ナタリー PowerPush - ハンサムケンヤ

GAINAXとの強力コラボも!「ブラックフレーム」制作秘話

ハンサムケンヤインタビュー

憧れのGAINAXとコラボ

──前作に引き続き、ビッグなコラボが実現しましたね。

ハンサムケンヤ

そうですよね、ほんとに。前回の浅野(いにお)さんも大好きなマンガ家さんでしたし、今回のGAINAXも大好きなアニメ制作会社なので、めちゃくちゃ幸せですね。

──どんな経緯で今回の話に至ったんですか?

僕の「これくらいで歌う」のビデオクリップが「インディーズアニメフェスタ」で賞をいただいたとき、審査員にGAINAXの赤井(孝美)さんという方がいらっしゃったんですよ。で、そこに一緒に来ていた社員の方も僕のファンになってくれたみたいで、あるとき連絡をくださって。そこから、「じゃあ会社にも遊びに来てよ」っていう流れになり。なんの用事もないのにGAINAXに遊びに行くというすごく面白い経験をさせてもらったんです。そんな中で今回ジャケットを描いていただけるという運びになったんですよね。

──じゃあ、浅野さんのときもそうでしたけど、もともと交流があった上で実現したコラボというわけですね。

そうなんですよ。ほんとに不思議な縁というか。相思相愛な感じのコラボになりましたね。

──GAINAXの手がけたアニメで特に好きな作品ってあります?

大学時代の暇な時間によくアニメを観るようになって、「(新世紀)エヴァンゲリオン」とか「(天元突破)グレンラガン」とかはもちろん観てたんですけど、GAINAXというアニメ制作会社を強く意識するようになったきっかけは「フリクリ」でしたね。かなりの衝撃を受けました。

──2000年から2001年にリリースされたOVAですよね。

なんかもうほかのアニメとはぜんぜん違うなっていうイメージがあったんです。マンガとか小説が原作になってるアニメが多い中で、GAINAXのオリジナルアニメだということも新鮮でしたし、僕は専門家ではないので詳しいことはわからないけど、演出がすごく細かいなあと思ったんですよね。あとは作品中の曲を、僕が昔からファンだったthe pillowsが担当していて、アニメーションとぴったりマッチした使われ方をしているのがすごく面白かったですし。ある種のビデオクリップのような感覚で観れてしまうというか。

──ミュージシャンとして刺激を受ける作品でもあったと。

ほんとにそうですね。僕の場合、アニメの中の名台詞とか記憶に残る景色とか、そういうものから曲作りにおいて何かしらの影響を受けることもあるんです。だからこそ、逆に僕が作った曲をアニメを作ってるGAINAXの方に気に入っていただけたのはすごく素敵なことだなって思うんですよね。

──完成したCDのアートワークはいかがでしたか?

ハンサムケンヤ

GAINAXのクリエイターである品川(宏樹)さんが描いてくださったんですけど、曲に対して真摯な表現をしてくれてるなあって思いました。それがすごくうれしくって。今回のアートワークには、近未来の閉ざされた京都で僕が活躍をして出口を見つけ出そうとするけど、その出口がどこにつながってるのかはわからないっていうストーリーがあるんですよ。いろんな悩みや葛藤を抱えていて、最終的にそれが解決せずに終わる歌が僕には多いので、似た雰囲気を感じましたね。

──ギターをモチーフにしたバイクにケンヤさんが乗っている初回限定盤のジャケットはヒーロー然とした雰囲気ですごくカッコいいですよね。

このバイクは僕のギターをモデルにしてくれたんですけど、まさに「フリクリ」の世界観のような感じがあって。ミーハー心で喜んじゃいましたね。科学的にはありえない形らしいですけどね、バイクとしては。僕が座ってる絵が描かれた通常盤のジャケもすごく好きです。パッと見、京都の伏見稲荷なんですけど、よく見ると鳥居が電柱で構成されてて面白い。僕の座り姿がリアルなのにもビックリしましたね。実際こういう座り方をよくするんで。それを見てないはずの品川さんがこれを描いたことに感動しました。

──アニメーションとして動いている絵も観てみたくなるジャケットだと思います。

ですよね。アニメのレイアウトみたいなアートワークになっているので、カットの数字まで書かれてるんですよ。なので、このままアニメまで作ってくれるんじゃないかと思ってたんですけど、やっぱりそれは難しいようで。予算的にもそうだし、あとは僕のアニメを作ったところで流行らないだろうっていう(笑)。

より自由に面白がってやっていきたい

──続いてミニアルバム「ブラックフレーム」の内容に関してもお話を聞いていきましょう。ケンヤさん的にどんな作品に仕上がりました?

