エナツの祟り|茶番に人生懸けてます! このシュプレヒコールで令和のバブルを呼び起こせ

「令和のバブルを呼び起こす!!」をコンセプトに掲げ、バブリーなムードあふれるトランスポップチューンで話題を集めているエナツの祟り。彼らは亜tra鵺Wolf-RayetStars名義で活動していた2015年、ビートたけしに命名してもらったジュリアナの祟りに改名したが、平成が終わりを迎える2019年4月30日に突如活動休止を発表。ところが年号が令和に変わる翌5月1日、メンバーや楽曲、コンセプトはそのままにエナツの祟りという名前で新たなスタートを切った。そして2020年10月からTOKYO MXで放送の「さらば⻘春の光のモルック勝ったら10万円!」の主題歌担当と番組レギュラー出演が決定。これに合わせ音楽ナタリーでは江夏亜祐(Dr)と蕪木蓮(Vo)の2人にインタビューを行い、これまでの活動や「さらば⻘春の光のモルック勝ったら10万円!」出演の感想、同番組のオープニングテーマに使用されている新曲「無敵シュプレヒコール~このSを、聴け!~」について語ってもらった。

取材・文 / 真貝聡 撮影 / 南阿沙美

なんでこんな怖い人が楽しいステージを作れるんだろう

──目を疑うような奇抜なルックス、パラパラを取り入れた派手な音楽など、何から何まで気になっていまして。

江夏亜祐(Dr) あはははは(笑)、ありがとうございます!

──まずはエナツの祟りがどのような経緯で生まれたのか教えてください。

江夏亜祐(Dr)

江夏 僕は20歳ぐらいのときから、ずっとエンタメに特化したトランス系のバンドをやってました。そのバンドが解散することになり、もう一度音楽をやりたかったので、対バンで交流のあった蕪木(蓮)さんと矢島(銀太郎)くんを誘い「今まで以上のエンタメ系バンドを作ろう」と思ったのがスタートです。

──どうしてエンタメ系のバンドにこだわったんですか?

江夏 高校生の頃はMr.Childrenさんのような歌ものバンドをやっていたんですが、19歳のときに解散することになり、次はお祭り感があって、ステージを観ながら騒ぐことができる楽しいバンドをやりたいと思ったんです。そこでバブル期のディスコのような派手さを取り入れる、というアイデアをひらめいて、バブル時代をコンセプトにしたエンタメバンドを作ったわけです。

──蕪木さんを誘った理由は?

江夏 抜群に歌がうまかったんですよ。しかも僕が前のバンドを解散するタイミングで、蕪木さんのやっていたユニットも解散したんです。これはちょうどいいと思って声をかけさせてもらいました。

──当時、江夏さんの印象はどうでしたか?

蕪木蓮(Vo)

蕪木蓮(Vo) めっちゃ怖かったです! なんでこんな怖い人がこれほど楽しいステージを作れるんだろうと不思議でした。江夏さんのステージを観て「こんなに楽しいライブがあるのか。私もああいう音楽をやりたい!」と思ったんですよ。その直後に江夏さんのバンドに誘ってもらえたので、すごいうれしかったですね。

30歳が終わる前にO-WESTでワンマンできなかったら辞めます

江夏 それで新しくバンドを始めたのはいいものの、23歳から27歳までダメなバンドマン生活を送っていました。バイトとバンド、どっちが優先なのかよくわからなくなってしまっていた感じでしたね。27歳のとき、親と将来について話す機会があって「家業を継ぐのか、一般の会社に就職するのかわからないけど、もう大人なんだからいい加減にしなさいよ」と言われました。自分の中で納得するまで音楽をやれていないと思っていたから、「3年だけ待ってください。31歳の誕生日までにTSUTAYA O-WESTでワンマンライブができなかったら音楽を辞めます」と約束をしたんです。それから3年間、本気で音楽だけをやっていこうと考えました。

──何か行動を起こしたんですか?

江夏 エンタメ感を強化するため、パフォーマーを集めることにしました。最初は「with9」や「OURSOUNDS」(※共にバンドメンバー募集サイト)に登録したんですけど、もちろん応募が来ないんですよ(笑)。

──バンドマンを募集するサイトですからね(笑)。

左から蕪木蓮(Vo)、江夏亜祐(Dr)。

江夏 どういう方法で呼びかければ応募が集まるんだろうと考えたとき、ふと「お笑い芸人の方はどうやって相方を探しているんだろう」と気になったんです。そこでYahoo!で「お笑い 相方」と検索してみたら、専用の掲示板を見つけたんですよ。試しに「with9」や「OURSOUNDS」で書いていたのとまったく同じ文章を載せてみたら、100件くらいの応募が来て。ちょうどゴールデンボンバーさんの「女々しくて」が話題になり、ボーカルの鬼龍院翔さんが元吉本総合芸能学院の生徒という情報も広まっていたので、お笑いの人も音楽に目を付けていた時期だったんだと思います。で、今のパフォーマー2人(翌桧ダンク冬雪、佐川ネル秋吉)を採用し、改めてバンド活動を始めました。ただ、その当時はお客さんも全然いなくて、ノルマを払いながらバンドのステージに立つのは、お笑い芸人出身の2人にはしんどいだろうなと思って。なのでノルマがなくても出演できる地下アイドルのライブに出演するようになりました。

