいことがあって……休日は何をされてますか?

奇妙 休みですか? ……友達とごはん食べてるときが一番楽しいですね。

のん 友達と頻繁に会いますか?

奇妙 そうですね。大阪出身なんですけど、月1回くらいは仕事で関西に行っていて、そのときに一緒にごはんを食べに行きます。それが楽しみですね。

のん 大阪でオススメのごはん屋さんはありますか?

奇妙 「てんま」っていう串揚げ屋さんがおいしいです!

のん ありがとうございます! 奇妙さんは学生時代からバンドを組まれていたんですか?

のん

のん

奇妙 組んでましたね。

のん ボーカル?

奇妙 そうですね、はい。

のん その頃から曲も作られていたんですか?

奇妙 そんなにいっぱいは作ってないですけど、やってましたね。ギターウルフがすごく好きでコピーバンドをやってました。

のん 今の奇妙さんを形成したアーティストは?

奇妙 好きな人はいっぱいいますけど……音楽ではないんですが、土田世紀さんというマンガ家がすごく好きで。マンガ雑誌で連載されていた「同じ月を見ている」という作品を膝抱えて号泣しながら読んでました。それが19歳くらいのときです。そのときの気持ちは、そんなに変わらないですね。

のん イノセントですね!

奇妙 やったー!(笑) 僕のイノセントを見つけてもらった!

左から奇妙礼太郎、のん。

左から奇妙礼太郎、のん。

プロフィール

奇妙礼太郎(キミョウレイタロウ)

大阪府出身。2008年より奇妙礼太郎トラベルスイング楽団として活動し、バンド解散後は天才バンド、アニメーションズなどを経てソロアーティストとして活動している。2017年にメジャーデビューし、同年9月に1stアルバム「YOU ARE SEXY」、翌2018年9月に2ndアルバム「More Music」をリリース。 2021年6月にオリジナル作品としては約3年ぶりとなるミニアルバム「ハミングバード」をビクターエンタテイメントより発表し、翌2022年4月に4年ぶりのフルアルバム「たまらない予感」、2023年6月に音楽活動25周年を記念したスタジオアルバム「奇妙礼太郎」をリリースした。2024年12月には、のん主演映画「私にふさわしいホテル」主題歌「夢暴ダンス」を発表した。またボーカリストとして、サントリーBOSSゴールデンタイム「ザ・ドリフターズ編」、スズキ自動車「ショコラ」などさまざまなCM曲の歌唱を担当している。

のん

俳優・アーティスト。1993年生まれ、兵庫県出身。2016年公開の劇場アニメ「この世界の片隅に」で主人公すずの声を演じ、この作品が「第40回日本アカデミー賞」最優秀アニメーション作品賞を受賞した。2022年2月に自身が脚本、監督、主演を務めた映画「Ribbon」が公開に。同年9月公開の映画「さかなのこ」では「第46回日本アカデミー賞」優秀主演女優賞を受賞。音楽活動では、2017年に自ら代表を務める音楽レーベル「KAIWA(RE)CORD」を発足。2018年5月に高橋幸宏、矢野顕子、大友良英、真島昌利らが参加した1stアルバム「スーパーヒーローズ」、2023年6月に2ndアルバム「PURSUE」をリリースした。