羽方美紅とKEISUKEのコラボソング「カケチガイ」が9月に配信リリースされた。
高知在住の羽方と広島在住のKEISUKEは、TikTokで若者たちから注目を浴びているシンガー。作詞、作曲いずれも共作のコラボソング「カケチガイ」では、お互いを思う気持ちがありながらもうまくいかずにすれ違う男女のストーリーが描かれている。
音楽ナタリーでは2人にリモートインタビューを行い、出会いの経緯や楽曲の制作過程、地方で活動するというスタイルについて話を聞いた。
取材・文 / ナカニシキュウ
第一印象はお互い「バケモノ」
──9月4日にお二人のコラボ楽曲「カケチガイ」がLINE RECORDSから配信リリースされました。リリースから少し経ちましたが、反響はいかがですか?
羽方美紅 おかげさまで、拡散してくださる方もたくさんいらっしゃって。
KEISUKE 「ミュージックビデオの映像がめちゃめちゃきれいだね」とか、「2人が掛け合いで歌っているところ、声が合ってるね」と言っていただけたりもしています。
羽方 確かに。
KEISUKE 僕たち自身も声の相性はすごくいいなと思っているので、そこを褒めていただけるのはうれしいですね。反響としては上々だと思います。
──そもそも今回、このお二人で楽曲をリリースするという企画はどういう経緯で始まったんですか?
羽方 いきなり決まった感じでしたよね(笑)。
KEISUKE あるときマネージャーさんから「美紅ちゃんと一緒に曲を作るの、どう?」という提案があって。
羽方 声質が合うというのは出会った当初から思っていたので、私はずっと一緒に歌いたいと思っていて。お話をいただいたときは「絶対にやりたい」と即答しました。
KEISUKE 僕らはもともとSNSで知り合って、ライブやイベントを一緒にやってきていたり、前から仲はよかったんです。そこにこういう話が来たので、「それはぜひやりたいです」と。
──お二人の出会いはどういう感じだったんですか?
羽方 そもそもは3年くらい前に、InstagramでKEISUKEさんが清水翔太さんの「アイシテル」をカバーしている動画を観て、「ヤバい、この人!」と(笑)。それに触発されて、私もまったく同じ曲を同じアレンジ、同じ歌い方でカバーした動画を載せたんですよ。そうしたらKEISUKEさんがそれに気付いて、フォローしてくださって。
KEISUKE 知り合いから「ヤバい子がいるんだけど」って教えられて、その動画を観たんです。「うわ、バケモノや」と思いましたね(笑)。その後、高知の人だということがわかり、共通の知り合いを通じて広島から会いに行って一緒に歌ったりして、「声がめっちゃ合うな」と。それが最初ですね。
──人が歌ったカバー曲をそのまま同じようにやるって、なかなか珍しいパターンですよね。言うなれば“カバーのコピー”というか。
KEISUKE モノマネ芸人のモノマネをするみたいな(笑)。人のカバー曲を聴いたときに「このアレンジいいな」と思って部分的に取り入れるようなことはよくあるけど……。
羽方 まるまるコピーしてしまったという(笑)。まさか本人に見られるとは思ってなくて、パクってしまいました。あはは。
──それくらい、KEISUKEさんのアレンジやボーカルに惚れ込んでしまったということですよね。
羽方 そうですね。私も「バケモノやな」と思いました(笑)。
地元を盛り上げたい気持ちがある
──現在、お二人は広島、高知でそれぞれ音楽活動をされていますよね。東京や大阪ではなく地元で活動することにはどんな利点があると考えていますか?
KEISUKE やっぱり、まずは応援してくださる方との距離がすごく近いです。中四国って地元愛の強い人が多くて、同郷の人間に対する仲間意識がたぶんほかの地方よりも強いんですよ。
羽方 自分自身も地元が好きなんですよね。だから大事にしていきたい思いは強いです。
KEISUKE 地元を盛り上げたい気持ちもあるしね。
羽方 そう。今はSNSもあるし、地元にいながらでも十分な音楽活動ができますし。
──本当にそうなんですよね。ちょっと昔だったらミュージシャンを志す若者は「とりあえず東京へ出て、話はそれからだ」という感じもあったと思うんですけど、今はもうそういう時代ではないというか。
KEISUKE 明確な理由もなしにゼロの状態で東京へ行っても、それこそ同じようにアーティストを目指している人の絶対数も多いですから。だからまずは地元を大事に……と言っても、僕はいずれ東京へ行きたいなと思っているんですけど。
──KEISUKEさんは東京に住んでいたこともあるんですよね。
KEISUKE はい。大学生のときに4年間いたので、そっちに友達がたくさんいるんですよ。みんなが楽しそうに音楽やってるのを広島で指くわえて見ているような感じなので(笑)、自分も東京で彼らと活動したいなという気持ちはあります。でも、それと同時に広島から音楽を発信することもすごく素敵なことだなと感じていて。
羽方 発信する面白さは確実にありますよね。
KEISUKE もし今アーティストを目指している人で「とりあえず」で東京へ行きたいと思っている人がいたら、まずは今いる環境でできることを発信していくことを考えたほうがいいんじゃないかと思いますね。
──「なんとなくチャンスがありそうだから」というようなふわっとした理由で上京するのは考えものだと。
KEISUKE そういう人もいっぱいいると思いますけど。
──その点、「友達がいるから東京でやりたい」はすごく切実でいい理由だと思います。
KEISUKE あははは。
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“うまくいっていない2人”の歌