マイケル・ジャクソンが、生きる希望と夢を与えてくれた

──シンガーになるのは、小さな頃からの夢だったんですか？

歌うことは大好きで、暇さえあれば歌っているような子供でした。実際に、歌い手として発信する側になろうと思ったのは、中学生の頃。当時は人間関係や、自分の存在価値について、とにかく悩んでいて、前が見えなかったんです。悩んだ果てに「どうして生きているんだろう」って思うことも（笑）。そんなときに出会ったのがマイケル・ジャクソンのライブDVDでした。そのパフォーマンスを観て尋常じゃないほど影響を受けたんです。どの動きも、どの歌も全てが心に刺さったんですよね。その瞬間、全ての悩みが小さく思えて、心から救われたんです。

──それから、彼と同じシンガーを目指そうと思ったんですね。

はい。もしも、私がこうやって救われたように私の歌で誰かが前向きになれるのならば、それほど素敵なことはないな、って思ったんです。……とはいえ、シンガーになるには、どうしたらいいかわからなかったので、ただ歌う練習をしたり、歌詞を書きためたりしていたんです。

──確かに中学生だと、夢を叶える方法は手探りでしかわからないですよね。

そうなんですよ。なので中学生時代は夢が見つかったのに、どう叶えていいかわからないという、もやもやした日々を送っていました。それから1年経って、高校生になってから、今私が所属しているレーベルが経営しているミュージックスクールがあることを知ったんです。最初は親も入学金を出してくれると言ってくれたんですが、夢って誰かに助けてもらって叶えるものではないと思っていたので、気持ちだけもらって断ったんです。それまでの貯金と、アルバイトでもらったお金でなんとか入学金を作って、スクールでの生活が始まったんです。

──見た目はとてもキュートで繊細そうなのに、意外とド根性系なんですね（笑）。

あはは（笑）。自分で決めたことは自分でやり通したいんです。もともとこだわるところは何を言われようとこだわり通してしまうんですよ。そのせいでレコーディングではスタッフの方に結構迷惑をかけてしまいました（笑）。

──その意思の強さは、そのまま実津紀さんが手がけた歌詞に反映されていると感じたんですが……。

そうですね（笑）。このデビューアルバム「心の指すほうへ」は、私たちがどんなことを伝えたいかが明確に伝わるようなメッセージ性の強いアルバムにしたいという思いが最初にあったんです。なので歌詞に、実体験やストレートな感情をどんどん詰め込んだんですよね。

夢を持ったのなら、心は騙したくない

──タイトル曲でもある「心の指すほうへ」は、実津紀さんがシンガーという表現者を目指した心境がそのまま描かれていますね。

はい。歌詞は中学の頃から書きためていたものを反映させているので、リアルに感じてもらえると思うんです。その中でも「心を騙したままでは 後悔するのは自分だよ」というフレーズがあるんですけど、それがこの曲の全て。夢に対して無理だと思っている人って、言い訳しているだけだと思うんですよね。そう言葉にしている人は、心を騙しているんだと思うんです。叶えたい気持ちがあるのに、私にはどうせ無理だろうって。でも、こればかりはやってみなくちゃわからないし、もし叶えられなくても、それは経験になる。だから、踏み出さずに諦めるよりも、踏み出したほうが絶対に自分のためになるんだと思うんですよね。もし、進みたい方向があるなら、“心の指すほうへ”進んでほしいんです。

──力強いですね、そのメッセージ。

もし、この曲を聴いた人が、少しでも「じゃあ、もう一度挑戦してみようかな」って思ってくれたらうれしいです。

──歌詞は実津紀さんが担当しているんですか？

決め込んでいるわけではないんですが、今は私自身が歌詞を書くのが好きだし、書きたいので書いているんです。なのでこれからはメンバーがメンバーが詞を書くこともあるかもしれませんね。

──「オレンジの空」で描かれているのは、先程実津紀さんが言っていた中学生の頃の葛藤のことですか？

はい。この頃は毎日悩んでいない時間がないくらいでした（笑）。自分の中の葛藤をノートに書くことで発散していたんですよね。

──きっと、こんなふうに思っている中学生って今でも多いと思うんですよ。そんな子たちに今だから言える言葉はありますか？

私が中学生のときに痛いほど実感したことは、周りに合わせすぎると自分を見失うということ。周りと同じ顔をしてしまう気持ちは本当にわかるんですが、自分らしく笑えるように心を持ったほうが、絶対に毎日が楽しいと思うんです。もし、笑うなら顔だけじゃなくて心から笑っていないと、無意味に毎日が過ぎていっちゃうんですよね。

──耳に痛い言葉ですね。

そんな当たり前のようでなかなか理解できないことが、この曲を通じて伝わったらうれしいですね。