ナタリー PowerPush - 片平実

やついいちろう迎えてDJ談義

片平実がミックスCD「ROCK ON PARADE」を本日7月31日にリリースした。本作は、MAN WITH A MISSION、ONE OK ROCK、サカナクション、[Champagne]をはじめとする旬のアーティストから、東京事変、Blankey Jet City、サニーデイ・サービスといった往年のバンドの楽曲まで全30曲をノンストップミックスした作品。さらにボーナストラックとして自らのオリジナル曲「Days」を収録するなど、片平の選曲のセンスとロックへのこだわりを感じさせる作品に仕上がっている。

今回ナタリーでは片平に加え、6月にDJやついいちろう名義でミックスCD「YATSUI FESTIVAL!」をリリースしたばかりのやついいちろう(エレキコミック)を迎え、DJをテーマにしたインタビューを実施した。

取材・文 / 加藤一陽 撮影 / 小原啓樹

片平さんとはTHE STONE ROSES仲間なの

左からやついいちろう、片平実。

──今回はお2人に“DJ”をテーマにお話を伺えればと思います。お2人はよく現場で一緒になっていると思うんですけど、最初の出会いは?

やついいちろう  何年か前の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」のときですかね?

片平実 そうですね。

やつい あと、片平さんは以前ビクターエンタテインメントからもCDをリリースしていたので、そこで一緒だったんです。片平さんのミックスCDが出て、そのあとに僕も1枚目(「DJやついいちろう(1)」)を出して。

片平 それからもやっつんとはけっこう頻繁にご一緒させてもらっていて。去年も広島CLUB QUATTROで一緒だったし、今回の僕のリリースツアーでも仙台で一緒にやらせてもらいます。

やつい 片平さんにはよくイベントに呼んでいただいていて。あと僕ら、同じ歳なんですよ。だから聴いてきた音楽が似ているんです。なんといってもTHE STONE ROSESね。昔一緒に吉祥寺でTHE STONE ROSESのパーティをやったんですよ。お客さん全然入らなかったけど。

片平 あはははは(笑)。全然お客さんいなかったね(笑)。

──お2人は邦楽ロックのミックスCDのイメージが強いから、意外だと捉える人もいそうですね。

片平 そうはいっても、俺の場合はDJを始めた当初は洋楽ばかりかけていたんですよ。そのときどきで好きな音楽ばかりをかけていたんですけど、イベントを続けているうちにアーティストと知り合いになっていって。そうすると、そのアーティストの人柄とかと一緒に音楽も好きになっていくというか。

片平さんはロック系ミックスCDのパイオニアですよ

──それぞれDJを始めたのはいつ頃ですか?

片平 僕は20歳のときですね。OASISとかBLURとか、そのあたりのブリットポップ全盛だった時期です。その頃はロック系のパーティをやっている場所が限られていた時代で、王子にあったクラブによく遊びに行っていて。そこでDJを見ていて、自分もやってみようって思って始めたんですね。DJじゃなくてバンドをやってもよかったんですけど、DJを見ていたら「これ、自分がやったらすごいことになるんじゃないか」って漠然と思って……ただの妄想ですけどね。それからはイベントを一緒にやる仲間とフライヤーを自分たちで刷ったりしつつ、平日にパーティをやってました。

やつい 僕は2002年です。自覚なかったけど、もうDJを10年以上やってるんですね。今年で11年目です。失敗したなあ……“10周年”みたいなのをもっと打ち出せばよかった。商売チャンスを逃しましたね(笑)。

──2人は共通点が多いですけど、片平さんはDJを職業にしていて、やついさんはさまざまな活動の一環として「DJやついいちろう」があるという点は大きな違いですよね。やついさんの中ではDJとしての活動はどういう位置付けですか? 副業みたいなもの?

やついいちろう

やつい 仕事として捉えたことがないから“業”ではないかな。ホビーですかね。そもそも僕、すべてをあまり仕事だとは思っていないんですね。お笑いのほうは一応仕事だという意識を持とうとは思ってますけど。だからDJは素人みたいなものです。でも人を楽しませるってことに関してはプロですから。ほかのDJの人って、テクニックとかあってうまいでしょ? でも僕はそういうところで勝とうとは思っていないんですよね。DJに対して憧れがあるわけでもないし。ただお客さんを楽しませたいってことと、自分の好きな音楽を大きい音で鳴らせるってことが楽しいってことで続けている感じですね。だからテクニックを上達させたいとか、DJとして名を上げたいとかはまったくないし、だいたい家にDJ機材ないんですよ。現場が多いから機材の使い方とか覚えちゃいますけど。マイクがあればそれでいいという感じですかね。

片平 確かにやっつんってそういうところあるよね。実は俺もプロのDJっていう意識があんまりないんですよ。

やつい えー!? プロでしょうよ、片平さんは!

