HEY-SMITH「Rest In Punk」特集|猪狩秀平が10-FEET・TAKUMAと語る、バンドと音楽 (3/3)

音楽の価値は変化したのか?

──最後に、最近ちょっと気になっていることをお聞きします。先日、ナタリーで横山健さんにインタビューした際、「音楽を取り巻く状況自体は、昔とそんなに変わっていないと思うんです」「明確に数値化することはできないけど、音楽の価値がすごく落ちている気がする」「そういう小さな違和感がいつも僕の中にあって」と話されていたのですが、お二人は音楽の価値に対する変化を感じることはありますか?

猪狩 俺は感じています。健さんが実際どう言っていたかはわからないですけど、長く深く聴かれるものって少なくなっている気がするし、それが寂しくもあります。けど、自分もCD屋さんに行かずにサブスクで手軽に音楽を聴いているという側面もある。作り手としては自分の音楽がそうならないようにするにはどうするか、ということは常に考えていて。きっとそれは音楽に限ったことじゃなくて、アニメや映画などサブスクがあるエンタメにおいてはみんな一緒だと思うんですよね。昔はCD1枚でたくさんのことを想像できたんですよ。例えば、ジャケット1枚だけでいろんな妄想が膨らんだけど、今はインターネットで調べたらすべて答えが見つかる。だったら、最初から思い切りちゃんと説明するか、Adoちゃんみたいに逆に謎を残すか、そういう選択をしないといけないのかなと考えています。

TAKUMA 僕は健さんが話したそのエピソードを聞いて、例えばここ10年のヒットソングの中に、ロックのど真ん中にあるような曲や、美空ひばりさんの「川の流れのように」みたいなど真ん中の歌謡曲があったら、音楽そのものの印象って変わっていたのかなと思いました。

猪狩 ああ、なるほど。

TAKUMA だから僕らの周りにいるような連中がヒットチャートのトップ10をここから5年、10年と占領したら、音楽に対する「大事にされているかどうか」というイメージが変わるような気がします。全部音楽やねんけど、いろんな音楽があるじゃないですか。喉越しで楽しむ音楽もあれば後味で楽しむ音楽もある。

左からTAKUMA(10-FEET)、猪狩秀平(HEY-SMITH)。

左からTAKUMA(10-FEET)、猪狩秀平(HEY-SMITH)。

“TAKUMA AI”がいる?

猪狩 この世界は思ったよりも広くて、思ったよりも狭いんですよね。昔は自分の世界だけでずっと生きていくと思っていたんですけど、今は全然そんなこと思わないし、海外ツアーにも行けば47都道府県も少ないところでも10回は行ってる。でも、音楽や情報の量がマジで果てしないから、みんなが選択できる可能性がめっちゃ広がっただけだと思うんですよね。昔はその可能性があまりなくて供給されるものが少なかったけど、今は誰もが選択できるし、それに合わせた供給もある。だから、一瞬気を抜いたらすぐ負けるような状況になっているのかな。最近、AIが作曲してるじゃないですか。それを怖いと思う一方で、「俺はそのAIと一緒に作曲してみたいねんけど」という気持ちもあって。ずっと既存のものにすがるより「えー、そっち楽しそう」っていうほうに行きたいんです。

TAKUMA それはいいんじゃない? そういうことをあれこれ考えている猪狩のメッセージや思いも、その都度作る音楽に反映されていくと思うから、それがAIと混ざるものだったら俺も聴いてみたい。

猪狩 そうそう、そういう感じ。俺は逆に、TAKUMAくんの最近の曲を聴いていると、TAKUMAくんの中に“TAKUMA AI”がいるような感じがするんですよ。「第ゼロ感」はものすごいなあと思ったけど、最近の「Re方程式」もすげえなと思って。「今のTAKUMAくん、いい曲量産モードに入ってんちゃう?」と感じたんですけど、そんなことないんですか?

