話術に関しては、確実に崇からの影響がある
──池ちゃんにとって、永積くんはどういう存在ですか?
池田 例えば、自分の中で思い付いたアイデアはあるんだけど、まだちょっと弁が開いてないようなことがある。だけどそういうときに崇と会って話したりすると、いい具合に弁を開いてくれる。そういうところはあるよね。
永積 だって知り合ってから20何年も経つからね。ひと言何かを発しても、たくさんの時間を含んで伝わってると思うから。この時間をかけて同じことを言える人は、池ちゃんにとっては俺しかいないと思うし、俺にとっては池ちゃんしかいない。それに、お互いに似てるところもすごくあるし、逆に対照的なところもあって。俺の手が届かないところに、池ちゃんがパッと手が届くのを見て、もっと俺もこうしていいんだなって気付くところもある。今は音楽シーンもちょっと固まってる部分があるけど、意外と池ちゃんは、そういうところも簡単に飛び越えちゃう人なんだろうなって思ってる。
池田 いやいや、崇もわりとそのタイプだって、昔から思ってるよ。どっちかって言うと、瞬発力とかは崇のほうが断然あるから。
──レキシはわりと作り込んだものがあるうえで、池ちゃんが自由に弾けるタイプだと思うけど、ハナレグミの場合は永積くんの存在自体がフリーに泳ぎ回っているという印象があります。
永積 そうかな。確かに弾き語りの場合は、自由に曲を変えたりもあるけど。
池田 それもあるけど、もともと音楽面だけじゃなくてMCも含めて、自由にやってると思ってるよ。それに話術に関しては、確実に崇からの影響があると思うし。
永積 うーん、話術の部分でいうと、完璧にバタードッグのときのトラウマから出てきたものだけどね。池ちゃんに何を無茶振りされるかわかんない。その緊張で、MC前になると歌詞を忘れちゃうっていう(笑)。
池田 それもよく言われるけど、今のライブ見るとそんなふうにはとても見えないよ。
──最近のハナレグミのライブでの、永積くんのMCの面白さは半端ないですよね。
池田 いやいや、昔から話術に関してはうらやましかったから。あんま信じてもらえないけど、やっぱり自分の面白ポイントを瞬発力で話していくのがすごいし、それに崇はいろんな経験もしてるから。同じようなことやっても、俺はそんな経験しないもの。
──それに永積くんはネタの宝庫ですからね。どこか引き寄せ力があるというか。
池田 いわゆる“持ってる”ってやつですよ。
永積 あははは(笑)、そうかな? わかんないけど、MCに限らず自分にとっての表現の根幹にあるのは、インプロビゼーション力みたいな感覚というか。その瞬間にいかに自由になるか、そして自分が直面してるものをどう面白がるか。真正面から捉えると縦割りでイエスかノーになっちゃうところを、別なベクトルで動かすと……そこに衝動が生まれる。例えばレキシは普通に“歴史”を歌詞にしたら、ただの事実確認になっちゃうところを、アプローチを変えることで、そこに誰も踏み入れてない景色がバーンと広がる。自分もやっぱり歌詞や曲を作るとき、あるいはライブにおいても、それを見つけることが大事で。自分は歌うときに、どうやったら今日初めて歌うような気持ちになるか。そのために例えばライブハウスじゃないところとか、普段ライブをやるような場所じゃないところでやることによって、その曲の見えなかった部分が立ち上がってくるんじゃないかって思うんだよね。それが楽しいし、聴き手よりも自分がまず熱くなるっていう瞬間を作る。そこは一生懸命やってることかも。
池田 自分なりのアドレナリンが出るポイントを探していくというかね。
永積 そうそう。上原ひろみちゃんは、感情に一番近い1音を探して、自分で自分のことを何度も見つめてる。そういう作業は、僕らも似たようなことをしてるかもしれないし。やっぱり予定調和は一番怖いっていうか、自分を騙したくないっていうかね。
池田 それが衝動なんだよね。そんなにほかの人のライブを観に行ってるわけでもないけど、やっぱりなかなかないよ。数少ない中でも、自分もやんなきゃって意味も含めて、いつも面白いのはハナレグミのライブですよ。しかも、これだけ何回も観ていても面白いって思える。普通何度か観たら、こんなもんかってわかるものもあるけど、そこが違うんだよね。それは本人が衝動を抱えてるから。やっぱりいつまでも衝動を失いたくないし、形はどうであれ衝動をいかにして生み出していくか、それに尽きるね。
