12年ぶりに「俺の歌を聞け!」
──ニューシングル「BURN! BURN! BURN!」は、FIRE BOMBERにとって12年ぶりの新曲になります。最初にお話をいただいたときはどんな感想を抱きましたか?
福山 「30周年だから新曲が出るのでは?」みたいな話は、なんとなく聞いていたんですよ。僕もライブとか何かしらはやるだろうなと思っていましたね。
カジウラ 私はそんなお話があるとは思ってもみなかったのですが、佐々木さんから「新曲を作ります。デュエット曲はこちらで制作を進めるので、ミレーヌ曲はご自由にどうぞ!」という感じでお話をいただいて。うれしかったですね。
福山 今回、デュエット枠の「BURN! BURN! BURN!」は佐々木さんがディレクションして曲も決めたんですけど、カップリングのバサラとミレーヌのソロ曲(「I am a ROCK」と「レゴリス」)に関しては、それぞれで制作したんです。
──なるほど。それでは表題曲の「BURN! BURN! BURN!」から詳しくお話をお聞かせください。こちらはFIRE BOMBERらしい燃え上がるようなハードロックに仕上がっています。
福山 ただ、デモを聴かせてもらったときに、ちょっとブルースっぽいコード進行で、それは今までのバサラにはあまりない感じだったので「この手があったか」と思いましたね。ギタリストが好んで作る楽曲というか、ギターを弾きながら歌う感じの曲になっていて。だからきっとバサラを想定して作ってくれたんだろうなって思いました。
カジウラ そう言われてみればそうかもしれないけど、私は昔のアルバムに入っていても違和感がないくらい、FIRE BOMBERらしい曲だなと思いました。スタジオで福山さんの声が入ったものを聴いたときに「わ、やっぱり熱気バサラだな」と思いましたし、自分がコーラスを入れた途端に「うわー! FIRE BOMBERだ!」と我ながら驚いてしまって(笑)。「Re.FIRE!!」(2009年10月リリースの4thアルバム)のときは、ちょっと今っぽい音質やアプローチでしたけど、今回は本当に30年前から抜け出してきたような仕上がりになっているところがすごいなと思いました。INOJOさんのいなたい歌詞も炸裂していて。
福山 そうなんだよね(笑)。
カジウラ 令和の時代にこの歌詞を書くのか!って。私が今回書いたミレーヌの曲(「レゴリス」)は、ちょっと大人になったミレーヌを意識したのですが、「BURN! BURN! BURN!」は佐々木さんがプロデュースしていることもあってか、INOJOさんも当時のまま書いてる。ちょっと驚くほどに懐かしさを感じました。「Re.FIRE!!」も、あれはあれで進化系だと思いますけど、今回は純然たるFIRE BOMBERだと思いました。
福山 やっぱりINOJOさんの歌詞がバサラらしさのポイントなんですよね。FIRE BOMBERの楽曲は、戦場で歌っているので荒々しいイメージがあるかもしれないけど、普通のラブソングなんですよ。しかもビンテージスタイルの。
カジウラ 「キッスの雨 降り注げ」という言葉をあのメロディに乗せるところがすごくない? 私、びっくりしたもん。だってこれは現代の曲として捉えると、ちょっとないじゃないですか(笑)。でも、FIRE BOMBERはアニメの中での背景やストーリーがあっての楽曲だから燃えるわけで。アニメの中の世界をそのまま具現化した感じなので、ファンの人たちも絶対に喜んでくれるだろうなという気持ちでいっぱいになりました。この歌詞は書けないよね。
福山 しかもバサラはこれを「俺の歌を聞け!」と言って聴かせるんですよ。それこそ「突撃ラブハート」のタイトルを初めて見たとき、正直「まあこれはアニメだから」って思いましたけど(笑)、それがいつしかFIRE BOMBERの代表曲になり、俺の代表曲になって。これはもうINOJOさんにしか書けないし、ある意味、熱気バサラの楽天的な部分は、INOJOさんの本質だと思います。バサラにせよミレーヌにせよ、作詞している人なり監督なりの分身がちゃんと入っているんです。
カジウラ バサラがああいうキャラになったのは、INOJOさんの責任だと思います(笑)。見た目はイケメンでかっこいいから、もっとクールな感じで話すキャラクターでもおかしくないと思うんですよ。
福山 実は「マクロス7」の放送前の予告編か何かで、バサラが「俺の歌を聞け!」って言っているシーンがあるんですけど、そのときの演技は少し二枚目キャラになっているんですよね。でもINOJOさんの歌詞を受けて、あんなに高いキーになって。バサラもだんだん江戸っ子になっていったっていう(笑)。
みんなで歌えるパートを入れよう
