サスケ×キボウノアカリ|音楽がつなぐ、みんなの願い

奥山裕次(Vo, G, Pianica)と北清水雄太(Vo, G, Piano, Harmonica)からなるデュオ・サスケが、株式会社ヒトトヒトが主催するプロジェクト「#キボウノアカリ」の応援サポーターに就任。この企画のために新曲「キボウノアカリ ~No Rain, No Rainbow~」を書き下ろした。

「キボウノアカリ」は3月にローンチされた新たなソーシャルプラットフォーム。オフィシャルサイト上に自分の夢や願い事といった“キボウ”を投稿することで、SNSを通して多くの人とコミュニケーションを取ることができるほか、集まった“キボウ”の中から選ばれたいくつかの夢がクラウドファンディングなどを活用して実現される。コロナ禍の中で誕生したこの企画に感銘を受けたサスケは、「#キボウノアカリ」のテーマソングとして新曲を制作。インディーズ時代の楽曲「青いベンチ」の大ヒットを経験し、昨年サスケ結成20周年を迎えた北清水と奥山の2人に、プロジェクト参加までの経緯やテーマソングに込めた思いなどについて語ってもらった。

取材・文 / 秦野邦彦 撮影 / 岩澤高雄

「キボウノアカリ」とは?

株式会社ヒトトヒトが企画運営する新たなソーシャルプラットフォーム。一般から募集した夢や願い事といったさまざまな“キボウ”をクラウドファンディングなどを用いて実現していくプロジェクト「#キボウノアカリ」が、今年3月に始動した。オフィシャルサイトでは、誰でも自由に“キボウ”を投稿することが可能で、無数の“キボウ”がキューブに映し出される様子を楽しむことができる。また各自が投稿した“キボウ”をSNSで共有することも可能。現在サスケと松浦航大の2組が本企画の応援サポーターを務めており、今後サスケ書き下ろしによるテーマソングを使用したプロジェクトムービーの公開が予定されている。

“奥霊”のちから

──最近、お二人はよくテレビ番組に出演されていますよね。しかも音楽番組だけでなく「有吉の壁」(日本テレビ系)や「爆笑!ターンテーブル」(TBS系)といったバラエティ番組にも登場されて。

サスケ

北清水雄太(Vo, G, Piano, Harmonica) 去年「いろいろテレビに出たいね」って奥山と話してたんですよ。僕らはよく「17LIVE」で配信企画をやってるんですけど、そこで軽口の1つとして「奥山の言葉は言霊ならぬ“奥霊”(おくだま)といって、言葉にすると願いが叶う」みたいな話をしてまして(笑)。昨年「CDTVライブ!ライブ!」(TBS系)の生放送で歌わせてもらったとき、「来年もいろいろテレビに出たいね」「いや絶対出られるよ」とか言ってたら、ありがたいことに今年に入ってどんどん番組が決まったんです。これはきっと“奥霊”効果だねと(笑)。

奥山裕次(Vo, G, Pianica) あのとき言っててよかった(笑)。でも、本当にテレビ番組に出たいなという気持ちを言葉にすることで、それが叶うような気がしたんです。そしたら本当に出演が決まっているから、やっぱり声に出していくことって意味があるんだなと思いましたね。

北清水 これだけハイペースでテレビに出させていただくことはこれまでのキャリアの中でなかったことなので、不思議な感じがしています。コロナの影響でランキング番組が増えたこともあると思いますが、僕たちの「青いベンチ」(2004年発表)がそういう番組の世代別ベストソングランキングに入れていただくことも多いし、いろんな要因があってのことだろうなとは捉えていますけど。

──昨年はサスケ結成20周年でしたが、お二人のキャリアの新たな一歩という意味でいいスタートが切れている感じがしますね。YouTubeでもアーティストから一般の方まで、たくさんの方が「青いベンチ」をカバーしていますし。

北清水雄太(Vo, G, Piano, Harmonica)
奥山裕次(Vo, G, Pianica)

北清水 そうですね。僕らもカバー動画はよく観ています。デビュー曲である「青いベンチ」を今でも歌ってくださったり聴いてくださる方がこれだけいるんだなと、僕ら自身もすごくうれしく思っています。

──今回お二人は「#キボウノアカリ」というプロジェクトの応援サポーターに就任し、企画の公式テーマソングを制作することになりました。まずはこのプロジェクトに参加することになった経緯を聞かせてください。

北清水 コロナ禍以降、誰にとっても大変な状況が今もなお続いていますが、僕らもライブ活動がほぼゼロになりまして。配信をやったりSNSで発信したりといろいろ挑戦しているところなんですが、そういう状況の中で「#キボウノアカリ」を主催する方から、プロジェクトのテーマソングを書き下ろしてほしいとお話をいただいたんです。この企画は、たくさんの人の夢や願い事を“キボウ”と呼び、それらをキューブ型のビジョンに映し出して、SNSを通してたくさんの人と“キボウ”を共有し、実際に“キボウ”を実現していくプロジェクトだと伺いまして。この試みは大変な状況下でもたくさんの人たちの気持ちを前向きにできるかもしれないし、集まった願いが本当に叶っていったら、多くの人の心に光を灯すことができるんじゃないかなと思い、「僕たちでよければぜひ」とお返事しました。

