ナタリー PowerPush - カゲロウ
カゲロウ、ナタリーに初登場!その生々しい音の魅力に迫る
ベース、テナーサックス、ドラム、ピアノという編成で、ガレ―ジパンクとジャズの合間をときに往来し、ときに融合させ、ときに衝突させる希有なバンド、カゲロウ。確かなスキルに裏打ちされたアグレッシブな演奏を身上とする彼らが、2ndアルバム「KAGERO II」をリリース。この新作ではオーセンティックなジャズからポストロック的なアプローチまで、より音楽的なレンジの広がった楽曲を聴くことができる。
そもそも複数の人間が集まってバンドをやる醍醐味とは何なのか? そんなことを再認識させてくれるカゲロウのメンバー全員インタビューをお届けする。
取材・文/石角友香 インタビュー撮影/中西求
中1でブルーノート→テナーサックスの道へ
──ナタリー初登場ということで、まずはカゲロウ結成の経緯から聞かせてください。
白水悠(B) そもそも僕とドラムの(鈴木)貴之がスタジオでよくセッションして遊んでたんです。で、「サックスやピアノがいたらいいなぁ」と思って、Ruppaに声をかけて。
──最初にカゲロウの音を聴いて感じたのは、BLANKEY JET CITYやTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの曲にもありそうなヒリヒリした激しさでした。
白水 昔の曲は確かに、ガレージの中のジャズみたいなものも多かったかな。でも、最近はもう自分たちでも何が背景なのかよくわかんない(笑)。
──白水さんはどんなきっかけでベースを手にしたんですか?
白水 弾き始めたのが15歳で、当時はハードロックとか初期パンクとか、そういうのばっかりやってたな。ベースってピックで弾くもんだと思ってたし。
──Ruppaさんは最初からテナーサックスなんですか?
佐々木“Ruppa”瑠(Sax) 吹けそうなのは何でも吹くんですけど、最初はテナーですね。中1の頃、デクスター・ゴードンやらコルトレーンやら、たまたまテナープレイヤーから聴き始めたのがきっかけで。
──中1でコルトレーンって、どういう環境なんですか(笑)。
Ruppa 親から貰ったのはLED ZEPPELINやQUEEN、エリック・クラプトンとかでしたからね。ブルーノートを手にしたのは、たまたま再発で盛り上がってたからだと思います。
──完璧に音楽の英才教育ですよそれ。
Ruppa そうなんですかね? テナーの前にはピアノやチェロを習ってたけど、中学に入るときに辞めて、スポーツもバスケをやったら怪我だらけで練習もままならず半年で辞めて。ギターは習うもんじゃないと思ってたし。
白水 消去法でサックスなんだ(笑)。
──共通する好きなジャンルがあって集まったバンドじゃないのは、なんとなく予感してましたが。
白水 友達同士で始めた感じでもなかったし、バックボーンも4人とも全然違う。よくロックバンドの人たちが「普段聴いてる音楽の趣味はバラバラです」っていうようなレベルじゃないぐらい、お互いの家にあるCDに共通するものが少ないし(笑)。
脇役にまわれる楽器たちが4トップになる面白さがある
──カゲロウは4人組ですが、管楽器が入るスタイルでは最小編成ですよね。
Ruppa 確かに1ホーンでやってるバンドって意外と少ない感じがしますね。
白水 ベースももう1本欲しいぐらいだもんね?
Ruppa そうだね。君の役割はベースから逸脱し過ぎてるから(笑)。
白水 (笑)。今でも曲を作っていて、エレキギターとかオルガンとか、それこそバイオリンでもラップでもいいんだけど、いたら楽だなと思うことはたくさんあるけど。ウチはレコーディングでもまったくオーバーダビングしないし、そこで生まれた4人にしかできない音になってると思います。まぁ実際に、意思の統一的に4人が今は一番心地いいし、これ以上増えると……。
Ruppa セッション感の出し方が難しくなったり。
白水 でも、この編成にしてはうるさいですからね(笑)。
──実際に鳴ってる楽器の数は4つだけですからね。
白水 脇役にまわれる楽器たちだけど、その楽器で4トップになる面白さがあるし。僕ら、基本的に「ガンガン」しか言わないから。作戦を練るときも「ガンガンいこう!」しか言わないもんね(笑)。
──そういうキーワードで前進していくんですね。
Ruppa あと、智恵ちゃん(菊池智恵子)に曲のイメージを伝えるとき、白水が「ドラゴンボール」に例えたのを私が「BLEACH」に訳したりしたよね。
白水 楽譜に落としたものじゃなくて僕がノートに波動みたいなのを描いて、「Aメロはこうなんです」と説明したこともあったし。
菊池智恵子(Piano) 「ドカーン!」「ドシャーン!」って(笑)。
白水 「Bメロは『ドッカーン!』っつうか『バッコーン!』なんですよ」みたいにね。
Ruppa それをもう5年ぐらいやってる(笑)。
──そういう意味では、やっぱりフリージャズ的というか。
白水 ああ、ルールは決まってるけど、やることは決まってないみたいな。
──じゃあ曲作りの際、最低限のルールはなんですか?
鈴木貴之(Dr) ガンガン行くこと(笑)。
一同 (爆笑)。
CD収録曲
- ROYAL KLOVER CLUB
- CHEMICAL ONE
- AIR
- STRAWBERRY SHAKE
- BAMBOO
- WHAT'S YOUR NAME?
- JAILBIRD
- REVOLVER
- SNAKE PIT
- THE COLD
- DUMMY
- HUMAN WRENCH
カゲロウ
2005年に白水悠(B)、佐々木“Ruppa”瑠(Sax)、鈴木貴之(Dr)らを中心に結成された、4人組インストゥルメンタルバンド。都内を中心にライブ活動を展開し、2009年夏にヴィレッジヴァンガード限定でリリースされたシングル「official bootleg」で世間の注目を集める。この後も「IN YA MELLLOW TONE 3」「NOT JAZZ!! BUT PE'Z!!!」といったコンピレーションアルバムへの参加を経て、同年12月に1stフルアルバム「KAGERO」を全国発売。2010年には、サポート参加していた菊池智恵子(Piano)が正式加入し、現在の編成となる。卓越した演奏力とジャズの枠にとらわれない個性的な楽曲、初期衝動に満ちたパフォーマンスが魅力。
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