「FRIENDSHIP.」|新しい才能を世界に発信!キュレーターと紐解く「FRIENDSHIP.」の可能性

日本とは大きく異なる海外市場の現実

──日本から海外に発信していくという部分にも意欲的なんですか?

タイラ はい。フィジカルと違って、デジタル配信は世界同時リリースができるし、ストリーミングサービスの場合は聴かれた回数が大事になってくるから。聴いてくれる分母が大きいほどチャンスがあるということも含めて、海外は絶対に視野に入れなければいけないと思っています。その点に関しては俺より、バンドの人たちのほうが自覚あるかも。

──以前、The fin.の取材に立ち会ったとき、自然な形で国外に目を向けている印象を受けたんです。The fin.の場合、海外発信についてどれくらい意識的なんでしょう。

Yuto Uchino(The fin.)

Yuto 単純に海外には人がいっぱいいるという理由で、最初から日本だけで活動するというイメージはありませんでした。そこまで深く考えていたわけではないんですが、インターネットは場所を選ばないので、たくさん聴かれたほうがいいかなというくらい。それがより意識的になったのは、当時SoundCloudに音源をアップしたときに、いろいろなメールやコメントが来るようになったことで。いろんな国の人が聴いてくれているんやなと思ってから、自然に外を向くようになりました。海外に行くと、アジアのシーン、欧米のシーン、あとは日本のシーン、スパニッシュ系のシーンとかの違いをすごく感じて。日本はいい意味でも悪い意味でもストリーミングサービスが遅れて入ってきたので、これから面白いものが生まれてくるかなと思っていますね。

井澤 The fin.は中国ですごくバズっているでしょ? 中国はSNSやネットが制限されているから日本の音楽を知るには自分でディグらなければいけない。中国で一種のアイコンになるような存在としてThe fin.が選ばれている。ちょっと前だとworld's end girlfriendがそのポジションにいて、6000人くらいの場所でワンマンライブをやっていた。そのアイコンがあったから、LITEやenvyも中国で知られていて。

Yuto 最初のツアーで8カ所を回ったときは全部ソールドアウトでした。会場の規模も全部1000人クラスで、何が起こっているのかわからなかったんですよね。現地に行って思ったのは、中国の人は日本のほうが進んでいると思っているところもあるから、すごく情報を欲しがっているということ。以前、中国で若い子がクラブに連れていってくれたんですけど、超高級車で迎えに来てくれて(笑)。その子の車でかかっているのは最新のヒットチューンばっかり。そういう子たちは情報を手に入れるのがうまい。

タイラ 自分で探るんだよね。

Yuto 規制されていると逆に手を伸ばしたくなる。そういう感覚を持って生きているんだなって。あと常に毎日よくなっていくみたいな空気が流れていて。「俺たちの未来は明るいぜ」という雰囲気が若者の間ですごく広がっている。日本に帰ってきてから、20代の人たちに会うと、みんな40代みたいなメンタリティで生きているように思えた。

MONJOE おとなしい感じするよね。

タイラダイスケ(FREE THROW)と井澤惇(LITE)。

Yuto そうそう。成長している実感が肌感覚で得られないというか。イギリスもそうだけど、経済が円熟していくと若者がお金を使わなくなっていく傾向がある。中国はきっとバブルのときの日本みたいな感じで、みんな明るいもんね。夢を持つことがカッコいい。でかいことをバーンと言ったら、ほんまにできそうな雰囲気があるんです。今、日本で同世代の人が「俺の夢は」と言い出したら、「え? 何を言ってんの?」みたいになりがちだし。中国のプロモーターの人が、「東京はどこにもビルを建てられないけど、中国だとどこにでもビルが建つでしょ」なんてことを言っていて。東京は都市計画にしても椅子取り合戦みたいな節があって、新しいビルを建てようと思ったら壊さないといけない。それは音楽にも言えることで、新しいバンドを始めたら、どこかからリスナーを取ってこないといけない。それってめっちゃ貧困な考え方で。そうじゃなくて、新しいところからリスナーが来てくれたら一番いい。中国は人口が13億人いるから、それはすごく強いなって。

──中国で音楽活動をすることはエキサイティングでもある?

