ナタリー PowerPush - HARISS

新作は容量ギリギリCD-EXTRA

7年目にしてついに噛み合う

──さて肝心の新曲ですが、フルアルバムではなくこの4曲に凝縮したのはなぜですか?

高橋 そうですね、フルアルバムを出すより、まずスピード感のある形で新曲を出したかったっていうのはあるかな。

インタビュー写真

AKIRA 偶然かもしれないんですけど、バランスのいい4曲というか「これがHARISSです」って出して伝えられそうな4曲だからです。

高橋 AKIRAくんが1曲目の「BELIEVER」って曲を書いてきたときに結構作品全体が見えたっていうのはあって、この曲を中心にやれば大丈夫だと。

AKIRA 模索してた時期が結構あって。でもこの曲は4人がそれぞれのカラーを出しても自然に成立する手応えがあったんですね。僕とベースのYUJIはロカビリー出身なんでバディ・ホリーやTHE RONETTESみたいなイメージでいくんですけど、ギターのSEIJIくんはパンクやモッズ好きなんで、例えばTHE WHOだったりTHE JAMだったり、高橋くんはTHE CLASHだったり、それぞれの引き出しから強みを出して、それがうまく噛み合った感じがしたんで、「これは行けるな」と。まあ7年目にしてやっとできたというか(笑)。

──すごく長い模索期間ですね。

AKIRA 一時期は“今”にこだわりすぎて、例えばTHE STROKES以降を意識しちゃったり。

──オーセンティックなロックンロールをやってた人がR&Rリバイバルのバンドを意識しちゃうという?

AKIRA そうそう、そうです(笑)。

高橋 まさに闘いの期間でしたね(笑)。でも今回の新曲ができて4人ともほっとしてます。

関わる人が全員楽しめる場所

ライブ写真

──今回の4曲にはHARISSの独自性を感じる曲が多くて、「CO2」はポストパンク的なビートなのにサイコビリーの要素もあったりして。

高橋 多分これはHARISSじゃないとできなかった曲かなと。ウッドベースのYUJIくんの柔軟性に全てかかってるというか、だってウッドベースで四つ打ちやろうよって言っても、ほかの人ならこんなにスムーズにいかないし。

──実際の楽曲はキャッチーに仕上がりましたよね。

高橋 「誰かにしかわからない音楽はやりたくないよね」ってよく話してて。初めて聴いたときに「なんかよくわかんないけど、でもいいな」とか、それぐらいでもいいので、とにかく記憶に残る曲を作っていきたいし、活動をしていきたいんですよね。

──そういえば今回、レコーディングエンジニアはSwinging Popsicleの平田博信さんが務めているんですよね。これも意外でした。

高橋 元々HARISSの作品は彼が録ってくれてて、僕の学校の後輩でもあるんですけど、それ以上に彼の作る音が好きなので。で、AKIRAくんも平田が作った音を聴いて「すごくいい」と。

AKIRA 僕は大瀧詠一さんのサウンドとかも好きで、平田くんはちょうどそういう音作りがうまかったんですよ。

──なるほど。HARISSという場にいろんな人が集まってきてるんですね。

高橋 そうですね。まさか平田と作品作るなんてっていうのもあるし、それはほかの人たちもそうで。カメラマンの久保(憲司)さんとかもPEALOUTのときは写真を撮ってもらってたんですけど、HARISSではなかなか機会がなくて。でも久保さんの写真やっぱいいなあと思って、また声をかけてみたりしたんです。だから今まで知り合ってきた人はこれからもよろしくっていう意味もあるし、ビデオクリップとかの映像をやってくれた加藤マニくんっていう若手は、デザインも驚愕の才能で、ジャケットやポスターとかも全部任せたんで。彼の力も大きかったですね。

──昔だったらデザインならデザインだけ専門にやる人が多かったと思うんですが、今は音楽が共通言語になって多岐にわたる表現をする人が増えてるんですか?

高橋 増えてますね。さっきの平田みたいにミュージシャンがレコーディングエンジニアをやるケースもあるし、ジャケットデザインを描く人もいるし。だからカテゴライズを超えて、できる人、やりたい人がやっていくっていうことでいいんじゃないかなと思っていて。

──それはこの「LookHearRecords」が目指していくものでもある?

高橋 はい。関わる人が全員楽しめるような場所になればいいですよね。例えば映像作家の人が映像ありきでバンドを探すっていう形でもいいし、ジャケットを作りたいっていうデザイナーでもいいし。まだまだ何かやってみたいと思ってる人は周りにも多くて。あとは「テクニックはないけど何かやりたいっす!」っていう若い子の力も借りたいし。自分がこの歳、40過ぎてもやっぱり10代の子と面白い話ができるのがいいですね。肩書きじゃなくて、あくまでもやりたい人が集まってくるのが一番いいあり方なんじゃないかなと思うので。

ライブ写真
ニューアルバム「BELIEVE US」 / 2012年11月7日発売 / 1575円 / LookHearRecords / LHRUK-1977
ニューアルバム「BELIEVE US」
収録内容
MUSIC TRACK
  1. BELIEVER
  2. BANG!
  3. CO2
  4. TWISTIN' DISCOTHEQUE
MOVIE TRACK
  1. LOSER(LIVE MOVIE)
  2. LADY BIRD(MUSIC VIDEO from "ROCKIN'BROADWAY" original motion picture)
  3. AKIRA and SEIJI TALK ABOUT GUITARS
HARISS(はりす)

AKIRA(Vo, G)、SEIJI(G)、YUJI(B)、高橋浩司(Dr)からなる4人組ロックバンド。高橋浩司が所属していたPEALOUTの解散後、2005年に結成。ライブを中心に活動し、2007年3月に1stアルバム「POP SAVE US」を発表。2012年11月には高橋率いる新レーベル「LookHearRecords」からCD-EXTRA仕様の新作「BELIEVE US」をリリースした。