TAKUMA いつでもその量産モードのつもりなんやけどな(笑)。

猪狩 それはごめんなさい(笑)。

TAKUMA 「作りたい音楽」「得意な音楽」「求められる音楽」みたいな枠がある中で、自分が面白いと思える限りはそのへんをくるくる回して楽しんでいきたくて。「第ゼロ感」は本当に楽しむために作った曲やったけど、そういう曲をみんなが楽しんで聴いてくれたこともすごく自信につながったんだよね。

猪狩 自分が楽しみたくて作った曲だったんですか?

TAKUMA うん。あれは遊びで作った曲で、10-FEETでもソロでも発表する予定はなかったんだよね。

猪狩 とりあえず頭の中にあるし、作っておこうみたいな?

TAKUMA そうそう。俺がただカッコいいと思ってただけの曲だから、リリースの予定もなかったという。

猪狩 たまにありますよね、そういうのって。

TAKUMA 最初からおもちゃ箱行き、みたいな。

HEY-SMITHはちゃんと味が濃い

猪狩 TAKUMAくんにおける「第ゼロ感」みたいな曲、今回のHEY-SMITHのアルバムにも入ってます。遊びで作ったんだけど、バンドでやってみたら「よくない、これ?」みたいな。

TAKUMA アルバム、めっちゃよかったよ。

猪狩 ありがとうございます!

TAKUMA キャリア的に、曲の質はめっちゃ上がっていくねんけど味がどんどん薄くなっていくみたいな時期でもおかしくないはずやのに、質に気を取られずちゃんと味が濃い。カレー味とか肉味とか、それぞれの曲がめちゃくちゃしっかりしていて、このキャリアでおいしくちゃんと作れてるのがすごいなと思った。

猪狩 なんてうれしいんでしょう。ありがとうございます。俺も「第ゼロ感」のリフを聴いたときに、今TAKUMAくんが言ったことと同じようなことを感じたかも。テーマや歌詞の内容ではなくて、「このリフ、カッコよくない?」みたいな。あのリフって曲中に4回くらい出てきません?

TAKUMA うん、出てくるな(笑)。

猪狩 「そんなに出てくる?」ってくらい出てくるんですよ。でも、2回目も3回目も4回目も全部アガるんですよね。「そこやねん!」っていうとこで来るんですよ、あのリフ。あれは好きですね。

TAKUMA よかった、ありがとう(笑)。健さんの話に戻りますけど、今、健さんが音楽を大事に聴かれていないと感じているということは、健さんの中で「こうあるべき」「こういうふうに聴いてほしい」と思う音楽があふれ出ている時期やと思うんで、ここからの健さんの曲をすごく聴きたいですね。

猪狩 それはすごく興味あります。

──TAKUMAさんのおっしゃった「僕らの周りにいるような連中がヒットチャートのトップ10をここから5年10年占領したら、音楽に対する『大事にされているかどうか』というイメージが変わるような気がする」という話を聞いて、「第ゼロ感」や「Re方程式」、そして「Say My Name」のような楽曲、これから発表される健さんの新曲などが新たな流れを作ってくれるんじゃないか、いや作ってほしいと願っています。そういう意味でも、2024年も皆さんの活躍に期待しています。

