FUNKY MONKEY BΛBY'Sがニューアルバム「ファンキーモンキーベイビーズZ」をリリースした。
2013年に解散し、8年の時を経てファンキー加藤とモン吉の2人体制で再始動したファンモン。「ファンキーモンキーベイビーズZ」はグループにとって10年3カ月ぶりのフルアルバムで、カンニング竹山がジャケットとミュージックビデオに登場した「YOU」や、改めてラップと向き合った新曲「乙Sound」など、大人のユーモアとシリアスがバランスよくちりばめられた全11曲が収められている。
音楽ナタリーではファンキー加藤とモン吉にインタビュー。過去を受け継ぎ未来へ向かう新たなファンモンスピリットが感じられる本作について、2人にたっぷりと語ってもらった。
取材・文 / 宮本英夫撮影 / 関口佳代
ケミちゃんの感想は
──再始動後第1弾かつ、およそ10年ぶりのアルバム「ファンキーモンキーベイビーズZ」はどんな作品になったと思いますか?
モン吉 なんて言うか、「あるようでない。ないようである」みたいな感じなんですよね。アルバム全体に「あ、聴いたことある」という懐かしさがあるけど、そこに今の雰囲気も少し入れてる。この前ケミちゃん(ファンモンの元DJ・DJケミカル)と一緒に聴いたときに、音のバランスについて「シャカシャカしてないですね」という感想をもらったんですけど。
──シャカシャカしてないというのは?
モン吉 ケミちゃんがファンモンにいた頃は、とにかく音量を大きくしなきゃいけないという傾向があって、声がよく聞こえるようにあんまり低音が入ってないというか、マスタリングで削られがちだったんです。街で流れてもボーカルがパッとわかるように。でも今はそういう時代じゃなくなっていて、僕らが意図したままのバランスにできた。そのことをケミちゃんは言ってましたね。
──彼が言うなら間違いないですね。
モン吉 僕も薄々思ってはいたんですけど、「やっぱりそうだよね」と納得しました。音のバランスがいいので、アルバムを1周飽きずに聴けると思います。
──加藤さんにとっては、どんなアルバムになりました?
ファンキー加藤 ちゃんと成長できたというか。ファンモンが一度解散して各々がソロ活動で培ったものを、曲に落とし込めた感覚はありますね。以前のファンモンよりは、悪い意味じゃなくてちゃんと大人になって深みも増して、でも相変わらずモンちゃんの作るメロディはキャッチーで。
モン吉 ありがたい。
ファンキー加藤 「これが今のファンモンだ」と、堂々と自慢できる1枚になったと思います。
──昔と比べてどうこうではなく、「今のファンモン」を出すことに集中したと。
ファンキー加藤 もちろん昔のことが頭をよぎったりはするんですけど、あんまり意識はしなかったかな。結局、僕とモンちゃんが作れば“オリジナルファンモンフレーバー”みたいなものは出るし、僕とモンちゃんの声が重なれば、どんなジャンルの音楽だろうが、ファンモンの作品になると思うんですよ。だから過去のことは気にせず作ってましたね。
「カルビ」と「I'll be」で踏みたかった
──アルバムは全11曲で、このうち新曲は「乙Sound」「君だけの歌」「荒野に咲く花」「ほろり」「世界一」「原宿陸橋」の6曲です。ファンモンの制作は昔から、まずトラックをたくさん集めてそこから厳選していくスタイルですけど、今回はどうでしたか?
