かたこと|2ndミニアルバムに詰め込んだ 3ピースバンドのロマン

一番気持ちよく飛んでいく母音は?

──2曲目の「ラブ&ポップ」は夏空が似合うアッパーチューンです。

長尾 さわやかな方向に振り切った曲を一度作ってみたいよねという話になって。清涼飲料水のCMソングのようなイメージで作りました。

──この曲はドラムが印象的でした。こういう曲調の場合、手数を増やしたり、シンバルの音を多めに入れたりすることで、キラキラとした感じを演出する方法が選ばれがちですが、そうではなく、大きな拍感でゆったりと叩いていて。

伊東 そうなんですよ! サビは4つ打ちなんですけど、あえてビートを大きめにとっているんです。キックが思ったよりタイトな仕上がりになったんですが、それがまた曲のさわやかさを倍増させていて。この曲のドラムはいい感じにまとめられたなと思っているし、そう言ってもらえてめっちゃうれしいです。

──「ラブ&ポップ」のようにポップに振り切った曲こそ、プレイヤーとしての腕の見せどころだという意識もありますか?

長尾 そうですね。ベースラインも1音1音こだわっていたよね。

 うん。この曲はレコーディングが大変でした。

──明るい曲が2曲続いたあとの「わたしだけの夜」は、一転してシリアスな曲です。

長尾 マイナーキーでクールな曲はデモにはいっぱいあったんですけど、バンドでしっかり作ったことはなくて。「じゃあ今回やってみようか」というのがこの曲の出発点でした。テクニカルなフレーズや転調、変拍子も取り入れていて。間奏は4分の7になって、4分の5になって、4分の3になって……という構成ですけど、ただ複雑なだけじゃなくて、カッコよく仕上がったなあと思っています。バンドの新境地といえる曲になったかなと。

 僕、一番気に入った歌詞を書けたのがこの曲で。

──特にどこがお気に入りですか?

 全部気に入っているんですけど、やっぱりサビですかね。「拓海が歌うんだったら、母音はどの音にしたら一番気持ちよく飛んでいくだろう?」と考えた結果、「a」と「e」の音がいいなと思ったので、「重ね重ね」という言葉を使っていて。そういうふうに、拓海が歌うことを想定したうえで歌詞を考えるのが僕なりのこだわりなんです。

かたこと

毎日焦燥感に苛まれている

──4曲目の「Lonely Day」はカントリー系で温かみのある曲ですね。

長尾 デモの段階から「Lonely Day」と歌っていたので、このワードに即して作ろうと思いつつ、その先の歌詞は純にお願いして。そのぶん、僕は作曲の部分を詰めていったんですけど……この曲は完成したのがかなりギリギリでしたね。

 本当にギリギリだった(笑)。

長尾 歌録り前日の深夜に2人で電話しながら「いや、この言葉のほうがいいんだよなあ」みたいなことを話していた覚えがあります。あと、2番のBメロでワウギターが入っているんですけど、それは拓人から「入れてほしい」と言われて。

伊東 前作までは「ギターをこうしてほしい」というふうに、自分以外のパートに干渉するようなことは言わなかったんですけどね。今回は「絶対ワウ踏んでくれ」と言いたくなっちゃって。

 僕はワウが入るのを知らなかったので、聴いたときにびっくりしたんですけど、歌詞がちょうど「おしゃれして出掛けようか」の部分だから、ご機嫌な情景描写とワウがすごく合っているなと思って。だから最高の形になりましたね。

かたこと

伊東 俺、歌詞はこの曲が一番好きです。すごく優しいし、一番生活感がある気がする。

 それはたぶん、自分のベース録りが作詞より前に終わっていたからで。気持ち的にホッとしていたから、優しい歌詞になったんだと思う(笑)。

伊東 そういうことだったんだ!(笑)

──5曲目の「TWENTY」はどのように作っていきましたか?

長尾 この曲はタイトルからですね。僕らは昨年二十歳になって成人したんですけど、実際20代になってみたら、形式的には大人でも「まだ大人になりきれていないなあ」と感じていて。毎日焦燥感に苛まれているというか。

──焦燥感?

長尾 バンドをやっているから余計にそう感じるのかもしれないんですけど……周りの同世代を見ると、就職とかで人生の次のステップに行くタイミングの人たちが多くて。この道を選んだことは後悔してないけど、どうしても周りとの差を感じる瞬間があるというか。それをひと言で言い表すとしたら、焦燥感なのかなと。

伊東 わかる。20代になってから急に焦っちゃう感じはあるよね。

 うん、ちょっとヒリヒリするような。その焦燥感がサウンドにも歌詞にも出ているなあと思いますね。

──間奏のギターソロも最高ですね。

長尾 僕、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTも好きで。このソロはアベフトシさんと同じくテレキャスターのリアピックアップで録っているんですけど、フレージングにもリスペクトを込められたし、すごく気に入っています。

