ナタリー PowerPush - 石月努

「生きてる限り、続けます」7年半の休止期間を経て復活

2005年に解散したFANATIC◇CRISISのボーカリスト・石月努。バンド解散後はジュエリーや建築関係のデザイナーとして活躍していた彼が、昨年8月に音楽活動を再開させた。そして今年1月には渋谷公会堂でソロライブを行い、6月には1stアルバム「プテラノサウルス」をリリースするなど、約7年半のブランクを感じさせない精力的な活動を続けている。

ナタリー初登場となる今回のインタビューでは、音楽活動再開から1年を経ての手応え、8月後半から行われるアコースティックツアー「夜会~BAR UNPROUD~」、10月からスタートする全国ツアー「プテラノサウルスがやって来る。ヤァ!ヤァ!ヤァ!」について話を聞いた。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 佐藤類

音楽のほうから帰って来てくれるはず

──音楽活動再開を宣言してから約1年が経ちました。バンド時代のファンの方からも、かなりリアクションがあったと思うのですが。

石月努

そうですね。実は自分からは、情報を伝えるためのアクションをほとんど起こしていないんですよ。「どういうふうに伝わっていくのかな?」というのを楽しみにしていたところもあるんですけど、情報の伝わり方は本当にいろいろですね。去年の夏から活動再開を知ってくれてた方もいるし、最近になって気付いてくれた方もいるし。中には「え、音楽活動を休んでたんですか?」という方もいて(笑)。反応もさまざまだし、本当に面白いなって思ってます。

──1月には渋谷公会堂でソロライブ、6月にはアルバム「プテラノサウルス」を発表と順調な活動が続いていますね。

渋谷公会堂に関しては、「音楽の世界に戻ってきて、活動を再開する」っていう宣言ありきのライブだったんですよね。あのライブがあったからこそ、第一歩が踏み出せたというか。もちろんアルバムをリリースしたことも大きいですよね。1曲、2曲だけではなくて、アルバムを通して1つの世界観を表現したいと思ってたので。

──音楽活動休止中にも楽曲を作っていたんですか?

それはないですね。ほぼ皆無と言っていいと思います。やっぱりバンドにすごく思い入れがありましたからね。10代の頃からやっていたバンドだったし、解散した後も、すぐ次の活動っていう考えには至らなくて。「もうやらない」って決めてからは音楽を聴けない時期もありましたから。

──完全に音楽から離れた時期があった、と。

はい。もし次に音楽をやるときは、自分自身が完全に納得できる環境の中で、本気でやりたいと思ってたんですよね。なんて言うのかな、初期衝動ってやっぱり薄れていくじゃないですか。僕はバンドを13年やってましたけど、やっぱりそうだったし。それはどんなバンドもどんなアーティストも同じだと思いますけど。

──そうですね。音楽に対するモチベーションも自然と変化していくというか。

ただ音楽でもデザインの仕事でもそうなんですけど、クリエーションに関わることって、器用になりすぎるとよくないと思うんです。「何年もやってるから」とか「これしかできないから」みたいなことではなくて、伝えたい気持ちや衝動が絶対的に必要じゃないかなって。やっぱり人が作り出すものですからね。

──伝えたい、表現したいという強い気持ちがないと、音楽活動をやるべきではない、と。すごく誠実な姿勢ですよね。

石月努

そうじゃないと僕自身がイヤなんですよ。ただ、「音楽を本気でやりたいと思えば、音楽のほうから帰って来てくれるはずだ」とも思ってたんですよね。2年前の震災を含めていろんなきっかけがある中で、またこうやって音楽活動を再開できて……。それはすごく幸せなことだし、信じていてよかったなって思います。もちろん、機会を与えてくださった周りの方にも感謝してますし。

──実際、「音楽が自分のところに戻ってきた」という感覚があるんですか?

ありますね。7年半の反動なのかはわからないですけど、曲もあふれ出てくるんですよ。この1年だけで50曲くらい書いてるので。やっぱり「これをやりたい、伝えたい」っていう衝動が大事なんですよね。あと、今の活動の環境もすごく気に入ってるんです。以前だったら、タイアップの関係とかもあって、リリースの半年くらい前からいろいろと仕掛けてたんですよ。そういうやり方を否定しているわけでは決してないんですけど、今は「これを届けたい」と思えば、鮮度が高いうちにリリースすることができる。それはすごくいいなって思いますね。

──表現したいことを、すぐに具現化できるわけですね。

8月後半から始まるアコースティックツアー(「夜会 ~BAR UNPROUD~」)もそうなんです。もともと10月から「プテラノサウルス」のツアーをやることが決まってたんですけど、ファンの皆さんから「夏はライブをやらないんですか?」という声をいただいて、「だったら、今しかできないことをやってみようかな」と思って。いろいろと話しているうちに「着席して、お酒を飲みながら、ゆるい感じでやってみよう」ということになったんですよね。10代、20代の頃には考えもしなかったですからね、そういう感じのライブは。

アルバム「プテラノサウルス」/ 2013年6月5日発売 / 3100円 / 勇気レコーズ / URCL-1008
「プテラノサウルス」[CD] 3100円
収録曲
  1. プテラノサウルス
  2. I.S.
  3. RUSTY EMOTION
  4. Parade
  5. ありがとう。
  6. 最後の恋
  7. 銀ノ雨。
  8. Echo
  9. SNIPER
  10. 向日葵
  11. 365の奇跡
  12. ハレルヤ
石月努(いしづきつとむ)

1977年生まれ、愛知県出身。1992年にFANATIC◇CRISISを結成し、1997年にメジャーデビューを果たす。その後はバンドのフロントマンとして活躍する一方で、ほかのアーティストに楽曲を提供するなど精力的に活動。しかし2005年5月にFANATIC◇CRISIS解散以降は、デザインやアートのフィールドに活動の場を移す。2012年9月にDVDシングル「365の奇跡」のリリースを機に、約7年半ぶりに音楽活動を再開した。