片平 いやプロって定義付けも嫌というか。わかりやすいからDJって言っているだけで、個人的には“DJのプロ”みたいには思っていないですね。俺にとってDJって、表現の方法の1つなんですよ。DJのほかには何もできないからやってるっていうか。

──とは言え、片平さんはDJのみで生活しているわけですよね?

やつい 片平さんはそこがカッコいいところですよね。DJで生きている。カッコいいですよねえ。

片平 ……ありがとう(笑)。

やつい いや、カッコいいでしょ? だってほかに仕事しながらDJしている人もいっぱいいるし。

片平 もちろんバイトをしなきゃ成り立たない時期もありましたよ。でもバイトって、当たり前ですけど自分の嫌なこともやらなきゃいけないじゃないですか? 例えば嫌いな上司におべっか使ってお金を稼がなきゃいけない。そういうのがすごく嫌だったんですよね。だったら自分の好きなことをして、失敗してお金もらえないほうがなんか気持ちいいなって。それからバイトを辞めて……まあ人生捨てたような感じでしたね(笑)。

──DJのみの生活に切り替えるって、相当な決意が必要だったでしょうね。

片平 そうですね。当時の決意をずっと忘れずにDJやらせてもらってます。だから今はDJのみで。

やつい ……やりましたね、片平さん。片平さんはパイオニアですよ。ロック系ミックスCDの。

片平 そうですかね?

やつい そうですよ。

ミックスCD「ROCK ON PARADE -MEGA ROCK MIX CD-」/ 2013年7月31日発売 / 2500円 / EMI Records Japan / TOCT-29183
収録曲
  1. It's Alright To Dance(Yes!!! Happy Monday!!!) / the telephones
  2. Psycho Monday / avengers in sci-fi
  3. 喜怒哀楽 plus 愛 / 木村カエラ
  4. ハートに火をつけて / 9mm Parabellum Bullet
  5. CARVE WITH THE SENSE / ACIDMAN
  6. 1sec. / 10-FEET
  7. Blah Blah Blah / SiM
  8. Deeper Deeper / ONE OK ROCK
  9. DAY 1 / MIYAVI vs YUKSEK
  10. Bubble of Life / MAN WITH A MISSION
  11. NICE DAY / RYUKYUDISKO Feat. BEAT CRUSADERS
  12. BEAT SURF / Dragon Ash Feat. PES, VERBAL
  13. Hale no sola sita~LA YELLOW SAMBA~(NICO NICO Ver.) / PE'Z
  14. アイデンティティ / サカナクション
  15. Sugar!! / フジファブリック
  16. PERFECT BLUE / Base Ball Bear
  17. エントランス / ASIAN KUNG-FU GENERATION
  18. 荒狂曲“シンセカイ” / BIGMAMA
  19. Dear Enemies / [Champagne]
  20. Paranoia / WHITE ASH
  21. S.T.A.Y. / The Mirraz
  22. Dancing Zombiez / a flood of circle
  23. 修羅 / DOES
  24. ロメオ / Blankey Jet City
  25. STILL ALIVE / 布袋寅泰
  26. You & Me Song / 氣志團
  27. FINAL COUNTDOWN / YOSHII LOVINSON
  28. 交渉 No.1 / GREAT3
  29. スロウライダー / サニーデイ・サービス
  30. 能動的三分間 / 東京事変

<ボーナストラック>

  1. Days/Garas
片平実(かたひらみのる)

DJ。イベントオーガナイザー。1996年より東京・下北沢Club Queにてレギュラーパーティ「Getting Better」を開始する。2001年に「ROCK IN JAPAN FESTlVAL」初出演。2003年には「COUNTDOWN JAPAN」でもDJを務める。2009年には邦楽ロックのみで構成したミックスCD「ROCK THE MIX」をビクターエンタテインメントからリリース。その後は他アーティストの作品へのリミックス提供や映画「ソラニン」の公開記念コンピレーションアルバムの監修など、幅広い音楽の知識を生かしてさまざまな活動を展開している。2012年にはEMI Records Japan移籍後初のミックスCD「ROCK ON ROCK」を発売。2013年7月には自身のソロプロジェクト「Garas」の楽曲も収録したミックスCD「ROCK ON PARADE」を発表した。

DJやついいちろう

1997年に今立進とエレキコミック結成。お笑い芸人として舞台やテレビで活躍する傍ら、ライブハウスや音楽フェスでDJを開始。DJやついいちろう名義でミックスCDをリリースするなど幅広い音楽活動を展開している。2011年6月にはIMALUとのユニットSUSHI PIZZAを結成し「マイティDISCO」を、2012年7月には松本伊代 feat. やついいちろう名義で配信シングル「センチメンタル・ジャーニー 激ファン MIX」を配信リリースした。2013年6月には5thミックスCDとなる「YATSUI FESTIVAL!」を発表。またアーティストやお笑い芸人が多数出演する音楽イベント「YATSUI FESTIVAL」を2012年より主催している。