ファンキー加藤 どれぐらいだろう? ボツになった曲もけっこうありました。
モン吉 「エール」(2021年9月リリースのシングル曲。「ファンキーモンキーベイビーズZ」にも収録されている)のときはボツが多かったよね。
ファンキー加藤 新曲とシングルの「YOU」(今年2月に先行配信)を作るにあたって何曲か候補があったんですけど、無駄打ちした感覚はないかな。労力をかけたものは、ちゃんと形になった気がする。
モン吉 「エール」「ROUTE 16」「YOU」の延長ですでにできているものがいっぱいあったから。
ファンキー加藤 そう。種はすでにあったから、その中のどれに水をやって育てていくか。種を作るのがいつも大変なんですけどね。
モン吉 アルバムの作り方が以前とは変わりましたね。前はそもそも種がなかった。
ファンキー加藤 なかった(笑)。今まではアルバムのリリースが決まった段階で種から作り始めてたから苦労したんですよね。
モン吉 種があった分、前よりも心に余裕を持てたけど、日程的には全然余裕がなかった。
──アルバムに初収録されるのは6曲ということで、ここからはその新曲を中心に聞いていきますね。まずは1曲目の「乙Sound」から。
ファンキー加藤 まあ1曲は、クスクスっと笑えるようなものにしたいなと思っていて……なんでこうなったんだっけ。そうだ、僕が「カルビ」と「I'll be」で韻を踏みたいっていうところから始まって。
──そんなきっかけが。
ファンキー加藤 「カルビ」と「I'll be」の韻は固いなと思って。でも焼肉の歌を作りたいわけではないし、じゃあ「カルビ ばいばーい」「I'll be fine」というリリックにして、加齢をカラッと笑える曲にしたら面白いかなと。最初はモンちゃんをはじめ、誰もピンときてなかったんですけど。
モン吉 韻を踏みたいんだろうなーとは思ったよ。
ファンキー加藤 この曲では、それぞれのラップスキルを存分に生かしたかった。
モン吉 “オヤジあるある”で包みながら。
ファンキー加藤 そこにちゃんとメロディがあって、面白いメッセージがあって、ラップスキルもあって、“THIS IS ファンモンのパーティチューン”になりました。
──これ、構成がすごくよくできてますよね。イントロはメロディアスだなと思ったら、ビートが一気に速くなって。2人がばっちりスキルを見せ合いながら、漫才みたいにお互いにツッコミ合って、主役が入れ代わっていく。
ファンキー加藤 前から思ってるんですけど、こういう“面白ソング”こそ緻密に考えないといけないんですよね。応援ソングとかラブソングのバラードとかは勢いで作れるところもあるんですけど、“面白ソング”こそ時間をかけてじっくり練っています。
──「膝、痛いわ」とか、「脂っこい重いやつはもう結構さ カルビ ばいばーい」と歌っていて(笑)。「年を取るといろいろ大変だよね」というエピソードは、あんまりマジになりすぎると笑えないじゃないですか。その塩梅が絶妙で。
ファンキー加藤 そうなんですよね。
モン吉 クスっとできるぐらいがちょうどいい。
──「乙Sound」は「そうだろ? 川口」というフレーズで締めくくられます。マネージャーの川口さんまで歌詞に登場するのは、さすがに驚きました(笑)。
モン吉 僕もビックリしました。
ファンキー加藤 「カルビ」と「I'll be」、「バブリー」と「ジャグジー」って、“AUI”でずっと韻を踏んでたら、最後に「川口」で踏めちゃったんです。そういえばチーフマネージャーの川口さんも同世代のオヤジだなと思って。ファンの人たちも知ってるし、知らなくてもクスっと笑える面白いオチになるんじゃないかと。
モン吉 僕は事務所の社長からNGが出ると思ったけどね。「それはねえわ」って。そしたら通っちゃった。
テーマは「君という人から発せられる音」
──「ROUTE 16」と「YOU」を経て、4曲目に出てくる新曲が「君だけの歌」。これは優しく寄り添うような曲で、素敵なメロディですね。
モン吉 これは最後の最後で化けました。「この曲、なしでいいか」ぐらいのところまでいったんですけど、急に化けたよね?
ファンキー加藤 そうだね。
モン吉 メロが強いからいい曲になるかなと思ったら、アレンジとのバランスがとれなくて。結局、最後の最後に僕がアレンジして、それがうまくハマりました。アレンジを詰めてくれたはやや(田中隼人)のおかげだね。
ファンキー加藤 歌詞も最後の最後まで苦戦したんですけど、最終的に「君という人から発せられる音」というテーマが浮かんで、音にまつわる言葉を1つずつ入れていきました。
──「足音」「雨音」「弱音」「涙が落ちる音」……普段は音として意識しないものも“音”と捉えていて、うまいなと思います。
モン吉 ファンちゃんの歌詞、すごいと思う。
ファンキー加藤 モンちゃんの歌詞はいつも自由なんですけど、いつも1個だけ注文していて。今回は「音楽記号を入れてくれ」と。
──それで「ビブラート」と「B♭」で韻を踏んだり、「フォルテッシモ」が出てきたりする。なるほど。
モン吉 そういう、スパイス的なものを入れるのがすごくうまい。さすがだなと思います。
ファンキー加藤 時間の流れの例えとして「速いテンポで」というのも、音楽用語と言えばそうだね。
モン吉 テンポと言えば、この曲はいろいろと試行錯誤したよね。結局、遅いテンポになった。
ファンキー加藤 苦労はしましたけど、できあがってみたら、自分たちよりもスタッフさんの反応がすごくよくて、アルバムの前半に入れることになりました。競馬で言うところの最後の直線で一気に追い込んできた……みたいな制作でした。
モン吉 あきらめなくてよかった。これがアルバムの中で最後の1曲だったから。
ファンキー加藤 あまりにスケジュールがギリギリすぎて、レコーディングのときは疲労でちょっと声がかすれてた(笑)。気合いで歌いきりましたけどね。
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モンちゃん、それだ!