池ちゃんのライブを観ながら、自分を観てるような気がする
──特典映像やコメンタリー、あとはアンコールについての話を先にしてしまいましたが、当然ながら今回の映像作品のメインはハナレグミとレキシのライブにあるわけで。お二人はそれぞれ、お互いのライブにどんな印象を持っているんですか?
永積 俺はね、いつも池ちゃんのライブを観ながら、けっこう自分を観てるような気がするんだよね。
池田 どういうこと?
永積 ステージに立ってる池ちゃんって、すごいくだけてるように見えて、ものすごく考えてるのもわかるから。「きっと今、もうちょっと来てほしいって思ってるだろうな」とか、自分も一緒にステージに上がってるような感覚で観てることもある。それに池ちゃんのライブを観ることで、「こういう部分が自分は足りないなあ」とか気付くこともあるし。
──例えば、どんな部分に気付かされるんですか?
永積 やっぱりレキシのライブを観てると、今の音楽だなって思うわけ。ライブって生々しいものであるべきだなって思うし、今はそういう刺激を求めてるお客さんも多いと思う。レキシのライブに来る人たちも、予定調和とか求めてないっていうか、この先どうなっていっちゃうの?って、みんなでヒヤヒヤしながら乗り越えていく感動みたいなさ。そういうことを、自分ももう一度手にしたいなって、池ちゃんのライブを観てると思うんだよね。
池田 でも、自分のライブがそうなったのは、この人(永積)の影響だからね。だから、崇が話してたことを聞きながら、お互いに影響しあって、グルグル回ってるんだなって思った。そこは面白いよね。
永積 たぶん、バタードッグのときからそうだったと思うけど、1つの形やスタイルになりきれないっていうか。それも音楽のジャンルにとらわれない、もっとフリーキーな表現というか。バンドやってた頃は、もっともっとファンクっていうのものを追求して、スタイリッシュな人たちをカッコいいなって思ってたところもあるけど、ウチらの場合はファンクをただやるってことだと、どうも爆発しない、燃えカスみたいなものがあって。そういうジレンマがあったからこそ、今の各々のやり方につながったんじゃないかなって。
──それぞれが爆発させるやり方を見出してきたというか。
永積 16ビートがうまく刻めるのがファンクっていうことじゃなく、そのままでいいんだっていう。考えてみると、ブラックミュージックの根幹にあるのってそこなんだよね。違う国に住む俺らがやろうとすると、どうも頭で考えすぎちゃうところがあるけど、もっとそうじゃない、肉体的なところに近付きたいっていう思いが、レキシのステージであり、ハナレグミの歌っていう表現を生んだのかもしれないね。
ライブ映像作品の概念を壊す“アバンギャルドな編集”
──今回の「Laughin’10周年突入記念イベント La族がまたやって来た、ジュー!ジュー!ジュー!」は、レキシにとっては初の映像作品ということですが、“アバンギャルドな編集”と銘打った前代未聞の編集が施されています。
池田 よく言ったもんだよね。ナタリーの記事とかで発表されて、思わず“アバンギャルド”って意味調べたもん。そしたら前衛的って書いてあって、ちょっと恐れ多いわ!(参照:ハナレグミ&レキシ競演ライブ“アバンギャルドな編集”で映像化)
永積 でもさあ、俺はなぜかその打ち合わせにいたんだけど、あのアイデアが生まれる現場ってすげえなって、ちょっと感動したんだよね。そりゃ、音楽だけを映像で観せるって意味ではどうなのかってところもあるのかもしれないけど、音楽の映像だけを作ろうとしてる人には、あの発想は絶対に出てこないじゃん? こういう発想力を持つ人たちが、どんどん音楽シーンのフォーマットをぶっ壊していくんだなって、すげえなって思ったんだよね。たぶん自分だったら、「いやいや、ちゃんとやってください」って方向になっちゃうと思うんだよ。だけど、レキシの現場はそれがどんどんアリになっていくからね。
──予想を遥かに超えたアイデアでしたもんね……って、池ちゃんもなんで他人事みたいに聞いてるんですか?(笑)
池田 ふーん、そうなんだ?って思って(笑)。
永積 レキシのライブって、それこそSex Pistolsみたいなもので。いつまでも実像がわからないっていうかさ。その現象すべてがレキシなんですよ。
──映像や文章を見聞きしただけでは、レキシの実像にはいつまでも触れられない。
