ナタリー PowerPush - F.I.B

This is メロディックパンク! 10年選手が手に入れた王道感

1stフルアルバム「FIGURE」から約3年半。F.I.Bから待望の2ndフルアルバム「FIRE CRACKER」が届いた。ドラマチックな楽曲から重厚で気高さを感じさせる曲、ハードに突き進む曲、そしてポップに跳躍していく曲まである。全体的にバラエティに富んだ本作には王道感があり、「これがF.I.Bのメロディックパンクだ」と言わんばかりの堂々としたアルバムに仕上がっている。3年半という時間も納得の作品だ。

2006年にPIZZA OF DEATHのオムニバスアルバム「The Very Best Of PIZZA OF DEATH」に抜擢、一気に存在感を示したF.I.B。「マイペースにやってきただけ」と言う彼らも今年の9月で結成10周年を迎えた。本作は彼らの10年を総括しつつも、新たな指針となる1枚と言える。中途(Vo)に話を訊いた。

取材・文 / 遠藤妙子 インタビュー撮影 / 高田梓

納得いくものを作りたくて3年半かけた

──F.I.Bは今年で結成10周年なんですよね。

中途(Vo)

そうなんです。そう見えないってよく言われるんですけど(笑)、地に足を着けてやってたら10年経ちました。

──今作には10周年の気合や思いも込められていますか?

いや、10周年というのは特に意識せず、今までどおりやった感じですね。何周年ってのはあとから付いてくればいいと思います。

──でも前作から3年半振りですし、じっくり作った作品だなと思いましたよ。

そうですね、じっくり作りました。焦って出すよりも納得いくものをやりたいなっていうことを第一に考えたので。そしたら3年半かかっちゃいましたね(笑)。

──前々作のミニアルバム「FILL IN THE BLANKS」、前作の1stフルアルバム「FIGURE」をリリースして、それ以前と状況も変わったと思うんですが、なぜここでじっくり作ろうとしたんですか?

1曲1曲にちゃんと向き合って作ろうって考えて。実は最初はもっと早く出したいって思っていたんですよ、特に僕が。前作のツアーが終わってすぐに今作に向かおうって。実際、すぐアルバムに向かって曲作りを始めたんですが、それが時間をかけたことによってアレンジも変わってきたり新曲も増えてきたり。だから時間をかけたことですごくいい結果になったと思います。

──集中してガッと作ったんじゃなく、約3年半という時間の中で作り込んでいったと。

そうです。いついつまでって締め切りを設けたわけじゃなく。まあ曲を仕上げるスピードは遅いんで、例えば2曲できて、またちょっと期間が空いてっていう、そういう作り方で。でも後半は集中して……あ、曲を作っているのはドラムの健太なんですね。健太は前半は1曲ずつ持ってきたんですけど、後半になったらやっぱり時間が迫ってきて何曲かアイデアを持ってきて、曲作りとアレンジを同時進行で作っていった感じです。

──健太さんが曲の土台を作ってきて、それをみんなでアレンジしていくっていうやり方で?

そうです。

ツアーはツアー、曲作りは曲作り

──中途さんは最初、どうして今作をもっと早く出したいって思っていたんですか?

中途(Vo)

前作のツアーを通じていろいろなものを吸収できたから、その感情のままに早く出したいと思ったんです。でも僕は曲を作らないので曲作りの大変さをちょっとわかってなかったんですよね。元々僕らは自分らのペースでそんなに構えないで自然にやっている感じだし。だからツアーが終わってすぐに「やるぞ!」って一気に作るよりも、健太が持ってくる曲が揃っていく過程を楽しみながら、1曲1曲を大事にしてちゃんと仕上げていこうって。それが僕ららしいやり方だって改めて気付いて。

──「曲作りの大変さをちょっとわかってなかった」っておっしゃいましたけど、確かにF.I.Bの曲は土台からしっかりと作り上げられている感じがします。

多分健太には曲のイメージが最初の段階からあるようで、そのイメージを再現したり、または違うイメージを取り入れていったりということをメンバーみんなでやっていくんです。健太は例えばツアーの合間に曲を作るってことはできないと思うんです。ツアーはツアー、曲作りは曲作りって集中して考えるタイプで。それは僕らもそうですし。器用じゃないんでツアー中はツアーのことしか考えられない。だからツアーが終わってからじゃないと曲作りはできなくて、そこを僕は最初はわかってなくて早く出したいって思って。でも僕らも健太に焦って作ってほしくないですしね。

ニューアルバム「FIRE CRACKER」 / 2012年9月26日発売 / 2300円 / PIZZA OF DEATH RECORDS / PZCA-57
CD収録曲
  1. Intro
  2. Cast Off Your Tinsel Lie
  3. The Brilliant Future
  4. Story
  5. Trip
  6. Burn Down
  7. I'll Stay By Your Side
  8. So We Can Claim
  9. Answer
  10. Do It More Fool
  11. Get Back
  12. Strings
  13. Beginning Sign
  14. For All Time
F.I.B(えふあいびー)

2002年に京都で結成されたメロディックパンクバンド。現在のメンバーは中途(Vo)、健太(Dr)、ホワイティ(B)、JJ(G)、Pelori(G)。結成以来京都を拠点にライブ活動を行ってきた。2006年、PIZZA OF DEATH RECORDSからリリースされたオムニバスアルバム「The Very Best Of PIZZA OF DEATH」に、オリジナル曲「Are You Standing On?」を提供。これがきっかけとなり、翌2007年にミニアルバム「FILL IN THE BLANKS」をPIZZA OF DEATH RECORDSから発表した。2009年には1stフルアルバム「FIGURE」をリリース。その後もツアーの実施や「RUSH BALL」「京都大作戦」「COMIN' KOBE」「BAYSIDE CRASH」といったフェス&イベントに出演し、知名度を高めていった。2012年9月に約3年半ぶりとなるニューアルバム「FIRE CRACKER」をリリース。