ナタリー PowerPush - fumika

初代レコチョクオーディション歌姫 1stアルバムついに完成

幼少期から洋邦問わず多ジャンルの音楽に親しみ、「第1回レコチョクオーディション」のグランプリ受賞をきっかけに2011年メジャーデビューを果たしたfumika。突き抜けるような高音ボーカルは高い表現力と完成度を備え、昨年は“涙ソング3部作”を掲げてリリースしたコラボレーション楽曲「隣にいたかった feat. WISE」「その声消えないよ feat. Sunya」が注目を集めた。

ナタリー初登場となる今回のインタビューでは、fumika独自の作詞方法や、デビュー2年でついに完成した1stアルバム「POP SISTER」の制作秘話に迫った。親しみやすいキャラクターが垣間見えるテキストを楽しんでほしい。

取材・文 / 川倉由起子

1stアルバムは2年間の集大成

──1stアルバム「POP SISTER」は、全14曲中12曲がタイアップ付きの豪華な1枚。完成してみていかがですか?

デビューから2年間の集大成であり、捨て曲のない素晴らしい作品になりました。これからのアーティスト人生においても、この1枚は常に私の原点になるんじゃないかと思います。

──デビュー以降の2年間は、fumikaさんにとってどのようなものでしたか?

全てが初めての経験で、自分の力不足に悔しい思いもたくさんしたんですけど、 そこで気付いたことも多かった期間だったなって。例えば最初の頃はいただいた曲をストレートに歌う感じだったんですけど、自分の中で1回噛み砕くときに、だんだん疑問が生じてきたりして。こういう実体験がない場合どう歌えばいいんだろう?って自分自身に問いかけたり、作り手の方に相談したり。本当に一歩ずつですけど、歌の中に自分を出していけるようになったのかなって思います。

──自分で作詞した曲はもちろん、そうじゃない場合もできるだけ歌に“自分”を出していきたいと。

はい。提供していただいた曲も、自分の声や気持ちでちゃんと伝えていきたいっていう思いは強くありますね。だからレコーディング中も、この切ないフレーズはもう少し優しく歌ったほうがいいんじゃないかとか、言葉数を少なくしたほうがより伝わるんじゃないか……みたいな意見も言わせてもらうようになって。昔と比べたら、今は結構スタッフさんと話し合いながら進めていってる感じですね。

“涙”を題材にもっと人間らしい部分を表現したい

──今作には5枚の既発シングルが収録されていますが、3rd「隣にいたかった feat. WISE」と4th「その声消えないよ feat. Sunya」、そしてアルバムのリード曲である「旅立ちのベル feat. 福田桃代」は“涙ソング3部作”として制作されたもの。まず、この3部作の構想はどこから生まれたものなんですか?

私、昔からずーっと泣き虫で(笑)。うれしくても悲しくても、感動してもすぐ泣いちゃうんです。特に思い出深いのは上京したての頃で、描いた理想に追いつけないもどかしさに泣いてばかりいたんです。でも泣く前と後では自分の中で何かが違うっていうのを感じていて、それはもしかしたらみんなも一緒なのかなって。そんなところから、“涙”を題材にもっと人間らしい部分も表現して、リスナーの方に共感してもらえる曲が作れたらって思ったんです。

──ほかのアーティストとコラボするというのも、最初から決めていたんですか?

そうですね。コラボは初の挑戦なんですけど、この機会にいろんな方と一緒に音楽を作るのも面白そうだなって。

──実際にコラボしてみていかがでしたか?

いろんな意見交換の中で自分にはない部分に気付けたり、1人のときには味わえなかった刺激がありました。自分にはない部分っていうのは、大体自分が惹かれてしまうものなんですけど、例えば男性アーティストとやったときは女の私には湧かないような感情に意表を突かれたし、同じ情景を描いても男女でこうも感じ方が違うんだってことにビックリしました。

作詞をするときはまず手紙から書く

──「隣にいたかった feat. WISE」と「その声消えないよ feat. Sunya」は、これまでの作品以上にリアルな感情を綴った歌詞が印象的でしたが、この2曲のリスナーの反応はどうだったんですか?

