「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」白井悠介&KREVA 2本立てインタビュー|王者が王者に授ける最強のラップ (4/4)

KREVAの想像を超えてきたシブヤの3人

──レコーディングはいかがでしたか?

今回のデモは、ちゃんと3人の個性に沿って俺もラップしてたんですね。だから、デモの段階から相当こだわって作ってたんですけど、皆さん、俺の録ったそのデモをとにかく聴き込んで来てくれたんです。それって、やっぱりレコーディングが始まると歌い出した瞬間にわかるから、まずそれがすごくうれしくて。しかも、こちらが想像してた以上に細かいテクニックなんかも理解してくれていたから、レコーディングでは「そうじゃないんですよね」みたいな直しじゃなくて、「こういうふうにもできますか」みたいな、突っ込んだ内容の、1歩上のラップが目指せるようなレコーディングができたのは楽しかったです。

──それは例えばどういった部分ですか?

言葉にすると難しいんだけど、「このセンテンスの中で、この言葉だけちょっと跳ねるようにしましょうか」「この言葉は3文字だけど、2音でギュッと発音するともっとカッコよくなります」とか。ヒップホップに詳しい人なら伝わると思うけど、例えば韻踏合組合が「関西」を「カンサイィ!」って発音するみたいに、ちょっと小さい「ィ」が入ると聞こえがよくなるみたいな、本当にそういう細かい部分のディレクションですね。なおかつ、その飲み込みの早さはさすがプロの声優さんだと思いました。いわゆるラップのスキル、テクニックじゃなくて、言葉への感情の乗せ方や、表情の付け方を聴かせていただけたのは楽しかったです。

KREVA

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──乱数役の白井悠介さんも「今回のデモは宝物です」とおっしゃっていましたが、乱数のフロウでラップするKREVAさんの音源は相当聴いてみたいですね(笑)。

ハハハ。白井さんはすごく理解が早くて、レコーディングは飄々とした感じでどんどん進んで行きましたね。でも、白井さんから乱数になる瞬間は本当にすごいなって。あとはリヴァプールの話ですね。リヴァプールの戦績がよかったんで、レコーディングの調子もよかったと思います(笑)。

──白井さんの「放り込むLollipop Top of Top取る」のパートの、「O」で頭韻していく部分は実はかなり発音的にも難しいですね。

そうそう。もしかしたらつまずいちゃうかなと思ったんだけど、全然イケてましたね。でもすごく練習してきてくれたって話してました。

──幻太郎役の斉藤壮馬さんのレコーディングはいかがでしたか?

斉藤さんは1発目からほぼ完璧だったし、俺の中でイメージしてる、幻太郎のまだあらわにはなっていない奥底の部分とかまで形にしてくれたと思いました。リリックの内容的には、文学的な言葉遣いを取り入れるために、昔の小説とか、純文学と言われるようなものを参考にして、バイブスを入れました(笑)。これまでの楽曲のポエトリーリーディング的なフレイバーは残しつつ、もっとラップに寄せたフロウに今回はしたんですが、それがすぐ出てきました。これも伝わりづらいかと思うんですが、元ROMANCREWの将絢をちょっとイメージしたり。

──KREVAさんのレーベル「くレーベル」からも将絢×EVISBEATSとして「offutaride」をリリースしているラッパーですね。非常にニュートラルなテンションの持ち主で。

そうそう。そういうテンションと言葉選びなんかは、将絢を意識したかも知れない。

──では帝統役の野津山幸宏さんはいかがでしたでしょうか?

今回は帝統を一番手にしたかったんですよね。普通に考えたら乱数が一番手になると思うんですけど、ラップ感を強調するためは、声とラップに迫力がある野津山さんの帝統がトップに相応しかったんです。

──ROMANCREWで言えばエムラスタのような……って、なぜかROMANCREW濃度の強い話になっていますが(笑)。

シブヤにはDJがいないからDJ TOKNOWの話はできないけど(笑)。でも、そうですね。ラッパーらしいラップから始まって、「これはラップ曲です」っていうのを印象付けたかった。だから帝統次第で曲の印象が変わると思ったんですが、野津山さんは俺が思ってた以上にいいラップをしてくれて。歌詞としてはギャンブラーとしての側面が大事だと思ったんで、賭け事系のマンガを読んで、「よし、このマインドで間違ってないな」と確認しました(笑)。

──リサーチが深すぎますね(笑)。

でもキャラクターの色がすでにあるうえで、それをより深く歌詞で形にするなら、それぐらい入り込まないと。そうやって録った3人の声をミキサーに落とし込んで、それがそろった瞬間はシンプルに感動しました。単純にいい作品になったと思ったし、1つひとつをちゃんとクリアして、ここにたどり着くことができたなって、すごく手応えを感じました。

KREVA

KREVA

物語の展開が楽しみ

──話は変わりますが、KREVAさんはニューアルバム「LOOP END / LOOP START(Deluxe Edition)」を2月16日にリリースし、KICK THE CAN CREWとしてもアルバム「THE CAN」を3月30日にリリースされます。その先の動きはいかがでしょうか?

ここ2年ぐらいは目標を立てないようにしてるんですよね。立てても状況的にそれが実現できるかは見えにくいということもあるので、とりあえずやりたいと思ったこと、目の前で興味があることをどんどん形にしていこうと思っています。それは結局音楽につながってると思うし、曲を作り続ける、音楽を形にするっていうことだけは止めないと思います。

──最後に、今後の「ヒプマイ」に期待することはありますか?

ここでうっかりなんか言って「全員分のリリックお願いします」とか言われたら怖いな(笑)。もしやるとしたら、もう無人島に「ヒプマイ」のすべての資料を持ち込んで、ひたすら「ヒプマイ」に向き合うことになりそう(笑)。でも今回は自分としても本当に面白い経験になったし、これからも「これは!」って思えるような曲が出てきたり、物語が進んだりするのを本当に楽しみにしています。

プロフィール

KREVA(クレバ)

1976年生まれ、東京都江戸川区育ち。ヒップホップの殿堂「B-BOY PARK」のMCバトルで3年連続日本一の栄冠に輝く実績を持ち、現在に至るまでその記録は塗り替えられていない。KICK THE CAN CREWでの活動を経て2004年にシングル「音色」でソロデビューし、2ndアルバム「愛・自分博」でヒップホップソロアーティストとして史上初のオリコンウィークリーチャート初登場1位を獲得。2008年にヒップホップアーティストとしてアジア人で初めて「MTV Unplugged」に出演を果たす。2012年から“音楽の祭り”「908 FESTIVAL」を主催しており、“9月08日”は“クレバの日”として日本記念日協会に正式認定されている。2021年のクレバの日には、約2年ぶりとなるニューアルバム「LOOP END / LOOP START」をサプライズリリースし、オリコン週間デジタルアルバムランキングおよびbillboard JAPAN DOWNLOAD ALBUMSで1位を獲得。そのデラックスバージョンを2022年2月にリリースした。さまざまなアーティストへの楽曲提供やプロデュースも手がけている。