今作ではメロディックパンクを思い切りやりたかった

──今作の楽曲はバラエティに富んでいるものの、メロディックパンクってことを堂々と打ち出していますね。

そうですね。まず健太が「今作ではメロディックパンクを思い切りやりたい」って言ってきたんです。あとやっぱり僕らは何をやってもメロディックパンクなんですよ。

──さらに中途さんが思った「全部がライブで映える曲をやりたい」ってこととうまくリンクしたんでしょうね。

ですです（笑）。

──F.I.Bの曲ってど真ん中を突き進んでる感じがするんですよ。曲の中にはもっとメタル寄りになっても、もっとエモ寄りになっても、もっとクラシカルになっても、もっとポップになってもおかしくない曲もある。どの要素もあるんだけど、そのどこかに近寄るんじゃなく、真ん中を貫いてる感じがするんですよね。その真ん中がメロディックパンクなんだなって。

ああ、うれしいです。多分昔、メロディックパンクばかり聴いてコピーして、そういうのが軸になっているんだなって、今作を作って改めて気付きました。というか今、気付きました（笑）。

──私が印象に残った曲が3曲目の「The Brilliant Future」。ポップだけどちょっと不思議な曲ですよね。

なんかね、明るさと暗さが混ざったような曲になったなって。健太が持ってきた時点ですぐ好きになった曲です。

──4曲目の「Story」はまさにライブが見える感じで。

まさに。歌詞もライブの風景を歌いながら、「やりたいことをやっていこう」ってことを歌っていて。最初はサビが違ったんです。もっとライブの絵が見えるようにしたくて健太に相談して。健太は10の力で曲を作ってくるんですけど、注文が出ると10以上の力で作り直してくるんです。この曲はまさにそうで、思った以上の曲になりました。

──中盤はゴリゴリな曲が続きますね。

僕らの中ではメロディックハードコアというイメージで。

──そして後半にはミドルな曲もありロマンチックな表現も出ている。

ロマンチックなんてあまり言われないんで、なんか照れますね（笑）。

──ロマンチックも含めて、表現の幅が増えましたよね。

歌詞に関しては「提示する」って意識が出てきたのかもしれません。なんていうか、聴いている人の背中を押すようなものになってほしいし、そのために「強さ」を意識して。僕は強い人間ってわけではないし弱い面も当然あるからこそ、弱い人間でも強さを持っているんだよってことを提示したかった。結果的に10年というバンドの年月を振り返っていたのかもしれません。「僕らもここまでやってきたんだよ」って。

──5曲目の「Trip」の歌詞はそういうものですよね。

そうです。まさにバンドへの思いが歌詞になっています。

パンクバンドとしてもっと戦争や原爆のことを歌っていきたい

──あと今の世の中や時代を感じさせる歌詞もありますよね。6曲目の「Burn Down」は怒りがあるし、8曲目の「So We Can Claim」は、私は原発事故という人間が犯した過ちについて歌っていると思いました。

いや、「So We Can Claim」は原発とは関係なくて。僕個人としては戦争の、原爆のことを書いたんです。日本は唯一の被爆国で、そういうことを日本人である僕らはもっと言っていかなきゃいけないんじゃないかって。戦争を知っている人も少なくなってきて、そういうことは忘れちゃいけない、歌っていこうって。確かに原発事故を連想したり、個人的な過ちを省みる歌だと思う人もいるかもしれない。それは聴く人次第で、むしろ各々が各々で解釈してくれたらうれしいので直接的な歌詞にはしなかったつもりで。でも僕の中では戦争や原爆のことを歌ったんです。

──確かに前作でも戦争を歌った曲がありましたしね。

はい。パンクロックにはいろんな魅力があるけど、そういうことを歌っていくのも僕がパンクロックから教わったことのひとつで。自分たちは少なからずパンクバンドだと思ってやっているから、こういう曲は歌っていきたいんですね。決めているわけではないですけどアルバムの中で1曲、こういう曲を入れていけたらいいなって思ってます。

──そういうヘビーな曲もありつつ、最後は楽しく終わっていきますね。

はい。戦争のことを歌うのもパンクロックなんですが、みんなで楽しむのもパンクロックだと思うんです。僕らが最初にメロディックパンクを好きになったのもそういうところで。もう、僕らが好きなメロディックパンクのイメージをギュッと出しました。最後は僕らが思うメロディックパンクの原点のイメージで終わりたかったんです。最高の曲順になっていると思います。いろんな曲順を考えて、一番各々の曲が立っている曲順になったなって。とは言っても今回はPIZZAも含めてチームで曲順を考えて、僕が思った曲順とは全然違うものになったんですけど。でも最高です。

──では最後に改めて、作り終えて思ったことは？

最初のミニアルバムは既存の曲ばかりで、次のフルアルバムは新曲で作ったんですけど、やっぱりそのときの感情を出したものになっていた。今作は10周年ということを意識したつもりはなかったんですが、時間をかけて作った分、無意識のうちにも昔のことを振り返ることができて、それがあって新しいことをやれたと思います。いろんなことをやりたいって思っているからこそ、メロディックパンクの良さを改めて実感したり。メロディックパンクがあるからいろんなことができるんだなって。

──わかりました。あの、ライブでも笑顔が多い中途さんですが、お話していて優しい気持ちになりました（笑）。

えっ、そうですか？ メンバーの中で僕が一番キビキビと喋るんですけどね（笑）。