ナタリー PowerPush - 片平実

やついいちろう迎えてDJ談義

片平さんも本当は自分を見てほしいんですよ

──数で言うと、年間どれくらいDJをしているんですか?

片平実

片平 数えたことはないですけど、けっこう多いです。自分のレギュラーパーティもあるし、フェスやツアーもあるし。

──やついさんは?

やつい 全然わからないですね。そんなにやってるかな? DJを優先して仕事のスケジュールを立てることは全然なくて、誘われてスケジュールが空いていたらやるって感じです。だいたい、芸人ってそんなに深夜に仕事をしていることはないですからね。あとは自分が主催しているフェス「YATSUI FESTIVAL!」とか、イベントをいくつかやってますけど。

──お2人はお互いのDJプレイをそれぞれどう思っていますか?

片平 まったくタイプが違うと思いますね。さっきやっつんも言っていたけど、やっつんはまず芸人というのがあるのがいいと思う。音楽が好きで、この曲が好きでっていうのが、ピュアにプレイや選曲に出てる。

やつい てらいがないですからね。とは言っても、僕は芸人だからお客さんを楽しませようっていうパフォーマンスになるけど、片平さんのDJを見てると、片平さんはどっちかっていうとシリアスなロックが好きなんじゃないかなっていうのが伝わってきます。

片平 うん。もともと俺は、お客さんを楽しませようと思ってDJしていたわけじゃなかったんですよ。むしろそれはどうでもいい……自分が楽しめればそれでいいって感じだったんです。だから本当に自分が好きなものをかけているという感じで。その後フェスとかに出るようになって、みんなと一緒に楽しめるものってなんだろう?って探し始めたんです。

やつい 初めて片平さんと会ったときに、そういう部分が自分と似ているような気がしてました。リスナー気質というか、ただただ楽しんでやっているなっていう。パーティ気質っていうのかな……そう、片平さんは“パーティ野郎”ですよ。そもそもクラブでスピーカーの上に乗って「ウオー!」ってやってるキッズですから。暴れキッズですよ。

片平 確かに昔、西麻布のYELLOWで増井(修)さんがやっていたパーティに行ったんだけど。そのとき俺、1000人以上入っているフロアのスピーカーに上ってイアン・ブラウン(THE STONE ROSESのボーカル)のダンスのマネをやった覚えがある。まあ酔ってたけど(笑)。

やつい あはははは(笑)。イアンのモンキーダンスですね。

片平 そしたらVJとかも映してくれたりして、「あいつ誰だ?」って感じで注目浴びちゃって(笑)。それからDJの声がかかるようになったんですよね。「お前面白いな」って。

やついいちろう

やつい そういえば僕のこの髪型、最初はイアンの髪型をマネしたものだったんです。あと、いまだにDJやるときに、イアンのライブ中の動きをマネてます。

片平 あー、確かにやってるね(笑)。あと思うのは、やっつんとはそこまでかける曲が被らないんですよね。だから一緒にイベントに出るときはやりやすいです。

やつい THE STONE ROSESが好きなのは一緒なのに。(突然)……まあ、結局オーディエンスが主役だから。

片平 あはははは(笑)。

──イアンが言った言葉ですね。

やつい 「お客にスポットを当てるんだ、俺たちのほうは暗くしろ」って。

片平 いやいや、でも本当にそうだと思いますよ。俺としては自分が注目されるよりも音を感じてほしい。そこは大事なところなんです。エンタテインメントのやり方はいろいろあると思いますけど。

やつい 僕は僕を見てほしいですけどね。

片平 もちろんそういう人はそれでいいんだけど(笑)。

やつい そういえば、さっきイアンの「お客が主役だ」みたいな台詞出しましたけど、それなのにTHE STONE ROSESのデビュー曲のタイトルは「憧れられたい」(原題:I WANNA BE ADORED)なんですよね(笑)。話が違うじゃねえかっていう。THE STONE ROSES論になってますけど。でもね、片平さんも本当は自分を見てほしいんですよ。だって見てほしくなければスピーカーに上がらないじゃないですか(笑)。

片平 まあ……注目されたいかどうかはわからないけど、“勝ちたい”って気持ちはあるかも。

──勝ちたいっていうのは、ほかのDJにオーディエンスの盛り上がりなどで勝ちたいということ?

片平 全部含めて……なんとなくですけどね。

やつい でもそれは僕もある。でも僕の場合は“思想”みたいな話で、本当は誰も勝ち負け競ってませんからね(笑)。戦いとか挑まれているわけじゃないのに、「負けない!」みたいな気持ちとか、「勝つぞ」って思って自分を鼓舞する感じ。

片平 俺はDJをしながらパフォーマンスをするタイプじゃないから、とにかく音で判断してほしいなっていうのはありますね。音っていうのは、ミックスのスキルとかそういうことじゃなくて、フロアで鳴ってる音ってことですけど。

やつい 「その曲、カッコいいね」みたいなこと?