猪狩TAKUMA ありがとうございます。

左から猪狩秀平(HEY-SMITH)、TAKUMA(10-FEET)。

左から猪狩秀平(HEY-SMITH)、TAKUMA(10-FEET)。

HEY-SMITHライブ情報

HEY-SMITH「Rest In Punk Tour」

  • 2023年11月16日(木)東京都 Zepp Shinjuku(TOKYO)
    <出演者>
    HEY-SMITH / Voodoo Glow Skulls
  • 2023年11月17日(金)神奈川県 Yokohama Bay Hall
    <出演者>
    HEY-SMITH / Voodoo Glow Skulls
  • 2023年11月20日(月)愛知県 DIAMOND HALL
    <出演者>
    HEY-SMITH / Voodoo Glow Skulls
  • 2023年11月21日(火)大阪府 BIGCAT
    <出演者>
    HEY-SMITH / Voodoo Glow Skulls
  • 2023年11月23日(木・祝)滋賀県 滋賀U★STONE
    <出演者>
    HEY-SMITH / ENTH
  • 2023年11月25日(土)高知県X-pt.
    <出演者>
    HEY-SMITH / ENTH
  • 2023年12月8日(金)香川県 高松オリーブホール
    <出演者>
    HEY-SMITH / EGG BRAIN
  • 2023年12月12日(火)三重県 M'AXA
    <出演者>
    HEY-SMITH / Maki
  • 2023年12月14日(木)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
    <出演者>
    HEY-SMITH / Maki
  • 2024年1月6日(土)和歌山県 SHELTER
    <出演者>
    HEY-SMITH / KUZIRA
  • 2024年1月8日(月・祝)鳥取県 米子AZTiC laughs
    <出演者>
    HEY-SMITH / KUZIRA
  • 2024年1月10日(水)岡山県 YEBISU YA PRO
    <出演者>
    HEY-SMITH / KUZIRA
  • 2024年1月13日(土)山口県 周南RISING HALL
    <出演者>
    HEY-SMITH / キュウソネコカミ
  • 2024年1月14日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
    <出演者>
    HEY-SMITH / キュウソネコカミ
  • 2024年1月17日(水)京都府 KYOTO MUSE
    <出演者>
    HEY-SMITH / ジャンキー58%
  • 2024年1月20日(土)奈良県 EVANS CASTLE HALL
    <出演者>
    HEY-SMITH / SHANK
  • 2024年1月21日(日)岐阜県 岐阜club-G
    <出演者>
    HEY-SMITH / SHANK
  • 2024年1月23日(火)山梨県 甲府Conviction
    <出演者>
    HEY-SMITH / HOTSQUALL
  • 2024年1月25日(木)神奈川県 CLUB CITTA'
    <出演者>
    HEY-SMITH / Wienners
  • 2024年1月27日(土)新潟県 NIIGATA LOTS
    <出演者>
    HEY-SMITH / locofrank
  • 2024年2月8日(木)東京都 Spotify O-EAST
    <出演者>
    HEY-SMITH / Fat Tofu / MAYSON's PARTY
  • 2024年2月10日(土)愛媛県 WStudioRED
    <出演者>
    HEY-SMITH / ROTTENGRAFFTY
  • 2024年2月12日(月・祝)大分県 DRUM Be-0
    <出演者>
    HEY-SMITH / ROTTENGRAFFTY
  • 2024年2月14日(水)大阪府 GORILLA HALL OSAKA
    <出演者>
    HEY-SMITH / Fat Tofu / MAYSON's PARTY
  • 2024年2月15日(木)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
    <出演者>
    HEY-SMITH / MAYSON's PARTY
  • 2024年2月18日(日)鹿児島県 CAPARVO HALL
    <出演者>
    HEY-SMITH / SIX LOUNGE
  • 2024年2月20日(火)福岡県 小倉FUSE
    <出演者>
    HEY-SMITH / SIX LOUNGE
  • 2024年2月21日(水)佐賀県 SAGA GEILS
    <出演者>
    HEY-SMITH / SIX LOUNGE
  • 2024年2月23日(金・祝)長崎県 DRUM Be-7
    <出演者>
    HEY-SMITH / BLUE ENCOUNT
  • 2024年2月25日(日)熊本県 熊本B.9 V1
    <出演者>
    HEY-SMITH / BLUE ENCOUNT
  • 2024年3月9日(土)宮城県 Rensa
    <出演者>
    HEY-SMITH / GOOD4NOTHING
  • 2024年3月10日(日)群馬県 郡山HIP SHOT JAPAN
    <出演者>
    HEY-SMITH / GOOD4NOTHING
  • 2024年3月12日(火)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
    <出演者>
    HEY-SMITH / GUMX
  • 2024年3月13日(水)埼玉県 HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1
    <出演者>
    HEY-SMITH / GUMX
  • 2024年3月20日(水・祝)北海道 函館club COCOA
    <出演者>
    HEY-SMITH / SHADOWS
  • 2024年3月23日(土)北海道 小樽GOLDSTONE
    <出演者>
    HEY-SMITH / SHADOWS
  • 2024年3月24日(日)北海道 CASINO DRIVE
    <出演者>
    HEY-SMITH / SHADOWS
  • 2024年3月30日(土)青森県 青森Quarter
    <出演者>
    HEY-SMITH / Dizzy Sunfist
  • 2024年4月1日(月)山形県 山形ミュージック昭和Session
    <出演者>
    HEY-SMITH / Dizzy Sunfist
  • 2024年4月3日(水)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
    <出演者>
    HEY-SMITH / THE ORAL CIGARETTES
  • 2024年4月4日(木)石川県 金沢EIGHT HALL
    <出演者>
    HEY-SMITH / THE ORAL CIGARETTES
  • 2024年4月6日(土)秋田県 Club SWINDLE
    <出演者>
    HEY-SMITH / dustbox
  • 2024年4月7日(日)青森県 Club Change WAVE
    <出演者>
    HEY-SMITH / dustbox
  • 2024年4月9日(火)茨城県 mito LIGHT HOUSE
    <出演者>
    HEY-SMITH / TENDOUJI
  • 2024年4月10日(水)千葉県 千葉LOOK
    <出演者>
    HEY-SMITH / TENDOUJI