奥山 僕自身もそうなんですが、このコロナ禍によって、皆さん本当にやりたいことに気付かされたんじゃないかなと。中にはゴールを見失ってしまうこともあるかもしれないけど、改めて自分は何がしたいのかをゆっくり考える時間にもなっていると思うんです。この「#キボウノアカリ」というプロジェクトは、そうやって自分自身の気持ちや夢を見つめ直すきっかけになるかもしれないし、僕の“奥魂”じゃないですけど(笑)、実際に言葉にすることで願いが実現へと向かっていくこともあると思っていて。

──お二人もTwitterにご自身の“キボウ”を投稿されていましたね。北清水さんは「ライブツアーをしたい」。奥山さんも「今年中にワンマンライブを実現させたい!」。お客さんの前で歌いたいという思いは共通なんですね。

北清水 そうですね。僕たちはストリートから始まり、メジャーデビューを経て20年以上キャリアを積んできましたけど、これだけライブができないことは活動中一度もなかった。ミュージシャンとしても、曲を作って歌を直接届けることがずっとベースにあったので、それができない今の状況は本当に苦しいですね。ライブハウスもどんどん潰れていってしまうし、音楽やエンタテインメントそのものが崩壊する危機を感じながら、皆さんと同じように歯を食いしばってがんばっています。早くコロナに収束してもらいたいし、ライブという形で生の声と生の演奏を届けたい。そしてそこでお客さんの生の熱を僕らも受け取りたい、という“キボウ”が僕らにはありますね。

サスケ

奥山 “キボウ”の内容を合わせようと話し合ったわけじゃなかったから、Twitterでお互いの投稿を見たとき、やっぱり思いは同じだったんだと思いました。コロナ禍以降も数回だけイベントでライブをやらせてもらいましたが、そのときやっぱりお客さんの前で歌うという現場の熱さを改めて感じて。ライブって今まではごく当たり前にできていたことだけど、できなくなってからはより一層、直接音楽を届ける大切さを痛感しました。僕らの原風景であるストリートでのパフォーマンスも、今では街で見かけることも少なくなってしまったし、ちょっと寂しいですね。

──一方で配信ライブのように、新しい技術で音楽を届ける手段も登場していますよね。

北清水 そうですね。でも、ライブの現場そのものは、やっぱりなくならないでほしいなという思いがあります。直接伝わってくる温度や、音の振動、目の前にいるからこそ感じられる感情などいろんなものがあると思いますが、それはお客さんだけじゃなく、僕ら演者側にとってもまったく同じことで。僕らがいる空間にお客さんがいて笑顔を見せてくれたり、今はなかなか難しくなりましたけど一緒に「青いベンチ」のサビを繰り返して歌ったり。僕らのライブにとって当たり前の光景が早く戻ってくるといいなと思います。

奥山 特に僕らのライブはお客さんとの距離感が近いからそう思いますね。小さな会場でお互いにコミュニケーションをとりながらライブをしていたので、そういうライブがやりづらくなってしまって歯がゆいですけど、今は我慢ですね。また僕たちらしいライブが再開できる日を楽しみにしています。

内なる声が聞こえてくる曲

──プロジェクトの公式テーマソング「キボウノアカリ ~No Rain, No Rainbow~」は、今のような思いをお二人で話し合いながら作られていったんですか?

サスケ

北清水 そうです。主催の方も楽曲については僕らにお任せしてくださったので、曲の方向性は自然と決まりましたね。今回の場合、「#キボウノアカリ」というプロジェクトのテーマを踏まえたうえで、たくさんの人が希望を持って前を向けるような曲にしたいという思いは早い段階で合致していて。ソングライターとして僕らが感じていることをそのままストレートに表現すれば、自然と企画とリンクするだろうなと。

──アイデアもいろいろ浮かんだのではないでしょうか。

北清水 最初は「キボウノアカリ」に集まった皆さんの“キボウ”を歌詞に取り入れるという案もあったんですが、「これがしたい」「あれがしたい」という願いをそのまま入れ込もうとすると、歌詞の内容がちぐはぐな曲になって、メッセージが伝わりにくくなってしまうなと。だから最初にベースとなる歌詞と曲を僕らが作って、そのあと曲中に皆さんからもらった“キボウ”の一部を取り入れるという流れにしました。

──なるほど。

北清水 曲自体には「No Rain, No Rainbow」というタイトル通り、雨が降ってこそきれいな虹がかかるんだよというメッセージを自分なりに込めていて。僕らでセレクトした“キボウ”を、間奏の部分にセリフとして入れさせてもらったんです。あと、子供たちにも参加してもらって最後のコーラスパートを録ったんですけど、そういう意味でも世の中のいろんな声が聞こえてくる1曲になったなと思います。きっとこの曲を聴いていると、リスナー自身の内なる声や“キボウ”も聞こえてくるんじゃないかなって。いい形でプロジェクトのテーマを表現できたと納得しています。

サスケ

──音源を聴かせていただきましたが、歌詞全体を通して「今は雨が降っているけれど、雨上がりの空に架かる虹を一緒に見に行こうよ」という、お二人の前向きな思いが伝わってくる曲だなと思いました。

北清水 そうですね。僕はこのコロナ禍という状況が、この曲にとって重要な裏テーマになると感じていたので、思い通りにいかない今の状況もしっかりと曲の中で表現しなくちゃと思っていました。プロジェクトチームとの最初の打ち合わせでもその旨をお伝えしていたので、思っていた通りの形になってよかったですね。