音楽ナタリー Power Push - HER NAME IN BLOOD × NOCTURNAL BLOODLUST
ラウドシーンの変遷たどる盟友対談
シーンの飽和と新たなフィールド探し
──出会った当時からお互いに惹かれるところはありました?
Makoto お互いに音楽に対して真剣だなとは思いましたね。ノクブラは音楽でメシを食いたいという明確なビジョンがあったと思うし、俺らも行けるところまで行きたかったから。
尋 酒の席で酔っぱらうと、「音楽シーンを変えてやる!」と言う人がいるけど、口だけの人が多いんですよ。その気持ちに嘘がないのはわかるけど、「実際にお前は何をしているの?」という人も多くて。HNIBは真面目に音楽をやっているのが伝わる。アメリカ仕込みのちょっとコミカルなテイストもあるからフックがあるし、音はガチだし、すごく努力してると思うんですよね。
Masa HNIBは当時ゴリゴリのメタルコアをやってたけど、ほかのバンドとは違うエンタメ性もあったし、海外の重鎮メタルコアバンドとかのモノマネではなく、独自のオーラを放ってましたね。ウチもオリジナリティを追求してたので、フィールドは違えど感化されました。そのあともHNIBの活躍を遠くから見て、応援してました。
──ほかのバンドとは違うことをやりたいっていう気持ちが強いのは、この2バンドの共通点ですね。
Masa ウチらはもともとハードコア畑にいて、ほかのバンドにはできないオリジナリティを追求していった結果、今のスタイルになったんです。結果、形式にとらわれず自由に音楽ができるようなったし、今まで以上に支持してくれる人が増えました。
Makoto ノクブラが方向転換した時期って、ちょうどその界隈のラウドシーンが飽和してきた頃だったと思うんです。この2バンドはそれに気付いたから新しいフィールドを求めて互いに違う道を進んだっていう。
Masa そうだね。このままその界隈にいても変わらないし、「楽しいからここでずっとライブしていたい」からは卒業しないとダメだなと。例えばCrossfaithなら海外に行く、ウチらはヴィジュアル系のシーンに飛び込むとか、それぞれのバンドがマッチするフィールドを模索して、飛び出していった感じですね。
──当時、自分たちの居場所に対する危機感があったと。HNIBはどうですか?
Makoto どういう立ち位置でいればいいのかっていう悩みはありましたけど、事務所が変わってから活動の幅が広がりました。最近はメロコアシーンのバンドと競演する機会が増えてきていて、客層は違うけどいいライブができればジャンル関係なく認めてもらえるっていうことは実感としてあります。
海外進出の野望
──ここで2バンドの海外に対するスタンスも聞かせてください。まずHNIBは今年10月にアメリカ・カリフォルニア州で開催された「KNOTFEST 2015」に出演しました。感触はいかがでした?
Makoto 気持ちよかったですね。向こうからすると、僕らは新人だし未知の存在だったと思うけど、最終的にいい形で盛り上がってくれて。次につながるライブができたと思います。
Ikepy うん、楽しかった。ずっとアメリカのオーディエンスの前でやるのは夢でしたからね。自分たちの前の出演バンドがそんなに盛り上がってなくて、不安だったんですけど(笑)。僕らのときは反応がよかったから、うれしかったですね。
Makoto あとで現地のライブレポートを読んだら、「そのステージの出演バンドの中で一番よかった」なんて書かれていたから、自信が付きましたね。自分たちがカッコいいと信じてやってきたことは間違っていなかったんだなと。
──ノクブラは海外でライブをやった経験は?
Masa ないですね。今までは日本でファンを増やすことに必死だったので、来年からちょこちょこ行こうと思ってます。
Makoto Masaと一緒に撮った写真をFacebookに上げると、ヨーロッパの女の子から“いいね!”がけっこうくる。だから海外にもノクブラファンがたくさんいると思うよ。
Masa わざわざチケット買って、向こうからワンマンを観に来てくれる人もいるからね。
──ノクブラが今まで海外でライブをやっていないこと自体が意外だなと思いました。
Masa 簡単にホイと行くよりも、日本でファンベースをしっかり築いて、段階を踏んだ上で海外に行きたいんですよ。特にヨーロッパのファンからは「来てほしい」という声が年々増えているので、その気持ちにはそろそろ応えたいですね。
──HNIBは今年やってみて、さらに海外でやりたい気持ちが膨らみました?
Makoto 完全に味をしめましたね。
Ikepy もっとやりたいと思いました。
Masa だろうね!(笑)
Makoto 現地でのリアクションがよかったから、来年も行きたいですね。将来的にはノクブラと海外のフェスで一緒になったら最高ですね。
外タレの前座のままでいいのか
──HNIBは今回の「BEAST MODE TOUR 2015」でスカパンク、ラウドロック、メロコアと多彩なゲストバンドを迎えていました。いろんなバンドとやる活動方針はどこで培われたものなんですか?