永積 だから今回、この“アバンギャルドな編集”が入ることで、逆に生々しくなるっていうのもすごいと思ったね。ライブ映像作品の概念を壊してるというか。だけど、もともとライブ映像作品って、こういうもんだったんじゃないかとも思う。今ってライブ映像が、なんか確認ごとになってるじゃない? この人のは、いつまで経っても確認させない映像だからさ。これは今たぶんレキシにしかできない。だから、俺はあのときのミーティングに同席して、ちょっと悔しかったの。俺にはこれできないなって。今の音楽は、こっちのほうが刺激的だよね。上原ひろみちゃんが、最初にレキシを観たときに「これ、ジャズだ!」って言ったんでしょ? 映像もそういうことだよね。このライブ映像を使って、どうセッションするかっていう。
池田 だから自分にとっては映像作品だろうが、ライブだろうが、フィールドが変わってる気がしないんだよね。でも、最初で最後だって言われてるけどね。周りのスタッフが大変だったって言ってるから。
永積 大変なぐらいでいいんじゃない? スタッフはみんな必死だと思うけど、そうじゃないとあのライブ感は立ち上がってこない。池ちゃんに振り回されてるぐらいじゃないと、あの生々しさは生まれないよ。
次のページ »
話術に関しては、確実に崇からの影響がある
- ハナレグミ・レキシ「La族がまたやって来た、ジュー!ジュー!ジュー!」
- 2017年4月26日発売 / 伽羅古録盤
-
[Blu-ray Disc]
5940円 / VIXL-186 -
[DVD2枚組]
4860円 / VIBL-843~4
- 収録内容
LIVE
ハナレグミ
- 光と影
- 音タイム
- 家族の風景
- きみはぼくのともだち
- フリーダムライダー
- オリビアを聴きながら
- 無印良人
- オアシス
- 明日天気になれ
- 深呼吸
レキシ
- KMTR645
- 年貢 for you
- 狩りから稲作へ
- 最後の将軍
- SHIKIBU
- きらきら武士
ENCORE SESSION MEDLEY
- ら・ら・ら ~ LA・LA・LA LOVE SONG
特典映像
- 撮り下ろしドキュメンタリー風番組 「La族をさがせ!」
スペシャル副音声
ハナレグミ、レキシ、TOMOHIKO(ex. SUPER BUTTER DOG)によるオーディオコメンタリー
- ハナレグミ
- 永積崇(ex. SUPER BUTTER DOG)によるソロユニット。2002年11月に1stアルバム「音タイム」をリリースし、その穏やかな歌声が好評を得る。2005年9月には東京・小金井公園でフリーライブ「hana-uta fes.」を開催し、約2万人の観客を集めた。2009年6月に4年半ぶりとなるアルバム「あいのわ」をリリースし、ツアーファイナルの東京・日本武道館公演を成功させる。2013年5月リリースのカバーアルバム「だれそかれそ」では多くの名曲をさまざまなアプローチで歌い上げ、ボーカリストとしての力量を見せている。2015年8月に野田洋次郎(RADWIMPS)、YO-KING(真心ブラザーズ)、池田貴史(レキシ)、堀込泰行(ex. キリンジ)、辻村豪文(キセル)、大宮エリーら、さまざまなアーティストが参加したアルバム「What are you looking for」をリリース。2016年5月に公開された是枝裕和の監督映画「海よりもまだ深く」では、劇伴および主題歌「深呼吸」を手がけた。
- レキシ
- 1974年福井県生まれの池田貴史によるソロプロジェクト。池田は1997年にSUPER BUTTER DOGのキーボーディストとしてデビューし、2004年からは100sのメンバーとしても活躍。その日本史マニアぶりを生かし、2007年にレキシとしての1stアルバム「レキシ」を発表した。レキシでは日本史の登場人物や史実をソウルフルなサウンドに乗せて歌う独自のスタイルで注目を集め、2011年3月に2ndアルバム「レキツ」、2012年12月に 3rdアルバム「レキミ」をリリース。2014年6月に4thアルバム「レシキ」を発表した。同年8月には初の日本武道館公演を開催。12月には上原ひろみを迎えた東名阪ツアーを実施した。2015年9月には青森・三内丸山遺跡でのワンマンライブを成功させる。同年11月25日に、初のシングル作品である「SHIKIBU」を発表。2016年6月に5thアルバム「Vキシ」をリリース。2017年4月にはニューシングル「KATOKU」を発売する。
- レキシ「KATOKU」
- 2017年4月26日発売 / 伽羅古録盤
-
初回限定盤 [CD+グッズ]
1836円 / VIZL-1113 -
通常盤 [CD]
1296円 / VICL-37250
- 収録曲
-
- KATOKU
- 眠れるレキシ~オルゴールで聴くリレッキシミュージック~(きらきら武士~SHIKIBU~最後の将軍~年貢 for you~狩りから稲作へ)
- トロピカル源氏~レキシ変~
- きらきら武士~Live ver.~