──バサラのソロ曲「I am a ROCK」は、ハーモニーの効いた爽快なロックナンバーで、こちらもバサラらしい楽曲になりました。作曲は福山さん、作詞は奥様の福山恭子さんが担当されています。
福山 これはもうバサラっぽい曲を書こうということで、INOJOさんがこうくるのであれば、俺は単純明快な曲にしたいなと思って作った曲です。「DYNAMITE EXPLOSION」や「突撃ラブハート」みたいなシンプルな曲を意識して。それと2022年に「BASARA EXPLOSION 2022」というライブをやったときはコロナ禍でお客さんが声を出せなかったので、この曲はライブでやることを想定して、絶対にみんなで歌えるパートを入れようと思いました。
カジウラ INOJOさんの歌詞を意識したという話を今聞いてなるほどと思ったけど、私はイントロを聴いた瞬間に「福山さん、Queen好きすぎやん!」って思った(笑)。
福山 ご名答です(笑)。FIRE BOMBERの曲は昔からそういう部分があったから、昔から聴いてくれている人が笑ってくれたらいいかなと思って。ただ、この曲は福山恭子がディレクションをしているんですけど、「バサラの曲なんだからコーラスはできるだけ少なく」って言われたんですよ。自分の好きな感じで作ると、どんどんコーラスを入れちゃうので(笑)。
カジウラ でも、イントロからは「ここだけは譲らない!」っていう気持ちがすごく伝わってきた。そこからどんどんバサラになっていくっていう。ソロ曲はお互い好きに作っていますけど、バサラを意識しつつ自分も反映しながら作っているんだなと思いました。
ちょっと大人なラブソング
──カジウラさんが作られたミレーヌのソロ曲「レゴリス」は、アンビエントなサウンドとドリーミーな歌声が溶け合う幻想的なバラード。その意味では「PILLOW DREAM」や「君に届け→」に連なる雰囲気もあります。大人になったミレーヌを意識して作られたとのことですが。
カジウラ 楽曲のストーリーとしては、バサラが生まれた2024年から30年後のミレーヌを意識して作りました。バサラは太陽みたいな人で、好きに生きて、どんどん先に行っちゃうじゃないですか。それを見ているミレーヌは月。で、太陽と月はどんなに恋焦がれても絶対に交わらない。そういうどこかあきらめの気持ちを落とし込ませていただきました。
福山 そういうことだったんだ!
カジウラ そう。バサラはずっと燃えながら宇宙を巡っているけど、ミレーヌはそれを追いかけても絶対に追いつけない。いろんな小宇宙にぶつかって、いろんな気持ちと戦って、破裂して、もう心は粉々だけど、やっぱりバサラのことが愛おしい。だから、ひとつになることはないけど、私は永久にあなたを愛する。一生交わらないことも受け入れた、ちょっと大人なラブソングです。
福山 うわあ、すげえ。俺は「レゴリス」の意味を調べたくらいで、そんなに深い愛の歌だとは全然気付かなかった(笑)。いいなあ。
──「レゴリス」は、月などの衛星や小惑星の表面に堆積する層を指す言葉で、流星物質が衝突した破片などで構成されているそうですね。
カジウラ そうなんです。30年、心が砕け散っても永遠の愛を誓う。そしてきっと2人は惹かれ合っている。という思いを歌いました。ちょっと重めの作品になったので、びっくりする方もいるかもしれないですけど、気持ち的にはそういう裏テーマみたいなものを込めていて。
福山 楽曲はふわーっとしていて、チエちゃんっぽい浮遊感があるなあと思った。「THE チエ・カジウラ」っていう感じの曲。
カジウラ 私が「マクロス」のバラードを作るときは、宇宙の映像をバックに作品の世界観を説明するナレーションが入るシーンを思い浮かべてしまうんですよ。バサラとミレーヌの日常というよりも、宇宙のシーンが私の中では強く残っているので、イントロの音もいろんな小惑星がうごめいているようなイメージ。星がたくさん浮かんでいて、宇宙音が流れている中でかかるバラード。
約13年ぶりのワンマンライブ
──3曲それぞれにFIRE BOMBERらしさ、バサラらしさ、ミレーヌらしさが出たファン必携の作品になりました。そして2025年2月には、お二人がそろって出演するFIRE BOMBERのライブ「SANKYO presents MACROSS 7 30th Anniv. FIRE BOMBER LIVE 2025 ~BURN! BURN! BURN!」の開催も決定しています。
福山 2人でステージに立つのは5年ぶりで、かつ、ワンマンは渋谷公会堂でやったライブ(「FIRE BOMBER 2012」)以来、約13年ぶりになります。僕は自分のライブでも必ず「マクロス」の楽曲を何曲か歌うんですけど、やっぱり新しいファンも多いんですよね。きっとまだ2人でのFIRE BOMBERのライブを生で観たことのない人も多いと思うので、昔からのファンだけでなく、新しいファンにも「FIRE BOMBERとはこういうものだぞ!」というのを知ってもらえるライブにしたいです。