深夜ラジオへのリスペクト

──6曲目の「ミッドナイト・トーキョーレディオ」は先ほど話題に上がりましたが、7曲の中でも異色の存在だと感じました。

長尾 この曲だけドラムから作り始めたんですよ。外出自粛期間中、拓人からドラムを打ち込んだデータをワンコーラス分もらって、そこに僕がギターと歌を付けるというやり方で作っていったので、テンポ感もほかとは全然違いますね。さっき話したように、こういう構成になったのは、僕と拓人がその時期ちょうどジュディマリにハマっていたからで。あと、僕が個人的に「転調をいかに小難しくせずに聴かせられるか」ということを考えていた時期だったことも影響していますね。

 歌詞もめちゃくちゃいいんですよ。

長尾 僕の好きな深夜ラジオや、ニッポン放送がある有楽町という街へのリスペクトを込めた内容になっています。有楽町には実際に3人で行ったので、そのとき感じたことも書いていますね。

──そしてラストを飾るのが「彗星」です。

長尾 言うなれば、締めのしょうゆラーメンのような。

伊東 その例え、ずっと言ってるよね(笑)。

長尾 そう(笑)。ここまでの6曲でいろいろな方向に行った分、最後には、今まで僕らがやってきたことを踏襲した曲を作りたいなと思って。何年後かにライブで演奏したときに、自分たちもお客さんも「あのときこうだったなあ」としみじみ思い出せるような曲になったらいいなあと思っています。

かたこと

Zepp規模のツアーを続けたい

──今回のアルバムができあがってみて、改めてどんなアルバムになったと感じていますか?

 今の僕らにできる最大限を詰め込んだアルバムですね。昨年リリースした「UNITS」は全国流通1枚目ということもあり、わかりやすさを重視しました。だけど今回は2枚目ということで、前作ではあえて見せなかった部分も含めて、いろいろなカードを切っていったイメージで。

長尾 「かたことってこういうバンドですよ」というのが色濃く出ているんじゃないかと思います。

──最後に、バンドとして実現させたい目標があれば教えてください。

長尾 直近の目標は、渋谷CLUB QUATTROでワンマンをすること。バンドをずっと続けていくうえでの目標は、CDを出して、ツアーでZeppとかを回って、チケットもちゃんと売り切って……という繰り返しを10年、20年先も続けていくこと。今はその2つの目標に向かってがんばっています。

──アリーナやドームではなく、Zeppがいいんですね。できるだけ大きな会場でライブがしたい、ということでもなく。

長尾 はい。Zeppくらいの規模がいいので、ホールもいいと思うんですけど……アリーナクラスの会場に関しては、お客さんとしてライブを観に行ったとき、あんまりいい思いをしなかったんですよ。音響もそうだし、ステージまでの距離がけっこうあるなあと思っちゃって。そういう個人的な経験も踏まえて、バンドの音や熱をちゃんと届けられる距離として、「このくらいまでだったら」と思えたラインがZeppくらいの会場だったんですよね。

 たまに大きいところでやるぶんにはいいけどね。

長尾 うん、イレギュラーはあってもいいとは思う。でも基本は、Zepp規模のツアーをずっと続けていきたいという気持ちです。

公演情報

LOVE&POP [MUSIC] TOUR 2021
  • 2021年8月4日(水)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA
  • 2021年8月6日(金)宮城県 enn 2nd
  • 2021年8月8日(日・祝)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya 2/3(VJ-4)
  • 2021年8月10日(火)東京都 下北沢MOSAiC
  • 2021年8月12日(木)千葉県 Sound Stream sakura
  • 2021年8月13日(金)静岡県 Shizuoka UMBER
  • 2021年8月15日(日)群馬県 前橋DYVER
  • 2021年8月19日(木)大阪府 LIVE SQUARE 2nd LINE
  • 2021年8月20日(金)愛知県 APOLLO BASE
  • 2021年8月25日(水)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2021年9月5日(日)東京都 渋谷CLUB CRAWL

※goomiey「ONE SENSE TOUR」との合同ツアー

かたこと
かたこと
2000年生まれの長尾拓海(Vo, G)、純(B)、伊東拓人(Dr)からなる3ピースバンド。2016年に初ライブとなる「ミュージックレボリューション中学生大会」にてオーディエンス賞、優秀賞を同時受賞して以降、「スクールズアウト 2016」「Tokyo Music Rise 2017 winter」「イナズマゲート 2017」「未確認フェスティバル 2018」など数々のオーディションやコンテストで高い評価を受けてきた。2020年9月に初の全国流通盤「UNITS」をリリースし、翌年2021年7月に2ndミニアルバム「Sherbet」を発表。同年8月から9月にかけてgoomieyと合同の全国ツアー「LOVE&POP [MUSIC] TOUR 2021」を開催する。