「Fate/Grand Order Original Soundtrack IV」|カドック役・赤羽根健治が聞く!「FGO」音楽の作り方

カドックには“から回った”音楽を

──ちょっと収録曲の話からは逸れてしまうんですが、ゲームのBGMの曲名っていつ付けているんですか?

芳賀 曲名はサントラがリリースされることが決まってから付けてます。なので、ゲームに収録される段階では記号的な曲名しか付けていないんですよ。

──ではサントラのリリースが決まってからはどうやって曲名を決めるんでしょうか?

芳賀 まず定型があるものはそこに当てはめる形で。ほかはシナリオを振り返って言葉をチョイスしたり、作っているときになんとなくイメージが浮かんでいるものもあります。そんな感じでまずはひと通り僕が曲名を付けるんです。それを奈須(きのこ)に添削してもらって。

──なるほど。

芳賀 曲を聴いた段階で奈須の頭に浮かんでいるタイトルもあるようなので、もし奈須が決めているものがあればそれに差し替えてもらっている感じですね。あとはシナリオと密接な関連性のあるタイトル、“空想樹シリーズ”とかは奈須が曲名を付ける流れになっています。

──自分の中で名前のない曲たちはどう整理しているんですか?

芳賀 「ロシアの通常戦闘曲」とか「ロシアのマップ曲」とか「雷帝戦の曲」とか。そのままですね(笑)。

──今作の収録範囲ではないんですが、僕は第2部の第1章で初めて流れる「宿命 ~GRAND BATTLE 3~」がすごく好きなんですよ。「宿命」は初めて主人公たちがクリプターと戦うときに流れるBGMで。

芳賀 「宿命」は、もとは第2部のPV用の曲でしたが、GRAND BATTLE用としてはこれまでよりも苦しい、悲壮な感じを出そうと思って作った曲ですね。「FGO」では第2部になるまで“マスターvsマスター”という戦いが描かれてこなかったんです。第2部第1章で初めてマスター同士、人間同士の戦闘が描かれる。そのBGMだったので「宿命」はそれまでの戦闘曲とはちょっと力の入れどころが違ったんですよね。なんというか、どちらの陣営もあとがない感じを音楽でも表現したくて。「宿命」は初出がカドック戦なので、カドックのイメージで曲を覚えている人も多いと思います。

──ちょっと個人的な質問をしてもいいですか?

芳賀 どうぞ。

──僕が演じているクリプターの1人・カドックは、「FGO」のシナリオでまだ生きているんです。これから先、カドックに何か音楽を作るとしたらどういう曲になりますか?

芳賀 そうですね……まず言えるのは、明るい曲ではないでしょうね(笑)。

──わかります(笑)。なんというか、泥水をすすってでも生き延びてやるという感じですから。

芳賀 クリプターの1人としてカッコいいBGMを作ってみたいのもありますが、ちょっとから回っている感じの曲も合うかもしれませんね。焦燥感のあるような。

──から回ってる感じですか。なるほどなあ。でもBGMを作ってもらうような目立ち方をすると物語から退場してしまう気もするので、作られていなくてよかったかもしれませんね(笑)。

第2部後半は命懸け

毛蟹 僕も芳賀さんに聞いてみたいことがあるんですよ。

──どうぞ。

毛蟹 もしかしたら芳賀さんの音楽に限らないかもしれないんですが、芳賀さんが作る曲ってヘッドフォンで聴いたときに真ん中に楽器の音を置かないんですよ。普通のボーカルとは違って、真ん中にセリフや効果音が入ることを前提にして楽器の配置を左右に振っているのかなと思っているんですが……。

芳賀 なるほど。管弦メインの曲のことだと思うけど、それはオーケストラに倣っているだけなんだよね。

──それはどういうことですか?

芳賀 パンニングですね。例えば弦楽器で言うと、オーケストラを真ん中の席から見たとき、バイオリンは左側でヴィオラやチェロは右側にいるじゃないですか。

毛蟹 確かにそうですね。

芳賀 単純に出音に関してはオーケストラの配置になるべく沿うように作っているんです。管楽器に関してはエリア内でその都度動かすことはあるんですが、基本的にはなるべく現実のオーケストラの並びに沿っていないと落ち着かないんですよね。

毛蟹 それと「Fate/Grand Order Orchestra」の公演を開催する前とあとで、芳賀さんのサウンドが変わった気がするんですよ。

芳賀 え、そうなの? 譜面的にはともかく、サウンドとしては全然意識したことはなかったんだけど。

毛蟹 おそらく本物のオーケストラの音を浴びるように聴き続けていたので、その影響が音に出ているんだと思います。以前よりもリアルなオーケストラを感じさせる出音になったと思います。具体的に言うと、弦楽器のメロディがよりリアルに聞こえるようになったというか。

芳賀 確かに、自分の曲を目の前でオーケストラの方々が演奏してくれるような機会はそれまでなかったし、その後Blu-rayやCDを作る上でそれこそ死ぬほど聴きましたから(笑)。そういう経験の中で「この楽器はもっとこう鳴らしたほうがいい」みたいな感覚が養われたのかもしれません。

──最後に今後の「FGO」について、語れる範囲で何か伺えればと思うのですが……。

芳賀 残念ながら僕から言えることはあまりなくて。ただこの先は確実にこれまで以上に大変になるね、とは話しています。音楽に限らず、おそらくほかのスタッフもみんな命懸けになるだろうな、と思っています。

──「命懸け」ですか。

芳賀 そのくらいの覚悟で臨むつもりです。

──神々との戦いであった「オリュンポス」を超えるストーリー、音楽が求められるわけですからね。

芳賀 まだ僕もこれから先どうなるかはわからないのですが、来たる第2部後半、より全力を尽くすことだけはここにお約束しますので、ユーザーの皆さんにも楽しみにしておいてほしいですね。

赤羽根健治