「隣にいたかった」は「意外」って声が結構ありました。確かに、ここまで等身大というか赤裸々な歌は歌ったことがなかったので。でも「また新たな曲調で面白い」とか、若い子からは「こういう曲をfumikaが歌ってくれてうれしい」っていう反応もあって、私もそれを聞いてうれしかったです。

──リアリティのある歌詞を書くとき、意識することってありますか?

毎回そうなんですけど、私、作詞するときは必ず手紙から書くんです。それがリアリティを出すことにつながってるか……はわからないですが、例えば「隣にいたかった」だったら過去の失恋や元彼に対しての思いを書いてて。それはかなりキツい作業だったりするんですけど(笑)。

──うん……想像するだけでもしんどそうです(笑)。

3日くらい自室に缶詰になって書いてると本当につらいです(笑)。

──それなのに、どうして手紙から書き始めるんですか?

私にとって手紙は、作詞の下準備というか土台みたいなもので。気持ちを歌詞にする前の必要なワンクッションなんですよね。相手に絶対出せないですけど(笑)。

──手紙は、以後どのように歌詞になっていくんですか?

最初にメロディをいただくことがほとんどなんですが、それを何度も聴いて、手紙につづった思いを歌詞の形に落とし込んでいきます。

──独特で面白い書き方ですよね。

そうすることで、後で冷静に手紙を読み返したときスッキリすることが多いんです。最終的に歌の形になると「失恋して良かった!」とさえ思えたり(笑)。それはアーティストをやってるメリットでもあると思うんですが、なんか、一歩前へ進める気がするんですよね。

1stアルバム「POP SISTER」 / 2013年2月6日発売 アリオラジャパン
「POP SISTER」初回限定盤[CD+DVD] 3675円 / BVCL-490~1
「POP SISTER」通常盤[CD] 3000円 / BVCL-492
CD収録曲
  1. snowflakes
  2. たいせつな光
  3. Baby Blossom
  4. 隣にいたかった feat. WISE
  5. その声消えないよ feat. Sunya
  6. 旅立ちのベル feat. 福田桃代
  7. 7days
  8. アオイトリ
  9. 時を越えて
  10. Round and Round
  11. 海風のブレイブ
  12. 春なのに
  13. Change the world
  14. 天国のドア
初回限定盤DVD収録内容
  1. アオイトリ(MUSIC VIDEO)
  2. たいせつな光(なでしこver.)(MUSIC VIDEO)
  3. 隣にいたかった feat. WISE(MUSIC VIDEO)
  4. Baby Blossom(MUSIC VIDEO)
  5. その声消えないよ feat. Sunya(MUSIC VIDEO)
  6. 海風のブレイブ(MUSIC VIDEO)
  7. 旅立ちのベル feat. 福田桃代(MUSIC VIDEO)
  8. Documentary of 青い鳥を探して、、、(MUSIC VIDEO)
fumika(ふみか)

1989年12月16日生まれ、福岡県出身のシンガー。両親の影響で幼少時から洋邦問わずさまざまな音楽に慣れ親しみ、高校生の頃より本格的なボイストレーニングを始める。2010年にはagehaspringsがトータルプロデュースを手がけた「第1回レコチョクオーディション」に応募し、1万人を超えるエントリーの中からグランプリを獲得。2011年6月にシングル「アオイトリ」でメジャーデビューを果たした。同年9月発売の2ndシングル「たいせつな光」が映画「はやぶさ / HAYABUSA」の主題歌に抜擢され、新人ながら大きな注目を集める。2012年には「涙ソング3部作」と題したプロジェクトを始動し、「隣にいたかった feat. WISE」「その声消えないよ feat. Sunya」とコラボレーション楽曲を立て続けに発表。2013年2月6日には「涙ソング3部作」完結編となる「旅立ちのベル feat. 福田桃代」やアニメ「ロボティクス・ノーツ」エンディングテーマ「海風のブレイブ」を含む1stアルバム「POP SISTER」がリリースされる。