Yuto 中国の音楽業界をメインで支えているのが30代くらいの若い人たちらしくて、体力もあるし考え方も柔軟なんです。言ってしまえば無法地帯で、なんでもできる活気に満ちている。

奥冨 そういう環境だと、考え方は確かに柔軟になるかも。

Yuto あと15年20年したら中国からすごいアーティストが出てくると思う。ほんまに想像できないくらい。俺、そんなアーティストをいつかプロデュースしてみたい(笑)。

タイラ MONJOEくんの話も聞きたいんだけど、海外についてどういうふうに思っているの?

MONJOE(DATS)

MONJOE 僕はYutoくんと比べると、全然回ってないですよ(笑)。主にyahyelにいた頃に、中国、台湾、韓国、フランス、ロンドン……。

タイラ けっこう行ってるじゃん(笑)。

MONJOE それぞれ1回行ったくらいなんです。ただ、さっき2人が話してくれたような肌で感じるような違いはありましたね。リスナー自ら音楽を聴きにいっているというか。音楽に対するアティチュードがまず違う。ストリーミングの場合、自分から能動的になって探さないと聴きたいものに出会えなくなっている。アーティストも埋もれないためにどうしたらいいか考えないといけないけど、リスナーももっと自発的にならないとお互いマッチしないのかなって。アーティストとリスナー双方が歩み寄るためにどうしたらいいかを考えないといけない。

MONJOE(DATS)

Yuto 日本のカルチャーはイメージで判断されることが多くて。音楽もイメージで消費されているところがある。1つのイメージが消費し尽くされると、新しいイメージが売られて、イメージの売り合いみたいになっている。イギリスに行って思ったのは、そこはあまりなくて、自分でいいかどうかを判断している。ライブをしていても、みんな自由に聴いているというか。日本はイメージ戦略がハマれば爆発的に売れる可能性があるけど、ハマらなければ何をやっても売れないみたいな。そういう状況はちょっと悲しいなと。

MONJOE 音楽を作っている身としてはそうだよね。逆に言うと、国外に行けばイメージとか関係なく聴いてくれる人が意外と多い。それに気付けたのはよかったと思う。そういう環境を日本にも浸透させるのは大事なことだし、その第一歩がこのプロジェクトになるんじゃないかと考えています。

こんなアーティストに出会いたい

──国外のアーティストがFRIENDSHIP.を利用することも可能なんですか?

タイラダイスケ(FREE THROW)

タイラ もちろん。配信は全世界でできるので、さっき井澤くんが言っていたみたいに、海外のバンドが来日したいって言ったときにFRIENDSHIP.が窓口になって国内のプロモーションを手伝ってあげられたら、日本に来られるバンドが増えるかもしれない。

──すでに活動しているミュージシャンの方も使われているんですよね。

タイラ 踊ってばかりの国は、フィジカルは自分たちのレーベルで出して、デジタルはFRIENDSHIP.から発表という形態です。FRIENDSHIP.はサービスなので個人で活動しているアーティストはもちろんレーベルやマネージメントとも一緒にやることができます。そうすると、プロモーションの広がり方が変わってきたり、いろいろな関わり方ができるかもしれないです。

──その場合、基本的にはデジタル配信ということになるんでしょうか。

タイラ そうですが、デジタル配信の中でもいろんな形でやることができますね。Nothing's Carved In Stoneさんのライブアルバムをダウンロード限定で販売していて、デジタル配信の方法もアーティストの希望に合わせられます。そのほかにもFRIENDSHIP.にはオプショナルサポートがあるんです。一例を言えば奥冨くんもそうだし、俺もDJなのでフィジカルにこだわりがあるので、オプションでフィジカル制作のサポートもできますし、マーチャンダイズを作りたい人には制作のサポートもできます。FRIENDSHIP.からのデジタルのディストリビューションを前提としてですが、アーティスト毎にサポートしてほしい内容は違うと思うので、それぞれに合った方法を一緒に考えていきたいなと。そこはフレキシブルにやりたいですね。

──FRIENDSHIP.始動にあたって、どんな出会いに期待していますか?

