ナタリー PowerPush - 布袋寅泰

“後編”の幕開けを告げるロンドン移住後初アルバム

何をしてもニューウェイブになる

──「Daisy」は布袋さんのルーツが全面に出た曲ですよね。

ニューウェイブですよね。あとはグラム(ロック)。まず別格の存在としてデヴィッド・ボウイとROXY MUSICがいて、そこにT-REXやXTCからの影響が混ざって、というのが僕のスタイル。僕にとってのニューウェイブはTHE BEATLESよりも重要なんです。バンドをやり始めた頃に影響を受けたものだし、ちょっとネジ曲がったニューウェイブサウンドに、氷室京介というオーセンティックなボーカリストが混ざるというのがBOOWYの個性であり、勝因だったと思うし。僕はいまだにニューウェイブをやってる気分でいますからね。踊れて、シャウトできて、いろんなファンタジーやイマジネーションを盛り込める、総合芸術としてのニューウェイブ。僕がブルースを弾いてもブルースにはならない。ハードロックを弾いても、やっぱりニューウェイブになっちゃうんですよ。

──ニューウェイブというのはもっとも洋楽が洋楽らしかった頃の音楽だと思うんですが、布袋さん自身「洋楽的な響き」というのはどの程度意識されていますか?

やっぱり日本語で歌ってカッコいいメロディと、英語がハマるメロディというのは違うので、そこはかなりギリギリのところでコントロールしてるつもりです。デヴィッド・ボウイが日本語で歌った曲とかあるじゃないですか(「Girls」の日本語バージョン)。あれはいきなり演歌みたいになっちゃって、全然違いますよね。向こうの音楽はワンコードだったり、展開が少なかったりするし、ひと言ひと言を音階で追っていない感じはあるから、叙情的なものをやろうとすると、途端に崩れてしまう。裏を返せば、そこにこそ日本語でニューウェイブ的なことをやる際のヒントがあるんですよ。つまり、日本語でやるからには叙情的な部分を残しつつ、日本語がカッコよく響くための(メロディの)フォルムに気を付けながらやればいいんです。もし僕が英語で歌うことになったら、メロディの段階からまったく違うものになるでしょうね。

ロンドンでの僕は本当に新人

──最後にもうひとつだけお聞きしてもいいですか?

どうぞ。

──3月にはBOOWYのライブドキュメンタリー映画「1224 FILM THE MOVIE 2013」が公開されますよね。これはBOOWYに限らずですが、布袋さんが歩まれてきたキャリアっていうのは、1つひとつがものすごく大きなステップであって、そうなると、おのずと普段の生活の中で「30年前の自分に出会う機会」というのも増えていくと思うんです。

(頷く)

──ただ、それは同時に「過去の自分にとらわれてしまう機会」が多いとも言えると思うんです。今日のインタビューの最初に、布袋さんは「原点回帰」という言葉を使われていましたが、原点回帰と、過去にとらわれてしまうことというのは、まったく別のことですよね?

それはそうだね。ただ自分に関しては、まったくその心配はないと思う。たぶん自発的にBOOWYの作品を聴くことはないと思うし、今回の映画だって観ないと思うからね。僕がそんなことを言ったらファンの人は悲しむかもしれないし、「冷たいな」って思うかもしれないけど、自分の未来に残したタイムカプセルを開けるには、もう少し……いや、あと10年は必要かなって思うんですよ。僕らがあの当時、日本の音楽シーンに蒔いた種というのがあるとすれば、それを育ててくれたのはファンのみんなだと思うし、そういう意味では僕の過去というのは僕だけのものじゃない。僕らが蒔いた種から育った樹、それを枯らしたくない気持ちはあるし、もっともっと大きく育ってほしいという思いはファンの人と一緒だけど、それを実現するために僕ができることっていうのは、今現在の自分が輝くことだと思うから。

──自分が輝くことで、過去も思い出も輝く。

だからこそ今後の活動には責任があると思います。ひとまずの課題はロンドンでの活動ですよね。あっちでメンバーを探してまたバンドを組みたいとも思ってるし、ほかにもやりたいことはたくさんある。ロンドンでの僕は本当に新人で、確かに「キル・ビル」という看板はあるけど、いつまでもそこにすがっているのも自分らしくないしね。この歳で失敗できるチャンスをもらえるなんてこともなかなかないし、たとえ失敗したとしても、その経験は必ず次のアルバムに活かせるはずだし、「新人」に怖いものなんてないんですよ。今はとにかくロンドンやヨーロッパの人たちの目の前でギターを弾く機会というのを、少しでも多く作っていきたい。最初はライブハウスのツアーでいい。どんなに小さなステージでもいいから、とにかくギターを弾きまくりたいんです。

布袋寅泰 - Don't Give Up! (Short ver.)

