ナタリー PowerPush - keeno
伝説のDarkマスター、ついに1stアルバム完成
「glow」のサビは、よくこんなヘンテコな歌いだしが出てきたなと思います
──「伝説のDarkマスター」というタグがあるくらい、keenoさんといえば初音ミクAppend darkの使い手という印象があるのですが、実際ほとんどの曲でミクdarkを使われていますよね?
はい。単純に声が好きですし、自分が作る曲調に一番合っているとも思います。打ち込むときにも素直で扱いやすいですし、実際に私も特別なことをしているわけではないので、調声がいいと言われるたびに申し訳ない気持ちになります。
──keenoさんの曲は、多くのボカロ曲の中でも際立って「エモい」ミクが特徴だと思うのですが、ボカロに感情を込めさせる秘訣などあるのでしょうか?
ミクdarkの声質によるところが大きいとは思いますが、自分で歌いながら丁寧に打ち込むようにはしています。
──例えば「glow」の「夕暮れの涙が出そうな赤」という部分などで顕著ですが、独特の譜割りと鮮烈なメロディが心に残ります。
「glow」のサビの歌いだしは、特に何も考えず弾き語りで出てきたまま使ってしまったんですが、今聴くとよくこんなヘンテコな歌いだしが出てきたなと思います。今もできるだけわかりやすい言葉を使って自然に耳に入ってくるメロディになるように心がけています。
──シンプルな言葉と巧みな比喩を使い、悲しみ、あこがれ、恋心などを鮮烈に描く詞が印象的ですが、普段作詞はどのようにされていますか?
詞は弾き語りでメロを作っているときに同時に作っていきます。歌っているときに自然に出てくる言葉を大事にしたいとは常々思っていますし、そのほうがメロに対しての言葉の乗り方も自然な気がします。ただ、毎回同じような言葉や言い回しになってしまうのが欠点だとは自覚しています。
──詞の中では具体的な出来事はほとんど明かされません。これは聴き手に解釈をまかせるということでしょうか?
聴いていただいた方の思い出や現在に重なればいいなと思っています。具体的な物や出来事を出してしまうと僕だけの曲になってしまう気がするので。
雨で外出できない時にでものんびりと聴いていただけたら
──メジャーデビューアルバム「in the rain」が9月18日に発売となりました。
何度も延期を重ねてしまい申し訳ございませんでした。実はまだお店に並んでいるのをこの目で確かめたわけではなく、リリースとなった今でも実感はあまり湧いていませんが、購入してくれた方がメールやTwitterで感想を送ってくれると、作ってよかったなと思いますし、反応がもらえてとてもうれしいです。
──今回のアルバム全体でのテーマなどはありますか?
今まで制作してきた楽曲はほとんど収録されていますし、自己紹介のようなアルバムだと思います。アルバムのテーマはタイトルの通り「雨」です。
──「depth」「fade」「grief」「wipe」の4曲は新曲ですか?
その4曲は今まで誘っていただいた、いろんなコンピレーションCDに収録していたものになります。動画としては発表していませんが、それぞれ好きな曲なので今回のCDにも収録しました。
──曲タイトルはほぼすべて1つの英単語になっています。これは理由があるのでしょうか?
見た目もシンプルだしタイトル決めで悩まなくていいからと思って始めたんですが、最近はそれにも愛着が湧いてきて、曲名を決めるときに単語を探すのが楽しいですね。ただ、たくさん並ぶとたまにどれがどの曲か自分でもわからなくなります(笑)。
──最後にアルバムを購入された方、しようとしている方に向けてメッセージをお願いします。
「in the rain」を手にとってくださった皆さま、ありがとうございます。「glow」を発表してから現在までのほぼすべてを詰め込みました。タイトルの通り、雨で外出できないときにでものんびりと聴いていただけたなら幸いでございます。また、もしこのCDに興味を持っていただけたら、一度クロスフェードや公式サイトを覗いていただけるととてもうれしいです。何卒、よろしくお願いいたします。
- メジャーデビューアルバム「in the rain」/ 2013年9月18日発売 / EXIT TUNES / QWCE-00283
- [CD] 2000円 / QWCE-00283
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収録曲
- dusk
- longing
- crack
- lying
- glow
- recur
- fix
- fade
- bitter
- grief
- depth
- wipe
- drop
- tears
- in the rain
keeno(きーの)
2010年に動画共有サイトに投稿した「glow」が、初作品にも関わらずまたたく間に注目されたボカロP。初音ミクAppend dark(通常の初音ミクより暗い表情の声を出すオプション)を駆使した楽曲で知られ、柔らかなギターの音色、洗練された優しい世界観にも定評がある。その後も絵師の麺類子とのコラボで「crack」「longing」「fix」などの人気曲をマイペースに投稿。2013年9月にはEXIT TUNESより1stアルバム「in the rain」をリリースした。