Final Series

  • 2024年4月20日(土)北海道 Zepp Sapporo
  • 2024年4月26日(金)福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2024年5月12日(日)宮城県 SENDAI GIGS
  • 2024年5月14日(火)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2024年5月15日(水)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2024年5月26日(日)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2024年5月27日(月)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2024年6月2日(日)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
  • 2024年6月3日(月)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
  • 2024年6月8日(土)沖縄県 ミュージックタウン音市場

※対バンゲストは後日発表

プロフィール

HEY-SMITH(ヘイスミス)

猪狩秀平(G, Vo)を中心に結成されたパンクバンド。メンバーチェンジを経て、現在は猪狩、YUJI(Vo, B)、満(Sax)、Task-n(Dr)、かなす(Tb)、イイカワケン(Tp)の6人体制で活動している。2006年に大阪を拠点にライブ活動を開始し、2009年に1stミニアルバム「Proud and Loud」でCDデビュー。2010年発表の1stフルアルバム「14 -Fourteen-」を経て2011年にリリースした2ndフルアルバム「Free Your Mind」は、オリコン週間インディーズランキングで1位を記録した。2010年より自主企画イベント「OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL」を主催し、2014年9月には大阪・泉大津フェニックスにて初の野外開催を成功させた。2023年10月発表のシングル「Say My Name」でポニーキャニオンからメジャーデビュー。「Say My Name」はテレビアニメ「東京リベンジャーズ」“天竺編”のエンディング主題歌に使用された。同年11月に最新アルバム「Rest In Punk」を発表し、現在は全国ツアー「Rest In Punk Tour」を実施中。

10-FEET(テンフィート)

TAKUMA(Vo, G)、NAOKI(B, Vo)、KOUICHI(Dr, Cho)によるスリーピースバンド。メロディックパンク、ヘヴィメタル、レゲエ、ヒップホップ、ギターポップ、ボサノバなどさまざまなジャンルを取り入れたサウンドで人気を集める。2007年より主催野外フェス「京都大作戦」を開催している。2022年3月に結成25周年を記念したコラボレーションアルバム「10-feat」、12月にオリジナルアルバム「コリンズ」を発表。「コリンズ」の収録曲「第ゼロ感」は、映画「THE FIRST SLAM DUNK」のエンディング主題歌に使用され大きな反響を集めた。2023年10月にドラマ「フェルマーの料理」の主題歌「Re方程式」を発表し、大晦日の「第74回NHK紅白歌合戦」への出演も決定。2024年4月24日に京都・京都市勧業館 みやこめっせ 第3展示場、5月19日に神奈川・横浜アリーナでワンマンライブ 「10-FEET ONE-MAN LIVE 2024 ~急なワンマンごめんな祭~」を開催する。