第三者の歌詞を歌うことは、grramにとって必要な挑戦だった

──「悲しいほど 今日の夕陽 きれいだね」は、今回唯一の歌詞の提供を受けた楽曲ですが、第三者が描く歌詞の世界を歌うことについてはどうでしたか？

このアルバムを制作中に、「こんな曲もあるよ」とこの曲のデモを聴かせてもらったんですが、私が書くことのできない世界観が描かれていて、すごく面白かったんですよね。聴いているうちにこの曲はアルバムの中のポイントになるなと思って、ありがたく歌わせていただくことにしたんです。

──実津紀さんの歌詞はとてもストレートですが、この曲は含みの多い言葉が並びますよね。

はい。そこがすごく新鮮でしたね。さらにメロディがゆったりと穏やかなのに、ピリリと社会風刺も効いていて、何度も聴きたくなる曲だな、って思ったんです。とはいえ、レコーディング中はメロディに寄ってゆったり歌うとメッセージが伝わりづらいし、歌詞に寄せて強く歌うとまた違う感じになるので、すごく難しかったんです。

──やはりほかの人が作る歌詞世界は難しかったですか？

そうですね。いただいた歌詞を理解しながら歌うのは難しかったです。自分の歌詞は、どうしてその言葉が出てきたか、自分が書いたからこそわかっているし、気持ちも理解した上で歌っているので。でも、ほかの人が表現した感情を受け入れるのはとても楽しかったんです。grramにとって、提供された歌詞を歌うのは、ステップアップするために必要なことだったのかもしれないですね。

バンド名やジャケットも全て表現のひとつだと思っているんです

──バンド名のgrramは造語なんですか？

はい。北欧神話に登場する石や鉄もたやすく切り裂いたといわれる剣の名前「Gram」と、コンピュータの中にあるメモリの「RAM」。いつまでも心に深く刻み込まれるような音を真摯に届けたいという思いから、この2つの言葉を組み合わせて「grram」としたんです。

──すごく、いい意味ですよね。

バンドって、曲はもちろん、バンド名やジャケットも全て表現のひとつだと思っているんです。このアルバムのジャケットもビルとビルで道路を挟んで社会や心の窮屈感を表しているんです。真ん中で紙をビリッと破いたようなデザインになっているんですが、これは、悩んだり、挫折したりしてうまくいかない自分を壊したいという思いを込めているんです。でも、そんな葛藤をしながらも、その奥からは1本の光が差し込んでいるという諦めない気持ちを、1枚のジャケットに表現しました。

──素晴らしい！ ところで、grramのメンバーは1日中休みなく音楽のことを考えている気がするんですが……。

間違いないですね（笑）。私は女子なので、まだオシャレのことなど好きなことを考える時間はあるんですが、男性メンバー全員は、音楽のこと以外全く考えていないと思います（笑）。でも、だからこそみんなが同じ方向を向いていて、いい活動ができるんですよね。

──では最後に、これからどんなバンドになっていきたいですか？

grramの曲が、聴いてくれた人ひとりひとりの心の中で、代わりのきかない存在になってほしいです。いつか、grramの曲があったから行動を起こせたと言われるような、その人にとって大事なポイントに自分たちの曲が存在するようなバンドになりたいですね。

「心の指すほうへ」ビデオクリップ

「心の指すほうへ」“夢”CLIP（1132人“夢”CLIP Ver.）

「悲しいほど 今日の夕陽 きれいだね」ビデオクリップ