グラビアアイドルが「なけなしの1000円」
──いわゆるアルバムリード曲とは別になると思うんですが、アルバム収録曲「私だけがいない世界」は藤田さんが主演を務めるホラー映画「血を吸う粘土」の主題歌で、ミュージックビデオも制作されました。
これは「ミスiD」選考中に作った曲なんですよ。映画には「ミスiD」で一緒だった子たちが出てるので、ちょうどリンクするところがあるかなと思って、映画のプロデューサーにお話したら、この曲を主題歌に選んでもらいました。
──では藤田さんの中でアルバムリード曲と言えるもの、アルバムを象徴する1曲を選ぶとしたら?
うーん、そう考えると1曲目の「404 Not Found」なのかなあ。「青の心臓」もすごく気に入っています。どの子も出来のいい、かわいい子だなと思います(笑)。
──先ほど言ったインディーロック的な音像ということだと「6時のカタルシス」はすごくエッジィだし、「噂で嫌いにならないで」の叩き付けるような勢いもすごくいいですね。
「6時のカタルシス」はまさに、いろんなオマージュが込められてます。「噂で嫌いにならないで」は無心ですんなり書けた曲ですけど、レコード会社の方がレコ倫と戦ったらしくて(笑)。なんとかゴーサインが出た曲です。
──「なけなしの1000円」みたいな感覚ってあまりメジャーの人は持ってないと思うので(笑)。
歌い出しが「なけなしの1000円」ですからね(笑)。少し前の自分だったら書けませんでしたけど、戦闘力が欲しかったし、「私もその気持ちわかるわ」って思ってもらえる人がいたらいいなって。でも刺さる人はコア中のコアですよね(笑)。
──それをビキニ着た人がギターかき鳴らしながら歌っていることにすごく味わいがあって。
グラビアと言うと華やかなイメージを持たれますけど「私にとってはなけなしの1000円だわ」って。もっともっと泥臭いことを表現したかったんですよね。お高く止まってないことをどうやってわかってもらえるかな、という気持ちで書きました。
キャッチーを手放したくない
──今の藤田さんがやりたいこと、見せたいものがうまく表現できているのがこの「強めの心臓」と言うアルバムだと思うし、共感する人もこれからどんどん増えてくるんじゃないかと思います。ただ、藤田さんが持つ悲壮感、焦燥感の部分ばかりに需要が集まると、それも息苦しくなるんじゃないかなと思うのですが。
そうですね。でも自分が下積みが長かったからこそ表現できる世界観だと思うし……一応将来はお金持ちになる予定なので(笑)、印税ワーイみたいになったときに、もしかしたら迷いは生じるかなと思いますね。そのときはそのときで、別の葛藤があるんじゃないかと思います。
──曲に向かうエネルギー、燃料のようなものは常にある。
はい。パリピ属性ではないから、いつまでもアングラな気持ちを抱えつつ生きていくんだろうなと思っちゃいますね。
──自分で作詞作曲をしていると、売れたらそのぶん印税として跳ね返ってくるので、むちゃくちゃ売れたら何か変わってくるかもしれないですよね。表現も身入りも自分次第と言うか。
昔はダンスグループに所属したり、バンドでドラムを叩いたりという謎の時代もあって、自分にスポットが当たらないもどかしさを抱えていたから、どうしてもソロでやりたいと思ってたんですね。すごく大変なことも目の当たりにしてきたけど、そのぶんのハイリターンが……印税だったりするのかなって(笑)。独り占めしたいと言うよりも、本当にどうしようもなかった時期に支えてくださった皆さんにいつか恩返しができるかもしれないっていう……一番はそこですね。
──その“どうしようもなかった時期”からいて、今も藤田さんの現場に通い続けている方もいますか?
