音楽ナタリー Power Push - 出雲咲乃

お高くとまれ!2作目で広がるぼくの世界

出雲咲乃が2ndシングル「世界のしかけ」をリリースした。

表題曲は読売テレビ・日本テレビ系ドラマ「遺産相続弁護士 柿崎真一」の主題歌としてオンエアされているナンバー。またアレンジをmabanua(Ovall)が手がけたカップリング曲「はないちもんめ」は体験型イベント「FLOWERS BY NAKED 魅惑の楽園」のテーマソングとして使用されている。

今作のリリースに際し、音楽ナタリーでは出雲へのインタビューを実施した。デビュー作「当流女」発表時には公の場へ姿を見せず、その全貌がベールに包まれていた彼女。今回のインタビューでは歌手になるまでの経緯から新作に込めた思いまでを、飾らない言葉で語ってくれた。

取材・文 / 三橋あずみ

マンガは描けないから歌手になろう

──デビュー作「当流女」を音楽ナタリー特集させてもらった際(参照:出雲咲乃「当流女」特集)、表題曲のアレンジを手がけたJABBERLOOPのMAKOTOさんが、出雲さんの作る曲について「『まだ10代なのに、これまでどんな人生を送ってきたんだ!?』って思った」とおっしゃっていたんです。なので、今日はご本人に「どんな人生を送ってきたのか」を伺おうと思って来ました。

出雲咲乃

あはは(笑)。地元(福岡県北九州市)では普通だったと思います。でも、自分が普通だと思っていたことを東京の人に言うと「マジで?」って言われることもあります。

──具体的には?

高校に行っていなかったこととか。

──それは、どんな理由があったんでしょう。

髪を染めていたりしたから、教室に入れてもらえなかったんです。登校すると、相談室に連れていかれて教頭先生と話してた。だから「それだったら、もう行かんでええかな」って。私の通っていた学校がすごくルールが厳しい学校だったんです。例え髪を染め直して行っても、今度は「ピアスの穴が開いてる」って注意されたりして。

──そうなんですね。

はい。でも友達とは普通に遊んでいたから、自分の中では学校に行っていないという感覚はなかったです。

──ただ教室にいなかっただけ。

そうそう。

──そこから、なぜ歌手を目指そうと思ったのでしょう?

勉強もできないし、バイトもやっていたけど楽しくなくて。私、バイトとかで人に命令されるのがすごくイヤだったんです。だから「自分1人でできる仕事をしよう」と思って。そのときにマンガ家か歌手がいいなと思ったんですけど、「マンガは描けないから歌手になろう」と決めました。

──なぜ、その2つがいいなと思ったんですか?

バカなりに考えた結果です(笑)。

──音楽にはずっとなじみがあったんですか?

そうですね。年齢によって好きな曲の好みは変わったりもしたけれど、ずっと聴いていました。

──好きなアーティストはいますか?

ずっと変わらず好きなのは、影山ヒロノブさん。影山さんは小2のときから好きで、いつも聴いていました。だんだん大人になってくると、みんなR&Bみたいなオシャレな曲を聴き出すじゃないですか。だけど私はずっと“ハチャメチャが押し寄せて”た。

──そうなんですね。最近はどうですか?

最近はアニメや映画のサウンドトラックが好きでずっと聴いていますね。「サントラいいなあ」って(笑)。

全部手探りでした

──歌手になろうと決めてからは、どうやって目標に向かっていったんでしょう。

歌手になろうと決めたのが16歳のときだったんですけど、作り方も何もわからなくて……とりあえず「楽器できたほうがいいな」と思ってギターを買ったんです。1万円の初心者セットみたいなものを。そこからがんばって練習をして、弾けるようになって。アレンジもがんばりたいと思ったから、パソコンにフリーソフトを落として。

──本当に、誰の手を借りるでもなく。

はい。全部手探りでした。やり方をどうやって調べたらいいのかすらわからないし。

──でも、まったくのゼロからのスタートだったのに、歌手として独り立ちするまでの期間が短いですよね。

毎日朝から晩までずっと曲を作って歌っていたから、自分の中では20年くらい経ってる気がするんです。本当に、短期間で集中しましたね。20歳までに歌手になりたかったから、その思いに動かされたのが一番大きかったかも。焦ってがんばった結果です。

なぜか演歌っぽくなるんです

──出雲さんの作る曲にはどこか和の風情が漂っていますよね。

昔から和のテイストが好きなんです。三味線の吉田兄弟を好きになって、そこから和楽器や民族楽器の音が好きになって。言葉の言い回しは中原中也が好き。あとは浮世絵ですね。中でも歌川国芳や月岡芳年が好きです。色合いとか特に。楽曲にはそういった趣味が出てるのかなって思います。

──あと、歌うことに関しては苦労はなかったんですか?

歌はもともと好きだったので、苦労はしませんでした。カラオケにもよく行っていたので。

──そうなんですね。カラオケではどんな歌を歌っていたんですか?

出雲咲乃

中学生の頃はみんながR&Bを聴くからR&Bを歌ったり……でも、本当にいろんな歌を歌っていました。私、ずっと歌ってるタイプの人でした。大人数で行くと、順番とか面倒くさいじゃないですか。もう、入れたもん勝ちと思ってバンバン入れて(笑)。自分の部屋でもずっと歌っていたからお母さんに「静かにしなさい」って怒られたし、隣に住んでる人に「夜中に歌うのはちょっと……」と言われたこともありました(笑)。本当に、いろんな人に迷惑をかけながら歌っていましたね。

──歌うことが本当に好きなんですね。

はい。そう、私、歌うとなぜか演歌っぽくなるんですよ。演歌は聴かないのに。親にも「なんであんた、演歌っぽく歌うの?」ってすごく言われて。美空ひばりさんは好きだけど演歌ではないし、根っからの演歌って聴かない……ジェロさんしか。

──その歌い方は、すごく出雲さんの個性になっていますよね。

あはは(笑)。そうかもしれません。

出雲咲乃(イズモサキノ)

福岡県北九州市出身のシンガーソングライター。16歳のときにギターを購入し、楽曲制作を開始。18歳でスターダストプロモーション主催の「第1回 SDRオーディション」に参加し、合格者となる。4月にデビューシングル「当流女」を東京・ヴィレッジヴァンガード下北沢店限定でリリース。表題曲はBS朝日のスペシャルドラマ「女優堕ち」の主題歌に選ばれる。自室での楽曲制作を中心に活動をしており、8月には2ndシングル「世界のしかけ」を発表。表題曲は読売テレビ・日本テレビ系ドラマ「遺産相続弁護士 柿崎真一」の主題歌に、カップリングの「はないちもんめ」は体験型イベント「FLOWERS BY NAKED 魅惑の楽園」のテーマソングとして使用された。