タイラ 俺は単純に聴いたことがないような音楽かな。あくまで音源がベースなので、「わ! こんなことやろうとしているんだ!」と思うような音源に出会いたい。年齢も性別も活動形態も関係なく。

Yuto 確かに80歳ぐらいのおじいちゃんが作った音楽を聴く機会があれば聴いてみたい。

タイラ 「ライブは全然できないんです」という人もウェルカムです。とにかくサウンドが個性的で、こんなの聴いたことないという音楽に出会えたらすごくうれしいなと。

井澤 あと、俺らが好むような音楽じゃないほうがいいと思う(笑)。

タイラ 井澤くんに聴いてもらえるのはめちゃくちゃうれしいとは思うけど……。

Yuto 一生LITEに勝てないからね(笑)。

井澤 どうかなあ。同じくThe fin.に似たような音楽でエントリーされたとしたら、「じゃあ俺はThe fin.聴くわ」という感じになっちゃうかもしれない。俺たちが好きそうなものじゃない音楽のほうが面白いのかもしれないです。

奥冨直人(BOY)

奥冨 最初の方に言っていた、伸びしろがあるかどうかが大きいなと僕は思っていて。長期的に見て変化していくモチベーションのある人。もっと広く活動していきたいという気持ちがあって、出会ってからの行動でそれが見える人と会えたらうれしいですね。出会ってから半年、1年経って感じると思うんですけど、そういう出会いを楽しみにしています。

タイラ FRIENDSHIP.はどうやったら相手のリクエストにいい形で応えられるか、もっとこうしたらよくなるとか、コミュニケーションを取りながら進めていくプロジェクトになります。音楽が素晴らしいというのは大前提で、いい形でコミュニケーションを図れる人に会いたいなという気はしますよね。

MONJOE 僕は特定の音楽とかジャンルとかは関係なしで、最初のモデルケースになり得る人に出会いたいです。さっき言っていたイメージって日本においては大きな要素なんですけど、ただ個性的でカッコいい人が十分に稼げるような状況を作りたい。そういう活動をコンスタントに続けることができているアーティストのモデルケースになり得る人に出会いたいですね。

タイラ デジタル配信はそういうチャンスを秘めたプラットホームだと思うので、MONJOEくんが言ったようにパイオニアみたいな人に出会えたらすごくうれしいです。日本のシーンにとってもめちゃくちゃいいことだと思いますし、本当に何も制限はないので応募してくれたらうれしいです。

「FRIENDSHOP.」キュレーター

※記事初出時、一部レーベル名に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

FRIENDSHIP.とは?

FRIENDSHIP.とは?

新しい音楽や才能をフィーチャーし、日本から世界を繋ぐ海を船(FRIENDSHIP.)に乗せてワールドワイドに広げるデジタルディストリビューションサービス。

01. DIGITAL DISTRIBUTION

キュレーターによってフィーチャーされた音楽を35ストア、世界187カ国で配信可能。固定費用は発生せず、売上入金額の85%バックが保証される。

02. SALES & PROMOTION

Webメディアへの情報発信やストリーミングサービスのプレイリストへのアプローチといったデジタルプロモーションや、雑誌やラジオといったマスメディアへの個別プロモーション(オプション)を展開。アーティストと楽曲をより露出させ、新規ファン・リスナーを開拓する。

03. CREATIVE SUPPORT

パブリッシング(配信楽曲の出版管理)、海外でのプロモーションおよびライブブッキング、CDやマーチャンダイズの製造サポートなど、アーティストのニーズに合わせてさまざまなバックアップオプションを用意。音楽活動をサポートする体制が整っている。

FRIENDSHIP.キュレーター

FRIENDSHIP.キュレーター
タイラダイスケ(ロックDJパーティ「FREE THROW」DJ)
溝口和紀(「New Audiogram」主宰、ex. ヌンチャク)
亀井達也(レコードレーベル「Hot Buttered Record」主宰)
井澤惇(LITE、FULLARMOR、カオティック・スピードキング)
Yuto Uchino(The fin.)
奥冨直人(ビンテージセレクトショップ「BOY」オーナー)
片山翔太(「下北沢BASEMENTBAR」ブッキングスタッフ、「BYE CHOOSE」DJ)
MONJOE(DATS)
LITE「Multiple」
2019年6月5日発売 / I Want The Moon
LITE「Multiple」
The fin.「Come Further」
2019年4月19日発売 / HIP LAND MUSIC
The fin.「Come Further」
DATS 「オドラサレテル」
2019年5月22日発売 / SME Records
DATS「オドラサレテル」

2019年5月31日更新