前回もそうでしたけど、今回も大げさなコンセプトはなく、僕の等身大な内容になりましたね。自分の手の届く距離で起きることを曲にした感じで。ただ、妄想と現実の割合的にはちょっと妄想が強くなってるっていうのはあるかもしれないです。

──さまざまな景色を見せてくれる多彩なサウンドが楽しかったです。

「とはずがたり」という曲なんかは、4曲分のアイデアをつなぎ合わせて1曲にしたんですよ。ポール・マッカートニーが言ってた「次の展開が予想できない曲作りをしたい」っていう言葉を思い出しながら、ある種実験的というか、面白がって作ることができましたね。

──リード曲となる「テヌート」はラブソングっぽい雰囲気のある曲ですね。

この曲はけっこう最近作ったんですけど、初めてのラブソングなんですよ。

──え、初めてなんですか?

ハンサムケンヤ

はい。自分の恋愛を歌にしたところで誰も興味ないんじゃないかってずっと思ってたし、僕は他人のラブソングを聴いても「だから何?」って思うような人間だったので。でもやっぱり人は恋愛に心動かされるものだなって思ったんですよね。

──何かきっかけがあったんですか?

大学時代の友達に会って話すことと言えば、仕事か恋愛のことになるんですよね。そんな二択のうちの1つになるぐらいなら、それは大事なことなんだろうなって思ったんです。

──「恋愛」って生きる上で大事なテーマではありますよね。

なので僕の数少ない恋愛の思い出を掘り下げながら作ったんですけど、結局はあんまりラブソングっぽくない感じに落ち着きましたね。どうしても生々しく書くのは恥ずかしいので。“ラブソングとは言えないラブソング”っていうキャッチコピーで今後はやっていこうかなと思ってるんですけど(笑)。

──この曲のビデオクリップは、ケンヤさんの作品ではおなじみの映像作家・椙本晃佑さんが手がけられています。

歌詞の内容に合わせて女性が登場するので、ついにラブシーン解禁かと思ったんですけど、実際はままならないストーリーでした(笑)。前回の鼎談で「ラブシーンがしたい」って言いましたからね。今回ヒロインが登場するって話になったときに、僕としては覚悟を決めてたんですけど……なかったです(笑)。でも内容的には今まで作ってきたビデオクリップとは明らかに違う雰囲気にはなったと思うんですよ。楽曲自体、初めて書いたラブソングですし、初めて使ったコードがあったりもしたので、そういう部分も含めてリスナーの方には新しいハンサムケンヤを感じてもらえたらうれしいですね。

──では、本作からスタートする2013年の活動に対して何か展望はありますか?

ハンサムケンヤ

今年は毎日曲を作るっていう目標を立てたので、ほんとに毎日作曲活動をしてるんですよ。まずはそれをしっかり続けていくことですね。あとは、ソロアーティストであることの利点をフルに生かしながら、より自由に、いろんなことを面白がってやっていきたいですね。

──素敵なコラボにも引き続き期待したいところですが。

いやー、それを言い出したら、まだコラボ欲あんのかよとか言われそうですよね(笑)。でも「フリクリ」とthe pillowsの関係みたいに、何かの作品とコラボできたらいいなっていう気持ちはあります。それが映画なのかアニメなのか、はたまたまだ存在しない形の何かなのかはわからないですけど、単純に主題歌を歌いますみたいな商業的な感じではなくて、関係者も面白がってくれるようなガッツリと関わるコラボレーションができたらいいなと思います。

2ndミニアルバム「ブラックフレーム」/ 2013年2月27日発売 / Victor Entertainment
初回限定盤 [CD+DVD] / 2500円 / VIZL-521
通常盤 [CD] / 1600円 / VICL-64006
CD収録曲
  1. テヌート
  2. とはずがたり
  3. カーニバル
  4. 明日を生きる世代
  5. 戦前生まれのオンボロギター
  6. 摩天楼
初回限定盤DVD収録内容
  • 「テヌート」MV
  • 密着ドキュメンタリー「平日、平熱。」
ハンサムケンヤ 2nd mini album「ブラックフレーム」リリースパーティ「BARくろぶち ~ブラックフレーム始めました~」

2013年3月23日(土)東京都 2.5Dスタジオ
OPEN 19:30 / START 20:00

ハンサムケンヤ

1987年生まれ、京都在住のアーティスト。2011年に立命館大学を卒業。大学時代のバンド仲間が立ち上げたインディレーベル・古都レコードの第1弾アーティストとして、同年5月に1stミニアルバム「これくらいで歌う」を発表する。2012年にビクターエンタテインメントと契約。同年10月にメジャー1stミニアルバム「ゴールドマッシュ」をリリースした。2013年2月にメジャー2ndミニアルバム「ブラックフレーム」を発表。