布袋寅泰-「COME RAIN COME SHINE」全曲ダイジェスト試聴

TOMOYASU HOTEI Rock'n Roll Revolution Tour 2013

  • 2013年3月15日(金)千葉県 市川市文化会館 大ホール
  • 2013年3月17日(日)兵庫県 神戸国際会館こくさいホール
  • 2013年3月20日(水・祝)静岡県 静岡市民文化会館 大ホール
  • 2013年3月21日(木)大阪府 岸和田市立浪切ホール
  • 2013年3月23日(土)香川県 サンポートホール高松
  • 2013年3月30日(土)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
  • 2013年4月6日(土)石川県 本多の森ホール
  • 2013年4月7日(日)新潟県 長岡市立劇場
  • 2013年4月13日(土)青森県 リンクステーションホール青森 大ホール
  • 2013年4月14日(日)岩手県 岩手県民会館 大ホール
  • 2013年4月18日(木)鹿児島県 宝山ホール
  • 2013年4月19日(金)熊本県 市民会館崇城大学ホール
  • 2013年4月21日(日)福岡県 福岡サンパレス
  • 2013年4月25日(木)三重県 四日市市文化会館 第一ホール
  • 2013年4月27日(土)東京都 NHKホール
  • 2013年4月28日(日)東京都 NHKホール
  • 2013年5月1日(水)福島県 いわき芸術文化交流館 アリオス
  • 2013年5月3日(金・祝)群馬県 ベイシア文化ホール 大ホール
  • 2013年5月5日(日)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2013年5月6日(月・祝)東京都 オリンパスホール八王子
  • 2013年5月11日(土)広島県 上野学園ホール
  • 2013年5月12日(日)神奈川県 神奈川県民ホール 大ホール
  • 2013年5月18日(土)大阪府 フェスティバルホール
  • 2013年5月19日(日)大阪府 フェスティバルホール
ニューアルバム「COME RAIN COME SHINE」/ 2013年2月6日発売 / EMI Music Japan
初回限定盤 [CD+DVD] / Amazon.co.jpへ
初回限定盤 [CD+DVD] / 3500円 / TOCT-29124
通常盤 [CD] / 3000円 / TOCT-29125
CD収録曲
  1. Cutting Edge
  2. 嵐が丘
  3. Don't Give Up!
  4. Never Say Goodbye
  5. Come Rain Come Shine
  6. My Ordinary Days
  7. Daisy
  8. Higher
  9. Stand Up
  10. Rock'n Roll Revolution
  11. Dream Again
  12. Promise
初回限定盤DVD収録内容
  • 「Don't Give Up!」Music Video
  • 「Promise」Music Video
布袋寅泰(ほていともやす)

1962年2月生まれ。1982年にBOOWYのギタリストとしてアルバム「MORAL」でデビュー。1988年のバンド解散を機にソロアーティストとしてのキャリアをスタートさせる。また同時に吉川晃司とのユニット・COMPLEX結成や他アーティストへの楽曲提供、映画やCMへの出演などさまざまなシーンで活躍。海外での活動にも積極的で、映画「キル・ビル」に提供した「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」は各国で高い評価を得ている。2006年のアルバム「SOUL SESSIONS」では国内外の豪華アーティストとの共演を果たし、翌2007年1月には日本武道館でChar、ブライアン・セッツァーとともにスペシャルライブも行っている。2011年にはアーティスト活動30周年を記念したプロジェクトを展開し、さまざまなアーティストとコラボレーションしたアルバム「ALL TIME SUPER GUEST」をリリースしたほかスペシャルライブを実施した。50歳を迎えた2012年夏にはロンドンに移住。日本とイギリスの2カ国を拠点に、これまで以上にワールドワイドな活動を行っている。