片平 うん。なんかそんな部分をお客さんと共有したいんです。

「ロックって言わせてくれ」

──やついさんは、今回の片平さんのミックスCDはもう聴きましたか?

やつい はい。データで聴いたら曲ごとに切れ目が入っていたので、つながりに関してはわからなかったんですけど。でも片平さんだなあって感じでしたね。

片平 わかりやすかった?

やつい 全体的に、片平さんの現場のあの雰囲気がすごく出ているっていうか。あと、片平さんと仲のいいアーティストの曲がたくさん入っているなあとか。カッコいい系の人たちの曲が……後半なんかは全然違うけど(笑)。僕の好きなアーティストもけっこう入っていました。

片平 やっつんが先月出したミックスCDも、やっつんらしい感じでしたね。アイドルとかの曲も入っていて。やっつんって、自分のこと“ロックのDJ”とは言ってないんですよね。楽しませるための、エンタテインメントとしてのDJ。ただ好きな曲を使うというか。そういうピュアな選曲ですよね。いいものをいいと思っているだけっていう感じ。俺はもはや「ロックって言わせてくれ」って思ってますけど(笑)。

──「ロック」という言葉やジャンルにこだわりがあるんですか?

片平 うーん、なんて説明していいかわかりませんが、気持ちの問題でしょうかね。

やつい ロック野郎ですからね、片平さんは。

ミックスCD「ROCK ON PARADE -MEGA ROCK MIX CD-」/ 2013年7月31日発売 / 2500円 / EMI Records Japan / TOCT-29183
収録曲
  1. It's Alright To Dance(Yes!!! Happy Monday!!!) / the telephones
  2. Psycho Monday / avengers in sci-fi
  3. 喜怒哀楽 plus 愛 / 木村カエラ
  4. ハートに火をつけて / 9mm Parabellum Bullet
  5. CARVE WITH THE SENSE / ACIDMAN
  6. 1sec. / 10-FEET
  7. Blah Blah Blah / SiM
  8. Deeper Deeper / ONE OK ROCK
  9. DAY 1 / MIYAVI vs YUKSEK
  10. Bubble of Life / MAN WITH A MISSION
  11. NICE DAY / RYUKYUDISKO Feat. BEAT CRUSADERS
  12. BEAT SURF / Dragon Ash Feat. PES, VERBAL
  13. Hale no sola sita~LA YELLOW SAMBA~(NICO NICO Ver.) / PE'Z
  14. アイデンティティ / サカナクション
  15. Sugar!! / フジファブリック
  16. PERFECT BLUE / Base Ball Bear
  17. エントランス / ASIAN KUNG-FU GENERATION
  18. 荒狂曲“シンセカイ” / BIGMAMA
  19. Dear Enemies / [Champagne]
  20. Paranoia / WHITE ASH
  21. S.T.A.Y. / The Mirraz
  22. Dancing Zombiez / a flood of circle
  23. 修羅 / DOES
  24. ロメオ / Blankey Jet City
  25. STILL ALIVE / 布袋寅泰
  26. You & Me Song / 氣志團
  27. FINAL COUNTDOWN / YOSHII LOVINSON
  28. 交渉 No.1 / GREAT3
  29. スロウライダー / サニーデイ・サービス
  30. 能動的三分間 / 東京事変

<ボーナストラック>

  1. Days/Garas
片平実(かたひらみのる)

DJ。イベントオーガナイザー。1996年より東京・下北沢Club Queにてレギュラーパーティ「Getting Better」を開始する。2001年に「ROCK IN JAPAN FESTlVAL」初出演。2003年には「COUNTDOWN JAPAN」でもDJを務める。2009年には邦楽ロックのみで構成したミックスCD「ROCK THE MIX」をビクターエンタテインメントからリリース。その後は他アーティストの作品へのリミックス提供や映画「ソラニン」の公開記念コンピレーションアルバムの監修など、幅広い音楽の知識を生かしてさまざまな活動を展開している。2012年にはEMI Records Japan移籍後初のミックスCD「ROCK ON ROCK」を発売。2013年7月には自身のソロプロジェクト「Garas」の楽曲も収録したミックスCD「ROCK ON PARADE」を発表した。

DJやついいちろう

1997年に今立進とエレキコミック結成。お笑い芸人として舞台やテレビで活躍する傍ら、ライブハウスや音楽フェスでDJを開始。DJやついいちろう名義でミックスCDをリリースするなど幅広い音楽活動を展開している。2011年6月にはIMALUとのユニットSUSHI PIZZAを結成し「マイティDISCO」を、2012年7月には松本伊代 feat. やついいちろう名義で配信シングル「センチメンタル・ジャーニー 激ファン MIX」を配信リリースした。2013年6月には5thミックスCDとなる「YATSUI FESTIVAL!」を発表。またアーティストやお笑い芸人が多数出演する音楽イベント「YATSUI FESTIVAL」を2012年より主催している。