カジウラ 私もこの30年間、いろんなアレンジをしながらFIRE BOMBERの楽曲をライブで演奏してきました。きっと新しいアレンジを喜んでくれた人もいるし、がっかりした人もいて、賛否があったと思うんですね。でも、私としてはそれが正直な生き方だし、「マクロス」が音楽で何かを伝えるように、私は私の音楽を伝えてきました。ただ、近年は回り回って原曲が愛おしくなっているので、今回は原曲に忠実に歌いたい気持ちでいっぱいなんです。なので、今度のライブでは“正直に”それをやります。きっとこの30年間にいろいろやってきたからたどり着いたことだと思います。みんなも絶対的に喜んでくれると思うので、楽しみたいですね。
ライブ情報
MACROSS 7 30th Anniv. BASARA EXPLOSION 2024 from Fire Bomber
- 2024年9月15日(日)神奈川県 KT Zepp Yokohama
- 2024年9月23日(月・振休)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)
- 2024年10月11日(金)愛知県 Zepp Nagoya
- 2024年11月1日(金)東京都 Zepp Divercity(TOKYO)
<出演者>
福山芳樹(「マクロス7」熱気バサラ歌担当)
ゲスト:神奈延年(「マクロス7」熱気バサラ役)
サポートバンド:F-BAND
SANKYO presents MACROSS 7 30th Anniv. FIRE BOMBER LIVE 2025 ~BURN! BURN! BURN!~
- 2025年2月21日(金)東京都 豊洲PIT
- 2025年2月22日(土)東京都 豊洲PIT
<出演>
福山芳樹(「マクロス7」熱気バサラ歌担当)
チエ・カジウラ(「マクロス7」ミレーヌ・フレア・ジーナス歌担当)
西脇辰弥(Key)
根岸孝旨(B)
松本淳(Dr)
外園一馬(G)
プロフィール
FIRE BOMBER(ファイヤーボンバー)
1994年放映のテレビアニメ「マクロス7」劇中に登場する架空のロックバンド。ギター&ボーカルの熱気バサラ(歌唱:福山芳樹、声:神奈延年)、ベース&ボーカルのミレーヌ・フレア・ジーナス(歌唱:チエ・カジウラ、声:平野綾)、キーボードのレイ・ラブロック(声:菅原正志)、ドラムのビヒーダ・フィーズ(声:高乃麗)からなる。劇中では2045年4月にデビュー曲「PLANET DANCE」をリリースし、同年6月に1stアルバム「LET'S FIRE!!」を発表。現実世界では1995年に「LET'S FIRE!!」をリリースし、オリコン初登場4位にランクインする。2024年10月には「マクロス7」の30周年を記念した新曲「BURN! BURN! BURN!」を発表した。
福山芳樹(フクヤマヨシキ)
1963年9月14日生まれのアーティスト。1988年にハミングバードを結成し、1990年に「AXIA・ミュージック・オーディション」にて歌部門最優秀賞を受賞。1991年に「ハッピーバースデイ」でデビューし、1994年にテレビアニメ「マクロス7」の主題歌と吹き替えボーカルを担当した。2000年にハミングバードを解散し、2003年にアルバム「叫ぶ男の肖像」でソロデビュー。2006年にテレビアニメ「武装錬金」のオープニング曲「真赤な誓い」でスマッシュヒットを記録し話題となる。2017年8月にフルアルバム「LONDON MAGIC」、2021年5月にシングル「Dragon Eye」を発表。2022年1月にはテレビアニメ「異世界美少女受肉おじさんと」のオープニングテーマを担当した。また、同じくアニソンシーンで活躍する影山ヒロノブ、遠藤正明、きただにひろし、奥井雅美とともにボーカルグループ・JAM Projectとしても活動している。
Yoshiki Fukuyama Official Website
チエ・カジウラ
歌手兼キャンドルアーティスト。M.Meg名義で作詞も担当している。テレビアニメ「マクロス7」でミレーヌ・フレア・ジーナスの歌唱部分の吹替を担当。1995年発売のシングル「…だけどベイビー!!」でオリコン初登場15位を記録した。2006年にはKANAMEとユニット・SunS marketを結成。2014年10月には自主レーベルからミニアルバム「睡眠HEAVEN」をリリースした。そのほか神奈川・洗足学園音楽大学の講師を8年間務めるなど、多岐にわたって活躍している。
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