永積 自分を解放して、たくさんの人に刺激を与える。そして場をオーガナイズしながら、みんなを連れていく。池ちゃんがしたいことは、たぶんそこだと思うんだよね。それは俺もそうで。どういうスタイルでもいいんだよ。とにかくその瞬間にものすごく極まって、たくさんの人を連れていくっていうか。一緒に1つのものになっていく、お祭りっていうかさ。自分も池ちゃんも、どうしてやろうかなって、日々アイデアを磨いてるんだよね。
- ハナレグミ・レキシ「La族がまたやって来た、ジュー!ジュー!ジュー!」
- 2017年4月26日発売 / 伽羅古録盤
-
[Blu-ray Disc]
5940円 / VIXL-186 -
[DVD2枚組]
4860円 / VIBL-843~4
- 収録内容
LIVE
ハナレグミ
- 光と影
- 音タイム
- 家族の風景
- きみはぼくのともだち
- フリーダムライダー
- オリビアを聴きながら
- 無印良人
- オアシス
- 明日天気になれ
- 深呼吸
レキシ
- KMTR645
- 年貢 for you
- 狩りから稲作へ
- 最後の将軍
- SHIKIBU
- きらきら武士
ENCORE SESSION MEDLEY
- ら・ら・ら ~ LA・LA・LA LOVE SONG
特典映像
- 撮り下ろしドキュメンタリー風番組 「La族をさがせ!」
スペシャル副音声
ハナレグミ、レキシ、TOMOHIKO(ex. SUPER BUTTER DOG)によるオーディオコメンタリー
- ハナレグミ
- 永積崇(ex. SUPER BUTTER DOG)によるソロユニット。2002年11月に1stアルバム「音タイム」をリリースし、その穏やかな歌声が好評を得る。2005年9月には東京・小金井公園でフリーライブ「hana-uta fes.」を開催し、約2万人の観客を集めた。2009年6月に4年半ぶりとなるアルバム「あいのわ」をリリースし、ツアーファイナルの東京・日本武道館公演を成功させる。2013年5月リリースのカバーアルバム「だれそかれそ」では多くの名曲をさまざまなアプローチで歌い上げ、ボーカリストとしての力量を見せている。2015年8月に野田洋次郎(RADWIMPS)、YO-KING(真心ブラザーズ)、池田貴史(レキシ)、堀込泰行(ex. キリンジ)、辻村豪文(キセル)、大宮エリーら、さまざまなアーティストが参加したアルバム「What are you looking for」をリリース。2016年5月に公開された是枝裕和の監督映画「海よりもまだ深く」では、劇伴および主題歌「深呼吸」を手がけた。
- レキシ
- 1974年福井県生まれの池田貴史によるソロプロジェクト。池田は1997年にSUPER BUTTER DOGのキーボーディストとしてデビューし、2004年からは100sのメンバーとしても活躍。その日本史マニアぶりを生かし、2007年にレキシとしての1stアルバム「レキシ」を発表した。レキシでは日本史の登場人物や史実をソウルフルなサウンドに乗せて歌う独自のスタイルで注目を集め、2011年3月に2ndアルバム「レキツ」、2012年12月に 3rdアルバム「レキミ」をリリース。2014年6月に4thアルバム「レシキ」を発表した。同年8月には初の日本武道館公演を開催。12月には上原ひろみを迎えた東名阪ツアーを実施した。2015年9月には青森・三内丸山遺跡でのワンマンライブを成功させる。同年11月25日に、初のシングル作品である「SHIKIBU」を発表。2016年6月に5thアルバム「Vキシ」をリリース。2017年4月にはニューシングル「KATOKU」を発売する。
- レキシ「KATOKU」
- 2017年4月26日発売 / 伽羅古録盤
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初回限定盤 [CD+グッズ]
1836円 / VIZL-1113 -
通常盤 [CD]
1296円 / VICL-37250
- 収録曲
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- KATOKU
- 眠れるレキシ~オルゴールで聴くリレッキシミュージック~(きらきら武士~SHIKIBU~最後の将軍~年貢 for you~狩りから稲作へ)
- トロピカル源氏~レキシ変~
- きらきら武士~Live ver.~