ギネス記録達成!感謝を込めて60曲全部演奏
──2023年の活動の中で特に重要なのは、やはり配信シングルの連続リリース60作達成でしょうか。前回のインタビューで「もしかしたらギネスに登録できるかもしれない」というお話がありましたが、正式に認定されました。そして12月にはブルーノート東京にて、シングル全曲を披露するワンマンもありまして。
H ZETT M 我々にとっては自然な流れなんですけど……(笑)。
H ZETT KOU 全曲披露はメドレーで曲と曲をつなげたりもしました。もう自由自在です。
──2日間4公演で全曲やり切ったのは圧巻でした。しかもリリース順に演奏するのではなく、各公演ごとに異なるセットリストを組んでいて。どのように全曲演奏し切るか、メドレーの場合どうやってつなげるか、想像するだけでも大変そうで……。
H ZETT NIRE 60曲もありますからね。何をどうやればいいかは考えました。
H ZETT M リリース順でやっていくと、最初は盛り上がって最後はバラードで静かに終わる……というふうに尻つぼみになっちゃう日がありそうで。それは避けたかったので、セトリは毎回お客さんが満足していただけるようにメリハリを付けて組みました。
──リリース順だと、どの日にどの曲を演奏するか、ある程度予測できてしまうところもありますよね。
H ZETT KOU 確かに予想がついちゃうんだよな。「明日はこの曲で始まるのか」ってバレちゃう。
H ZETT NIRE 「この時間に入場したら、あの曲をやっているはずだ」みたいにもなりそう(笑)。
H ZETT M あと、メドレーはひさびさに作りましたが、どんどん曲が展開していくのも楽しいですね。今回はなるべくシンプルに、と心がけました。
H ZETT KOU アレンジをスッキリさせることでお客さんにも「今この曲をやっている」と伝わりやすくなるから、いい手段だったと思います。
H ZETT NIRE 何度も演奏したことがある曲でも、意外と細かいところで発見があったりしますね。
H ZETT M 私は本番で1小節抜けちゃった曲、ありましたけど。
H ZETT NIRE それをどれだけ表情に出さずにフォローするかが重要ですね。ひとまず2日間、無事に乗り切れてよかったです。
エベレストじゃなくて高尾山から登り始めた感じ
──2日目の2ndステージではギネス記録の認定証贈呈式もありましたが、直接授与の様子を見るのは初めてでした。
H ZETT KOU 貴重な体験でしたね。
H ZETT NIRE 事前にどんな進行になるか打ち合わせはさせていただいたのですが、実際に認定証を見たときは感動しましたし、喜びもひとしおでした。ライブ中の贈呈式というのも感無量でした。
H ZETT M 皆さんの目がものすごくキラキラしていて、それもうれしかったです。
H ZETT NIRE 「認定します!」というアナウンスがあったとき、いつもと違うテンションの歓声が上がったのをよく覚えてます。「おめでとう!」と言ってくださった方もいましたし、より実感が湧きました。
H ZETT KOU 僕らの配信シングルはファンの方が描いてくれたものをアートワークに使用しているから、一緒に歩んできた記録でもあるんですよね。こういう形で喜びを共有できてよかったです。
H ZETT NIRE ただ、明後日にはもう別のライブが始まるから(※取材はワンマン終了翌日に実施)、すぐに気持ちを切り替えないといけませんが(笑)。
──H ZETTRIOは配信シングルだけではなく、テレビ番組「SPEED MUSIC ソクドノオンガク」で毎週カバー曲を披露したり、長期間にわたって定期的に楽曲を発表する活動を行っています。ここまで続けられるのもすごいですよね。
H ZETT M こういった長く続ける活動は持久力が勝負になるような気がしますが、3人とも楽しんでいるから続けられるのかもしれないですね。
H ZETT NIRE 「SPEED MUSIC ソクドノオンガク」も放送開始から5年も経ったんですね。あっという間だな……。ここまでの活動は目の前にある山を無我夢中で登るような感覚でした。「長期間続けよう」と目標を立てたわけではないんですよ。いきなり「エベレストの頂上まで登れ」って言われても、やっぱり無理じゃないですか。まずは高尾山から登って、登り切ったところで次の山へ移る感じ。それをちょっとずつ積み重ねていって、気付いたらこんなに長期間やっていた、という感じですね。
──無理に目標を立てないのがよかった。
H ZETT NIRE 「SPEED MUSIC」は月に一度、数回分をまとめて収録するんですけど、そのペース配分がやりやすかったのかもしれないです。自転車と一緒で、漕ぎ始めて流れに乗ってきたら、あとは続けていくだけなので。
H ZETT KOU ニレさんは登山に例えていますけど、僕の場合、2人が背負っているリュックのキーホルダーって言えばいいのかな?