どうしようもない時期が長すぎて、どこをどうしようもないとするべきかわからないですけど(笑)、いるっちゃいます。もちろん水着になったからと離れていった方もいますし。
──水着でギターをかき鳴らすというスタイルがことさらキャッチーなのも問題で、どれだけ売れても水着をやめないでほしいと言われたらどうするのかなと。
私もなるべくならキャッチーを手放したくないと思ってます。「キャッチーを手放したくない」って(笑)。やっぱり時間や年齢を重ねれば「イタい」という目で見られると思うので、あからさまにイタいなと思ったときは……自分ではわりと客観視できているほうだと思うので、自分でイタいと感じたときは考えますね。ライブでは肉眼でどこまで耐えられるかが勝負ですけど、作品としてはレタッチが効く限りは(笑)。優秀なデザイナーさんに出すとこ隠すとこをちょうどいい塩梅で見せてもらえるのならば、このキャッチーはなるべく自分のテリトリーに置いておきたいです。あと、二番煎じが出てくるのが怖いんですよ。
──これだけキャッチーなものなら、もっと若い人でパクりたい人はいるでしょうしね。
早めに商標登録を取っておきたいです(笑)。
もっと女の子に届いたらいいな
──音楽的な目標、アーティストとしての具体的な目標はありますか?
音楽的には今の形で固めちゃいたいと思ってます。いろんな歌を歌ってきて、今が一番自分の中で納得ができているので。
──今のスタイルをもっと磨いて、強くして。
はい。あとはギターのスキルをもっと磨きたいです。歌に関しては、キレイに歌い上げることはできるけど、それが邪魔をしているような気もしていて。もっとノイジーな声と言うか……怨念を歌うのはクリーンに歌い上げるのとはまた別なんですよ。それも改善されつつあるので、喉に関してはあまり神経質に考えていないです。具体的な目標はないんですけど、もっと女性ファンがいっぱい付いてくれたらなって思ってます。男性のファンが多いけど、歌っている内容は女の子向けのことが多いし、「男なんかにわかってたまるか!」みたいな気持ちで歌っていたりするので(笑)、ファン層を変えたいわけじゃなく、もっと女の子に届いたらいいなって。
──理想的な“藤田恵名の成功”ってどんなものなんですかね?
なんでしょうね。地方でも認知される=テレビに出ることかなと思うので、テレビ番組で歌を歌えるようになれば成功なのかなあ。「武道館で満員で」みたいなモードに入るときと「武道館なんて無理っしょ」みたいなモードがわりと短めの波であって(笑)、今はどちらかと言うと「武道館に行きたい!」の時期なんですよね。でも半年後には「武道館なんて……」って思ってるかもしれない。
──身近な目標としては、先日のワンマンで「もっとライブの数を増やしたい」とおっしゃってましたよね。
はい。7月のバースデーワンマンは毎年地味にキャパが広がっているので、来年はもっと大きな会場でやりたいなと思うし、ネットニュースとかで私のことを知ってもらえている今、どんどんライブをやって私の音楽に触れてもらえる機会を増やしていけたらと思います。
- 藤田恵名「強めの心臓」
- 2017年8月9日発売 / KING RECORDS
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脱衣盤 [CD+DVD]
3780円 / KIZC-409~10 -
着衣盤 [CD]
3240円 / KICS-3511
- CD収録曲
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- 404 Not Found
- 6時のカタルシス
- 青の心臓
- 噂で嫌いにならないで
- 私だけがいない世界
- BIKINI RIOT / MCビキニ a.k.a 藤田恵名
- ヒロインになれない
- ライブドライブ
- 脱衣盤DVD収録内容
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- 私だけがいない世界(Music Clip)
- BIKINI RIOT / MCビキニ a.k.a 藤田恵名(Music Clip)
- 藤田恵名(フジタエナ)
- 1990年7月7日生まれ、福岡県出身のシンガーソングライター。並行してグラビアアイドルとしても活動しており、“シンガーソングラドル”“今一番脱げるシンガーソングライター”のキャッチフレーズを持つ。福岡在住時より芸能活動を始め、2010年に上京。地道に音楽活動を続ける中、グラビアアイドルとしても注目を集め、2014年1月には「ミス東スポ2014」グランプリを獲得。2016年には「ミスiD2017」に選出された。同年8月にはミニアルバム「EVIL IDOL SONG」でアーティストとしてメジャーデビュー。ヌード写真を使用したアートワークが大きな話題を呼んだ。2017年8月にはメジャー2作目となるミニアルバム「強めの心臓」をリリース。収録曲「私だけがいない世界」は同月公開のホラー映画「血を吸う粘土」の主題歌に採用され、映画では自身が主演を務めた。毎週木曜深夜放送のフジテレビ関東ローカル「佳代子の部屋~真夜中のゲーム会議~」にレギュラー出演中。