KANA-BOON|前へと歩み出した3人 バンドの過去、今、未来を語る

KANA-BOONが初のベストアルバム「KANA-BOON THE BEST」とシングル「スターマーカー」を3月4日に同時リリースする。

ベスト盤には全シングル曲と代表曲計28曲に加え、ボーナストラックとして新曲「マーブル」と新録曲「スノーエスカー」を収録。デビューから7年を経たKANA-BOONのこれまでの歩みを感じ取れる作品となっている。

一方のニューシングルは、テレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」のオープニングテーマとして書き下ろされた「スターマーカー」を表題曲にした作品。フジファブリックの金澤ダイスケ(Key)が参加しており、KANA-BOONのポップな音楽性が凝縮された1曲となっている。

音楽ナタリーでは、去年の11月に3人体制となったKANA-BOONにインタビューを実施。バンドのこれまでや新曲「マーブル」が生まれた背景、そしてニューシングルの制作について話を聞いた。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 吉場正和

全部引き連れたまま進みたかった

──まずはベストアルバムについてお話を聞かせてください。このタイミングでベストアルバムをリリースすることになったのは、どういう理由だったんでしょうか?

谷口鮪(Vo, G) もともと、ベストを出そうという話は何度かあったんですよ。でも、今は違うなって思うことが多くて。今回はメジャーデビュー5周年企画も終わり、そこにめしだ(飯田祐馬 / B)の脱退も重なって、ベストを発表することに対する意味も出てきて……新体制になったし、KANA-BOONがこれまで進んできた道をいろんな人に知ってほしかったんですよね。今までのことも全部引き連れたまま進みたかったし、過去と未来を結んでくれるのがこのベストなのかなと。

KANA-BOON

──メンバーの皆さんにとっても、これまでを振り返る機会になりましたか?

小泉貴裕(Dr) そうですね。曲を聴くと、そのときにやっていたライブのこと、お客さんのことを思い出したりするので。いろんなタイプの曲があるけど、本当にいい曲ばかりだし、自分が演奏していることも誇らしくて。がんばってきてよかったと思いましたね。

古賀隼斗(G, Cho) 曲を聴くとレコーディング当時のことがめっちゃ蘇ってくるんですよ。初期の頃は素直なギターを弾いていたというか、周りのことをまったく考えてなくて。

谷口 「俺の音を聴け!」みたいな(笑)。

古賀 そうそう(笑)。音像、音色もそうだし、よくも悪くも自分らしいなと。そのあと、いろんな経験を経て、ギターのアプローチも変わってきて。

──デビュー当初のKANA-BOONは、高速の4つ打ちビートを中心にした音楽性で瞬く間にシーンを駆け上がりました。その頃のことはどう感じてますか?

谷口鮪(Vo, G)

谷口 当時の音楽シーンとかははっきり覚えてないんですけど、曲に関して言えば、今聴いても輝いてますね。「1.2. step to you」もそうだけど、いいバンドだなって。

古賀小泉 うん。

谷口 バンドって大変やなと思うこともあったけど、「ずっといいバンドだったよね」と曲が言ってくれている感じがして。

古賀 そうやな。まあ、過去のことを思い出しても、そんなに落ち込んだりはしないけど。

谷口 なるべくいいことだけしか思い出さないというか、客観的に見てる感じもあって。ただ、最初の頃は失恋の歌が多いなとは思う。めちゃくちゃ個人的なことを詰め込んでたから。

「ないものねだり」と一緒にいろんな世界に飛び込んだ

──皆さんの中で、特に印象に残ってる曲は?

谷口 いろいろありますけど、「フルドライブ」かな。しっかり外に出ていこうとしていた時期で、Mステに初めて出たのもこの曲でした。もともと僕らはオーバーグラウンド志向を持っていたし、「自分たちの曲はこんなにいいんだから、みんな好きになるでしょ」みたいな感覚でしたね(笑)。テレビをきっかけに僕らの音楽に出会ってくれたらいいなと思っていたし、実際、テレビで初めてKANA-BOONを知って、ライブに来てくれた人もたくさんいたんですよ。

小泉貴裕(Dr)

小泉 「ないものねだり」も印象に残ってますね。あの曲でたくさんの人が知ってくれた実感があって。初めて出たフェスは「METROCK」なんですけど、「どれくらいお客さんが集まってくれるのかな?」と思っていたら、びっくりするくらい集まってくれたんです。

古賀 すごかったよね。

小泉 ステージの横のテントも開けて、見えるようにしてくれて。「ないものねだり」でものすごく盛り上がったんですよ。

谷口 でも、途中で演奏が止まったよね。機材トラブルで。

古賀 そうだった!

小泉 トラブルが多かったんですよ。僕も演奏間違えたし。

古賀 それはトラブルじゃないから(笑)。

小泉 (笑)。でも、あのフェスのときに「ここからスタートするんだな」と実感できたんです。

谷口 「ないものねだり」は最初からずっといてくれる曲だし、この曲と一緒にいろんな世界に飛び込んだ感じもありますね。一時期は“「ないものねだり」のバンド”というか、新曲を出しても「ないものねだり」を超えられない気がして、ライブのセットリストから抜いたこともあったんですよ。でも、そのうちにそんなこと関係ないなと思うようになって。超えるとか超えないとかじゃないなと。

古賀隼斗(G, Cho)

古賀 自分たちの曲だからね。僕は「TIME」(2015年1月発売の2ndアルバム)の時期が印象に残ってますね。ベストに入っている曲だと「結晶星」「フルドライブ」「生きてゆく」あたりですけど、その頃からニーズを意識したギターを弾くようになって。さっき「最初の頃は素直に弾いてた」と言いましたけど、2ndアルバムからは「リスナーにどう聴こえるか?」を考え始めたんですよね。例えば「フルドライブ」の最初のフレーズって、けっこう単純なんです。ギタリストとしてはもっと難しいことをやりかったんだけど、「お客さんが求めているのはこっちだな」とシンプルなほうを選んで。

谷口 成長期やな。「TIME」のときは、ちょっと頭も使ってみようみたいな時期だったから。

古賀 そうそう。その後の「Origin」(2016年2月発売の3rdアルバム)のときは、逆に“ニーズを取っ払う”ということをして、できるだけ自分が好きなフレーズを入れて。最近はニーズと自分のやりたいことを共存させるのがベストだなと思ってますね。

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音や歌詞の変化