H ZETT NIRE キーホルダーですか(笑)。
H ZETT KOU そうそう。一緒に付いてきたら「いつの間にかここまで来てたのか」みたいな気持ちでね(笑)。でも継続してるからこそ、だんだんと鍛えられたこともあるので、これからも記録を伸ばしていきたいです。ギネスの認定員の方も「連続リリースをぜひ続けてください」と応援してくれましたからね。
絶え間なく楽曲を発表、その秘訣とは?
──皆さんは2024年も配信シングルをリリースし続けることを発表していますし、「SPEED MUSIC」も年末の特番が放送されたりと、順調に動き続けています。「SPEED MUSIC」では現時点で290曲以上を演奏しているので、これも記録に残せそうですよね。
H ZETT NIRE 今度は「テレビ番組で毎週カバー曲を披露するグループ」みたいな枠になるのかな?
H ZETT M そのカテゴリだったら、間違いなく誰もいないですね(笑)。年末の特番も5年間連続5時間ノンストップで放送していただいて、ありがたいです。
H ZETT NIRE 年末にカバー曲を5時間流し続ける番組って、なかなか珍しいですよね。例えば別の特番を観ていて、なんとなくチャンネルを変えたら、僕らがカバー曲を延々演奏している。そのあと少し経ってもう一度チャンネルを合わせてみたら、まだ僕らが演奏し続けているわけだから、知らない人が観たら「なんだこれ?」ってなりそうですよね(笑)。
──確かに異様ですよね(笑)。この特集が公開される頃には2024年に入っていますが、今後の活動はどんな感じになりそうですか?
H ZETT M ニレさんがフルマラソンに挑戦します。
H ZETT NIRE それ僕個人の活動ですよ(笑)。
──そういえば、前回のインタビューでも「趣味のマラソンを再開した」とお話ししていましたね。
H ZETT NIRE そうでしたね。コロナ禍でマラソン大会に出場するのはお休みしていたのですが、今度4年ぶりに出場することにしたんですよ。真面目にトレーニングしていると、ライブが終わったあとのリカバリーが早くなったり、音楽活動にもいい影響がありますね。
H ZETT KOU あとは今のところ「こどもの日ライブ」は行う予定で、上海公演が決まるかもしれないです。
H ZETT M 今年は海外公演も増えていくかもですね。
H ZETT NIRE コロナ禍以降、音楽のグローバル化はますます加速している気がしますので、インストはチャンスかもしれませんよ。
H ZETT M あとは4年ぶりのスタンディングライブもやります。ひさびさですね。楽しみです。
H ZETT KOU 配信シングルも72作目を目指してリリースしていきます。またギネスの認定員の方に会いたいですから、がんばりますよ。
──今回のインタビューは主に活動について語っていただきましたが、最後に楽曲制作について、ぜひ伺いたいことがありまして。前回の特集を公開したあと、SNSで「ここまで定期的にリリースできるのはなぜ?」「どうやったらこんなにたくさん曲が作れるか知りたい」というコメントを見かけたんです。そこで楽曲制作の秘訣について聞いてみたく。
H ZETT M なるほど。制作に悩んでいる人が書き込んでいるんですかね?
──「最後まで作り上げられない」「どうしても制作期間が延びてしまう」という書き込みもありました。
H ZETT M 完成し切れない場合、強引に終わらせちゃうのは手段としてありますね。とりあえず完成した形を作る。
H ZETT NIRE ある程度仕上げたあと、「別のBメロが思いついちゃったぞ」みたいなこともありますよね。そういうときはどうします?
H ZETT M 別の曲でそのアイデアを使いますね。とにかく一旦、手元に形を積み上げる。アイデアを残すことで別の作品にもつながっていくと思います。
──確かに、一度完成させることは「制作期間が長引いてしまう」「途中で制作の手が止まってしまう」のどちらに対しても通用しそうな方法ですね。
H ZETT M ほかには完成までのおおまかな流れを作るためのパターンをいろいろ勉強しておくと、その時々で適切なパターンに当てはめられるようになるので、作業が早くなるんじゃないかと。新しいアイデアを常に探しつつ、次に準備しておくのもいいかもしれません。
プロフィール
H ZETTRIO(エイチゼットリオ)
青い鼻のH ZETT M(Piano)、赤い鼻のH ZETT NIRE(B)、銀色の鼻のH ZETT KOU(Dr)によるジャズトリオグループ。2012年にH ZETT Mが中心となって結成し、2013年の1stアルバム「★★★」発表を皮切りに活動を本格化させた。2018年8月には数々の名曲をカバーする音楽番組「SPEED MUSIC ソクドノオンガク」の放送がスタート。2019年1月から毎月新曲を配信し、2023年12月には60作連続リリースを達成した。この記録は「単一音楽ユニットによるデジタルシングル連続リリース月最多数」としてギネス世界記録に認定されている。
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