初音ミク10周年特集|藤田咲×下田麻美インタビュー “ボカロの中の人たち”が手に入れた人生の大切な宝物

初音ミクの10年 ~彼女が見せた新しい景色~

感情を入れると、かえって魅力が損なわれる曲もあって

──さて、衣装もそうですが、ミクにもリン・レンにも、普通のアーティストではあり得ないほど多くの持ち歌があります。あえて好きな曲、思い入れのある曲を挙げるとしたら、どんなものが思い浮かびますか?

藤田 1曲選ぶのは本当に難しいんですけど、「-Project DIVA- f」の発売記念イベント(2013年3月に東京・お台場 東京ジョイポリスで開催)で歌った「crack」(keeno)はすごく好きですね。初めて聴いたときから大事にしたい曲だと思っていて、思い入れがあります。

下田麻美

下田 私はカバーもさせていただいた「リンリンシグナル」(シグナルP)かな。私、リン・レンがリリースされて、速攻で曲をチェックしまくっていたんです(笑)。その中で、リンとレンの特色、キャラクターとしての魅力がすごくかわいく生かされていて、この曲の大ファンになっちゃったんです。すごくキュンキュンする、ときめける曲でもあるので、いまもイベントなどで歌わせていただいています。思い出の1曲、となるとこの曲がイチオシですね。

──藤田さんは8月に発売されたdorikoさんのトリビュートアルバム「doriko 10th anniversary tribute」で「letter song」をカバーしていて(参照:初音ミク10周年特集|doriko×VALSHE対談)、下田さんは2009年発売のカバーアルバム「Prism」がヒットを記録しましたが、自分の声が使われたVocaloidの楽曲をカバーするというのはどんな感覚でしょうか。必ずしも人が歌うことを前提にしていない曲もあるので、大変だと思うのですが。

藤田 とりあえず、「letter song」はそんなに“人外的”な曲じゃないので、大丈夫でした(笑)。

下田 (笑)。「初音ミクの消失」(cosMo@暴走P)を歌ってください、とか言われたら……。

藤田 「それはミクさんのほうがお上手なので……」ってなりますね(笑)。

下田 難しいですよね。咲ちゃんもそうだと思うんですけど、もともと自分の声でも、やっぱり本人ではないので、“逆輸入”みたいな言い方も正しいのかわからなかったりして。実際にカバーしてみて、「この曲はいいけど、この曲はVocaloidのほうがいいよね」という賛否両論があったんです。Vocaloidは基本的に、フラットな表現に長けていて、聴き手にイメージを委ねることができるのが強みだと思うんですよね。だから感情を入れると、かえって魅力が損なわれる曲もあって。かと言って、そのプレッシャーで表現を控えるのは違うと思うし、最後は自分の解釈で、リスペクトを持って歌うしかない。でも、ネット上でもいろいろな人が歌い、演奏しているので、「私も歌いたいから歌った!」というくらい、自由なものであってくれたらいいなと思います。

藤田咲

藤田 うん。「letter song」について言えば、この10年を歌った曲なので、dorikoさんに「藤田さんが歌う意味があるんです」と言っていただいて。ミクちゃんが歌っているというより、ミクちゃんと歩いてきた10年に対する思いがにじみ出るのがいいということで私に声をかけてくださっているので、あまり意識せず、単純に「好きな曲だなあ」と思って歌いましたね。本当に素敵な曲です。

下田 素敵なオファー理由だね。

藤田 dorikoさんも会った瞬間に「この人、いい人だ!」と思える方で(笑)、私を尊重してくださっているのが伝わってきたので、この人のために何かしなければと思って。曲に対しても真摯に向き合えましたし、歌わせていただけて光栄でした。

受け手のリアルな感情がなければ、ただ流れていく映像と音になってしまう

──「Project DIVA」の話の中で、「人々の生の反応を見て感動した」とおっしゃっていました。ミクたちもリアルのステージに立つ機会が増えており、バーチャルな存在ではありながらも、会場はものすごい盛り上がりです。こうしたライブ空間については、どう感じていますか?

藤田 会場に足を運んだ人にしかわからない興奮がそこにはあって、バーチャルではなくて、本当にそこに初音ミクがいるんですよね。お客さんの思いと声援があって、初音ミクが現実のものになっている。本当に奇跡的なことだと思いますし、ライブを観ると、やっぱりお客さん1人ひとりの力がなければ本当に成立しないコンテンツなんだなって。そこで諦めてしまう人が1人でもいると、その瞬間に消えてしまうような。アニメーションなどの2次元でも、そこに受け手のリアルな感情がなければ、ただ流れていく映像と音になってしまうんです。心を動かして、自分が何かを発信しようという行動があって、初めて物語になり、現実になっていくということを目の当たりにできる空間なので、ライブはずっと続けてほしいですね。

下田 「マジカルミライ 2017」(2017年9月に千葉・幕張メッセで開催)のライブを観て、すごく感動したんです。最初のライブからずっと初音ミクが歴史をつなぎ続けているのは、本当にみんなの力があってこそだと思うし、その積み重ねの上に10周年のライブがあって。Vocaloidたちが横一列に並んで、みんなの想像を超えたサプライズを起こしてくれる。これからもずっと期待しています。

初音ミクシンフォニー2017
初音ミクシンフォニー2017

ill. by KEI @ CFM

2017年11月17日(金)大阪府 フェスティバルホール

出演者大阪フィルハーモニー交響楽団
指揮:栗田博文
司会:初音ミク / and more

2017年11月29日(水)東京都 東京国際フォーラム ホールA

出演者東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:栗田博文
司会:初音ミク / and more

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A席:8000円

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