Makoto いろんなバンドとやると、自分たちはどういうバンドだろうと考えるんですよ。勉強になりますからね。自分たちのオリジナリティがなんなのか、俯瞰的に見ることもできますし。
Ikepy メタルコア中心のイベントに出ていたけど、メロコアバンドと競演するようになると、お客さんの盛り上げ方も違ってくるんですよ。それが曲作りのときに参考になって、シンプルさをより突き詰めるようになって。自分たちの曲はわりと複雑な構成でしたからね。
尋 ウチらも今のシーンで活動するようになってファン層が変わった経験があるから、言ってることはすごくわかります。
Masa 僕らも「メタルって何?」という人たちに向けて、ゴリゴリの音をやってましたからね。そこでいかに興味を持ってもらい、いかに乗せられるか。それを経験したバンドは強くなると思う。あと、外タレの前座もやっていたけど、逆に僕らの主催イベントに外タレを前座で呼べるくらいの力を付けたいんです。だから外国のバンドができないことをやってやろうっていう気持ちが生まれました。それがきっかけの1つになって、今の独自のスタイルで活動の幅を広げていきました。
──音楽的な変化はあったんですか?
Masa 根本的な部分は何も変わってないですが、楽曲の幅は広がりました。 キャッチーなナンバーだったり、逆に今まで以上にゴリゴリのデスコアサウンドを入れてみたり。凶悪なところはより凶悪にして、どんな方向にも行けるようにしようと。あと視覚的にも表現できることが増えました。例えば「DESPERATE」って曲のPVの世界観は、Tシャツにスキニーってスタイルじゃ絶対表現できないと思いますし。今はこれをやっちゃダメ、あれをやっちゃダメという制限も一切なく、自由に音楽ができてます。
尋 僕が飽きるんですよ、シャウトばっかりすると。Ikepyも飽きてくることない?
Ikepy それはある(笑)。だから俺も普通にクリーントーンで歌うボーカルは増えたよ。
尋 僕は最初からシャウトだけで歌おうと思ってなくて、楽曲の幅を広げるためにボーカリストとしてのスキルを上げて、いい曲を追求しようと思ってたから。
Makoto お互いに自分たちの音楽を確立するまでは大変だったと思うけど、2バンドともボーカルのキャラがどっちも強いのがいいところだよね。楽曲がバリエーションに富んでも、1本芯が通ってるからね。Ikepyがクリーントーンで歌えるようになって、自分たちもできることが増えたんですよ。
尋 ノクブラもみんな柔軟性があるから、可能性がどんどん広がるし、メンバー間でもいい刺激を受けますね。
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HER NAME IN BLOOD "BEAST MODE TOUR 2015 FINAL Series"
- NOCTURNAL BLOODLUST シングル「PROVIDENCE」 / 2015年6月17日発売 / IRIS & CRISIS
- 初回限定盤 [CD2枚組] / 2040円 / NCBL-15
- 通常盤 [CD] / 1620円 / NCBL-16
HER NAME IN BLOOD(ハーネイムインブラッド)
Ikepy(Vo)、Daiki(G)、TJ(G)、Makoto(B)、Umebo(Dr)からなるメタルコア / ラウドロックバンド。2008年から活動を開始し、BEFORE MY LIFE FAILSとスプリットCDをリリース。同年開催された「Taste Of Chaos 2008 in Japan」への出演を経て、全国各地でライブ活動を展開していく。2010年に1stフルアルバム「DECADENCE」を発表。以降、数多くの海外アーティストの来日公演でサポートを務めるほか、「SCREAM OUT FEST」など大型イベントにも出演した。2013年末から2014年初頭にかけては、中国でのフェス出演を含むアジアツアーを実施。2014年4月にフルアルバムとしては約4年ぶりとなる「HER NAME IN BLOOD」をリリースし、同年5~9月に全国ツアー「RETURN OF THE BEAST TOUR 2014」を行った。2015年6月にWarner Music Japanよりメジャーデビューすることを発表し、9月にミニアルバム「BEAST MODE」をリリースした。10月にはデビュー作のレコ発ツアーをスタートさせたほか、アメリカで行われたSlipknot主催のライブイベント「KNOTFEST 2015」に出演し、Judas Priest、Korn、Mastodonらと競演。11月にはオジー・オズボーン主催によるライブイベント「Ozzfest Japan 2015」に参加した。2016年1月にレコ発ツアーのファイナルシリーズとしてTHE冠、NAMBA69、NOCTURNAL BLOODLUSTをゲストに迎えた東名阪公演を行う。
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- HER NAME IN BLOODの記事まとめ
NOCTURNAL BLOODLUST
(ノクターナルブラッドラスト)
尋(Vo)、Daichi(G)、Cazqui(G)、Masa(B)、Natsu(Dr)からなる5人組バンド。2009年9月に結成し、メタルコア、ラウドロックなどをベースにさまざまな音楽的要素を織り交ぜた“エクストリーム”と称したジャンルを提唱して活動中。2013年からヴィジュアル系へとフィールドを広げ、同年5月に1stフルアルバム「GRIMOIRE」を発表した。その後もリリースを重ねつつ、全国各地で精力的なライブ活動を行っている。2014年3~5月にシングル3作品を連続リリースし、それぞれがオリコンの週間インディーズチャートでトップ10内にランクインするという結果を残した。12月には2ndアルバム「THE OMNIGOD」を発表した。そして2015年2月にギルガメッシュ、BULL ZEICHEN 88、HER NAME IN BLOODをゲストに迎えた自主企画「TERRANIGMA」を開催して盛況を収めた。6月には6thシングル「PROVIDENCE」を発売し、東京・赤坂BLITZにてワンマンライブ「銃創」を行った。2016年5月22日には東京・EX THEATER ROPPONGIにて東名阪ワンマンツアー「VANADIS」 のツアーファイナルを開催する。