ナタリー PowerPush - GOING UNDER GROUND

新生ゴーイング1stアルバム完成 松本素生が新作に込めた思い

新しいバンドをものにできたと実感したのは2010年末

──昨年GOING UNDER GROUNDのライブを何度か観ましたが、僕の目からは迷いなく活動してるように見えてました。

ライブ写真

いろいろ試行錯誤してましたけどね。俺的には本当に新しいバンドを完全にものにできたなと実感したのは、去年の年末なんですよ。11月、12月とすごくいいライブが続いたときに、「もっといけんじゃねえか」「もっといきたいのに」って声がメンバーから出てきて、「COUNTDOWN JAPAN 10/11」ではやりたいようにやりましょうってことになって。意識しすぎるとコケたりもするんだけど、細かいミスを気にせずに全身全霊でライブをやったら、本当に素晴らしいライブができて「あぁ、ものにできたな」って実感したんです。

──つい最近のことなんですね。

メンバーが1人辞めてまたやり直すときは俺はどん底だと思ってたし、それによって解散や活動休止するバンドもいるくらいきついもんだなっていうのは身を持って知って。でもやっぱり単純に、バンドをやりたいんだって思った。売れたいんだっていうとこではなくて、やりたいんだからもうしょうがないじゃんっていう気持ちで動いてた気がしますね。

聴いた人に「新しいことが始まったな」と思ってもらえたら

──今回のアルバム「稲川くん」ですが、「ここまでストレートに感情を出してきたか」っていうのが最初に聴いたときの印象でした。しかも、これまでのGOING UNDER GROUNDの色はありつつも、過去の延長線的な作品ではないですよね。

そうですね。自分たちが歌いたいことだけを詰め込んだアルバムだけど、それでも完成したこのアルバムを聴いた人に「新しいことが始まったな」と思ってもらえたらいいなって気持ちも多少ありますよ。

──全10曲で40分に満たないコンパクトな内容で、インパクトがありますし。

曲ができるたびにスタジオに入って、最終的に16曲ぐらいできたのかな。でも、エネルギーの固まりみたいな曲をたくさん聴いたら疲れちゃうし、だったらコンパクトに10曲でいいんじゃないかと。

──10曲に絞り込むのは簡単でしたか?

「このアルバムでデビューするって考えたら、どれを入れる?」って感じで曲を選んで。曲順も本当に10分ぐらいでiTunesの中で並べ替えて決めました。

前作「LUCKY STAR」は冷めた料理みたいな印象

──前作「LUCKY STAR」(2009年3月発売)からこの「稲川くん」にたどり着くには、やっぱりこれだけの時間が必要だったんでしょうか。

そうですね……今思うと、「LUCKY STAR」には少し“冷めてる”感じがあったんじゃないかと。それは「LUCKY STAR」もそうだし、その前の「おやすみモンスター」(2007年11月発売)もそうなんだけど、すごく良いアルバムだし彩りも豊かで見た目もキレイで間違いないようには見えるんだけど、冷めた料理みたいな印象が俺の中ではありますね。だからディスプレイとして飾るならいいんだけど、人が触れるものとしてはもっと高い温度が必要だったかなと。作った当時はそんなこと考えないし、全部あとから思ったことを今喋ってますけど、「LUCKY STAR」と「稲川くん」の違いはそこだと思ってます。

──その話を聞いてふと思ったんですけど、「LUCKY STAR」までの何作かって、いわゆる「GOING UNDER GROUNDとしてのパブリックイメージ」に忠実に作った作品のように感じられる部分もあって。でも、ニューアルバムはもっとライブに直結した刺激的な作品に仕上がってますよね。

そうですね。あと、曲をCDにパッケージしたときにテンションが高いかとか本気でやってんのかとかがバレちゃうんですよ。それこそ今はデータ上で編集でもなんでもできるけど、だからこそそういう編集に頼らずに勝負したいなっていうのは常に考えてやってきました。このアルバムでは編集してキレイにすることは一切しないで、荒々しい部分はそのままにしておいた。俺たちの中にある「バンドっていうものはこうあるべきだ」っていうことをやりきれたのは一番デカイと思います。

──以前はやりきれてなかったんですか?

1stアルバムの「かよわきエナジー」ではやれてたと思うんだけど、やっぱりだんだんやれなくなってくるっていうか、そこのもどかしさはデビューして4~5年すると出てきて。でも、なんとなくバンドの調子も良いから気付かないフリしてたら、メンバーとのコミュニケーションが不足して考えてることが違ってきちゃって。その結果メンバーが1人辞めて、「やっぱそうじゃねえ!」って気付いてまた一からやり直した感じですね。

ニューアルバム「稲川くん」 / 2011年4月27日発売 / 2800円(税込) / PONYCANYON / PCCA-03350

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CD収録曲
  1. Merry Christmas Mr.INAGAWA
  2. 名もなき夢 ~煩悩青年とワーキング・ママ~
  3. LISTEN TO THE STEREO!!
  4. 所帯持ちのロードムービー
  5. RAW LIFE
  6. ジョニーさん
  7. ベットタウンズ チャイム
  8. さよなら僕のハックルベリー
  9. 詩人にラブソングを
  10. LONG WAY TO GO
GOING UNDER GROUND 10th Anniversary Tour 2011 「Rollin' Rollin'」追加公演

2011年5月4日(水・祝)
東京都 日比谷野外大音楽堂
OPEN 16:30 / START 17:30
料金:前売3500円 / 当日4000円

GOING UNDER GROUND(ごーいんぐあんだーぐらうんど)

THE BLUE HEARTSに憧れて松本素生(Vo, G)、中澤寛規(G, Vo)、石原聡(B)伊藤洋一(Key)が集まって中学時代に結成。河野丈洋(Dr)が加わり、何度かのメンバーチェンジを経て、高校卒業時に5人体制となる。インディーズシーンでの活躍を経て、2001年にシングル「グラフティー」でメジャーデビュー。「ミラージュ」「トワイライト」「ハートビート」など、切なく爽やかメロディで幅広い支持を集める。2005年には「トゥモロウズ ソング」をNHK「みんなのうた」に提供し、新境地を開拓。2006年7月に初の日本武道館公演を行い大成功を収める。2007年初頭には彼らの楽曲が原案となった映画「ハミングライフ」が公開された。2009年4月に伊藤が脱退。以降はサポートメンバーを迎えた形でライブを行いつつ、松本や河野はソロ活動も積極的に行っている。2010年にポニーキャニオンへの移籍を発表。同年5月に新体制として初のシングル「LISTEN TO THE STEREO!!」をリリースした。メジャーデビュー10周年を迎えた2011年は、記念ツアー「GOING UNDER GROUND 10th Anniversary Tour 2011『Rollin' Rollin'』」を実施。4月に約2年ぶりのオリジナルアルバム「稲川くん」をリリース。