──音楽性だけじゃなくて、出演方法も王道じゃない道を選んだわけですね。

江夏 そうです。そんなこんなでいろんな形態を探っている中、2015年3月にBSフジの「たけしの等々力ベース」という番組に出演することになりました。売れてないプロレスラー、セクシー女優、お笑い芸人なんかを呼んで、ビートたけしさんに改名してもらって負の連鎖を断ち切ろうという内容で、そこに僕らも応募して運よく出演することができたんです。で、たけしさんに名前をつけていただくとなったら下ネタ的なバンド名になることもありえるなと覚悟して現場へ行ったら、最初に「お前ら“祟り”だな」と言われて「……た、祟りですか!?」って。そのあとにパフォーマンスを観てもらい、ジュリアナの祟りという名前をいただいたんです。それこそ当時はSEKAI NO OWARIさんとかゲスの極み乙女。さんとか、〇〇の〇〇という名前が流行り始めた頃だったので、めっちゃいいじゃんと。

──実際、改名してからの活躍が目覚ましいですね。

江夏 改名をきっかけに、より積極的に活動をするようになって。最高で月に45本くらいライブをこなしたおかげで、徐々に動員も増えていきました。そして31歳の誕生日を目前に控えた2016年12月に、念願のTSUTAYA O-WESTでワンマン(ジュリアナの祟り ~バブル賭博FINAL~ ワンマンRAVE「バブリー革命」)を開催することができて、親との約束を果たすことができました。その後2017年に新宿BLAZE(風雲!バブル城 江夏の挑戦状 最終決戦「バブリー革命」~歌舞伎町編~)、2018年にマイナビBLITZ赤坂(~第54週目~ 風雲!バブル城  ビヨンド最終決戦!ワンマンRAVE「向かえ!殿のお膝元」)でもワンマンを行いました。

左から蕪木蓮(Vo)、江夏亜祐(Dr)。

パチンコだったら「この席と心中してやる!」ぐらいの信念

──エナツの祟りがやっているような斬新なパフォーマンスって、お客さんに受け入れられるまで時間がかかると思うんです。なぜなら大衆は目新しいものよりも流行っているものを求めるから。

江夏 そうなんですよ! それは常に痛感していました。

──どのタイミングでお客さんに受け入れられたと思いますか?

左から蕪木蓮(Vo)、江夏亜祐(Dr)。
左から蕪木蓮(Vo)、江夏亜祐(Dr)。

江夏 お客さんの見る目で言うと、今でもそんなに変わってない気がします。とは言え、今よりもお客さんがいなかった時代から、僕らの“バブリー”というスタイルを変えなかったのが大きいかもしれない。コンセプトをコロコロ変える人もいるじゃないですか。それが間違いとか正しいとかはないんですけど、僕は1つ信じたものをずっと続けていく。パチンコで言ったら、隣の台が当たっていても一生席をどかない。「この席と心中してやる!」みたいな気持ちでやってきました。信念を貫き通したことがお客さんに浸透していった要因かもしれません。

──エナツの祟りはゴールデンボンバーやPsycho le Cémuと親交がありますよね。2組とも新しいパフォーマンスを開拓したバンドだからこそ、親和性があるのも納得というか。

江夏 僕が21歳の頃、競演者のお客さんから「なんとなくやりたいことはわかるけど、全然面白くないし勉強不足だよね」と言われたんですよ。「じゃあ、誰を観て勉強すればいいんですか?」と聞いたら「Psycho le Cémuさんを観なよ」と言われて。そうやってファンの方からアドバイスをもらい、先輩のバンドを勉強することはありましたね。

──ちなみに蕪木さんが影響を受けた方はいるんですか?

蕪木 あ、えーと……そうですね、(美空)ひばりちゃん……。

江夏 一応、蕪木さんは95歳なので、そのルールを守って答えるなら美空ひばりさんです。

──……そうか、そうですよね。蕪木さんのキャラクターはどういう流れで決まったんですか?

江夏 僕らにとって一番の問題は“男女バンド”ということなんです。今でこそ男性メンバーに囲まれて女性がボーカルを務める体制も多いですけど、当時のライブハウス界隈だと、男女混合ってお客さんから一番敬遠されていたんですよ。僕は男性のお客さんから好かれる男になりたくて、蕪木さんは女性のお客さんに好かれる女になることを考えよう、という話になり、マスコット感を打ち出したいと思いました。で、世の女性で赤ちゃんとおばあちゃんが嫌いな人はいないじゃないですか。その両方の要素を持ったらいいんじゃないかと。だから同世代の女性として見てもらうんじゃなくて、おばあちゃんでもあり、赤ちゃんでもある存在ということで今のスタンスにたどり着きました。あと、リアルに現役の神主なんですよ。そこも神秘的じゃないですか。「95歳のおばあちゃんが神主でいても変じゃないかな?」という。

蕪木 いや、変だよ!(笑)

江夏 ただ、年齢が中途半端なんですよね。聖飢魔IIさんみたいに10万飛んで56歳くらいになっちゃえば「はいはい」みたいな感じなんですけど、先輩バンドの方に「蕪木さんは何歳なの?」と聞かれて「95歳です」と答えたら「いや、そういうのじゃなくて」みたいに言われます……。だけど本当に95歳だからしょうがないですよね。生年月日は言えますか?

蕪木 1925年6月17日生まれの丑年です!

江夏 ほら、完璧です!

──実際、蕪木さんに憧れている女性ファンは多いので狙いは成功してますよね。

江夏 蕪木さんとか、落ち武者ヘアーで前歯がない矢島くんの運がよかったのは、ちょうどゆるキャラブームがやってきたことなんです。2人はもともとの性格もゆるキャラみたいな感じだったので、そこは時代にハマったなと。